二酸化炭素消火設備やハロゲン化物消火設備は、放出されると部屋の中の酸素濃度が下がり、そこにいる人に窒息の危険が及びます。
だからこそ、いつ・どうやって設備を作動させるかという起動方式の選び方が、消火の確実さだけでなく人の命そのものを左右します。
消防庁は平成7年の通知に続き、知見の蓄積や国際的な環境規制の趣旨も踏まえて起動方式の考え方を整理しました。
本記事では、部屋が無人か有人かで自動起動と手動起動をどう使い分けるべきかを解説します。
うちのサーバー室、ガス系の消火設備が入ってるんですけど、これって自動で作動するんですか。
部屋が無人か有人かで変わります。
まずは通知の考え方を確認しましょう。
無人と有人でそんなに扱いが違うとは知りませんでした。
起動方式は命に関わる部分です。
順番に見ていきましょう。
- ガス系消火設備の起動方式は平成10年の消防予第116号で整理されました
- 通常の使用形態で無人の防護区画は原則として自動起動とします
- 通常の使用形態で有人の防護区画は原則として手動起動とします
- 遅延時間は無人なら極力短く、有人なら避難のための必要最小限とします
- 点検など人がいる場合は、普段自動の区画でも手動起動に切り替える必要があります
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目次
ガス系消火設備の起動方式はなぜ通知で見直されたのか

放出された部屋に人がいれば、消火と同時に窒息の危険にさらされてしまいます。
だからこそ平成7年の消防予第89号に続き、平成10年の消防予第116号で起動方式の考え方があらためて整理されました。
背景には、ハロン代替のガス系消火剤が普及するなかで安全性の知見が蓄積したことに加え、温室効果ガスの排出抑制という京都議定書の趣旨もありました。
通知が特に重視しているのが、次にみる「起動方式」という部分です。
まずは、どんな部屋が対象になるのかを確認していきます。
ガス系の消火設備って、消しに行くだけでも怖いんですね。
酸欠の危険があるからこそ起動方式が大事なんです。
次は部屋の見分け方を見ていきましょう。
無人の防護区画と有人の防護区画はどう見分けるのか

まずはこの分け方そのものを押さえておきます。
無人電気室のように通常の使用形態で人がいない部屋は無人の防護区画、オペレーターが常駐する通信機械室のような部屋は有人の防護区画として扱います。
法令のうえでも、起動装置は手動式が原則で、常時人のいない場所などに限って自動式が認められる仕組みになっています。
つまり「無人だから自動」ではなく、「手動が原則だが無人なら自動にできる」という順番で考える必要があります。
この区分の違いが、次に見る起動方式の使い分けにそのままつながります。
うちのサーバー室、日中は担当者がいるけど夜間は無人になるんですけど、どっちで考えたらいいんでしょう。
通常の使用形態で判断します。
次は具体的な使い分けを見ていきましょう。
自動起動と手動起動はそれぞれどう使い分けるのか

ポイントは、遅延時間の長さにも表れます。
無人の防護区画は原則として自動起動とし、遅延時間も極力短くして早期消火を優先します。
有人の防護区画は原則として手動起動とし、遅延時間も避難に必要な最小限を確保します。
法令が定める20秒以上の遅延装置は、あくまで最低限の時間で、実際の長さは有人か無人かで調整することになります。
防災センターのように訓練された人だけがいる区画では、避難上支障がなければ遅延時間を短くしてよいともされています。
同じガス系消火設備でも、部屋によって遅延時間の考え方が違うんですね。
遅延時間の長さも無人か有人かで変わります。
次は実務で見落としやすい点を確認しましょう。
起動方式で見落としやすいのはどこか

通知が特に念を押しているのが、この点検時の扱いです。
無人が原則の電気室でも、点検や工事で人が入っている間は、自動起動のままにせず手動起動に切り替える必要があります。
このために設けられているのが自動手動切替え装置で、容易に操作できる箇所に設置することが法令で定められています。
切替え忘れは、点検している本人が消火剤の放出に巻き込まれる事故に直結します。
切替装置がどこにあり、どう操作するのかを、日頃から関係者全員が把握しておくことが欠かせません。
点検業者さんに切替えを任せっきりで、うちの担当者は場所すら知らないかもしれません。
切替装置の場所は必ず共有してください。
最後に確認事項をまとめます。
明日から何を確認すればよいのか

順番に照らし合わせてみてください。
- ガス系消火設備がある部屋が無人の防護区画か有人の防護区画かを再確認する
- その区画の起動方式が自動か手動か、遅延時間がどう設定されているかを点検記録で確認する
- 自動手動切替え装置がどこにあり、どう操作するのかを担当者全員で共有する
- 点検や工事で防護区画に人が入るときは、必ず手動起動に切り替えてから作業する
- 防災センターなど訓練された人だけがいる区画があれば、遅延時間の設定を消防設備士に相談する
そのうえで起動方式と遅延時間が実際の使い方に合っているかを点検記録で確かめます。
切替装置の位置と操作方法は、点検業者だけでなく建物側の担当者も把握しておく必要があります。
点検や工事の際に手動へ切り替える手順も、あらかじめ消防設備士と確認しておくと安心です。
起動方式が実情に合っているかどうかは、所轄消防署への相談でも確かめられます。
うちも今日、電気室が無人か有人かと切替装置の場所を確認してみます。
それが一番確実な確認です。
よくある質問もあわせてご覧ください。
よくある質問
まとめ
起動方式ひとつでも、こんなに配慮が要るんですね。
人の命を守る仕組みです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防庁「ガス系消火設備等の設置及び維持に係る留意事項について」(消防予第116号・平成10年7月17日・消防庁予防課長)
- 消防庁「ガス系消火設備等に係る取扱いについて」(消防予第89号・平成7年5月10日)
- 消防法施行令第13条第1項(不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備の設置対象)
- 消防法施行規則第19条第4項第14号・第16号・第19号(起動装置・切替装置・遅延装置の基準)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





