キュービクル式のリチウムイオン蓄電池設備を、製造工場から設置場所へ輸送する際にまとめて保管したくても、危険物の規制に関する政令の基準どおりでは指定数量を超えてしまう場面があります。
令和4年、消防庁は鋼板製の筐体を耐火性のある布で覆うという新しい貯蔵方法を通知で示しました。
専用の危険物貯蔵所がない現場でも、条件を満たせば一時的な大量貯蔵ができるようになっています。
この記事ではどんなキュービクルが対象になり、布でどう覆えばよいのかを解説します。
うちの施設、蓄電池設備をまとめて運ぶ機会があるんですが、保管場所ってどうすればいいんでしょうか。
令和4年に消防庁が、キュービクル式の蓄電池を耐火性の布で覆う運用を通知で示しています。
布で覆うだけで、本当に大丈夫なんですか。
鋼板の厚さや布の耐火性など、いくつか条件があります。
順番に確認していきましょう。
- 対象は厚さ1.6mm以上の鋼板で造られたキュービクル式蓄電池設備です。
- 開口部を耐火性を有する布で覆えば、個別の貯蔵場所として扱えます。
- 布の耐火性は遮炎性能試験で確認する必要があります。
- 複数台まとめて置いても指定数量の倍数を合算しなくてよい取扱いになります。
- 平成23年の運用(消防危第303号)の取扱いをそのまま適用できます。
▼

目次
キュービクル式蓄電池はなぜ布で覆うだけで大量貯蔵できるようになったのか

その一方で、製造工場から設置場所へ輸送する際にまとめて置く必要があり、扱いに迷う現場が出てきました。
答 厚さ1.6mm以上の鋼板で造られたキュービクルで、その開口部を耐火性を有する布により覆ったものについては、「リチウムイオン蓄電池の貯蔵及び取扱いに係る運用について」(平成23年12月27日付け消防危第303号)第2の3に掲げる取扱いができる。
消防庁は「危険物施設におけるスマート保安等に係る調査検討会」で安全対策を検討し、令和4年4月27日付け消防危第96号でこの運用を通知しました。
背景にあるのは、キュービクル式蓄電池設備の利用が広がる一方で、輸送時に指定数量を超える量をどう扱うかという現場の悩みです。
布で覆うという比較的手軽な方法で対応できる点が、この通知の実務上のメリットになります。
まずは自分の施設が輸送のどの段階でこの運用を使う場面があるか、確認しておきましょう。
新しく専用の建物を建てなくてもいいんですね。
ええ、布で覆うだけで対応できる分、輸送計画も立てやすくなります。
どんなキュービクル式蓄電池が布で覆う運用の対象になるのか

すべてのキュービクルが対象になるわけではありません。
答 厚さ1.6mm以上の鋼板で造られたキュービクルであることが条件である。
通知が対象にするのは、風力発電等の再生エネルギーから得た電力の蓄電や非常用電源として利用が進む、この鋼板製の外箱タイプです。
厚さの基準を満たさない筐体や、鋼板以外の素材で造られた箱は、この運用の対象にはなりません。
自分の施設にある蓄電池設備がキュービクル式かどうか、まずメーカーの仕様書で鋼板の厚さを確認しておくとよいでしょう。
厚さの条件を満たしていなければ、この運用は使えません。
うちの蓄電池がキュービクル式かどうか、どこを見ればわかりますか。
メーカーの仕様書に外箱の材質と板厚が書いてあるはずです。
まずそこを確認しましょう。
耐火性の布で覆う運用は具体的に何を求めているのか

どちらを選ぶかで、注意すべき点も変わってきます。
答 キュービクルの全体を耐火性を有する布で袋状にして覆い被せる方法と、キュービクルの開口部だけを布で巻く又は覆う方法がある。
開口部だけを覆う場合は、通常の保管時に想定される重力や外力で開口部が露出しないよう、耐火性を有するフックやボルト、ワイヤー等で布を固定します。
このとき、布を固定するネジ用の貫通箇所から火炎が内部に進入しないよう、あわせて措置を講じることも求められます。
条件を満たした措置を講じたキュービクルを複数台まとめて置く場合でも、それぞれを指定数量未満の危険物を貯蔵する場所として扱うことができ、機器ごとの離隔距離も不要になります。
どちらの覆い方を選ぶかは、設置場所のスペースや輸送の頻度に応じて判断するとよいでしょう。
複数台まとめて置いても、それぞれ離れた場所に置いたのと同じ扱いになるんですね。
そのとおりです。
ただし布の固定がしっかりできていることが前提になります。
実務で見落としやすいのはどこか

耐火性の確認方法まで押さえておく必要があります。
答 国土交通大臣が認定する特定防火設備と同等の遮炎性能試験によるほか、簡易的な燃焼器具等で当該試験と同等以上の加熱条件により行う試験方法によって確認できる。
簡易的な燃焼器具等での試験は、ガスバーナーやガストーチなど局所に集中しない燃焼器具を使い、1時間が経過するまでの間、加熱温度945度以上で試験します。
非加熱側へ火炎が噴出しないこと、試験後に火炎が通る亀裂等の損傷や隙間を生じないことが判定基準になります。
使用する布は、裂けやほつれ等の損傷がないことをそのつど確認するとともに、耐火性を有することが確認できる書類を提示できるようにしておく必要があります。
書類を確認せずに古い布を使い回してしまうと、いざというときに耐火性が発揮できないおそれがあります。
布の耐火性って、見た目だけでは判断できないですよね。
おっしゃるとおりです。
だからこそ、確認できる書類を必ず備えておく必要があります。
明日からなにを確認すればよいか

輸送の前後どちらでも見ておきたい項目です。
答 布の縫合を行う場合は耐火性を有する糸及び金具により行うとともに、縫合部分には火炎の進入がないよう措置を講じる必要がある。
具体的には、布に裂けやほつれがないか、フックやボルト、ワイヤーが緩んでいないかを目視で確認します。
布を固定するネジ用の貫通箇所についても、火炎が通り抜ける隙間ができていないかをあわせて見ておきます。
輸送計画を立てる段階で、耐火性を確認できる書類が手元にそろっているかも確認しておくと安心です。
既設の設備にこの運用をそのまま当てはめてよいか迷う場合は、所轄消防署に事前に相談しておきましょう。
輸送のたびに毎回、布と金具を見直したほうがよさそうですね。
そのとおりです。
輸送のたびに確認する習慣をつけておくと安心です。
よくある質問
まとめ
布で覆うだけで対応できる場面があるとわかって、輸送の計画も立てやすくなりました!
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- キュービクル式リチウムイオン蓄電池設備の貯蔵に係る運用について(通知)(令和4年4月27日付け消防危第96号 消防庁危険物保安室長)
- リチウムイオン蓄電池の貯蔵及び取扱いに係る運用について(平成23年12月27日付け消防危第303号 消防庁危険物保安室長)
- 危険物の規制に関する政令第23条(基準の特例)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





