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救命入門コースはなぜ90分で完結するのか|対象年齢と参加証の違いを解説

救命入門コースの90分講習と参加証を解説するアイキャッチ画像

事業所や学校では、従業員や生徒に応急手当を学んでもらいたくても、通常の救命講習は180分かかり、時間の確保が難しいことがあります。
そこで消防庁は、平成23年8月31日の実施要綱改正で、90分で完結する「救命入門コース」という短時間の講習を新設しました。
対象年齢も小学生中高学年(概ね10歳)以上に広げられ、普通救命講習より気軽に受けられる入り口として位置づけられています。
ただし救命入門コースの参加証は普通救命講習の修了証とは別物で、そのまま従業員研修の修了実績として扱えるとは限りません。

うちの会社でも救命講習をしたいのですが、みんな忙しくてなかなか時間が取れません。

90分で終わる救命入門コースという選択肢があります。
順番に見ていきましょう。

90分なら業務の合間にも受けられそうです。

ただし普通救命講習とは別物という点に注意が必要です。
まずは新設の経緯から確認しましょう。

この記事の結論
  • 救命入門コースは、平成23年8月31日消防救第239号による実施要綱改正で新設された90分の講習です。
  • 対象年齢は小学生中高学年(概ね10歳)以上に広げられ、希望する人であれば誰でも受講できます。
  • カリキュラムは胸骨圧迫とAEDの取扱いが中心で、異物除去法や止血法は含まれません。
  • 指導は応急手当指導員または応急手当普及員が行います。
  • 参加証は普通救命講習の修了証とは別物で、消防長印は押されません。

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救命入門コース90分のカリキュラムと参加証を示す図解

なぜ実施要綱に救命入門コースが追加されたのか

180分の従来講習に参加できず困る人を示すイラスト
従来の普通救命講習は180分(3時間)が標準で、忙しい市民には参加のハードルになっていました。
この課題に応えたのが、平成23年の実施要綱改正です。
(応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱の一部改正に伴う留意事項について 平成23年8月31日 消防救第248号 消防庁救急企画室長)バイスタンダーによる心肺蘇生を増加させるために、おもに市民を対象とする心肺蘇生講習については、時間的な制約や年齢などのため、従来型の講習への参加が難しい場合、胸骨圧迫のみの心肺蘇生講習は有用かもしれない。そこで、市民に対する応急手当の普及は、住民に対する標準的な普及講習を基本としつつも、より多くのバイスタンダーを育成し裾野を広げるため、講習内容を簡素化した応急手当の導入講習(救命入門コース)を設定する。
きっかけは、2010年に示された心肺蘇生に関する国際的なガイドラインでした。
2010年10月、国際蘇生連絡協議会(ILCOR)が心肺蘇生に関わる科学的合意と治療勧告(CoSTR)を発表し、これを踏まえて日本蘇生協議会などが「JRC(日本版)ガイドライン2010」を示しました。
消防庁はこの内容を踏まえ、救急業務高度化推進検討会で検討を重ね、平成23年8月31日の消防救第239号(消防庁次長通知)で実施要綱を改正しました。
根拠は消防組織法第37条が定める消防庁長官の助言で、法律そのものではなく行政指導という形で全国の消防本部に示されています。
次は、救命入門コースが具体的に誰を対象にしているのかを見ていきます。

180分は確かに長いですね。
会社の研修時間ではなかなか確保できません。

だからこそ90分の入門コースが新設されました。
次は対象になる人を見ましょう。

救命入門コースの対象になるのはどのような人か

小学生から大人まで幅広い受講者を示すイラスト
救命入門コースは、これまでの救命講習より対象を広げて設計されています。
誰が受講できるのかを確認しましょう。
(応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱の一部改正に伴う留意事項について 平成23年8月31日 消防救第248号)これまでの救命講習の対象者は概ね中学生以上を基本としてきたが、より広く普及啓発活動を展開するため、また一方で対象者の体力的な面を考慮し、小学生中高学年(概ね10歳)以上とする。これまでの、住民に対する標準的な普及講習に変わるものではなく、時間的な制約や年齢などのため、従来型の講習への参加が難しい市民を対象とする。併せて、普通救命講習受講へ繋げるための講習とする。
対象年齢は小学生中高学年、概ね10歳以上に広げられました。
これまでの救命講習が概ね中学生以上を対象としてきたのに対し、救命入門コースは体力面を考慮したうえで、より幅広い年齢の市民に門戸を開いています。
時間的な制約や年齢を理由に普通救命講習への参加が難しい人が主な対象で、対象を保育士や教員などに限定していません。
位置づけはあくまで入り口で、この講習のあとに普通救命講習の受講へつなげることが前提になっています。
次は、90分の中身がどのように組まれているのかを見ていきます。

小学生でも受けられるんですね。
思っていたより対象が広いです。

概ね10歳以上であれば対象になります。
次は90分の中身を確認しましょう。

救命入門コースの中身はどうなっているのか

胸骨圧迫とAEDの実技を練習する受講者を示すイラスト
90分という短い時間の中で、救命入門コースは項目を絞り込んでいます。
何を教え、何を教えないかを確認しましょう。
(応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱の一部改正に伴う留意事項について 平成23年8月31日 消防救第248号)救命入門コースのカリキュラムは、胸骨圧迫とAEDの使用法を中心とする。普通救命講習Ⅰのカリキュラムに含まれる心肺蘇生法の異物除去法や効果確認、止血法は含めない。また、気道確保要領や口対口人工呼吸法については呈示または体験とすること、AEDの使用法の説明については口頭で行うことも可能である。講習時間は、小中学校で実施することも考慮し、小学校の授業の2時限分(1時限45分)の90分とする。
中心になるのは胸骨圧迫とAEDの取扱いの2つだけです。
到達目標は、救急車が現場に到着するまでの時間程度、胸骨圧迫を続けられることと、AEDを正しく使用できることの2点に絞られています。
気道確保要領や口対口人工呼吸法は呈示または体験にとどめてよいとされ、異物除去法や止血法はそもそもカリキュラムに含まれません。
指導は普通救命講習と同様に応急手当指導員または応急手当普及員が行い、訓練資機材1つに受講者5名以内、指導者1名に受講者10名以内が望ましいとされています。
次は、この講習を運用するうえで見落としやすい注意点を確認します。

胸骨圧迫とAEDだけなら、確かに90分でも収まりそうです。

項目を絞ったぶん注意点もあります。
次は落とし穴を確認しましょう。

救命入門コースで見落としやすい落とし穴はどこか

参加証と修了証の違いを見比べる担当者を示すイラスト
短時間で受けられる講習だからこそ、勘違いしやすい点があります。
交付される証明書の違いを確認しましょう。
(応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱の一部改正に伴う留意事項について 平成23年8月31日 消防救第248号)救命入門コースの参加者には、「救命入門コース参加証」を交付することができる。救命入門コースの「参加証」は、救命講習の「修了証」とは性質が異なるものであるため、管轄消防本部の消防長印は押印しない。参加証の表面に「次は、普通救命講習にチャレンジしましょう!」という文言を記載し、普通救命講習の受講を促す。
救命入門コースの参加証は、普通救命講習の修了証とは別物です。
参加証には消防長印が押されないため、普通救命講習を修了したことの証明としては使えません。
参加証の表面にはあえて「次は普通救命講習にチャレンジしましょう」という文言が入れてあり、この講習がゴールではなく入り口であることが強調されています。
事業所が従業員の応急手当講習の受講実績を管理する場合、救命入門コースの参加証と普通救命講習の修了証を同じ扱いにしないよう区別しておく必要があります。
次は、事業所として明日から確認すべきことをまとめます。

参加証と修了証を混同していました。
従業員名簿の管理を見直します。

証明書の性質の違いを押さえておきましょう。
次は明日からの確認事項をまとめます。

事業所は明日から何を確認すればよいのか

消防本部に講習の日程を問い合わせる担当者を示すイラスト
最後に、事業所として実際にできる選択肢を整理します。
時間の制約に合わせて講習の組み合わせを考えましょう。
(応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱の一部改正に伴う留意事項について 平成23年8月31日 消防救第248号)e-ラーニングを活用した講習 インターネット(e-ラーニング)上で救命講習の座学部分(60分)を受講し、概ね1か月以内に実技を中心とした120分の講習(実技救命講習)を受講すれば、普通救命講習を修了したものと認定し、修了証を交付する。普及時間の分割による講習 現状の救命講習の受講時間は180分以上となっていることから、カリキュラムを2分割あるいは3分割し、1回あたりの講習時間を短くすることで受講者のニーズに応じる方法を推奨する。ただし、講習を分割した場合、救命講習修了の認定基準は、全てのカリキュラムを概ね1か月以内に受講することとする。
忙しい従業員には、まず90分の救命入門コースを案内しましょう。
入門コースを終えた人には、参加証の案内どおり普通救命講習の受講を促します。
普通救命講習自体も、座学60分をオンラインで受け、概ね1か月以内に実技120分を受講する方法や、カリキュラムを2分割・3分割して受ける方法が同じ改正で用意されています。
どちらの方法も日程は所轄の消防本部に問い合わせて確認する必要があるので、講習内容や指導方法に迷ったときも遠慮せず相談しましょう。
社内に応急手当普及員がいれば、消防本部と調整のうえ自社で救命入門コースを企画することもできます。

入門コースから普通救命講習まで、段階を踏んで案内できそうです。

分割受講という選択肢もあります。
よくある質問もあわせてご確認ください。

よくある質問

Q救命入門コースを受ければ普通救命講習を受けたことになりますか?
Aいいえ。救命入門コースの「参加証」は普通救命講習の「修了証」とは別のもので、消防長印も押されません。あくまで普通救命講習へのステップとして位置づけられています。
Q救命入門コースは誰でも受けられますか?
A対象年齢は小学生中高学年(概ね10歳)以上で、受講を希望する人であれば誰でも対象になります。保育士や教員などに限定されません。
Q救命入門コースの指導は誰が行いますか?
A普通救命講習と同様に、応急手当指導員または応急手当普及員が指導します。訓練資機材1つに受講者5名以内、指導者1名に受講者10名以内が望ましいとされています。
Q普通救命講習自体を短時間で受ける方法はありますか?
Aあります。e-ラーニングで座学60分を受講し概ね1か月以内に実技120分を受ける方法や、カリキュラムを2分割・3分割して受ける方法が同じ改正で新設されています。

まとめ

✔救命入門コースは、平成23年8月31日消防救第239号による実施要綱改正で新設された講習です。
✔従来の180分講習に参加しにくい市民のために設けられた90分の短時間講習です。
✔対象年齢は小学生中高学年(概ね10歳)以上に広げられ、希望者は誰でも受講できます。
✔カリキュラムは胸骨圧迫とAEDの取扱いが中心で、異物除去法や止血法は含まれません。
✔交付される参加証は普通救命講習の修了証とは性質が異なり、消防長印は押されません。
✔同じ改正で、普通救命講習の座学をe-ラーニングや分割受講で受ける方法も新設されました。
✔通知の根拠は消防組織法第37条が定める消防庁長官の助言です。

忙しい社員に案内できる講習があると分かって助かりました!

参加証と修了証の違いだけは覚えておいてくださいね。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 「応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱の一部改正について」(平成23年8月31日 消防救第239号 消防庁次長)
  • 「応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱の一部改正に伴う留意事項について」(平成23年8月31日 消防救第248号 消防庁救急企画室長)
  • 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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