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延べ面積が1,000平方メートルを超える木造の建物はなぜ外壁を防火構造にしなければならないのか|建築基準法第二十五条が定める大規模木造建築物の基準を解説

木造の大規模建築物の外壁に防火性能のある下地材を施工している建築現場

建物が大きくなるほど、火災が起きたときに周囲へ与える被害も大きくなります。
木造の建物は延べ面積が一定規模を超えると、外壁と屋根の造りにも国の基準がかかります。
この基準を知らずに増築や用途変更を進めると、あとから確認申請でつまずくことがあります。
今回は建築基準法第二十五条が定める大規模な木造建築物の外壁と屋根の基準を、条文から丁寧に解説します

うちのビルの隣に、木造の倉庫を増築しようかと考えているんですが
面積が大きくなると何か決まりがあるんでしょうか。

延べ面積が1,000平方メートルを超える木造の建物には
外壁や屋根の造りに国の基準がかかってきます。

木造だと火が回りやすいから、余計に厳しくなるんですね。
うちも敷地に建物が2つあるので確認しないと。

はい、同じ敷地内に木造の建物が複数あると
延べ面積を合算して判定する点も見落としやすいところです。

この記事の結論
  • 延べ面積が1,000平方メートルを超える木造の建物は、外壁と軒裏を防火構造にしなければなりません
  • 同じ敷地内に木造建築物等が複数あるときは、延べ面積を合算して判定します。
  • 屋根は、指定された区域の内外を問わず建築基準法第二十二条第一項の構造にしなければなりません。
  • 防火構造の外壁と軒裏には、30分間燃え抜けない性能が求められます
  • 増築や用途変更で延べ面積が基準を超える見込みができたときは、早めに設計者へ相談することが大切です。

延べ面積の大きな木造建築物の外壁防火構造化の基準を示す図解

なぜ延べ面積の大きな木造の建物には外壁の防火構造化が求められるのか

木造の建物の外壁に向かって炎から熱の波線が伸びている様子
延べ面積の大きな木造の建物ほど、火災が起きたときに周囲へ与える影響も大きくなります。
建築基準法は、一定規模を超える木造建築物等について、外壁と屋根の造りに特別な基準を課しています。
建築基準法第二十五条(大規模の木造建築物等の外壁等) 延べ面積(同一敷地内に二以上の木造建築物等がある場合においては、その延べ面積の合計)が1,000平方メートルを超える木造建築物等は、その外壁及び軒裏で延焼のおそれのある部分を防火構造とし、その屋根の構造を第二十二条第一項に規定する構造としなければならない。
延べ面積が1,000平方メートルを超える木造の建物には、外壁と屋根に特別な基準がかかります
第二十五条が対象にしているのは木造建築物等と呼ばれる建物で、主要な構造部分に木材やプラスチックなど燃えやすい材料を使ったものを指します。
建物の規模が大きくなるほど、外壁から燃え広がったときに周囲へ及ぼす被害も大きくなるため、通常の木造建築物より重い基準が課されています。
この基準は防火地域や準防火地域の指定の有無にかかわらず、延べ面積の要件を満たせば全国どこでも適用されます。
まずはどんな建物がこの基準の対象になるのか、次のセクションで具体的に確認します。

うちの倉庫は木造なんですが、面積が大きくなると何か特別な基準がかかるんでしょうか。

はい、延べ面積が1,000平方メートルを超える木造建築物等が対象です。
次のセクションで対象範囲を詳しく確認しましょう。

どんな建物がこの基準の対象になるのか

大小2棟の木造の建物が破線で囲まれた同じ敷地の中に並んでいる様子
基準の対象になるかどうかは、延べ面積が1,000平方メートルを超えるかどうかで決まります。
ただし、この延べ面積の数え方には注意が必要です。
建築基準法第二十五条(抜粋) 延べ面積(同一敷地内に二以上の木造建築物等がある場合においては、その延べ面積の合計)が1,000平方メートルを超える木造建築物等は(略)
建築基準法第二十三条(外壁・抜粋) (その主要構造部の第二十一条第一項の政令で定める部分が木材、プラスチックその他の可燃材料で造られたもの(第二十五条及び第六十一条第一項において「木造建築物等」という。)に限る。)
木造建築物等とは、柱やはりなど主要な構造部分に木材やプラスチックなど燃えやすい材料を使った建物のことです
延べ面積は建物1棟ごとに見るのではなく、同じ敷地内に木造建築物等が2つ以上あるときは、それらの延べ面積を合計して判定します。
たとえば主屋と倉庫が別棟であっても、同じ敷地内にあれば合計の延べ面積で1,000平方メートルの基準に当てはまるかどうかを見ることになります。
鉄骨造や鉄筋コンクリート造など、主要な構造部分が木材以外でできている建物はこの基準の対象になりません。
自分の建物が対象かどうかは、敷地内の建物すべての延べ面積を合算して確認することが出発点になります。

うちは同じ敷地に木造の主屋と倉庫が別々に建っているんですが
それぞれ別に判定していいんでしょうか。

いいえ、同じ敷地内の木造建築物等は延べ面積を合計して判定します。
主屋と倉庫を合わせた面積で確認してください。

具体的に何を防火構造にしなければならないのか

木造の建物の外壁・軒裏・屋根の3か所がそれぞれ異なる色で強調されている断面イラスト
対象になった建物は、外壁と軒裏、そして屋根の3か所に基準がかかります。
それぞれ求められる性能の中身が異なります。
建築基準法施行令第百八条(防火性能に関する技術的基準) 法第二条第八号の政令で定める技術的基準は、次に掲げるものとする。 一 耐力壁である外壁にあつては、これに建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後30分間構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであること。 二 外壁及び軒裏にあつては、これらに建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後30分間当該加熱面以外の面(屋内に面するものに限る。)の温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しないものであること。
外壁と軒裏には、30分間燃え抜けない性能が求められます
耐力壁である外壁は、通常の火災の熱を受けても30分間は変形や破壊が生じない性能が必要です。
外壁と軒裏はさらに、屋内側の表面温度が可燃物が燃え出す温度まで上がらないことも求められます。
屋根については、防火地域や準防火地域以外の市街地で指定される区域と同じ建築基準法第二十二条第一項の構造にしなければなりません。
外壁・軒裏・屋根という延焼の入り口になりやすい部分を、まとめて固めておく仕組みです。

屋根まで基準があるとは思っていませんでした。
壁だけの話じゃないんですね。

はい、外壁・軒裏・屋根の3か所がセットで基準の対象になります。
屋根だけ見落とすケースが実は多いんです。

実務で見落としやすいのはどこか

指定区域の内側と外側にそれぞれ木造の建物があり両方の屋根が同じ色で強調されている様子
この基準でとくに見落とされやすいのが、屋根の扱いです。
防火地域や準防火地域に指定されていない場所でも、対象から外れるとは限りません。
建築基準法第二十二条第一項(屋根・抜粋) 特定行政庁が防火地域及び準防火地域以外の市街地について指定する区域内にある建築物の屋根の構造は、通常の火災を想定した火の粉による建築物の火災の発生を防止するために屋根に必要とされる性能に関して建築物の構造及び用途の区分に応じて政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。
屋根の基準は、指定区域の内外を問わず一律に適用されます
第二十二条第一項がもともと定めているのは、特定行政庁が指定する区域内の屋根の基準です。
ところが第二十五条は、この区域指定の有無にかかわらず、延べ面積1,000平方メートルを超える木造建築物等の屋根に同じ構造を義務づけています。
つまり指定区域の外に建っている木造の建物でも、規模の要件を満たせば屋根の基準から逃れることはできません。
「指定区域外だから関係ない」という思い込みが、この基準では通用しない点に注意が必要です。

うちは屋根の指定区域には入っていないので、屋根の基準は関係ないと思っていました。

実はそこが見落としやすいところです。
指定区域の外でも、面積の要件を満たせば屋根の基準がかかります。

明日からなにを確認すればよいのか

図面を確認する点検員の隣に外壁と屋根が強調された木造の建物がある様子
ここまでの内容を踏まえて、実際に確認すべき手順を整理します。
自分の建物に当てはめながら、順番に見ていきましょう。
  • 敷地内にある木造建築物等の延べ面積をすべて合計し、1,000平方メートルを超えていないか確認する
  • 超えている場合は、外壁と軒裏が30分間の防火構造の基準を満たしているか設計図書で確認する
  • 屋根が建築基準法第二十二条第一項の構造になっているか、指定区域の内外にかかわらず確認する
  • 増築や別棟の新設で敷地内の延べ面積の合計が変わる見込みがあれば、着工前に建築士や特定行政庁へ相談する
  • 既存の建物を用途変更する場合も、延べ面積の合計が基準を超えていないか改めて確認する
手順はまず敷地内すべての木造建築物等の延べ面積を合計し、この基準の対象になるかどうかを確認することから始めます。
対象になる場合は、確認申請時の設計図書に外壁・軒裏・屋根の構造が記載されているかを確かめます。
増改築を予定しているときは、敷地内の延べ面積の合計が変わらないかを設計者に確認してください。

確認申請の図書、そういえば見たことなかったです。
今度確認してみます。

はい、まずは図書に外壁と屋根の構造が残っているかを見てみてください。
次によくある質問もあわせてご確認ください。

よくある質問

Q延べ面積がちょうど1,000平方メートルの場合はこの基準の対象になるのか?
A条文は「1,000平方メートルを超える」建物を対象としているため、ちょうど1,000平方メートルの建物は対象になりません。1平方メートルでも超えた時点で基準がかかります。
Q鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建物にもこの基準は関係あるのか?
Aこの基準の対象は、主要構造部に木材やプラスチックなど燃えやすい材料を使った木造建築物等に限られます。鉄骨造や鉄筋コンクリート造で可燃材料を使っていない建物には適用されません。
Q防火地域や準防火地域に指定されていない場所ならこの基準は関係ないのか?
A関係あります。第二十五条は防火地域や準防火地域の指定とは別に、延べ面積の要件だけで適用される基準です。指定区域外でも屋根まで基準の対象になります。
Q延べ面積が3,000平方メートルを超える場合はさらに基準が変わるのか?
Aはい。延べ面積が3,000平方メートルを超える木造建築物等には、建築基準法第二十一条第2項が定める別の基準(壁・柱・床その他の部分や防火設備の性能)も上乗せで適用されます。

まとめ

延べ面積(同一敷地内の合計)が1,000平方メートルを超える木造建築物等は、外壁と軒裏を防火構造にしなければなりません
対象になるのは、柱やはりなど主要構造部に木材やプラスチックなど燃えやすい材料を使った木造建築物等です。
同じ敷地内に木造建築物等が複数あるときは、延べ面積を合計して判定します。
防火構造の外壁と軒裏には、通常の火災の熱を受けても30分間耐える性能が求められます
屋根は、指定区域の内外を問わず建築基準法第二十二条第一項の構造にしなければなりません。
延べ面積が3,000平方メートルを超える場合は、第二十一条第2項が定める別の基準も適用されます。
増築や用途変更で延べ面積の合計が変わる見込みがあるときは、早めに建築士や特定行政庁へ相談することが大切です

敷地内の建物を合算して考える発想がありませんでした。
今度確認してみます!

こちらこそご相談ありがとうございます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第二十五条・第二十二条第一項・第二十三条(e-Gov法令検索)
  • 建築基準法施行令第百八条(e-Gov法令検索)

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署または建築主事にご確認ください。

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