地下に埋めた危険物タンクは、砕石を敷いた基礎の上に固定することが技術基準で決まっています。
ところが実際には、その施工方法を守らずに設置されたタンクの内側が変形・破損する事故が相次いで見つかりました。
消防庁はこれを受けて基準を改め、施工の記録を残すことを新たに求めるようになりました。
今回は、その改正の中身と、現場で見落としやすい水張りのタイミングについて解説します。
うちの現場で地下タンクを埋めるとき、砕石を敷くやり方が最近変わったと聞きました。
はい、平成29年の改正で、施工の記録を残すことが新しく必要になりました。
なぜ急にそんな決まりができたんですか。
実は、基準どおりに施工されていないタンクの内側が壊れる事例が相次いだからなんです。
- FF二重殻タンクの内殻破損事例が相次いだことがきっかけで施工方法の指針が改正された
- 対象はFF二重殻タンク・鋼製二重殻タンク・SF二重殻タンクを砕石基礎で設置する場合
- 改正で施工管理記録簿の作成が新たに求められるようになった
- タンクの浮き上がり防止で水を張るなら、埋め戻しが直径の2分の1に達してから行う
- 記録簿はタンクが廃止されるまで保存する必要がある
▼

目次
FF二重殻タンクの内殻破損はなぜ検討委員会が開かれるまでの事態になったのか

ところが近年、その内側の殻が変形したり破損したりする事例が各地で見つかりました。
検討委員会には大学の研究者も加わり、破損したタンクを一つずつ調べました。
その結果、砕石の種類が指針と違っていたり、支柱の強度が足りなかったりする施工不良が見つかりました。
タンクを仮固定していた土嚢を埋め戻し前に取り除き忘れた例もあり、些細な手順の抜けが変形につながっていました。
だからこそ消防庁は、施工の過程そのものを記録に残す仕組みを新たに作ることにしたのです。
基準どおりに施工されていなかったのが原因だったんですね。
はい、なので今は工事の記録を残すことが求められています。
砕石基礎による施工が対象になるのはどんな地下タンクか

対象になるのは、決まった構造と大きさの範囲に収まる地下タンクです。
いずれも鋼板や強化プラスチックの外側にもう一層かぶせて、危険物の漏れを検知できるようにした二重殻の構造を持つタンクです。
砕石基礎の指針は、これらのタンクをタンク室以外の場所に直接埋める場合を主に想定しています。
容量はおおむね50キロリットルまで、直径はおよそ2,700ミリメートルまでという目安も示されています。
この範囲を超える大きなタンクや、タンク室に設置する一重殻タンクには、別の基準が適用されます。
うちのタンクがどの方式かも確認しないといけませんね。
設置許可の申請書類を見れば、どの方式で施工されたか分かりますよ。
改正で新しく求められるようになったのは何か

今回の改正では、その運用に新しい一手間が加わりました。
基礎スラブの設置、砕石床や支持砕石の設置、タンクの据付けと固定、埋め戻し、ふたの設置、浮上防止措置まで、工程ごとに記録を残します。
記録には確認した日付と担当者の氏名を書き、写真を添えることが求められます。
この通知は消防組織法第37条に基づく技術的助言なので、条例のように強制する規定ではありませんが、完成検査等の場で施工の適切さを示す材料になります。
記録が無いと、あとから「基準どおりに施工した」と証明する手立てが無くなってしまいます。
記録が無いと、工事のやり直しを求められることもあるんですか。
そこまではいきませんが、完成検査のときに施工業者へ提示を求めるのが確実です。
タンクへの水張りはなぜタイミングを誤ると逆効果になるのか

ところがこの水張り、タイミングを誤ると逆にタンクを傷める原因になります。
埋め戻しが浅い段階でタンクに水を張ると、重さのかかり方が偏り、局部的な応力が集中して変形するおそれがあります。
だから指針は、埋め戻しが直径の2分の1に達するまでは水を張らないよう求めています。
中仕切りのあるタンクでは、各槽に均等に水を張ることも欠かせません。
水を張ったあとに固定バンドを増し締めするのも、タンクを締め付けすぎる原因になるため避けます。
早く水を張ったほうが浮き上がり対策になりそうな気がしていました。
そこが落とし穴で、早すぎる水張りはかえって変形を招くんです。
明日から何を確認すればよいのか

既にタンクを持っている場合は、記録簿が手元にあるかを確かめておきましょう。
新設なら、施工業者に施工管理記録簿の作成と写真添付を依頼し、完成検査の前に内容を見せてもらいます。
既存のタンクなら、設置許可書と一緒に記録簿が保管されているかを確認します。
見当たらない場合は、施工時期や施工業者に問い合わせて再確認しておくと安心です。
記録簿はタンクが廃止されるまで保存するものなので、保管場所を決めて長期的に管理しましょう。
うちのタンクの記録簿がどこにあるか、まず探してみます。
見当たらなければ、設置時の施工業者に問い合わせるのが一番早いですよ。
よくある質問
まとめ
これで自分の現場の記録簿を確認する手順が分かりました!
地下タンクの点検や設置に関するご相談は、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「地下貯蔵タンクの砕石基礎による施工方法について(通知)」の一部改正について(平成29年12月15日付け消防危第205号 消防庁危険物保安室長)
- 「地下貯蔵タンクの砕石基礎による施工方法について(通知)」(平成8年10月18日付け消防危第127号)
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第13条第2項
- 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





