「ガス系消火設備ならどこにでも置ける」
そう考えていないでしょうか。
二酸化炭素消火設備やハロゲン化物消火設備は、たしかに強力な消火設備です。
ただし消防庁の通達は、設置してよい場所そのものに条件を課しています。
立体駐車場の変圧器室に消火設備を検討しています。
二酸化炭素消火設備ならどんな部屋にも入れられますよね。
そこが誤解されやすい点です。
原則として不特定の者が出入りする場所には設置できません。
知りませんでした。
どんな条件があるのでしょうか。
5つの視点で順に見ていきましょう。
まずこの通達が出された背景から確認します。
- ガス系消火設備等(二酸化炭素消火設備・ハロゲン化物消火設備)の設置場所は、消防庁の通達で細かく条件づけられています
- 施行令第13条第1項は発電機室・変圧器室・ボイラー室・通信機器室・駐車の用に供する部分などを設置対象に定めています
- 通達は不特定の者が出入りするおそれのある場所への設置を原則として避けるよう求めています
- やむを得ず設置する場合は、開口部の自動閉鎖装置や空調設備との連動制御など十分な安全対策が必要です
- 消火後は有害物質を含む気体を安全な場所へ排出する措置も欠かせません
▼

目次
ガス系消火設備の設置場所はなぜ通達で見直されたのか

まず、この通達がなぜ改めて出されたのかを確認します。
ガス系消火設備はハロンの代替として開発された消火剤を使う設備の総称です。
消防庁は平成7年に基本的な取扱いを通知していましたが、その後の安全性に関する知見に加え、京都議定書が求める温室効果ガスの排出抑制の趣旨を踏まえ、留意事項を平成10年に改めてまとめました。
背景にあるのは、密閉した空間に大量のガスを放出するという設備そのものの性質です。
まずはこの設備がどんな部屋を対象にしているのかを見ていきます。
安全性の話だけでなく、環境の話も関係しているんですね。
そのとおりです。
両方の要請が今の留意事項につながっています。
どんな防火対象物のどの部分がガス系消火設備の対象になるのか

まずどんな部屋が対象になるのかを確認します。
発電機や変圧器などの電気設備がある部分は床面積200平方メートル以上、通信機器室は床面積500平方メートル以上で対象になります。
ボイラー室その他多量の火気を使用する部分も、同じく200平方メートル以上で対象です。
駐車の用に供する部分は、階の構造や車両の収容台数によって対象範囲が細かく分かれています。
どの部屋にも共通するのは、人が常駐せず、限られた作業のためだけに人が入る場所だという点です。
うちの通信機器室も対象になりそうです。
床面積で線引きされているんですね。
はい。
共通するのは人が常駐しない部屋だという点です。
設置場所と防護区画はどう決まるのか

設置してよい場所には、はっきりした原則があります。
発電機室や通信機器室のように、限られた人しか立ち入らない部屋を前提に設計されている設備だということです。
どうしても設置せざるを得ない場合は、音響警報装置や二十秒以上の遅延装置といった規則第19条の安全措置を上乗せする必要があります。
つまり設置場所を選べない事情があるほど、求められる安全対策は重くなります。
次は、実際に防護区画を作るときに見落としやすい点を確認します。
限られた人しか入らない前提で設計されているから、放出しても危険が抑えられるんですね。
そのとおりです。
設置場所を選べないほど安全対策は重くなります。
開口部や空調との連動で見落としやすいのはどこか

とくに開口部と連動制御は見落としやすいところです。
立体駐車場のように天井の高い区画で空気より重いガス系消火剤を使う場合、上部にガラリなどの開口部を設けると外気が流入し消火効果が落ちます。
シャッターのような大きな開口部は、自動閉鎖装置があっても必要以上に寸法を大きくしないことが求められます。
換気設備や火気使用設備も、放出と連動して止める設計でなければ意味がありません。
とくにガスタービン等の急停止が難しい機器は、専用ダクトを設けるなど個別の配慮が必要です。
シャッターは自動で閉まるから大丈夫だと思っていました。
閉まる速さと寸法も確認してください。
空調との連動もあわせて点検業者に確認しましょう。
明日から何を確認すればよいのか

設置場所を決めたあとも安全対策は続きます。
工事や整備の際は誤放出防止対策が欠かせません。
消火後に区画内の気体を排出する設備がある場合は、人が直接吸入するおそれのない安全な場所へ排出できる作りになっているかを確認します。
薬剤がHFC(代替フロン)であれば、回収・再利用・破壊による排出抑制も点検業者と一緒に確認してください。
設置場所の原則から維持管理まで、ひとつでも欠けると設備全体の安全性が下がることを覚えておきましょう。
HFCの回収まで確認するとは思っていませんでした。
点検業者に聞いてみます。
はい。
設置場所から廃棄まで一連の流れで確認するのが近道です。
よくある質問
まとめ
どこにでも置けるわけではないと分かって助かりました。
点検業者にも確認してみます。
不特定多数が出入りする場所かどうかだけは忘れないでください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- ガス系消火設備等の設置及び維持に係る留意事項について(通知)(平成10年7月17日付け消防予第116号 消防庁予防課長)
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第13条第1項
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第19条第4項
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





