複合用途のビルには、同じ階に店舗や事務所や飲食店など複数のテナントが同居していることがあります。
そのとき各テナントの床面積は、それぞれ別々に判断してよいのでしょうか。
実は消防法施行令には、複数のテナントの床面積を合計して判定する号があります。
この記事では消防法施行令第12条第1項第10号が定める床面積の合算のしくみを、条文だけで確かめます。
同じ階に小さな店舗がいくつも入っているテナントビルなんですが、一つひとつの面積は小さいので大丈夫だと思っていました。
いいえ。
複数のテナントが同じ階にある場合、床面積を合計して判断する号があります。
合計するとスプリンクラー設置義務が生じることがあるということですか。
そのとおりです。
まずは条文がどう合計を求めているかから見ていきましょう。
- 消防法施行令第12条第1項第10号は、別表第一(十六)項イの複合用途ビルで特定用途部分の床面積を合計して基準を超えると、その階全体をスプリンクラー設置の対象にする号です
- 合計の対象になるのは別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる特定の用途に供される部分です
- 基準となる床面積の合計は3,000平方メートル以上で、超えるとその用途部分が存する階そのものが対象になります
- すでに第3号(11階建て以上の建物)の対象になっている建物は、この号の対象から除かれます
- 合計から除かれる部分は施行規則第13条第2項が定める耐火構造の区画などに限られます

目次
複合用途ビルの床面積はなぜ合計して判断されることがあるのか

ところが複数の用途が同居する複合用途ビルには、別の判断のしかたがあります。
別表第一(十六)項イとは、店舗や事務所や飲食店など複数の用途が混在するビルを指す項です。
その中でも同表(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる特定の用途に供される部分だけを取り出して、床面積を合計します。
一つひとつのテナントの面積が小さくても、合計すれば基準を超えることがあります。
まずはどの用途が合計の対象になるのかを具体的に見ていきます。
一つひとつのテナントは小さいのに、合計すると対象になることがあるんですね。
そうです。
次はどの用途が合計の対象になるのかを確認しましょう。
どの用途に供される部分の床面積が合計の対象になるのか

すべてのテナントが合計に含まれるわけではありません。
条文が指すのは同表(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる特定の用途です。
事務所や工場、駐車場など、これらに当てはまらない用途の部分は合計の対象に含まれません。
同じ階に複数のテナントがあっても、対象外の用途だけなら合計は生じません。
自分のテナントがどの項に当てはまるかを、まず一つずつ確認することが出発点になります。
うちのテナントは飲食店なので、まさに合計の対象になりそうです。
用途の該当性が最初の分かれ目です。
次は、合計を超えた場合の対象範囲を見ていきましょう。
基準を超えるとその階のどこまでが対象になるのか

条文は「当該部分が存する階」という言い方で範囲を区切っています。
条文がスプリンクラー設置を求めるのは当該部分が存する階という単位であり、特定用途に供される部分だけではありません。
同じ階にある事務所や共用廊下、対象外の用途の部分も含めて階全体が設置の対象になります。
特定用途部分だけにヘッドを設ければ足りるという理解は誤りです。
自分のビルのどの階が該当するかを、階単位で確認する必要があります。
自分のテナントの部分だけスプリンクラーがあれば十分だと思っていました。
階全体で考える必要があります。
次は、この号が適用されない例外を見ていきましょう。
11階建て以上のビルや耐火構造の部屋も同じように合計されるのか

合計すればすべてが対象になるわけではありません。
条文が第三号に掲げるものを除くと定めているのは、11階建て以上の建物にはすでに第3号が別に適用されるためです。
両方の号を重ねて適用する必要はありません。
また床面積の合計からは、耐火構造の壁や床で区画し、内装や開口部の基準を満たした部分を除くことができます。
壁で仕切ってあるというだけでは足りず、施行規則第13条第2項の各要件を満たしているかを確認する必要があります。
11階建て以上のビルは別扱いになるんですね。
重複適用を避ける仕組みです。
最後に、明日からの確認手順をお伝えします。
明日からなにを確認すればよいのか

まず用途ごとにテナントを仕分け、次に床面積を合計するのが正しい順番です。
- 各テナントが別表第一のどの項の用途に当たるかを用途ごとに仕分ける
- 該当する用途の床面積を合計し、3,000平方メートル以上かどうかを確認する
- 自分の建物が地階を除く階数11以上に当たらないかをあわせて確認する
- 耐火構造の区画を理由に除外を主張する場合は施行規則第13条第2項の要件を一つずつ照合する
うちも他のテナントとあわせて床面積を合計してみます。
それが一番確実な第一歩です。
不安な点があればいつでもご相談ください。
よくある質問
まとめ
テナントの数が多いので大変そうですが、まず用途の仕分けから始めてみます。
用途の仕分けと床面積の合計が欠かせません。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第12条第1項第3号・第10号(スプリンクラー設備を設置する防火対象物)
- 消防法施行令別表第一(一)項・(三)項・(四)項・(五)項イ・(九)項イ・(十六)項イ(用途区分)
- 消防法施行規則第13条第2項(総務省令で定める部分)
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





