ガス漏れ火災警報設備は、火災だけでなくガス漏れそのものを早期に知らせるための設備で、点検のたびにガス濃度を指示する装置の目盛りなどを確認する作業が欠かせません。
ところがこの確認作業のうち、どこまでが「点検」で済み、どこからが消防設備士でなければできない「整備」になるのか、現場では線引きに迷う場面があります。
実は平成20年11月14日消防予第301号という通知が、この境目を具体的に示しています。
今回はガス濃度指示装置の校正が点検で足りる理由と、センサ交換や部品交換が整備になる理由、消防検査との関わりをあわせて解説します。
ガス漏れ検知器の点検で指示装置の目盛りを合わせたのですが、これは点検ですか整備ですか。
実は作業の中身によって答えが変わるんです。
校正で直らずセンサを交換したときは、どちらになりますか。
そこから先は消防設備士による整備になります。
- ガス漏れ火災警報設備の点検は消防設備士免状の交付を受けている者又は総務省令で定める資格を有する者等が行う
- ガス濃度を指示する装置の零点及び指示値の確認による校正は工事又は整備には当たらない
- 零点又は指示値の調整が行えない場合のセンサ交換は整備に該当する
- 警報設定値での警報異常時における機器性能に係る調整又は部品交換等も整備に該当する
- 点検の結果は維持台帳に記録し消防長又は消防署長に報告しなければならない
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目次
ガス漏れ火災警報設備の点検はなぜ点検と整備に分かれるのか

まずはこの点検を行える人の範囲と、点検とは別に「整備」という区分がある理由を確認します。
消防法第17条の3の3は、防火対象物の関係者に対し、政令で定めるものについては消防設備士免状の交付を受けている者又は総務省令で定める資格を有する者に点検させることを求めています。
一方、消防設備士でなければ行えない「整備」は消防法第17条の5が定め、消防法施行令第36条の2第2項で対象となる消防用設備等の種類が列挙されており、ガス漏れ火災警報設備もそのひとつに含まれます。
つまり同じ「設備に触れる作業」でも、点検の範囲に収まるか整備に踏み込むかで、必要な資格がまったく変わってくるのです。
この線引きが実際どこに引かれるのかを、ガス濃度を指示する装置の校正を例に見ていきます。
同じ設備を触っていても、資格が要る場合と要らない場合があるんですね。
はい、作業の中身が線引きの基準です。
零点や指示値の校正はなぜ点検で済むのか

温泉採取施設に設けられたこの装置について、平成20年11月14日消防予第301号が具体的な考え方を示しています。
温泉採取施設に設けるガス漏れ火災警報設備は、消防法施行令第21条の2第1項第三号により設置が義務づけられる代表例のひとつです。
このガス濃度を指示する装置は使用とともにずれが生じるため、点検では零点及び指示値の確認によって目盛り等を合わせ直す作業が繰り返し行われます。
平成20年11月14日消防予第301号は、この確認による校正について工事又は整備には当たらないと明確にしました。
確認して合わせるだけの校正であれば、消防設備士の資格を持たない点検者でも行ってよいということです。
目盛りを合わせ直すだけなら、点検の範囲で終わるんですね。
はい、確認による校正は点検の範囲です。
センサ交換や部品交換はなぜ整備になるのか

同じ301号通知が、整備に踏み込む具体的な作業もあわせて示しています。
平成20年11月14日消防予第301号は、零点又は指示値の調整が行えない場合のセンサ交換や、警報設定値での警報異常時における機器性能に係る調整又は部品交換等を整備に該当するとしています。
消防法施行令第36条の2第2項は、ガス漏れ火災警報設備を含む消防用設備等の整備を消防設備士でなければ行えない作業として定めており、この規定が実際に及ぶ範囲を示した形です。
校正では追いつかない不具合をセンサや部品の交換で直す作業は、電源の部分を除いて消防設備士でなければ行えません。
現場で校正を試みても指示値が合わない、あるいは警報の誤作動が続くようであれば、その時点で整備の領域に入ったと判断する必要があります。
校正で直らなくてセンサを交換するなら、資格が必要になるんですね。
はい、センサ交換は消防設備士の仕事です。
点検と整備を混同すると消防検査でどう困るのか

点検結果は記録され、報告の対象にもなるためです。
消防法施行規則第31条の6第3項は、防火対象物の関係者に対し、点検を行った結果を維持台帳に記録するとともに、防火対象物の区分に応じた期間ごとに消防長又は消防署長へ報告することを求めています。
維持台帳には工事や整備の経過も編冊されるため、点検で済むはずの校正と、消防設備士に依頼すべき整備が記録上で入れ替わっていると、報告書と実際の作業内容が食い違うことになります。
無資格者がセンサ交換のような整備に踏み込んでいれば、それ自体が消防法第17条の5に違反した状態のまま報告されていることにもなりかねません。
点検と整備を最初から区別して記録しておくことが、あとの消防検査で困らないための土台になります。
記録の書き方まで気にしていませんでした。
点検と整備は記録の段階から分けておきましょう。
現場では点検か整備かをどう見分ければよいか

迷ったときほど、法律が定める確認の仕組みに立ち返ることになります。
消防法第4条第1項は、消防長又は消防署長が火災予防のために必要があるときに、関係のある場所へ立ち入って消防対象物の位置、構造、設備及び管理の状況を検査できると定めています。
立入検査では維持台帳や点検結果報告書も確認の対象になるため、校正で済ませるべき作業と整備として依頼すべき作業を、日頃から切り分けておく必要があります。
現場での目安は零点又は指示値の調整で直るかどうかで、直らずセンサ交換や部品交換に至った時点で消防設備士への依頼に切り替えることです。
この順番を守っておけば、点検記録と整備記録のどちらも矛盾なく残り、消防検査でも説明に困りません。
校正で直るかどうかを、まず見ればいいんですね。
はい、直らなければ整備に切り替えましょう。
よくある質問
まとめ
点検と整備の境目がよく分かりました。
ガス漏れ火災警報設備の点検や整備のご相談もお受けしています。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第17条の3の3(消防用設備等又は特殊消防用設備等の点検及び報告)
- 消防法第17条の5(消防設備士でなければ行つてはならない工事又は整備)
- 消防法施行令第36条の2(消防設備士でなければ行つてはならない工事又は整備)
- 消防法施行令第21条の2(ガス漏れ火災警報設備に関する基準)
- 消防法施行規則第31条の6(消防用設備等又は特殊消防用設備等の点検及び報告)
- 消防法第4条(資料提出命令、報告の徴収及び立入検査等)
- 消防用設備等の試験基準及び点検要領の一部改正について(平成20年11月14日消防予第301号)留意事項
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。個別の設備の点検・整備区分の判断は所轄消防署にご確認ください。





