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グリスエクストラクターとグリスフィルターは何が違うのか|天蓋のグリス除去率と耐熱試験の基準を解説

業務用厨房のステンレス製フード内に設けられたグリスフィルターを写した写真

天蓋に付いているグリス除去装置、どれも同じ基準だと思っていませんか。
実は平成8年の通知で、グリスエクストラクターとその他グリス除去装置(グリスフィルター等)は分離除去率も試験条件も別々に定められています。
リース契約かどうかで求められる構造まで変わるなど、細かい線引きも決まっています。
天蓋の中でどんな基準が働いているのか、順番に見ていきましょう。

厨房の天蓋についてる網みたいなやつ、全部同じ基準やと思ってました。

実は2種類に分かれていて、それぞれ別の基準で作られているんです。

グリスエクストラクターって初めて聞きました。

自動で洗浄までしてくれる、フィルターより新しいタイプの装置なんですよ。
中身を見ていきましょう。

この記事の結論
  • グリス除去装置はグリスエクストラクター(90%以上除去)とその他グリス除去装置(75%以上除去)の2種類に分かれます
  • 根拠は火災予防条例(例)第3条の4第1項第3号です
  • グリス付着率が10%以上のフィルターには、180℃までの追加耐熱試験が必要です
  • リース等で維持管理される装置は自動回収・清掃容易性の構造要件が免除されます
  • セラミック製フィルターは曲げ強度100N/cm²以上等を満たせば鋼板製と同等とみなされます

グリス除去装置がグリスエクストラクターとその他グリス除去装置の二種類に分かれ、分離除去率と耐熱試験の基準が違うことを示す図解

グリス除去装置の基準はなぜあらためて定められたのか

シンプルな網状のグリスフィルターと基準を示す書類、円筒形のグリスエクストラクターを並べたイラスト
グリス除去装置はもともと平成3年の通知で運用が示されていました。
その後、新しい方式の装置が登場したことで、あらためて統一基準を作る必要が出てきました。
グリス除去装置の構造等の基準について(通知)(平成8年8月15日消防予第162号) グリス除去装置については、「改正火災予防条例準則の運用について」(平成3年10月8日付け消防予第206号消防庁予防課長通知)により運用願っているが、近年、厨房設備の多様化及び科学技術の進歩に伴って、従来のものと異なる方式、材質等によるグリス除去装置が開発されてきており、その構造等について検討が必要とされていたところである。
火災予防条例(例)第3条の4第1項第3号イ 排気中に含まれる油脂等の付着成分を有効に除去することができるグリスフィルター、グリスエクストラクター等の装置(以下「グリス除去装置」という。)を設けること。
あらためて基準が作られた理由は、新方式への対応です。
条例(例)自体は「グリスフィルター、グリスエクストラクター等の装置を設けること」としか定めておらず、具体的な性能までは書き込んでいません。
消防庁は消防機関や日本厨房工業会と共同で調査研究を行い、平成8年にその中身を数値基準として定めました。
背景にあるのは、従来のグリスフィルターとは仕組みの異なる新しい方式の装置が市場に出てきたという実情だけで、個別の火災事例までは通知に書かれていません。
まずは「条例の抽象的な規定を、この通知が数値で具体化している」という関係を押さえておきましょう。

天蓋についてる網、全部同じ基準やと思ってました。

実は平成8年の通知で、2種類に分けて基準が定められているんです。
次はどの装置が対象になるか見てみましょう。

天蓋のどんな装置がこの基準の対象になるのか

厨房の天蓋の中に取り付けられたグリスフィルターとグリスエクストラクターを並べたイラスト
対象になるのは、天蓋に設ける油脂除去のための装置です。
呼び方は違っても、仕組みで2種類に分かれます。
グリス除去装置の構造等の基準について(通知) 1 適用範囲 この基準は、火災予防条例準則第3条の4第1項第3号に規定する油脂を含む蒸気を発生させるおそれのある厨房設備の天蓋に設けるグリス除去装置について適用する。2 用語の定義 (1)グリスエクストラクター 通常の油を使用する調理において発生する油脂を含む蒸気の気流を縮流加速し、その遠心力で排気中に含まれる油脂及び塵埃等を排気ダクトに入る前に天蓋内部で分離除去するもので、自動洗浄機構を有する装置をいう。(2)その他のグリス除去装置 通常の油を使用する調理において発生する排気中に含まれる油脂分等を排気ダクトに入る前に天蓋内部で分離除去するもので、グリスエクストラクター以外のものをいう。
対象は天ぷらや炒めもののように油煙が出る厨房設備です。
その天蓋に設ける油脂除去の装置は、機械的に遠心力で油分を飛ばし自動で洗浄までするグリスエクストラクターと、フィルターなどで油分をこし取るその他グリス除去装置の2種類に分かれます。
呼び方が違っても、どちらも同じ第3号の「グリス除去装置」に含まれる点は共通しています。
逆に、排気ダクトを使わず天蓋から屋外へ直接排気する構造のものは、この装置自体を設けなくてよいとされています。
まずは自分の厨房の装置がどちらのタイプに当たるかを確認しましょう。

うちの換気扇の中、フィルターとグリスエクストラクター、どっちだったかな。

自動で洗浄までしてくれる機械式ならグリスエクストラクター、フィルターで濾すタイプならその他グリス除去装置です。

分離除去率と耐熱試験はどう決まっているのか

グリスエクストラクターとグリスフィルターの分離除去率を示すゲージと温度計を並べたイラスト
2つのタイプは、求められる分離除去率も試験の中身も別々です。
数字で見ると、その違いがはっきりします。
グリス除去装置の構造等の基準について(通知) 3 構造 (1)グリスエクストラクターの構造 ア 通常の油を使用する調理において発生する排気の気流を縮流加速し、その遠心力で排気中に含まれる油脂分等を排気ダクトに入る前に天蓋内部で90%以上分離除去するものであること。この場合、油脂分等を含む蒸気は、温度を270℃に保つように設定したアルミ製鍋に油及び水を1:3の割合で同時に滴下して発生させたものとする。(2)その他のグリス除去装置の構造 ア 通常の油を使用する調理において発生する排気中に含まれる油脂分等を、排気ダクトに入る前に天蓋内部で75%以上分離除去するものであること。(略)なお、グリスフィルターのうち、グリス付着率が10%以上のものにあっては、油脂分等が最大に付着した状態において、過度に温度が上昇した際に排気ダクト入口の温度が180℃に至るまで炎がダクトの入口までに至らないことを確認したものであること
求められる分離除去率は、装置の種類で15ポイント違います。
自動洗浄機構を持つグリスエクストラクターは90%以上、フィルターなどのその他グリス除去装置は75%以上とされ、どちらも同じ試験条件(270℃に保ったアルミ鍋に油と水を1:3で滴下)で確かめます。
その他グリス除去装置のうちグリス付着率が10%以上のフィルターには、さらに180℃までの耐熱試験が上乗せされます。
つまり、油が付着しやすいフィルターほど、火が回りにくいことまで確認されているということです。
どちらのタイプも、除去した油脂分を厨房設備側に滴下させない構造であることも共通の条件です。

90%と75%、たった15ポイントの差がそんなに大事なんですか。

その差を埋めるために、グリスエクストラクター側は自動洗浄機構が必須になっているんです。

実務で見落としやすいのはどこか

リース契約書とつながる装置に青いチェックマーク、単体で自動回収機構のない装置に赤い禁止マークを重ねたイラスト
数字だけを見ていると、細かい例外を見落とします。
特に多いのが、契約形態と単位表記の見落としです。
グリス除去装置の構造等の基準について(通知) (2)その他のグリス除去装置の構造 ウ 除去した油脂分等を自動的に回収できる機能を有し、かつ、容易に清掃ができる構造であること。ただし、リース等により適正な維持管理がなされると認められるものについては、この限りでない。オ 前エにかかわらず、セラミックを用いたグリスフィルターにおいては、前エのただし書きの耐熱性を有するとともに、通常の洗浄に使用される薬液中のアルカリ成分に対する耐食性を有し、かつ、曲げに対する100N/cm²以上の強度を有するものについては、前エと同等とみなすものであること。
見落としやすいのは「自動回収・清掃容易」という構造要件の例外です。
その他グリス除去装置は本来、油脂分を自動回収し容易に清掃できる構造が求められますが、リース等で維持管理されると認められるものは、この要件を満たさなくても差し支えないとされています。
つまり自前で買い取った装置か、業者のリース契約で保守されている装置かによって、求められる構造が変わるということです。
また、セラミック製グリスフィルターの強度は現在「100N/cm²以上」という表記に改められており、古い資料に残る「10kgf/cm²」という表記を見ても同じ基準だと気づけるようにしておく必要があります。
点検の場面では、装置の契約形態と、資料に書かれた単位の新旧まで確認すると見落としを防げます。

リースの装置に清掃機能が付いてなくて、大丈夫かと思ってました。

リース等で維持管理されているなら、その構造要件はこの限りでないとされているので問題ありません。

点検のときに明日から何を確認すればよいのか

点検用のクリップボードとグリス回収容器、グリス除去装置を並べたイラスト
明日からできることは、そう多くありません。
装置の種類と維持管理の実態を確認するだけです。
グリス除去装置の構造等の基準について(通知) ※グリス付着率〔%〕=グリス除去装置の付着量〔g〕÷(グリス回収容器回収量〔g〕+グリス除去装置の付着量〔g〕)×100
点検では、まず装置の種類とグリス付着率を確認します。
グリスエクストラクターなら自動洗浄機構が正常に働いているか、その他グリス除去装置ならグリス付着率が10%以上のフィルターかどうかを確認しましょう。
グリス付着率は、装置に付着した油脂の量を、回収容器の量と合わせた全体の量で割って求められる数値です。
自前の装置なら自動回収・清掃のしやすさを、リース契約の装置なら保守記録が残っているかを確認します。
天蓋・グリス除去装置・火炎伝送防止装置は容易に清掃できる構造であることが前提なので、清掃自体を怠らないようにしましょう。

点検のときは種類と付着率、それとリースかどうかを見ればいいんですね。

その3点を押さえておけば十分です。
あとは清掃を怠らないことですね。

よくある質問

Qグリスエクストラクターとグリスフィルターはどちらを選んでも問題ありませんか?
Aはい。どちらも火災予防条例(例)第3条の4第1項第3号の「グリス除去装置」に含まれ、基準を満たしていれば選択に問題はありません。ただしグリスエクストラクターは90%以上、グリスフィルター等は75%以上と求められる分離除去率が異なります。
Qグリス付着率はどうやって計算するのですか?
Aグリス除去装置に付着した油脂の量を、グリス回収容器の回収量とあわせた全体量で割り、100を掛けて求めます。この数値が10%以上のフィルターには、追加の耐熱試験が求められます。
Qリース契約のグリス除去装置には自動回収機能がなくてもよいのですか?
Aはい。その他グリス除去装置に求められる自動回収・清掃容易性の構造要件は、リース等により適正な維持管理がなされると認められるものについては適用されません。
Qセラミック製のグリスフィルターは鋼板製と同じ扱いになりますか?
A通常の洗浄薬液に対する耐食性と、曲げに対する100N/cm²以上の強度を満たしていれば、鋼板製と同等とみなされます。

まとめ

平成8年8月15日の消防予第162号通知で、グリス除去装置は分離除去率と試験条件を分けたグリスエクストラクターとその他グリス除去装置(グリスフィルター等)の2種類に整理されました
根拠は火災予防条例(例)第3条の4第1項第3号で、対象は油脂を含む蒸気を発生させるおそれのある厨房設備の天蓋です
グリスエクストラクターは90%以上の分離除去率と自動洗浄機構が求められます
その他グリス除去装置は75%以上の分離除去率でよい代わりに、条件付きで耐熱試験が追加されます
グリス付着率が10%以上のフィルターは、排気ダクト入口が180℃に達するまで着火しないことの確認が必要です
リース等で維持管理される装置は、自動回収・清掃容易性の構造要件を満たさなくても差し支えありません
セラミック製グリスフィルターは、耐食性と曲げ強度100N/cm²以上を満たせば鋼板製と同等とみなされます

うちの厨房の装置、どちらのタイプか自信を持って答えられそうです。

それが分かれば点検もスムーズです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • グリス除去装置の構造等の基準について(通知)(平成8年8月15日消防予第162号)
  • 火災予防条例(例)(昭和36年11月22日自消甲予発第73号、最終改正令和5年5月31日消防予第306号)第3条の4第1項第3号

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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