病院は、入院患者という多くの人が集まる施設です。
建築基準法別表第二(を)項は、工業地域に建ててはならない建築物を号ごとに列挙しています。
その中には、医療法上の病院も含まれています。
工業地域では、病院は用途そのものとして原則建築できません
工業地域の土地に病院を建てたいという相談を受けたのですが、用途地域の制限に引っかかりますか。
実は工業地域には、病院を建てられないという建築基準法上のルールがあります。
まず条文で仕組みを確認しましょう。
工場ばかりの地域だから、入院患者が過ごす施設は想定されていないということですか。
はい、別表第二(を)項第六号が、この規制を定めています。
順番に見ていきましょう。
- 工業地域では、建築基準法第48条第12項により別表第二(を)項に掲げる建築物は原則建てることができません。
- 同項第六号は、医療法上の病院を名指しして建築を禁止しています。
- 医療法は病院を「二十人以上の患者を入院させるための施設」と定義しています。
- 十九人以下の入院施設は診療所とされ、別表第二のどの項にも建築禁止の対象として掲げられていません。
- 例外的に建てる道は、特定行政庁の許可に限られます。
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目次
工業地域で病院が原則建てられないのはなぜか

建築基準法はこの趣旨に沿って、病院を名指しで規制しています。
建築基準法別表第二(を)項 工業地域内に建築してはならない建築物 六 病院
ホテルや旅館を定める第二号、学校を定める第五号と同じく、面積を問わず一律に禁止される点が特徴です。
工業地域は工場の操業環境を優先し、入院患者という要保護性の高い人が集まる施設を想定していない地域だからです。
第48条第12項は工業地域の全般規定で、病院以外にも(を)項が列挙する複数の用途を同じ条項でまとめて禁止しています。
次は、この号がいう「病院」の中身を確認しましょう。
病院という言葉には、クリニックや診療所も含まれますか。
いいえ、建築基準法上の病院は医療法の定義に従います。
次は医療法の定義を見ていきましょう。
医療法にいう「病院」とは具体的に何を指すのか

根拠を医療法にさかのぼって確認します。
二十人という患者数が、病院かどうかを分ける唯一の基準です。
診療科の種類や病床の種別(一般・療養・精神等)は、この定義には関係ありません。
建築基準法別表第二(を)項第六号の「病院」も、この医療法上の定義に従うものと整理できます。
次は、この定義の裏側にある「診療所」を確認しましょう。
入院施設が十九床しかない施設は、この号の対象になりませんか。
その施設は医療法上「病院」ではなく診療所に当たります。
次は診療所の扱いを見ていきましょう。
なぜ十九人以下の診療所は同じ号の対象にならないのか

別表第二を確認すると、診療所の扱いは病院と大きく異なります。
建築基準法別表第二(い)項 第一種低層住居専用地域内に建築することができる建築物 八 診療所
病院を禁止する(を)項をはじめ、他のどの項にも診療所を建築禁止の対象とする号はありません。
住宅や共同住宅と同じく、診療所はどの用途地域でも建築できる施設として扱われています。
つまり入院患者数を十九人以下に抑えた診療所は、病院として扱われる大規模な施設と違い、工業地域でも用途地域の制限を受けずに開設できます。
次は、この境界線をまたぐときの実務上の注意点を確認しましょう。
診療所なら、規模を気にせずどこでも建てられるということですか。
別表第二の用途規制は受けませんが、確認申請など他の手続きは別に必要です。
次は実務での注意点を見ていきましょう。
病床数を変更するときに実務で見落としやすいのはどこか

病床数を変える場面では、この境界をまたぐ手続きに注意が必要です。
十九床の診療所が一床でも増やして二十床に達すれば、医療法上の呼び名は病院に切り替わります。
工業地域に建つ診療所がこの意味での病院に該当することになれば、別表第二(を)項第六号との関係を改めて整理する必要が生じます。
逆に病院が病床数を減らしても、開設許可の枠組みを診療所へ切り替えない限り、医療法上は病院のままと考えられます。
次は、この境界線を踏まえて明日から確認すべき点を整理しましょう。
増床の計画があるときは、いつ確認すればよいですか。
増床で二十床に達する前の、計画段階での確認が欠かせません。
次は明日からの動き方を確認しましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

確認すべき点を整理します。
- 計画地が工業地域か工業専用地域かを、都市計画図で必ず確認する
- 現在または計画時点の入院病床数が十九以下か二十以上かを確認する
- 増床・減床の計画があれば、都道府県知事への許可手続きの要否を確認する
- 病院に該当する場合は、特定行政庁への事前相談も選択肢に入れる
都市計画図で工業地域か工業専用地域かを見極め、(を)項と(わ)項のどちらが適用されるかを判断します。
入院病床数が十九以下か二十以上かで、建築基準法上の扱いが診療所と病院のどちらになるかが決まります。
増床・減床の計画があれば、医療法上の許可手続きと合わせて建築基準法上の確認申請の要否も早めに整理します。
相談を受けたら、まず用途地域と入院病床数の両方を切り分けて確認しましょう。
用途地域と入院病床数、まずその2点を確認します。
はい、その2点が出発点です。
次はよくある質問を見ていきましょう。
よくある質問
まとめ
相談してくれた方には用途地域と入院病床数を確認するよう伝えてみます!
特定行政庁への相談も含めて、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第48条第12項(e-Gov法令検索)
- 建築基準法別表第二(を)項第六号・(い)項第八号・(わ)項第一号(e-Gov法令検索)
- 医療法第一条の五第1項・第2項(e-Gov法令検索)
- 医療法第七条第2項(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。該当性の判断や特例許可の可否は個別の内容によって異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁にご確認ください。





