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エレベーターの構造上主要な部分はどんな基準で作られているのか|建築基準法施行令第129条の4が定める摩損・疲労破壊への対策を解説

エレベーターの主要な支持部分はどう守られているのか

エレベーターは、かごを吊り上げるワイヤーロープや、それを支える金具など、目に見えない部分が壊れれば重大事故に直結する設備です。
このためエレベーターの「構造上主要な部分」には、通常の使用で生じる摩損や疲労破壊、そして地震への備えまで、細かな基準が定められています。
建築基準法施行令第129条の4は、かごとそれを支え吊る部分について、設計段階でどう安全性を確かめるかを定めた条文です。
支持部分を二重化する仕組みや、腐食・地震への対策まで、条文が求める中身を確認していきます。

エレベーターの点検報告書に「主要な支持部分」という言葉が出てくるんですが、具体的にどこを指しているんでしょうか。

主要な支持部分とは、建築基準法施行令第129条の4が定める、かごとそれを支え吊る構造のことです。
単にロープが太ければよいという話ではありません。

どんな基準で安全性を確かめているのか、教えてください。

摩損や疲労破壊への備え方、そして地震対策まで、順番に確認していきましょう。

この記事の結論
  • エレベーターのかごと主要な支持部分の構造は、施行令第129条の4第1項が定める国土交通大臣が定めた構造方法・エレベーター強度検証法・大臣認定のいずれかで安全性を確かめなければなりません。
  • 主索で吊るエレベーターや油圧エレベーターなどはエレベーター強度検証法で確かめる対象になります。
  • 摩損や疲労破壊のおそれがある支持部分は、二以上の部分で構成し、それぞれが独立してかごを支えられる構造にしなければなりません。
  • 腐食や腐朽のおそれがある部分にはさび止めや防腐の措置が必要です。
  • 地震その他の震動によって接合部の外れ・索の脱落・釣合おもりの落下が起きないようにする構造方法も、あわせて定められています。

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エレベーターの主要な支持部分に求められる4つの備えを示した図解

エレベーターの「構造上主要な部分」とはどこを指すのか

エレベーターのかごをワイヤーロープでシーブから吊り下げている断面
エレベーターは、かごをワイヤーロープで吊り上げ、シーブ(滑車)を介して上下させる仕組みが一般的です。
このかごとそれを支え吊る部分こそが、建築基準法施行令が言う「主要な支持部分」です。
(建築基準法施行令第129条の4第1項柱書)エレベーターのかご及びかごを支え、又は吊つる構造上主要な部分(以下この条において「主要な支持部分」という。)の構造は、次の各号のいずれかに適合するものとしなければならない。
主要な支持部分とは、かごとそれを支え吊る構造そのものを指します。
条文上は「かご及びかごを支え、又は吊つる構造上主要な部分」とだけ定義されており、具体的な部材名までは列挙されていません。
実務ではワイヤーロープやシーブなど、破損するとかごの落下に直結する部材がこれに当たります。
主要な支持部分は、次に掲げるいずれかの基準に適合しなければ設置できません。
どんな基準で確かめるのか、次から具体的に見ていきます。

主要な支持部分というのは、ロープだけを指すんでしょうか。

いいえ、ロープだけでなくそれを支え吊る金具や構造全体を指します。
次はどんな基準で確かめるのかを見ていきましょう。

主要な支持部分の強度はどうやって確かめるのか

主索で吊るロープ式エレベーターと油圧シリンダーで支える油圧式エレベーターの対比
施行令第129条の4第1項は、主要な支持部分の安全性を確かめる方法を3つ定めています。
どの方法を使うかは、エレベーターの型式によって変わります。
(建築基準法施行令第129条の4第1項)一 設置時及び使用時のかご及び主要な支持部分の構造が、次に掲げる基準に適合するものとして、通常の使用状態における摩損及び疲労破壊を考慮して国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものであること(イ・ロ略)。二 かごを主索で吊つるエレベーター、油圧エレベーターその他国土交通大臣が定めるエレベーターにあつては、設置時及び使用時のかご及び主要な支持部分の構造が、通常の使用状態における摩損及び疲労破壊を考慮したエレベーター強度検証法により、前号イ及びロに掲げる基準に適合するものであることについて確かめられたものであること。三 設置時及び使用時のかご及び主要な支持部分の構造が、それぞれ第一号イ及びロに掲げる基準に適合することについて、通常の使用状態における摩損又は疲労破壊を考慮して行う国土交通大臣の認定を受けたものであること。
主要な支持部分の安全性は、3つのルートのどれかで確かめます。
第1号は個別の部材ごとに国土交通大臣が定めた構造方法を用いる基本ルートです。
第2号は主索で吊るロープ式エレベーターや油圧エレベーターなど国土交通大臣が定める型式が対象で、エレベーター強度検証法という計算方法で確かめます。
第3号はあらかじめ国土交通大臣の認定を受ける方法で、個別の構造計算を省略できます。
自分の建物のエレベーターがどのルートで確認されているかは、保守点検報告書や設計図書で確認できます。

自分の建物のエレベーターが、どのルートで確かめられているかなんて分かるんでしょうか。

保守点検報告書や設置時の検査済証の記載を確認すれば分かります。
迷ったら保守会社に確認するのが確実です。

主要な支持部分にはどんな追加の基準が求められるのか

かごの上部に取り付けられた二本の独立したワイヤーロープ
施行令第129条の4第3項は、第1項・第2項の確認方法とは別に、主要な支持部分そのものが満たすべき基準を定めています。
腐食対策から地震対策まで、7つの基準が並びます。
(建築基準法施行令第129条の4第3項)前二項に定めるもののほか、エレベーターのかご及び主要な支持部分の構造は、次に掲げる基準に適合するものとしなければならない。一 エレベーターのかご及び主要な支持部分のうち、腐食又は腐朽のおそれのあるものにあつては、腐食若しくは腐朽しにくい材料を用いるか、又は有効なさび止め若しくは防腐のための措置を講じたものであること。二 主要な支持部分のうち、摩損又は疲労破壊を生ずるおそれのあるものにあつては、二以上の部分で構成され、かつ、それぞれが独立してかごを支え、又は吊つることができるものであること。三 滑節構造とした接合部にあつては、地震その他の震動によつて外れるおそれがないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものであること。四 滑車を使用してかごを吊つるエレベーターにあつては、地震その他の震動によつて索が滑車から外れるおそれがないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものであること。五 釣合おもりを用いるエレベーターにあつては、地震その他の震動によつて釣合おもりが脱落するおそれがないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものであること。六 国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算により地震その他の震動に対して構造耐力上安全であることが確かめられたものであること。七 屋外に設けるエレベーターで昇降路の壁の全部又は一部を有しないものにあつては、国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算により風圧に対して構造耐力上安全であることが確かめられたものであること。
この3項が求める中心は、腐食対策と支持部分の二重化です。
第1号は腐食・腐朽への備えで、腐食しにくい材料を選ぶかさび止め・防腐の措置を講じるかのいずれかを求めています。
第2号は摩損・疲労破壊のおそれがある部分の二重化で、独立してかごを支えられる部分を二以上にする決まりです。
第3号から第7号は地震その他の震動への備えで、接合部の外れ・索の滑車からの脱落・釣合おもりの落下を個別に防ぐほか、構造計算による耐震性・耐風圧性の確認も求めています。
どれか一つでも欠けると、条文の基準は満たせません。

支持部分を二重化するというのは、ロープを2本にすればいいということですか。

それだけではなく、それぞれが独立してかごを支えられる構造であることが条件です。
次は実務で見落としやすい注意点を見ていきましょう。

実務で見落としやすいのはどこか

錆びた支持金具と防錆処理された金具の対比
支持部分を二重化していれば、それだけで安全というわけではありません。
施行令はさらに踏み込んだ確認方法を定めています。
(建築基準法施行令第129条の4第2項第4号)次項第二号に基づき設けられる独立してかごを支え、又は吊つることができる部分について、その一がないものとして第一号及び第二号に定めるところにより計算した各応力度が、当該部分の材料の破壊強度を限界安全率(エレベーターの設置時及び使用時の別に応じて、当該部分にかごの落下をもたらすような損傷が生じないように材料の摩損又は疲労破壊による強度の低下を考慮して国土交通大臣が定めた数値をいう。)で除して求めた限界の許容応力度を超えないことを確かめること。
二重化された支持部分は、それぞれが単独でも基準を満たさなければなりません。
条文は「その一がないものとして」計算するよう求めており、片方が失われても残りの部分だけでかごを支えられることを確かめる仕組みです。
つまり二本のロープで支えているから安全という理解だけでは足りません。
また腐食や地震対策は日常点検で確認しにくい部分でもあり、錆や接合部の緩みは定期点検の記録を確認しないと見落としやすい点です。
支持部分は目視だけでは点検しきれないため、専門業者による保守点検が欠かせません。

ロープが2本あれば、片方が切れても大丈夫ということですね。

残った一本だけでも基準を満たす構造であることが条件です。
本数だけでなく、それぞれの強度も確かめられています。

明日からなにを確認すればよいのか

点検記録簿と小さなエレベーターシャフトのアイコン
自分の建物のエレベーターが基準を満たしているかどうかは、次の手順で確認すると整理しやすくなります。
保守点検の契約や記録を見直す際にも役立ちます。
  • エレベーターがロープ式か油圧式かなど、型式を確認する
  • 主要な支持部分がどの方法(構造方法・強度検証法・大臣認定)で確かめられているかを設計図書や検査済証で確認する
  • 支持部分が二重化され、それぞれ独立してかごを支えられる構造かを保守点検報告書で確認する
  • 腐食・腐朽のおそれがある部分にさび止めや防腐の措置が講じられているかを確認する
  • 接合部や索の地震対策が保守点検の記録に含まれているかを確認する
  • 屋外設置のエレベーターは耐風圧性の確認結果もあわせて記録されているかを確認する
これらは専門的な計算を伴うため、点検はエレベーター保守会社に任せ、記録の有無を管理者側が確認する形が現実的です。
気になる点があれば、早めに保守会社や特定行政庁へ相談することをおすすめします。

支持部分の中身まで自分で計算するのは難しそうです。

計算は保守会社や専門家に任せて構いません。
記録が残っているかを確認することが管理者の役割です。

よくある質問

Q主要な支持部分とは、具体的にエレベーターのどの部品を指すのか?
Aかごそのものと、それを支え吊るワイヤーロープ・シーブ・金具など、かごの落下に直結する構造部分を指します。部材の名称までは条文に列挙されていません。
Qロープを2本にしておけば、それだけで基準を満たしたことになるのか?
Aいいえ。それぞれが独立してかごを支えられることまで確かめる必要があり、本数をそろえただけでは足りません。
Q古いエレベーターも、この基準を今から満たす必要があるのか?
A設置時点の基準が適用されるのが原則ですが、保守点検で腐食や損傷の有無を継続して確認する必要があります。老朽化が疑われる場合は保守会社に相談してください。
Q屋外に設置されたエレベーターだけに適用される基準はあるのか?
Aはい。昇降路の壁の全部又は一部を有しない屋外設置のエレベーターには、風圧に対する構造計算の確認が別途求められます。

まとめ

✔エレベーターのかごと主要な支持部分の構造は、施行令第129条の4第1項が定める3つのルートのいずれかで安全性を確かめなければなりません。
✔主索で吊るエレベーターや油圧エレベーターなどはエレベーター強度検証法で確かめる対象です。
✔摩損・疲労破壊のおそれがある支持部分は、二以上の部分で構成し、それぞれが独立してかごを支えられる構造にしなければなりません。
✔腐食・腐朽のおそれがある部分にはさび止めや防腐の措置が必要です。
✔地震その他の震動によって接合部の外れ・索の脱落・釣合おもりの落下が起きないようにする構造方法も定められています。
✔二重化された支持部分は、その一がないものとして計算しても基準を満たす必要があります。
✔保守点検の記録を確認し、専門業者に相談することが実務での確認の近道です。

主要な支持部分が二重化と地震対策まで求められていること、よく分かりました。
保守点検の記録を確認してみます!

こちらこそご相談ありがとうございます。
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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第129条の4第1項
  • 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第129条の4第2項第4号
  • 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第129条の4第3項

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の建物への適用や保守点検の判断は建物ごとに異なる場合があります。個別の判断は特定行政庁又はエレベーター保守会社にご確認ください。

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