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田園住居地域の店舗はなぜ農業と無関係でも150平方メートルまで建てられるのか|建築基準法別表第二(ち)項第五号の規制を解説

田園住居地域の店舗は農業と無関係でも百五十平方メートルまで建てられることを示すアイキャッチ

田園住居地域には、農産物を扱う店舗だけでなく、日用品店や食堂といったごく普通の店舗も建てられます。
建築基準法別表第二(ち)項は、四号で地域産の農産物を扱う店舗を認め、五号でそれ以外の一般的な店舗も別枠で認めています。
ところがこの五号が根拠とする施行令は、実は第二種低層住居専用地域とまったく同じ条文です。
田園住居地域の店舗規制を理解するには、四号と五号の違いと、五号が持つこの共通点の両方を押さえる必要があります

田園住居地域の土地に、農産物とは関係の無い普通のパン屋を出したいという相談があったのですが、建てられますか。

実は別表第二(ち)項第五号に、そうした一般的な店舗の規定があるんです。
まず条文で仕組みを確認しましょう。

農産物直売所を扱う四号とは、別の号になるんですね。

はい、面積の上限も異なります。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 田園住居地域では、建築基準法第48条第8項により別表第二(ち)項に掲げる建築物以外は原則建てられません。
  • 四号は地域産の農産物を扱う店舗、五号はそれ以外の一般的な店舗を、それぞれ別の上限面積で認めています
  • 五号の対象は、店舗・飲食店の用途に供する部分の床面積の合計が百五十平方メートル以内のものに限られます
  • 五号の対象業種は、施行令第百三十条の五の二が定める五つの類型に限定されます。
  • この政令は、実は第二種低層住居専用地域(ろ)項第二号ともまったく同じ条文です

田園住居地域の五号は日用品店や百五十平方メートルまでの店舗を認め第二種低層住居専用地域と共通の政令であることを示す図解

田園住居地域の店舗はなぜ二つの床面積基準を持つのか

農産物直売所を思わせる大きな店舗建物と隣に建つ一回り小さな店舗建物を対比したイラスト
田園住居地域で認められる店舗には、実は上限面積が異なる二つの号があります。
まず、その二つの号を並べて確認しましょう。
建築基準法別表第二(ち)項 四 地域で生産された農産物の販売を主たる目的とする店舗その他の農業の利便を増進するために必要な店舗、飲食店その他これらに類する用途に供するもののうち政令で定めるものでその用途に供する部分の床面積の合計が五百平方メートル以内のもの(三階以上の部分をその用途に供するものを除く。) 五 前号に掲げるもののほか、店舗、飲食店その他これらに類する用途に供するもののうち政令で定めるものでその用途に供する部分の床面積の合計が百五十平方メートル以内のもの(三階以上の部分をその用途に供するものを除く。)
四号は地域産の農産物を扱う店舗、五号はそれ以外の一般的な店舗を、それぞれ別枠で認めています
四号の上限は五百平方メートル、五号の上限は百五十平方メートルで、対象となる店舗の性格によって条文が分かれています。
四号は「地域で生産された農産物の販売を主たる目的とする店舗」が対象で、この号は既に別記事で扱いました。
今回はその四号に当たらない、一般的な日用品店や食堂などを対象にする五号を確認します。
次は、五号がどんな業種を対象にしているかを見ましょう。

農産物と関係が無い普通の店舗にも、ちゃんと出せる場所があったんですね。

はい、五号がその受け皿です。
次は対象業種を見てみましょう。

五号の百五十平方メートル以内の店舗にはどんな業種が当てはまるのか

食料品店と理容室と仕立て屋の店先が並ぶイラスト
五号の「政令で定めるもの」の中身は、施行令が具体的な業種で列挙しています。
条文を確認します。
建築基準法施行令第百三十条の五の二 法別表第二(ろ)項第二号及び(ち)項第五号の規定により政令で定める建築物は、次に掲げるものとする。 一 日用品の販売を主たる目的とする店舗又は食堂若しくは喫茶店 二 理髪店、美容院、クリーニング取次店、質屋、貸衣装屋、貸本屋その他これらに類するサービス業を営む店舗 三 洋服店、畳屋、建具屋、自転車店、家庭電気器具店その他これらに類するサービス業を営む店舗で作業場の床面積の合計が五十平方メートル以内のもの(略) 四 自家販売のために食品製造業を営むパン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋その他これらに類するもので作業場の床面積の合計が五十平方メートル以内のもの(略) 五 学習塾、華道教室、囲碁教室その他これらに類する施設
五号の対象業種は、施行令が定める五つの類型に限定されています
一号・二号は日用品店や理美容院のような、面積の制約が無いサービス業です。
三号・四号は職人的な製造業で、作業場の床面積が五十平方メートル以内かつ原動機の出力の合計が0.75キロワット以下という条件が付きます。
五号は学習塾や華道教室のような教室・稽古事の施設も対象に含まれています。
次は、これらの店舗が実際に占められる床面積の上限を確認しましょう。

理容室や学習塾まで含まれるんですね。
パン屋の店先も対象になるんですか。

はい、ただし作業場の面積と動力の条件があります。
次は面積の上限を見てみましょう。

三階以上の部分に店舗を出すとどうなるのか

1階に店先がある建物と3階に店先がある建物を対比したイラスト
四号・五号とも、条文の末尾に階数についての除外規定が付いています。
その部分を確認します。
建築基準法別表第二(ち)項五号(抜粋) 店舗、飲食店その他これらに類する用途に供するもののうち政令で定めるものでその用途に供する部分の床面積の合計が百五十平方メートル以内のもの(三階以上の部分をその用途に供するものを除く。
五号の店舗は、床面積の上限を満たしていても三階以上の部分には出せません
除外されるのは建物そのものではなく、店舗の用途に供する部分が三階以上にある場合です。
つまり建物自体が三階建て以上であっても、店舗部分が一階や二階にとどまっていれば五号の対象になります。
逆に一階部分の床面積が百五十平方メートル以内でも、店舗を三階に配置した時点で五号の対象外になります。
次は、この五号がなぜ他の用途地域と同じ条文になっているのかを確認しましょう。

一階の面積さえ収まれば、上の階に店舗を広げても大丈夫なんですか。

いいえ、店舗部分そのものが三階以上に無いことが条件です。
次は条文の出どころを見てみましょう。

なぜ五号と同じ条文が第二種低層住居専用地域にも使われているのか

農地に囲まれた店舗建物と住宅地に囲まれた同じ形の店舗建物を対比したイラスト
五号の根拠となる施行令の条文を確認すると、意外な共通点が見つかります。
条文を確認します。
建築基準法施行令第百三十条の五の二(抜粋) 法別表第二(ろ)項第二号及び(ち)項第五号の規定により政令で定める建築物は、次に掲げるものとする。
五号が根拠とする施行令は、第二種低層住居専用地域を定める(ろ)項第二号とまったく同じ条文です
(ろ)項第二号も「店舗、飲食店その他これらに類する用途に供するもののうち政令で定めるもので床面積の合計が百五十平方メートル以内のもの」という同一の文言を持ちます。
つまり田園住居地域の五号は、農業とは無関係な一般的な低層住宅地の店舗規制をそのまま持ち込んだものです。
一方、四号が根拠とする施行令第百三十条の九の四は田園住居地域だけの専用条文で、地域産の農産物を扱う店舗に限って定めています。
次は、この違いを踏まえて明日から何を確認すればよいかを整理します。

四号は田園住居地域だけの規定で、五号は他の地域と共通の規定だったんですね。

はい、そこが見落としやすい点です。
次は確認の手順を整理しましょう。

明日から何を確認すればよいのか

製図机の図面とチェックリストを持つ役所窓口のイラスト
田園住居地域で店舗の相談を受けたときは、どちらの号に当たるかの整理から始めます。
確認すべき点を整理します。
  • 計画中の店舗が、地域産の農産物の販売が主目的(四号・五百平方メートル)か、それ以外の一般的な店舗(五号・百五十平方メートル)かを整理する
  • 五号に当たる場合は、施行令第百三十条の五の二が定める五つの類型のどれに当たるかを確認する
  • 作業場を伴う業種は、床面積五十平方メートル以内・動力0.75キロワット以下の条件も確認する
  • 店舗の用途に供する部分が三階以上に無いかを確認する
号の区別と床面積、そして店舗部分の階数、この三点を初期段階で確認することが欠かせません
四号か五号かで上限面積が変わり、五号ではさらに業種ごとの細かい条件が加わります。
店舗の用途に供する部分が三階以上に無いかも、四号・五号のどちらでも共通して確認しましょう。
相談を受けたら、号の特定、業種と面積の確認、階数の確認という順で進めましょう。

号の区別と面積・階数、まとめて確認します。

はい、その三点が出発点です。
次はよくある質問を見ていきましょう。

よくある質問

Q田園住居地域で店舗を出すとき、必ず四号か五号のどちらかに当たりますか?
A別表第二(ち)項の一号から六号のいずれにも当たらない用途は、そもそも田園住居地域には建てられません。店舗・飲食店であれば、四号(地域産の農産物の販売)か五号(それ以外の一般的な店舗)のどちらに当たるかを確認する必要があります。
Q五号の店舗の業種は施行令に列挙されたもの以外は認められませんか?
A条文上は施行令第百三十条の五の二が列挙する五つの類型に限られます。それ以外の業種に当たるかどうかは、特定行政庁への個別の確認が必要です。
Q三号・四号の職人業に付く動力0.75キロワット以下とはどういう意味ですか?
A洋服店や畳屋などの作業場で使う原動機の出力の合計が、0.75キロワットを超えないことを指します。これを超えると五号の対象から外れます
Q五号の百五十平方メートルは店舗全体の床面積ですか?
A条文は「その用途に供する部分の床面積の合計」なので、建物全体ではなく店舗として使う部分の合計で判断します。

まとめ

田園住居地域では、建築基準法第48条第8項により別表第二(ち)項に掲げる建築物以外は原則建てられません。
四号は地域産の農産物を扱う店舗(五百平方メートル以内)、五号はそれ以外の一般的な店舗(百五十平方メートル以内)を、それぞれ別枠で認めています
五号の対象業種は、施行令第百三十条の五の二が定める五つの類型(日用品店・理美容院等・小規模な職人業・小規模な食品製造小売業・学習塾等)に限られます。
洋服店や食品製造小売の職人業には、作業場の床面積五十平方メートル以内・動力0.75キロワット以下という条件が付きます
四号・五号とも、店舗の用途に供する部分が三階以上にあるものは対象から除外されます
五号が根拠とする施行令第百三十条の五の二は、第二種低層住居専用地域(ろ)項第二号ともまったく同じ条文です
該当性の判断に迷ったときは、特定行政庁への確認が実務の起点になります。

相談してくれた方には号の区別と業種の条件を確認するよう伝えてみます!

特定行政庁への相談も含めて、㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第48条第8項(e-Gov法令検索)
  • 建築基準法別表第二(ち)項第四号・第五号、(ろ)項第二号(e-Gov法令検索)
  • 建築基準法施行令第百三十条の五の二・第百三十条の九の四(e-Gov法令検索)

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。該当性の判断は個別の内容によって異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁にご確認ください。

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