共同店舗の受信機はどこに置けばよいのか、重要文化財の保管場所にも感知器は要るのか——昭和40年代の質疑応答には、現場の判断に使える線引きが残っています。
消防実務六法には、受信機の設置場所から留置場の感知器の省略、差動式分布型感知器の間隔まで、当時の消防庁が答えた質疑応答が数多く収録されています。
この記事では、そのなかから五つを選び、現行の消防法施行令・消防法施行規則と照らし合わせて読み直します。
受信機の置き場所や感知器の省略が、どこまで現場の事情に合わせて柔軟に扱えるのかを順に確かめていきましょう。
うちは13ブロックくらいに分かれた共同店舗ビルなんですが、受信機は各店舗ごとに置かないといけないんでしょうか。
昭和40年の質疑応答に、その疑問にそのまま答えた回答が残っていますよ。
留置場や文化財みたいな特殊な建物だと、感知器の扱いも変わってくるんですか。
はい。
今日は五つの質疑応答を、現行の条文に当てはめて順番に見ていきましょう。
- 共同店舗の自動火災報知設備は、令第21条第1項又は第2項に該当すれば設置が必要で、受信機は規則の技術基準に適合すればどこに設けてもさしつかえないとされました
- 重要文化財に指定された建造物は別表第一(十七)項により延べ面積を問わず設置義務がありますが、物件の保管場所そのものには設置義務がないとされました
- 留置場の監房部分は、令第32条の特例判断により感知器の設置を省略して差し支えないとされました
- 差動式分布型感知器は、警戒区域の面積と一辺の長さの上限内であれば間隔を片方に寄せてもう片方を延ばす設計も認められました
- 同一管理下にある複数の防火対象物は、集中管理の体制を整えれば通報設備を防火対象物ごとに重ねて設けなくてよいとされました
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目次
共同店舗の自動火災報知設備で受信機はどこに設けられるのか

昭和40年に群馬県から寄せられた質疑応答が、この整理の仕方を示しています。
(昭和40年1月7日 自消丙予発第2号 予防課長から群馬県総務部長あて回答)
現行の規則第24条第2号ニは、受信機を防災センター等に設けることと定めています。
昭和40年当時は「どの場所でもさしつかえない」という答えでしたが、今は設置場所そのものが絞られています。
共同店舗で受信機を集約するか各店舗に置くかという設計判断の前提として、まず令第21条第1項又は第2項への該当性を確認する必要があります。
該当すれば自動火災報知設備の設置は避けられず、受信機の置き場所は現行の技術基準に合わせて決めることになります。
うちの店舗だと、受信機は防災センターにまとめて置くほうがよさそうですね。
はい。
令第21条の該当性を確認したうえで、設置場所を検討しましょう。
重要文化財の建造物は物件の保管場所にも感知器が要るのか

建物の中にある文化財そのものを別の場所に保管している場合、その保管場所はどう扱われるのでしょうか。
(昭和44年11月20日 消防予第265号 消防庁予防課長から都道府県消防主管部長あて回答)
現行の別表第一(十七)項も「…建造物」という文言のままで、令第21条第1項第1号イがこの区分を延べ面積を問わず自動火災報知設備の対象としています。
ただし条文が対象にしているのは建造物という箱であって、その中にある文化財の物件や、別棟の収蔵庫そのものではありません。
保管場所への設置は法的な義務ではなく、文化財保護の観点からの行政指導にとどまる、という整理です。
収蔵庫を新設するときは、法令上の義務と指導レベルの要請を分けて確認すると判断がぶれません。
宝物殿みたいな別の建物に保管してたら、そこにも設置義務があると思ってました。
法令上は建造物そのものが対象です。
保管場所は指導の範囲になります。
留置場の監房部分は感知器の設置を省略できるのか

では警察署内の留置場(監房)は、この基準にそのまま当てはまるのでしょうか。
(昭和40年6月15日 自消丙予発第109号 予防課長から鹿児島県総務部長あて回答)
現行の規則第23条第6項第3号も、廊下・便所その他これらに類する場所を設置義務の対象から除く形を今も維持しています。
留置場の監房はこのリストに入らないため、原則どおりなら感知器の設置が必要になりますが、この回答は令第32条の特例判断で省略を認めました。
耐火造りの構造・喫煙の制限・看守による常時監視という具体的な管理体制が、火災発生のおそれが著しく少ないという判断材料になったとみられます。
令第32条の適用は個別の建物の状況を所轄の消防機関が判断するものなので、同じような施設でもそのまま当てはめられるとは限りません。
特殊な部屋だと、一律に省略できるわけじゃないんですね。
そうです。
令32条はあくまで個別の判断なので、所轄の消防機関に確認しましょう。
差動式分布型感知器の間隔はどこまで延長できるのか

片方の辺を詰めれば、もう片方をどこまで延ばせるのか、昭和40年の坂出市からの質疑が具体的な数字で答えています。
(昭和40年10月27日 自消丙予発第17号 予防課長から坂出市消防長あて回答)
現行の規則第23条第4項第4号ハは、相対する感知器の相互間隔を耐火構造で9メートル以下、その他の構造で6メートル以下と定めていて、この回答が引いた基準と同じ内容です。
令第21条第2項第2号が定める警戒区域の上限(面積600平方メートル以下・一辺50メートル以下)の中でなら、片方の辺を詰めてもう片方を延ばす設計が今も成り立ちます。
ただし一の検出部に接続できる空気管の長さは型式承認で決まった値が上限で、現場の都合で自由に延ばせるわけではありません。
部屋の形が細長いときほど、この間隔の調整が設計の決め手になります。
細長い部屋だと、感知器の置き方を工夫できる余地があるんですね。
はい。
ただし空気管の長さは型式承認の範囲内というのが前提です。
同一管理下にある複数の防火対象物は通報設備をまとめられるのか

昭和40年に東京消防庁へ出された質疑応答が、その条件を整理しています。
(昭和40年12月22日 自消丙予発193号 予防課長から東京消防庁予防部長あて回答)
(1)各防火対象物の自動火災報知設備を守衛室等で常時2名以上の監視人により集中管理し、出火した建物を確認できること、(2)その監視人室に消防機関へ通報する火災報知設備を設けること、(3)監視人室と各建物の間に常時通話できる装置を設けること(主要な出入口までの歩行距離が75メートル以内の建物は発信機で代えられます)、(4)消防隊を出火した建物へ遅滞なく誘導できる体制を門衛所等に設けることが条件です。
現行の令第23条第1項・第2項が通報設備そのものの設置基準を定めていて、この回答はその上に令第32条の特例判断を重ねた形になっています。
工場や病院、学校のように複数棟を同じ管理者が持つ施設では、今も同じ発想で集中監視の体制を整える余地があります。
条件のどれか1つでも欠けると特例は成り立たないので、4つの条件を同時に満たしているかを確認することが出発点になります。
うちみたいに複数棟ある工場でも、集中管理すれば重複を避けられるんですね。
はい。
ただし4つの条件をすべて満たすことが前提です。
よくある質問
まとめ
受信機の置き場所も感知器の省略も、根拠を確かめながら判断できそうです。
令第32条の特例は、所轄の消防機関との相談が前提です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第21条・第23条・第32条・別表第一(十七)項
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第23条・第24条
- 共同店舗の自動火災報知設備に関する質疑(昭和40年1月7日 自消丙予発第2号 予防課長から群馬県総務部長あて回答)
- 重要文化財の感知器設置に関する質疑(昭和44年11月20日 消防予第265号 消防庁予防課長から都道府県消防主管部長あて回答)
- 留置場の感知器設置に関する質疑(昭和40年6月15日 自消丙予発第109号 予防課長から鹿児島県総務部長あて回答)
- 差動式分布型感知器の設置方法に関する質疑(昭和40年10月27日 自消丙予発第17号 予防課長から坂出市消防長あて回答)
- 同一管理下の防火対象物の通報設備に関する質疑(昭和40年12月22日 自消丙予発193号 予防課長から東京消防庁予防部長あて回答)
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





