共同住宅の一部にグループホームや有料老人ホームが入っている建物は珍しくありません。
この形になると建物全体が令別表第一(16)項イの防火対象物として扱われ、住戸の側にも自動火災報知設備が必要になります。
そこで消防法施行令第29条の4を受けて用意されているのが複合型居住施設用自動火災報知設備という枠組みです。
使えるのは延べ面積と用途の組み合わせが限られた小さな建物だけです。
うちのマンションの1階にグループホームが入っています。
住戸のほうにも自動火災報知設備が要ると言われました。
建物全体が令別表第一(16)項イとして見られるからです。
ただし条件がそろえば別の設備に置き換えられる道があります。
置き換えられるとどこが変わるのですか。
工事の量が気になっています。
感知器を置く場所や受信機の扱いが変わってきます。
まずは延べ面積と用途の組み合わせから確かめましょう。
- 複合型居住施設とは共同住宅と一部の福祉施設だけでできた建物のことです
- 延べ面積が500平方メートル未満であることが出発点になります
- 店舗や事務所が一室でもあれば複合型居住施設にはあたりません
- 自動火災報知設備に代えて複合型居住施設用自動火災報知設備を用いることができます
- 区画と内装の条件がそろえば住戸側の感知器を省ける場合があります
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目次
複合型居住施設とはどんな建物のことなのか

まずは根拠になる条文と、その下に置かれた省令の定義を見ます。
法第17条第1項の関係者は、(略)設置し、及び維持しなければならない同項に規定する消防用設備等(以下この条において「通常用いられる消防用設備等」という。)に代えて、総務省令で定めるところにより消防長又は消防署長が、その防火安全性能(略)が当該通常用いられる消防用設備等の防火安全性能と同等以上であると認める消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設(略)を用いることができる。
複合型居住施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令第2条第1号
複合型居住施設 令別表第一(十六)項イに掲げる防火対象物のうち、延べ面積が五百平方メートル未満で、かつ、同表(五)項ロ並びに(六)項ロ及びハに掲げる防火対象物(同表(六)項ロ及びハに掲げる防火対象物にあつては、有料老人ホーム、福祉ホーム、(略)認知症対応型老人共同生活援助事業を行う施設又は(略)共同生活援助を行う施設に限る。(略))の用途以外の用途に供される部分が存しないもの(略)をいう。
令第29条の4は通常の消防用設備等に代えて同等以上の防火安全性能を持つ設備を使える受け皿で、その「総務省令で定めるところ」にあたるのが平成22年総務省令第7号です。
この省令の第2条第1号が定義を置いており、令別表第一(16)項イに掲げる防火対象物のうち、延べ面積が500平方メートル未満のものが出発点になります。
そのうえで同表(5)項ロ並びに(6)項ロ及びハの用途以外の用途に供される部分が存しないことが求められ、(6)項ロ及びハについては有料老人ホームと福祉ホームと認知症対応型老人共同生活援助事業を行う施設と共同生活援助を行う施設の4つに限られます。
図面を開いたら、まず延べ面積を確かめ、次に各室の用途を並べてこの組み合わせから外れる部屋が無いかを見てください。
うちは共同住宅とグループホームだけの建物です。
延べ面積は480平方メートルなので当てはまりそうですね。
その組み合わせなら出発点は満たしています。
あとは定義から除かれている建物に当たらないかを見ていきましょう。
どんな用途が混ざると複合型居住施設から外れるのか

ここを読み飛ばすと使えない建物に使ってしまいます。
(略)の用途以外の用途に供される部分が存しないもの(令第21条第1項第8号に掲げる防火対象物及び消防法施行規則(略)第23条第4項第7号ヘに規定する特定一階段等防火対象物を除く。)をいう。
消防法施行令第21条第1項第8号
前各号に掲げる防火対象物以外の別表第一に掲げる建築物その他の工作物で、指定可燃物を危険物の規制に関する政令別表第四で定める数量の五百倍以上貯蔵し、又は取り扱うもの
定義は「用途以外の用途に供される部分が存しないもの」と書いているので、テナントの店舗や事務所や診療所が加わった時点で複合型居住施設ではなくなり、通常の自動火災報知設備の話に戻ります。
そのうえで2つの除外が置かれています。
一つは令第21条第1項第8号に掲げる防火対象物で、指定可燃物を危険物の規制に関する政令別表第四で定める数量の500倍以上貯蔵し、又は取り扱うものです。
もう一つは特定一階段等防火対象物で、(6)項などの用途が避難階以外の階にあり、そこから避難階または地上に直通する階段が屋外にも避難上有効な構造にも当たらないまま1つしか設けられていない建物が該当します。
1階にコンビニが入っていたら使えないということですか。
よくある組み合わせだと思っていました。
そのとおりで、その一室があるだけで外れます。
部屋ごとの用途表を作って当てはめてみてください。
複合型居住施設用自動火災報知設備はなにを満たせばよいのか

省令が技術上の基準をどこから借りているかを見ます。
複合型居住施設において、令第21条第1項及び第2項の規定により設置し、及び維持しなければならない自動火災報知設備に代えて用いることができる必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等は、複合型居住施設用自動火災報知設備とする。
2 前項に定める複合型居住施設用自動火災報知設備の設置及び維持に関する技術上の基準は、令第21条第2項及び規則第23条から第24条の2までの規定の例による。ただし、令別表第一(六)項ロ及びハに掲げる防火対象物の用途に供される部分(以下「福祉施設等」という。)の床面積の合計が三百平方メートル未満の複合型居住施設にあつては、特定小規模施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(略)第2条第2号に規定する特定小規模施設用自動火災報知設備を同令第3条第2項及び第3項の例により設置することができる。
省令第3条第2項の本文は、設置及び維持に関する技術上の基準を令第21条第2項及び規則第23条から第24条の2までの規定の例によるとしています。
警戒区域の取り方も、感知器の種類と位置も、非常電源の附置も、通常の自動火災報知設備と同じ考え方で設計することになります。
そのうえで同項ただし書きが軽い作り方を認めており、福祉施設等の床面積の合計が300平方メートル未満であれば、特定小規模施設用自動火災報知設備を平成20年総務省令第156号第3条第2項及び第3項の例により設置できます。
こちらは感知器を設ける場所が居室と床面積2平方メートル以上の収納室や倉庫や機械室などに絞られ、警戒区域が二以上あるときは連動型警報機能付感知器で組む形も条文に書かれているので、まずは福祉施設等の床面積を図面で足し上げておいてください。
つまり福祉施設の広さで作り方が二段に分かれるのですね。
まずは床面積を足せばよいとわかりました。
そのとおりで、境目は福祉施設等の床面積の合計です。
共用部分の扱いで迷ったら所轄の消防署に確かめておきましょう。
住戸側の感知器はどんなときに省けるのか

ただし条件は5つあり、どれか一つでも欠けると使えません。
前項の規定にかかわらず、次の各号のいずれにも適合するときに限り、福祉施設等及び令第21条第1項第11号から第14号までに掲げる防火対象物の部分以外の部分について、感知器を設置しないことができる。ただし、受信機を設けない場合は、この限りでない。
一 福祉施設等の居室(略)を、準耐火構造(略)の壁及び床(三階以上の階に存する場合にあつては、耐火構造(略)の壁及び床)で区画したものであること。
二 福祉施設等の壁及び天井(略)の室内に面する部分(略)の仕上げを地上に通ずる主たる廊下その他の通路にあつては準不燃材料(略)で、その他の部分にあつては難燃材料(略)でしたものであること。
三 区画する壁及び床の開口部の面積の合計が八平方メートル以下であり、かつ、一の開口部の面積が四平方メートル以下であること。
四 前号の開口部には、防火設備(略)である防火戸(略)を設けたものであること。
五 福祉施設等の主たる出入口が、直接外気に開放され、かつ、福祉施設等における火災時に生ずる煙を有効に排出することができる廊下、階段その他の通路に面していること。
省ける範囲も限られており、福祉施設等と令第21条第1項第11号から第14号までに掲げる部分を除いた部分だけが対象です。
条件は準耐火構造による区画と、地上に通ずる主たる廊下等の準不燃材料とその他の部分の難燃材料という内装、開口部の面積の合計が8平方メートル以下でかつ一の開口部が4平方メートル以下であること、その開口部への防火戸、そして福祉施設等の主たる出入口が直接外気に開放された通路に面していることです。
そのうえで同項ただし書きは受信機を設けない場合はこの限りでないと定めているので、受信機を置かない作りを選ぶなら感知器の省略は使えません。
区画と内装は工事のときに決まってしまうため、あとから間仕切りを足した建物では図面と現地が食い違っていないかを先に見てください。
省けると聞いて楽になると思っていました。
思ったより条件が細かいのですね。
区画と内装と開口部がそろって初めて成り立つ仕組みです。
竣工図の仕上表と防火戸の位置を先に確かめておきましょう。
明日からなにを確かめればよいのか

図面と用途表がそろっていれば防火管理者だけでも確かめられます。
防火対象物の関係者は、前二項の規定により点検を行つた結果を、維持台帳(略)に記録するとともに、次の各号に掲げる防火対象物の区分に従い、当該各号に定める期間ごとに消防長又は消防署長に報告しなければならない。(略)
一 令別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十六)項イ、(十六の二)項及び(十六の三)項に掲げる防火対象物 一年に一回
最初に各室の用途を並べて、(5)項ロと(6)項ロ・ハの限られた4つの施設以外の部屋が無いかを確かめます。
次に延べ面積が500平方メートル未満に収まっているかを確認し、増築や用途変更で超えていないかを見ます。
そのうえで避難階以外の階から地上に直通する階段の数を数え、特定一階段等防火対象物に当たらないかを判定します。
設備が入ったあとも(16)項イの防火対象物であることは変わらないので、点検の結果は1年に1回消防長又は消防署長へ報告することになります。
用途と面積と階段の順に見ればよいのですね。
点検の報告が毎年だということも覚えておきます。
その順番なら判定でつまずきません。
設計や届出の判断は所轄の消防署に相談しながら進めてください。
よくある質問
まとめ
用途と面積から見ればよいと整理できました。
明日さっそく図面を広げてみます。
その順番で見れば迷いません。
自動火災報知設備の設計や点検でお困りのことがあれば、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第17条・第17条の3の3
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第7条第7項・第21条・第29条の4・別表第一
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第23条・第31条の6
- 複合型居住施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成22年総務省令第7号)
- 特定小規模施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成20年総務省令第156号)
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





