不活性ガス消火設備の工事が完了すると、設置後の総合試験で実際にガスを放出して動作を確認します。
このとき試験のたびに貯蔵してある消火剤をすべて使い切ってしまっては、設備の維持にコストも手間もかかりすぎます。
そこで消防庁の通知は、試験に使うガスの量そのものに独自のルールを定めています。
今回は不活性ガス消火設備の総合試験で、なぜ消火剤を全部使わずに済むのかを解説します。
総合試験のたびに消火剤を全部使ってしまうものだと思っていました。
いえ、実は一部の量だけで確認できる仕組みがあるんですよ。
それなら試験のコストも抑えられそうですね。
はい、量の決め方にはきちんとルールがあります。
まずは総合試験そのものから見ていきましょう。
- 総合試験は各防護区画で起動装置を操作し試験用ガスを放出して通気や各部の状況を確認する試験です
- 試験用ガスの放射量は防護区画の消火剤貯蔵量の10%相当以上を用います
- ただし試験用ガス量は設置消火剤貯蔵容器5本を超えないこととすることができます
- 消火剤の種類ごとの目安量は二酸化炭素55L、窒素とIG-55とIG-541は100Lです
- 移動式はユニット5個以内ごとに任意の1本で試験を行います
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目次
不活性ガス消火設備の総合試験ではなにを確認するのか

実際に起動装置を操作し、試験用のガスを放出して設備全体の動きを確かめる試験です。
確認する項目は選択弁の作動状況や通気の状況、集合管や導管の気密状況など多岐にわたります。
音響警報装置の鳴動や放出表示灯の点灯も、同じ試験の中であわせて確認されます。
点検の記録に「総合試験」とだけ書かれていても、その中身はこうした複数の確認の積み重ねです。
起動から放出まで、そんなに多くのことを確かめるんですね。
はい、一連の動きをまとめて見ています。
次はなぜ全量を使わなくてよいのかを見てみましょう。
なぜ貯蔵してある消火剤を全部放出せずに試験できるのか

そこで試験に使うガスの量そのものに、下限となる基準が定められています。
二酸化炭素を放射するものは消火剤貯蔵量1kg当たり、窒素やIG-55、IG-541を放射するものは1㎥当たりの量をもとに算定します。
全量ではなく一部の量で足りるのは、起動から放出までの一連の動作が確認できれば試験の目的を果たせるからです。
点検の記録にある試験用ガス量は、この10%相当という下限を満たしているかどうかで見ることになります。
一部の量で済むから、毎回全部使わなくてよいんですね。
はい、動作の確認ができれば足ります。
次は薬剤の種類ごとの目安を見てみましょう。
消火剤の種類によって試験用ガス量の目安はどう違うのか

実際の目安量は、消防庁の通知が薬剤ごとに数値で示しています。
| 消火剤の種類 | 試験用ガス量の目安 |
|---|---|
| 二酸化炭素 | 55L(1kg当たり) |
| 窒素 | 100L(1㎥当たり) |
| IG-55 | 100L(1㎥当たり) |
| IG-541 | 100L(1㎥当たり) |
二酸化炭素は重さの単位であるkg、窒素やIG-55、IG-541は体積の単位である㎥で貯蔵量を数えるため、目安量の表もこの単位の違いに合わせて作られています。
同じ「不活性ガス」とまとめて呼ばれていても、気体としての性質が違えば試験の考え方も変わってくるわけです。
現場で目安量を確認するときは、まず設備に使われている消火剤の種類を確かめることが最初の一歩になります。
二酸化炭素と窒素で、数え方まで違うんですね。
はい、気体の性質で数え方が変わります。
次は試験用ガス量のもう一つの上限を見てみましょう。
試験用ガス量にはなぜ5本を超えないという上限もあるのか

そこで試験用ガス量には、もう一つ上限となるルールが定められています。
防護区画が広く消火剤の貯蔵量が多い設備では、10%相当の量だけを基準にすると使用する容器の本数が増えすぎてしまいます。
そこで5本という上限を設けることで、大規模な設備でも試験に使う量を現実的な範囲に収められる仕組みになっています。
点検の記録にある試験用ガス量が貯蔵量の10%相当より少なく見えても、この上限のルールによるものであれば問題はありません。
大きな設備ほど、この上限がありがたい仕組みなんですね。
はい、現実的な本数に収める工夫です。
最後に移動式の試験方法を見てみましょう。
移動式の不活性ガス消火設備はどう試験するのか

持ち運んで使う移動式には、また別の試験方法が定められています。
全域放出方式や局所放出方式のように防護区画全体の貯蔵量から量を計算するのではなく、ユニット単位でまとめて試験する考え方です。
設置してある消火剤貯蔵容器をそのまま使う場合も、同じくユニット5個以内ごとに1本という数え方になります。
ホースや接続部から試験用ガスが漏れていないかも、この試験であわせて確認する項目です。
移動式は防護区画でなくユニットで数えるんですね。
はい、数え方の単位が違うだけです。
最後によくある質問を見てみましょう。
よくある質問
まとめ
全部を使わなくてよいと分かって安心しました!
次の点検の記録も見直してみます。
10%相当と5本の2つを覚えておけば十分です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則第31条の3第2項(消防用設備等又は特殊消防用設備等の届出及び検査)
- 消防用設備等の試験基準に係る運用について(平成14年9月30日消防予第283号)記3(1)ウ
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。運用は所轄消防署ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





