認知症高齢者グループホームで火災が起きたあと、全国の施設の防火の実態は、どこまで調べられたのでしょうか。
平成22年3月13日未明、北海道札幌市の認知症高齢者グループホームで火災が発生しました。
消防庁は全国の施設を対象に緊急調査を行い、6月10日の消防予第260号でその結果を通知しました。
この記事では、通知に書かれた調査結果と対処方針、現行の条文との関係、施設で確かめたいことを解説します。
全国のグループホームを、国が調べたのですか。
どこまで分かったのか気になります。
消防庁と厚生労働省、国土交通省の3省庁が調べています。
まず、通知の書き出しから確かめましょう。
調査で、どんなことが分かったのですか。
設備の設置状況や防火管理の不備が、数字で示されました。
順に見ていきます。
- 消防庁予防課長は、平成22年6月10日の消防予第260号で、札幌市の火災を受けた緊急調査の結果を示し、小規模社会福祉施設等の防火安全対策の徹底を求めました。
- 調査対象は全国の認知症高齢者グループホーム9,952事業所(10,451棟)で、スプリンクラー設備があった施設は39.5%でした。
- 設置義務があるのに未設置の施設のほとんどは経過措置中で、違反とされたのは少数でした。
- 通知は消防に、経過措置期間中の施設の早期設置、違反の是正、夜間を想定した避難訓練を求めています。
- 現行の令は、この種の施設に面積の条件を置かずに設備を求めており、通知の表の275平方メートルの区分は現行の条文とは異なります。
▼
目次
消防庁はなぜ札幌市の火災を受けて全国のグループホームを緊急調査したのか

まず、その部分を引いて確かめます。
平成22年3月13日未明に発生した北海道札幌市の認知症高齢者グループホーム火災を受け、消防庁では同日付けで「社会福祉施設等に係る防火対策の更なる徹底について」(平成22年3月13日付け消防予第130号)を発出するとともに、「小規模社会福祉施設等に係る緊急調査の実施について」(平成22年3月18日付け消防予第131号)により、小規模社会福祉施設等に対し防火安全対策の更なる徹底及び関係部局と連携した緊急調査の実施をお願いしていたところです。この結果については平成22年6月7日付けで連絡したところですが、この度、厚生労働省、国土交通省における調査結果を受けて、別添1のとおり、3省庁緊急調査結果と今後の対処方針について公表しましたので、お知らせします。
3月13日の消防予第130号は、社会福祉施設等の防火対策の更なる徹底を求めるものでした。
5日後の3月18日の消防予第131号は、緊急調査の実施を求めています。
結果は6月7日に連絡され、6月10日の消防予第260号で、厚生労働省と国土交通省の調査を加えた結果が示されました。
通知の末尾には、消防組織法第37条の規定に基づく助言として発出されたと書かれています。
| 日付 | 通知など | 内容 |
|---|---|---|
| 平成22年3月13日 | 火災の発生と消防予第130号 | 札幌市の認知症高齢者グループホームで火災が発生し、同日付けで社会福祉施設等の防火対策の更なる徹底を通知 |
| 3月18日 | 消防予第131号 | 小規模社会福祉施設等に係る緊急調査の実施を通知 |
| 6月7日 | 結果の連絡 | 通知に「6月7日付けで連絡した」と書かれている |
| 6月10日 | 消防予第260号 | 緊急調査の結果を踏まえた防火安全対策の徹底を通知 |
火災のあと、通知は何度も出されたのですか。
3月に2本、6月に結果を伝える通知が出ています。
この記事で扱うのは、6月10日の消防予第260号です。
緊急調査はどの施設を対象に、消防用設備等の何を調べたのか

まず、調査対象の書き方から確かめます。
全国の認知症高齢者グループホーム9,952事業所(10,451棟)
※1事業所を複数棟としている場合もあるため棟数が若干上回っている。
スプリンクラー設備は、設置義務があるのに未設置の4,351棟のうち、経過措置中が4,331棟(99.5%)で、違反は20棟です。
自動火災報知設備は、未設置の1,474棟のうち、経過措置中が1,449棟(98.3%)で、違反は25棟です。
消防機関へ通報する火災報知設備は、設置義務がある施設の未設置2,739棟のうち、経過措置中が2,717棟(99.2%)で、違反は22棟です。
通知は、経過措置期間を平成24年3月31日までと書いています。
| 設備と区分 | 設置有 | 設置無 | 設置無の内訳 |
|---|---|---|---|
| スプリンクラー設備(設置義務有、275平方メートル以上) | 3,987棟(47.8%) | 4,351棟(52.2%) | 違反20棟(0.5%)、経過措置中4,331棟(99.5%) |
| スプリンクラー設備(設置義務無、275平方メートル未満) | 142棟(6.7%) | 1,971棟(93.3%) | 通知の表に内訳の記載なし |
| 自動火災報知設備(全体) | 8,977棟(85.9%) | 1,474棟(14.1%) | 違反25棟(1.7%)、経過措置中1,449棟(98.3%) |
| 消防機関へ通報する火災報知設備(設置義務有) | 7,602棟(73.5%) | 2,739棟(26.5%) | 違反22棟(0.8%)、経過措置中2,717棟(99.2%) |
| 消防機関へ通報する火災報知設備(設置義務無) | 32棟(29.1%) | 78棟(70.9%) | 通知の表に内訳の記載なし |
設備がない施設は、みんな違反だったのですか。
ほとんどが経過措置期間中の施設でした。
違反とされたのは、ごく一部です。
通知は消防に何を求め、3省庁はどんな対処方針を示したのか

厚生労働省と国土交通省の方針は、別添に付けられています。
1 消防法施行令改正に係る指導 平成19年6月消防法施行令等改正によるスプリンクラー設備、自動火災報知設備及び消防機関に通報する火災報知設備の設置基準強化について、経過措置期間中(平成24年3月31日まで)のものにあっても早期の設置を促進する。
2 消防法令違反等の是正の徹底 消防法令違反等の防火安全上の不備事項が認められた施設等について、特に違反が多く認められた防火管理面の対策の徹底等、重点的な是正指導を推進する。
3 避難対策の充実等 夜間を想定し、施設等の構造、入所者の人数、管理体制等の具体的状況に即した避難訓練の実施により、適切な避難誘導体制の確保を図る。また、消防用設備等の自主設置を含め避難対策のさらなる充実や出火防止対策の徹底を図る。
一つ目は、平成19年6月の政令改正による設置基準の強化で、経過措置期間中の施設にも早期の設置を促すことです。
二つ目は違反の是正で、特に違反が多かった防火管理面の対策の徹底が挙げられています。
三つ目は避難対策で、夜間を想定し、施設の構造、入所者の人数、管理体制に即した訓練を求めています。
厚生労働省と国土交通省の対処方針は、同じ通知の別添にまとめられています。
| 省庁 | 対処方針として示された内容 |
|---|---|
| 消防庁 | 令改正に係る指導、消防法令違反等の是正の徹底、避難対策の充実等 |
| 厚生労働省 | 275平方メートル未満の施設のスプリンクラー設備の早期整備を支援し、自動火災報知設備と消防機関へ通報する火災報知設備の設置も支援。地域住民が参加する避難訓練の実施や、運営推進会議への消防関係者の出席要請などを促す |
| 国土交通省 | 緊急点検が完了していない特定行政庁に点検の実施と結果の報告を求め、建築基準法令違反は迅速な是正を要請し、定期的なフォローアップ調査の結果を公表する |
防火管理面の対策とは、具体的に何を指すのですか。
通知は、具体例までは挙げていません。
ただ、別添の調査は、防火管理者、消防計画、訓練などの項目に分かれています。
実務で見落としやすいのは、設備以外のどこなのか

まず、厚生労働省が示した地域との連携の方針を引きます。
(2)地域との連携体制の促進 認知症高齢者グループホームにおいて、非常災害時に地域住民・消防関係者等との円滑な連携が図られるよう、地域住民が参加する避難訓練の実施や運営推進会議における消防関係者の出席要請などを促します。
学校、病院、(略)その他多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め、政令で定めるところにより、当該防火対象物について消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、(略)その他防火管理上必要な業務を行わせなければならない。
防火管理では、消防訓練の違反が1,076棟(10.3%)、防炎規制の違反が1,042棟(10.0%)、設備点検報告の未報告が768棟(7.3%)でした。
夜間の体制は、1ユニットの施設の96.8%で夜勤が1人でした。
避難訓練に地域住民が参加していたのは、2,632事業所(26.5%)にとどまります。
消防法第17条の3の3は、防火対象物の関係者に、消防用設備等の点検と、その結果の報告を求めています。
| 分野 | 数字 | 調べた省庁 |
|---|---|---|
| 消防訓練の違反 | 1,076棟(10.3%) | 消防庁 |
| 防炎規制の違反 | 1,042棟(10.0%) | 消防庁 |
| 設備点検報告の未報告 | 768棟(7.3%) | 消防庁 |
| 消防計画の未届出 | 443棟(4.2%) | 消防庁 |
| 防火管理者の未選任 | 335棟(3.2%) | 消防庁 |
| 1ユニットで夜勤が1人 | 3,809施設(96.8%) | 厚生労働省 |
| 2ユニットで夜勤が1人 | 866施設(16.5%) | 厚生労働省 |
| 避難訓練に地域住民が参加 | 2,632事業所(26.5%) | 厚生労働省 |
| 建築基準法令(防火・避難関係)の違反 | 889件(点検済の14.9%) | 国土交通省 |
| そのうち主な違反 | 非常用照明装置427件、排煙設備262件、間仕切壁227件、施錠装置179件 | 国土交通省 |
夜勤が1人だと、避難はどうなるのでしょうか。
通知は、夜間を想定した避難訓練を求めています。
夜間の想定を、訓練の内容に入れたいところです。
現行の条文と照らして、自分の施設では何を確認すればよいのか

まず、設備の条文が今どう書かれているかを確かめます。
スプリンクラー設備は、次に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものとする。
一 次に掲げる防火対象物((略))で、火災発生時の延焼を抑制する機能を備える構造として総務省令で定める構造を有するもの以外のもの
ロ 別表第一(六)項ロ(1)及び(3)に掲げる防火対象物
(1) 老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、(略)同条第六項に規定する認知症対応型老人共同生活援助事業を行う施設その他これらに類するものとして総務省令で定めるもの
自動火災報知設備は、次に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものとする。
一 次に掲げる防火対象物
イ 別表第一(二)項ニ、(五)項イ、(六)項イ(1)から(3)まで及びロ、(十三)項ロ並びに(十七)項に掲げる防火対象物
消防機関へ通報する火災報知設備は、次に掲げる防火対象物に設置するものとする。
一 別表第一(六)項イ(1)から(3)まで及びロ、(十六の二)項並びに(十六の三)項に掲げる防火対象物
令第12条第1項第1号ロは(6)項ロ(1)を、令第21条第1項第1号イと令第23条第1項第1号は(6)項ロを、面積の条件なしで対象にしています。
ただし、スプリンクラー設備は、延焼を抑制する機能を備える構造として総務省令で定める構造を有するものが、この号から除かれています。
通知の表が「設置義務有(275平方メートル以上)」と「設置義務無(275平方メートル未満)」に分けた区分は、現行の令第12条第1項第1号ロには見当たりません。
通知が示した経過措置の期限(平成24年3月31日)も、すでに過ぎています。次の五つは通知に書かれた義務ではなく、通知と条文を踏まえた実務上のおすすめです。
- スプリンクラー設備、自動火災報知設備、消防機関へ通報する火災報知設備の三つが設置されているかを、設備の一覧で確かめる
- 設備の点検結果を、消防長又は消防署長へ報告しているか、報告の控えを見る
- 防火管理者の選任と、消防計画の届出の控えがそろっているかを見る
- 消防訓練を夜間を想定した内容で行い、記録が残っているかを見る
- 避難経路の非常用照明装置や施錠装置に、不備がないかを見る
まず、うちの設備の一覧と点検報告の控えを確かめます。
それが入り口です。
夜間を想定した訓練の記録も、あわせて確かめてください。
よくある質問
まとめ
グループホームの防火を、確かめます!
消防設備の点検は、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防予第260号「小規模社会福祉施設等に係る緊急調査の結果を踏まえた防火安全対策の徹底について」(平成22年6月10日 消防庁予防課長)別添1から別添3
- 消防法(昭和23年法律第186号)第8条・第17条の3の3 e-Gov法令検索
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第12条・第21条・第23条・別表第一 e-Gov法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





