地震後の館内確認で、配管が壁を貫通する部分のモルタルやシール材にひびが入っていることがあります。
小さな割れなら市販の材料で埋めればよさそうに見えますが、防火区画の貫通部は壁・管・充填材を組み合わせて火や煙の広がりを抑える部分です。
材料だけを選んで表面をふさぐと、既存の工法や大臣認定の仕様から外れるおそれがあります。
BCPでは触る前に場所と損傷を記録し、区画の仕様を特定してから復旧する手順を決めます。
配管まわりにひびがあります。
シーリング材で埋めたらええですか?
先に既存の貫通処理の仕様を確認してください。
表面だけのひびでもですか?
奥の空隙や脱落まで見て判断します。
- ひびを見つけても市販材ですぐ埋めません
- 場所、管、壁、損傷範囲を補修前に記録します
- 竣工図と認定仕様から既存工法を特定します
- 復旧まで立入管理と火気管理を強めます
- 施工後は外観と記録を再確認してBCPへ反映します
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目次
地震後のひびを市販のシーリング材で埋めてよいのか

材料と施工範囲を確認する前に、施設側の判断だけで埋め直しません。
建築基準法施行令第百十二条第二十項は、給水管や配電管などが防火区画を貫通する場合、その管と区画との隙間をモルタルなどの不燃材料で埋めることを求めています。
一方、樹脂管やケーブルを含む貫通処理には、国土交通大臣認定を受けた工法が使われている場合があります。
この場合は管の種類、径、壁の構成、開口寸法、充填材、厚さ、施工順序を組み合わせて性能が確認されています。
見えているひびだけへ別の材料を足すと、既存仕様を確認できなくなるおそれがあります。
まず補修前の写真を残し、竣工図、施工要領書、認定番号、改修記録を集め、建築士や施工業者へ復旧方法を確認します。
不燃と書いた材料なら使えますか?
材料名だけでなく、壁・管・施工方法の組合せを確認します。
どの壁と床の貫通部を確認対象にするのか

防火区画を構成する壁と床を貫く配管、電線管、ケーブルの周囲を確認します。
対象は階段室や竪穴、異なる用途や面積を区切る壁・床、界壁などに設けた貫通部です。
機械室、電気室、天井裏、パイプシャフトの内部は見えにくく、地震後の巡回から抜けやすい場所です。
- 配管と壁の間にひび、隙間、脱落がないか
- 管や支持金物が動き、充填部を押していないか
- 壁や床そのものに割れ、欠け、変形がないか
- 認定表示や施工済みラベルを確認できるか
- 天井裏やシャフト内に同じ系統の損傷がないか
国土交通省の官庁施設向け保全資料でも、区画貫通部は充填処理の状態と、部材や接合部の穴・破損を確認する対象です。
見える面だけでなく、管の反対側、天井裏、床下、隣接する支持部まで一つの貫通部として確認します。
同じ工法が連続して使われている場合は、同一階や同じ設備系統へ横展開して点検します。
見えている一面だけで足りますか?
いいえ。
裏側と同じ系統も確認します。
発見から区画復旧までどう進めるのか

安全確保、記録、仕様特定、復旧、再確認の順で進めます。
崩れた充填材が落下する場所や避難動線に近い場所は、先に人を離して立入範囲を決めます。
清掃や補修を始める前に、全景、壁の両面、管、支持金物、ひびの範囲を写真へ残します。
- 周囲を立入管理し、落下物と火気を遠ざける
- 階、室名、貫通部番号、発見時刻を記録する
- 壁の両面、管、支持部、損傷範囲を撮影する
- 竣工図、認定表示、施工要領書から既存工法を特定する
- 建築士や施工業者と復旧材料と施工範囲を決める
- 施工後に穴、破損、隙間、支持状態を再確認する
- 補修記録と業務再開条件を消防計画とBCPへ反映する
粉じん、熱、臭気、騒音を伴う工事は、在館者と他設備への影響を確認して実施します。
復旧まで時間がかかる場合は、区画に頼る運用を見直し、火気使用の停止、可燃物の移動、巡回強化などを決めます。
補修後は表面が滑らかかだけでなく、指定された材料、深さ、支持、開口寸法、表示、写真を施工記録と照合します。
先に崩れた部分を掃除してええですか?
待ってください。
補修前の状態を先に記録します。
小さなひびと表面補修で何を見落とすのか

ひびの幅だけでは、区画機能への影響を判断できません。
表面の細い割れでも、奥で充填材が管から離れたり、裏側が脱落したりしていることがあります。
反対に、仕上げ層だけの割れに見えても、壁自体の変形や管の移動が原因なら、先に構造と支持を確認する必要があります。
補修材を上から塗ると、元の材料、認定表示、空隙の範囲を隠し、後の調査を難しくすることがあります。
配管の保温材、樹脂管、ケーブル束、スリーブ、支持金物が変わっていれば、竣工時と同じ条件ではありません。
見た目を整えることと区画機能を復旧することを分け、写真と施工記録で根拠を残すことが大切です。
細いひびなら営業を続けられますか?
幅だけで決めず、奥行きと周囲の変形まで確認します。
明日から貫通部の異常にどう備えるのか

貫通部番号と既存仕様を、平常時から図面と現場で対応させます。
防火区画図へ貫通部番号を記入し、壁の種類、管種、径、認定番号、施工会社、点検口の位置を一覧にします。
正常時の両面写真と接写を残しておけば、地震後に変化を比べられます。
- 防火区画図と現場の貫通部番号を対応させる
- 壁、床、管、充填材、認定番号を台帳へ記録する
- 正常時の全景、両面、接写を保存する
- 地震後に触れてよい範囲と立入管理を決める
- 夜間と休日の建築士、施工業者への連絡先を更新する
- 復旧までの火気管理、巡回、可燃物移動を決める
- 施工後の再確認と記録保存を訓練する
内閣府の事業継続ガイドラインは、重要業務に必要な要素を抽出し、代替手段と復旧手順を用意する考え方を示しています。
貫通部についても、点検できる人、図面の保管先、補修を依頼する先、復旧までの代替措置を一つの流れにします。
訓練では番号の特定、写真送付、仕様確認、立入管理まで行い、消防計画とBCPの役割分担を確かめます。
改修工事で新しい貫通部が増えたら、台帳と正常時写真を同時に更新します。
平常時の写真が比較基準になるんですね。
はい。
番号・仕様・写真を一組で残します。
よくある質問
まとめ
貫通部番号と正常時写真をそろえます!
仕様・復旧・業務再開までつなげましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- e-Gov法令検索 建築基準法施行令第百十二条および第百二十九条の二の四
- 国土交通省 建築物点検マニュアル 防火区画貫通処理
- 国土交通省 公共建築工事標準仕様書 配管の防火区画貫通部施工要領
- 国土交通省 防火区画貫通部に関する大臣認定の不適合施工と対応
- 内閣府 事業継続ガイドライン
※本記事は建築基準法施行令、国土交通省および内閣府の公表資料に基づく一般的な解説です。必要な材料、施工範囲、認定仕様、点検方法、代替措置、使用制限、業務再開の条件は壁や管の仕様と施設の状況で異なります。実際の調査、補修、使用制限、業務再開は管理権原者、防火管理者、建築士、施工業者、特定行政庁、所轄消防署へご確認ください。





