軽微な工事の届出省略や検査簡略化は、全国統一のルールとして運用されています。
では、消防長や消防署長の判断で、この運用をやらないという選択はできるのでしょうか。
維持台帳が整備されていない場合の対応にも、段階があります。
質疑応答が示したのは統一運用と現場の裁量には明確な線引きがあるという考え方です。
この運用、消防署ごとにやらない選択もできるんですか。
できません。全国統一が原則です。
維持台帳が不十分だとどうなるんですか。
それも含めて5つの実務Q&Aを見ていきます。
この記事の結論
- 軽微な工事の運用は消防長の判断で実施しないという選択はできません
- 消防用設備等の撤去時に情報提供を求める根拠は消防法第4条の規定です
- 点検票の保存期間を原則3年としたのは履歴がわかる書類があれば足りるからです
- 維持台帳の整備が不十分なら指導のうえ措置命令も行えます
- 設置届の図書を紛失した関係者からの閲覧要請には可能な限り対応することが望ましいとされます
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目次
軽微な工事の運用を消防長の判断で実施しないことはできるか

実施するかどうかを、各消防長や消防署長が個別に決めることはできるのでしょうか。
問 今回の軽微な工事に関する運用については、消防長又は消防署長の判断により、実施しないこととしてもよいか。
答 今回の運用については、規制緩和等の動向を踏まえ、法令整備が整うまでの間、全国統一的に運用することとしたものであり、手続規定、趣旨の徹底等の体制を整備して、すみやかに運用を開始することとされたい。
この運用は、規制緩和の流れを踏まえて全国統一的に実施することを前提に設計されています。消防長や消防署長の裁量で「うちは実施しない」と決めることは想定されておらず、むしろ体制を整えて速やかに開始することが求められています。
地域差が生まれることを前提にした制度ではない、という点が明確に示されています。
軽微な工事の届出省略について問い合わせるなら、消防機関ごとに実施の有無が異なるという前提ではなく、統一運用が原則であることを踏まえて確認してください。
地域ごとのバラつきは想定されていないんですね。
統一運用が原則だと踏まえてください。
消防用設備等の撤去時に情報提供を求める根拠は何か

この情報提供を求めること自体は、どの条文を根拠にしているのでしょうか。
問 消防用設備等を撤去する場合は防火対象物の関係者から事前に情報提供を求めること等により実態の把握をすることとされているが、この情報提供を求める根拠は、消防法第4条の規定に基づくものと解してよいか。
答 お見込みのとおり。
撤去にあたっての事前の情報提供は、新しい特別な制度ではなく、消防法第4条という既存の条文に基づいて求められています。撤去という行為そのものを規制する条文ではなく、実態把握のための一般的な権限を使っている、という位置づけです。
撤去に関する情報提供を求められた場合は、その根拠が立入検査とは別の資料提出等の規定であることを踏まえて対応してください。
撤去専用の新しい規定ではないんですね。
資料提出等の規定だと
踏まえて対応してください。
点検票の保存期間を原則3年としたのはなぜか

保存期間が原則3年とされた背景には、どのような考え方があるのでしょうか。
問 消防用設備等の点検票の保存期間について、原則3年としたのはどのような理由によるものか。
答 消防用設備等の点検票の保存については、点検に係る履歴が明確にされていれば足りることから、その内容がわかる点検結果総括表、点検者一覧表、経過一覧表等を保存することで、点検票そのものを長期間保存しなくともよいこととしたものである。
点検票を長期間保存する目的は、あくまで点検の履歴を明確にすることにあります。総括表や一覧表といった形で履歴が分かるようにしておけば、個々の点検票そのものを長期間保存しておく必要はない、という考え方です。
つまり3年という期間は、点検票の実物を保管する期間であって、履歴の記録自体を消してよいという意味ではありません。
点検票の保存管理をするなら、原本の保存期間だけでなく、履歴を示す総括表等の作成・保存も合わせて整えてください。
履歴が別の書類で残っていればいいんですね。
総括表等の作成・保存も
合わせて整えてください。
維持台帳の整備が不十分な場合はどう対応されるか

その場合、消防機関はどこまで対応することができるのでしょうか。指導だけにとどまるのでしょうか。
問 維持台帳の整備が不十分な場合には、当該維持台帳の整備についての指導、さらには消防法第8条第4項の規定に基づく措置命令を行うことができるか。
答 お見込みのとおり。
維持台帳の不備は、まず指導の対象になりますが、それだけでは終わりません。改善されない場合には、消防法第8条第4項に基づく措置命令という、より強い法的手段に進む余地があります。
維持台帳の整備は、単なる望ましい取り組みではなく、指導・命令という段階を踏んで是正を求められ得る事項だということです。
維持台帳の整備状況に不安があるなら、指導を受ける前に、記録の欠落や更新漏れがないか自主的に点検しておいてください。
指導だけで終わると思っていました。
自主的に点検しておいてください。
設置届の図書を紛失した場合の閲覧要請には応じるべきか

そのようなとき、消防機関が保管している資料を見せてもらうことはできるのでしょうか。
問 消防用設備等の設置届に係る関係図書を紛失等した防火対象物の関係者から、当該資料について閲覧等の要請があった場合には、これに応じる必要があるか。
答 当該要請が防火対象物の関係者から行われた場合にあっては、可能な限り対応することが望ましい。
「応じる必要があるか」という問いに対して、「必要がある」という断定ではなく、可能な限り対応することが望ましいという表現が使われています。一律の義務ではないものの、防火対象物の関係者からの要請であれば、できる範囲で協力すべきだという位置づけです。
紛失した図書の再確認を消防機関に相談することは、決して特別な依頼ではないということでもあります。
設置届の関係図書を紛失してしまったなら、まずは所轄の消防機関に事情を説明し、閲覧等の可否を相談してみてください。
紛失しても相談してよいんですね。
事情を説明して
可否を相談してみてください。
よくある質問
Q軽微な工事の運用は消防署によって実施状況が違いますか?
A回答は、全国統一的に運用するとしています。消防長の判断で実施しないという選択はできません。
Q撤去時の情報提供要求は立入検査の一種ですか?
A回答は、消防法第4条の規定に基づくとしています。立入検査とは別の資料提出等の権限です。
Q点検票は3年経てば履歴も含めて処分してよいですか?
A回答は、履歴がわかる総括表等の保存を前提としています。点検票原本を長期保存しなくてよいという意味です。
Q維持台帳の不備は指導だけで済みますか?
A回答は、指導に加えて消防法第8条第4項の措置命令も行えるとしています。改善されなければ命令に進みます。
まとめ
✔軽微な工事の運用は全国統一が原則です
✔撤去時の情報提供の根拠は消防法第4条です
✔点検票は履歴が分かれば長期保存不要です
✔維持台帳の不備は指導から措置命令に進み得ます
✔図書紛失時の閲覧要請は可能な限り対応が望まれます
✔共通するのは統一運用と現場対応の線引きを見極めることです
維持台帳、後回しにしていたので見直します。
措置命令まで進むとは思っていませんでした。
統一運用と現場対応の
線引きを見極めてください。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防用設備等に係る届出等に関する運用について(平成9年12月5日 消防予第192号 通称「192号通知」に基づく実務Q&A)
- 軽微な工事に関する運用の全国統一性について(同通知に基づく質疑応答)
- 消防用設備等を撤去する場合の情報提供について(同前)
- 消防用設備等の点検票の保存期間について(同前)
- 維持台帳の整備が不十分な場合の措置について(同前)
- 消防用設備等の設置届に係る関係図書の閲覧について(同前)
- 消防法第4条、第8条第4項、消防法施行規則第31条の4
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答はそれぞれの発出当時のもので、通知番号や機関の名称等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





