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関係者不在施設の防火安全対策ガイドラインはなぜ宿泊施設限定から全業態へ広がったのか|施設特性の確認から検証までの手順を解説

関係者不在施設の防火安全対策は なぜ全業態に拡大したのか

消防庁が「関係者不在施設における防火安全対策ガイドライン」をとりまとめたのは、令和8年3月27日、消防予第115号によってです。
去年までは宿泊施設だけを対象にした限定版のガイドラインでしたが、コンビニやカラオケボックス、フィットネスジムなど無人化が進む幅広い業態を包み込む形に作り直されました。
背景には、施設関係者が不在の間に火災が起きると初期消火や避難誘導が遅れ、大きな人的被害につながった過去の火災事例があります。
自分の施設が対象になるのかどうかを知るところから、防火安全対策の見直しは始まります。

うちは深夜、フロントに誰もいない時間があるんですが、これも消防の決まりに関係するんでしょうか。

はい、そういう施設のために消防庁が新しい関係者不在施設のガイドラインを出しました。
宿泊施設だけでなく業態を問わず使える内容です。

うちはコンビニなんですが、それでも対象になるんですか。

はい、営業時間の一部でも施設関係者が不在になる施設なら対象です。
まずは自分の施設の危険性を確認するところから始めましょう。

この記事の結論
  • 「関係者不在施設における防火安全対策ガイドライン」は消防予第115号(令和8年3月27日)でとりまとめられ、昨年度の宿泊施設限定版を統合・廃止しました
  • 対象は営業時間中に施設関係者が不在となる時間帯がある防火対象物で、業態を問いません
  • 防火安全対策は情報提供・平時の予防・応急対策・教育訓練・デジタル技術活用の5分類で消防計画に落とし込みます
  • 入退出管理で施錠された出入口は、火災時に速やかに解除する対策まで消防計画に定める必要があります
  • 対応行動が目標時間内に収まるか訓練で検証し、足りなければ設備や体制を充実・強化します

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関係者不在施設の防火安全対策ガイドラインの手順を示したインフォグラフィック

関係者不在施設の防火安全対策はなぜガイドラインとしてまとめ直されたのか

無人のホテル受付とセルフチェックイン端末を示したイメージ
インターネットカフェやカラオケボックス、宿泊施設では、関係者による初期消火や避難誘導が行われず被害が拡大した火災事例がありました。
消防庁はこの実態を受け、対象を宿泊施設だけに絞っていたガイドラインを全業態向けに作り直しています。
消防予第115号「関係者不在施設における防火安全対策ガイドラインについて」(令和8年3月27日) 過去の火災事例では、カラオケボックスや個室型店舗、宿泊施設において、関係者による初期消火や避難誘導が行われず、スプリンクラー設備も設置されていなかったケースで重大な被害が生じたものもあります。(略)本年度は、対象を拡大し、宿泊施設ガイドラインの内容を包含する形により、「関係者不在施設における防火安全対策ガイドライン」をとりまとめました。なお、「関係者不在の宿泊施設における防火安全対策ガイドライン」については、本通知をもって廃止します。
事故の教訓が土台になっています。
令和7年3月に出た宿泊施設限定版(消防予第135号)は、この通知をもって廃止・統合され、内容はまるごと新しいガイドラインに引き継がれました。
対象がコンビニやフィットネスジムにまで広がった背景には、労働人口減少で施設の無人化・省人化が進んでいる社会の動きがあります。
㈱防災屋のような専門家に相談する前に、まず自分の施設がこの通知の射程に入るかどうかを確認しておくと話が早く進みます。

うちは去年、宿泊施設向けのガイドラインを読んだ記憶があるんですが、もう古いんでしょうか。

はい、令和8年3月の通知で廃止・統合されました。
今後はこの新しいガイドラインだけを見れば大丈夫です。

どんな施設のどんな時間帯が対象になるのか

コンビニ・カラオケボックス・フィットネスジムが並ぶ施設群を示したイメージ
ガイドラインが対象にするのは、特定の業種ではなく施設の使われ方です。
インターネットカフェやコンビニ、貸し会議室からトレーニングジムまで、想定されている例は多岐にわたります。
消防予第115号 本ガイドラインは、消防法施行令別表第1に掲げる防火対象物のうち、営業時間中に施設関係者が不在となる時間帯があるものを対象とします。本ガイドラインにおいて、主に想定している関係者不在施設の例は、インターネットカフェ、カラオケボックス、ホテル・旅館、簡易宿所、民泊、コンビニエンスストア、冷凍食品販売店、屋内ゴルフ練習場、書店、衣料品店、貸し会議室、ワーキングブース、レンタル収納スペース、トレーニングジム、サウナなどです。
消防予第115号(注2) 小規模な施設であって、利用者が立ち入ることが想定される場所のすべてにおいて、安全な場所に通ずる避難口を容易に見通し、かつ、識別できるものについては対象外とします。
営業時間の一部でも施設関係者が不在になれば、業態を問わず対象です。
個室利用型施設は熱や煙が滞留しやすく、就寝を伴う施設は火災に気づきにくいなど、施設ごとに危険性の中身は違います。
一方で、避難口を利用者が容易に見通し識別できる小規模な施設は、この基準の対象外とされています。
関係者が不在にならないまでも省人化を進めている施設についても、本ガイドラインに準じた対策を講じるよう求められています。

業種で決まるんじゃなくて、無人になる時間があるかどうかなんですね。

そのとおりです。
次に、対策がどう整理されているかを見ていきましょう。

防火安全対策はどんな5分類で消防計画に落とし込むのか

遠隔監視カメラとデジタルサイネージ、非常放送スピーカーを示したイメージ
まず表1で施設の危険性を確認し、その結果に応じた対策を消防計画に取り入れる、という流れになっています。
対策そのものは5つの分野に整理されています。
消防予第115号 関係者不在施設において、一般的な防火安全対策に加え、その特性に応じて、火災時の利用者等の安全を守るため、特に対策を講じることが必要な内容を以下の⑴~⑸に示します。
5分類は利用者への情報提供・平時の火災予防・火災発生時の応急対策・教育訓練・デジタル技術活用です。
利用者への情報提供では、施設関係者が不在になる旨を利用開始前と利用開始時の両方で周知するよう求められています。
応急対策はさらに早期覚知と通報・避難誘導・初期消火・消防隊への情報提供の4項目に分かれ、施設側の自衛消防と利用者側の行動の両方が示されています。
遠隔監視カメラや自動火災報知設備と連動したデジタルサイネージなど、デジタル技術の活用もこの5分類の一つとして位置づけられています。

5分類も全部やるとなると、うちの規模では大変そうです。

表1で確認した危険性の程度に応じて、必要な対策だけを選べます。
チェックが多い項目ほど手厚くすればよい仕組みです。

実務で見落としやすいのはどこか

キーパッド錠のドアと火災受信機、スプリンクラーヘッドを示したイメージ
セキュリティ機器で施錠された出入口と、スプリンクラー設備の扱いの2点が特に見落とされやすい部分です。
どちらも消防計画に定める内容そのものに関わります。
消防予第115号 入退出管理用のセキュリティ機器により出入口が施錠されている場合、火災が発生した際に出入口の施錠を速やかに解除する対策を講じましょう。自動火災報知設備と連動して施錠を解除する方法等があります。
消防予第115号(注5・注6) 施設全体にスプリンクラー設備が設置されている場合や、消防法施行規則第12条の2及び第13条の規定によりスプリンクラー設備の設置を要しない構造に該当する場合、目標時間の検証の対象外とします。対象外となる施設であっても、消防法施行規則第3条に基づき定期的に消火、通報及び避難の訓練を実施する必要があります。
入退出管理のセキュリティは、防犯だけでなく避難の妨げにもなります。
トレーニングジムや貸し会議室のようにカード錠や暗証番号で出入口が管理されている施設では、自動火災報知設備と連動した解錠まで消防計画に盛り込む必要があります。
スプリンクラー設備があれば目標時間の検証そのものは対象外になりますが、消防法施行規則第3条が求める消火・通報・避難の訓練義務までは免除されません。
「設備があるから安心」と「訓練が不要」を混同しないことが、この通知を読むときのポイントです。

スプリンクラーが付いていれば、もう訓練はしなくていいと思っていました。

検証は対象外でも、訓練そのものは別の条文で義務づけられています。
ここを混同する事業者さんは多いです。

明日から何をどう確認すればよいのか

ストップウォッチとチェックリスト、避難口の扉を示したイメージ
ガイドラインは施設の危険性確認から消防計画への反映まで、①から⑥の手順で使う設計になっています。
中でも実際に体を動かして確かめる検証の考え方を押さえておきましょう。
消防予第115号 一般的に火災発生の際に感知器が作動してから早ければ2分程度で、出火室は盛期火災に至るおそれがあるとされています。盛期火災に至るまでに、利用者を安全な場所(屋外、避難階段等)まで避難させることができるか確認しましょう。
確認は危険性の把握・対策の検討・消防計画への反映・訓練での検証の順に進めます。
①施設の特性と火災危険性の確認、②防火安全対策の検討、③消防計画の作成・変更、④訓練・検証、⑤対策の充実・強化、⑥充実・強化した内容の消防計画への反映という6段階がガイドラインの示す手順です。
検証では、感知器作動から出火室が盛期火災に至るまでの約120秒(2分程度)から、避難口までの歩行時間を差し引いて目標時間を求めます。
避難口までの歩行距離が20メートルの施設なら、毎秒1メートルで歩いて20秒かかるため、対応行動に使える目標時間は残りの100秒という計算になり、実際の訓練でこの時間内に収まるかを確かめます。

感覚じゃなくて、秒数で目標を決めて訓練するということですね。

そのとおりです。
目標時間に収まらなければ、設備や体制を見直しましょう。

よくある質問

Q小規模な施設もこのガイドラインの対象になるのか?
A利用者が避難口を容易に見通し識別できる小規模な施設は対象外です。それ以外は業態を問わず対象になります。
Q去年までの宿泊施設向けガイドラインはどうなるのか?
A令和7年3月28日付けの消防予第135号は、今回の通知をもって廃止され、内容は新しいガイドラインに統合されました。
Qスプリンクラー設備があれば何もしなくてよいのか?
A目標時間の検証からは外れますが、消防法施行規則第3条が求める消火・通報・避難の訓練そのものは引き続き必要です。
Q目標時間はどうやって決めるのか?
A感知器作動から盛期火災に至るまでの時間から、避難口までの歩行時間を差し引いて求めます。実際の訓練で対応行動が収まるか確かめます。

まとめ

✔ガイドラインは消防予第115号(令和8年3月27日)で公表され、令和7年度の宿泊施設限定版(消防予第135号)を統合・廃止しました
✔対象は営業時間中に施設関係者が不在となる時間帯がある防火対象物で、避難口を容易に見通せる小規模施設は対象外です
✔まず表1で出火危険・延焼危険・火災覚知の遅れ・避難困難の4つの観点から施設の危険性を確認します
✔防火安全対策は利用者への情報提供・平時の火災予防・火災発生時の応急対策・教育訓練・デジタル技術活用の5分類で消防計画に落とし込みます
✔入退出管理用のセキュリティ機器で施錠された出入口は、火災時に速やかに解除する対策まで定めます
✔スプリンクラー設備が設置されている場合などは検証の対象外ですが、消防法施行規則第3条に基づく訓練そのものは免除されません
✔対応行動が目標時間内に完了できるかを訓練で検証し、完了できなければ常駐勤務者の配置や遠隔移報装置の導入など設備・体制を充実・強化します

関係者不在施設の対策がよく分かりました。

危険性の確認と5分類の対策、そして訓練による検証まで一緒に進めましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 関係者不在施設における防火安全対策ガイドラインについて(令和8年3月27日 消防予第115号 消防庁予防課長)
  • 関係者不在の宿泊施設における防火安全対策ガイドラインについて(令和7年3月28日 消防予第135号 消防庁予防課長)※令和8年3月27日付け消防予第115号により廃止
  • 消防法第8条、第25条
  • 消防法施行規則第3条、第12条の2、第13条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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