二酸化炭素消火設備などのガス系消火設備は、点検や整備の作業中にも、誤って消火剤が放出されてしまう事故が繰り返されてきました。
火災でもないのに大量のガスが放出されれば、その場に居合わせた作業員や関係者が中毒の危険にさらされます。
消防庁は平成3年の通知で点検時の誤放出を防ぐ具体的な仕組みを定め、平成10年のガス系消火設備等の通知もこれを引用しています。
本記事では、点検時に求められる閉止弁と表示灯の設置基準を中心に、誤放出防止対策の要点を解説します。
うちの電気室、点検のときにガスが誤って出たりしないんでしょうか。
閉止弁と表示灯が鍵になります。
まずは通知の考え方を確認しましょう。
閉止弁というと、弁を一つ付ければそれで済むんじゃないんですか。
表示の方式や場所まで決まっています。
順番に見ていきましょう。
- 点検中の誤放出防止対策は平成3年の消防危第88号・消防予第161号で定められ平成10年の消防予第116号もこれを引用しています
- 点検時は集合管か操作管に常時開・点検時閉の表示を付けた閉止弁を設ける必要があります
- 閉止弁の閉止状態は点滅する表示灯で示すことが原則です
- 表示灯が点滅できない場合は警報音を追加しなければなりません
- 自動連動となっている場合は受信機と制御盤の両方に注意文章を表示する必要があります
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目次
点検中の二酸化炭素消火設備はなぜ誤って作動するのか

点検や整備で操作管や配線に触れているときに誤った信号が入れば、火災でなくても放出されてしまいます。
起動信号回路に触れる工事や整備、点検の作業中は、意図しない信号が回路に入り込むおそれがあります。
消防庁はこの事故を防ぐため、平成3年の消防危第88号で閉止弁と表示灯の具体的な仕組みを定めました。
平成10年の消防予第116号も、ガス系消火設備等の工事・整備・点検にあたってこの対策を講じる必要があると引用しています。
ここからは、対象になる作業の範囲と、対策の中身を順に見ていきます。
点検中に誤って作動するなんて、想像していませんでした。
平成10年の通知もこの対策を引用しています。
次は対象になる場面を見ていきましょう。
点検や工事のどの場面でこの対策が必要になるのか

配管の腐食による漏えいを防ぐ日常の点検整備と、作業中の誤放出を防ぐ対策の両方が求められます。
新設工事だけでなく、日常の整備・点検も同じ対策の対象になります。
配管の腐食による漏えいを防ぐ点検整備と、作業中の誤放出を防ぐ対策は別の目的の対策であり、どちらも欠かせません。
起動装置が自動式か手動式かにかかわらず、点検・整備・工事の場面では同じ誤放出防止対策が必要になります。
次は、通知が具体的に何を求めているのかを見ていきます。
うちは年に一回の点検だけですが、それでも対象になりますか。
はい、定期点検も対象です。
次は具体的な中身を見ていきましょう。
閉止弁と表示灯は何を求めているのか

弁を一つ付けるだけでは足りず、表示の仕方まで基準に含まれています。
弁を閉じているか開いているかを常時開・点検時閉の表示で示し、点検者が一目で分かるようにします。
さらに、その閉止状態は点滅する表示灯で操作箱と受信機・制御盤等の両方に示す必要があり、点滅できない場合は警報音を付加します。
自動連動のままの設備では、受信機と制御盤の両方に注意文章を表示することも求められています。
次は、この対策を「表示しただけ」で終わらせてしまいがちな落とし穴を見ていきます。
弁と表示灯さえ付いていれば、それで十分なんですよね。
実は表示の方式にも条件があります。
次は見落としやすい落とし穴を見ていきましょう。
表示だけで対策したつもりになっていないか

通知は、表示の方式と表示する場所についても具体的な基準を示しています。
常時点灯のままの表示灯や、単なる点灯だけの表示では、点検者が閉止状態を見落とすおそれがあります。
原則は点滅する表示灯であり、点滅できない機種であれば警報音を追加しなければなりません。
表示する場所も一箇所では足りず、防護区画出入口付近の操作箱と、受信機・制御盤等の両方に設ける必要があります。
平成9年の消防予第133号も同じ点検時対策の準用を求めており、自動連動のままの現場では注意文章の掲示もあわせて確認してください。
表示灯を一つ付けておけば十分だと思っていました。
場所も方式も二箇所必要です。
最後に確認手順をまとめます。
点検の前に何を確認しておけばよいのか

順番に照らし合わせてみてください。
- 集合管または操作管に常時開・点検時閉の表示を付けた閉止弁が設けられているかを点検業者に確認する
- 閉止弁の状態を示す表示灯が操作箱と受信機・制御盤等の両方に設けられているかを確認する
- 表示灯が点滅式かどうかを確認し、点滅できない機種であれば警報音が追加されているかを確かめる
- 起動方式が自動連動になっている場合は、受信機と制御盤に注意文章が掲示されているかを確認する
- 配管の腐食による漏えいがないか、日常の点検整備の記録をあわせて確認する
点検を業者に委託している場合でも、閉止弁と表示灯の位置は建物の関係者自身が把握しておくと安心です。
自動連動の設定を変更したときは、注意文章の掲示もあわせて見直すことを忘れないでください。
不明な点は、設備業者や消防設備士、所轄消防署に確認することをおすすめします。
うちも今日、閉止弁と表示灯の場所を点検業者に確認してみます。
それが一番確実な確認です。
よくある質問もあわせてご覧ください。
よくある質問
まとめ
閉止弁一つでも、こんなに細かく決まっているんですね。
誤放出を防ぐための仕組みです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防庁「ハロゲン化物消火設備・機器の使用抑制等について」(消防危第88号・消防予第161号・平成3年8月16日・消防庁予防課長・消防庁危険物規制課長)第3・4
- 消防庁「ガス系消火設備等の設置及び維持に係る留意事項について」(消防予第116号・平成10年7月17日・消防庁予防課長)
- 消防法第17条の3の3(消防用設備等の定期点検・報告義務)
- 消防法施行令第13条第1項(不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備の設置対象)
- 消防法施行規則第19条第4項第14号イ(イ)(二酸化炭素を放射する不活性ガス消火設備の起動方式)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





