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ごみ屋敷はなぜ消防だけでは解決できないのか|全国181事例調査からみる福祉との連携を解説

ごみ屋敷はなぜ消防だけでは解決できないのかのアイキャッチ画像

「隣の家がごみで埋まっていて心配」——そんな相談を受けたことはありませんか。
総務省がまとめた全国調査では、こうした「ごみ屋敷」のうち消防が関わっている事例はごく一部にとどまっていました。
消防庁は消防予第416号でこの調査結果を全国の消防本部に周知しています。
この記事では全国181事例の調査結果から、消防の権限だけでは解決できない理由と、解消につながった事例の共通点を解説します。

近所にごみ屋敷があって、火事にならないか心配です。

実は消防が関わっている事例は全体の一部にとどまっています。

え、消防はもっと動いてくれるものだと思っていました。

個人の住居には立入りの壁があり、消防だけでは解決しにくいんです。

この記事の結論
  • 総務省行政評価局は全国181事例の「ごみ屋敷」対策調査を実施し、消防庁は消防予第416号で各消防本部に結果を周知しました。
  • 周辺地域に悪影響が及んでいる事例は約8割(149事例)、火災の心配がある事例は103事例でした。
  • しかし消防担当が関わっている事例は約1割(26事例)にとどまっています。
  • 消防法第3条の措置命令や第4条の立入検査には、個人の住居であることによる限界があります。
  • 環境部局と福祉部局が連携して対応した事例の解消率は約4割で、単独対応より高くなっています。

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ごみ屋敷はなぜ消防だけでは解決できないのかを示す4ステップの概要図解

なぜ「ごみ屋敷」対策の全国調査が行われたのか

ごみ屋敷の家屋と調査のチェックリストを示すイラスト
物品の堆積による悪臭や害虫の発生、火災のおそれなど、いわゆる「ごみ屋敷」は周辺地域の生活環境に悪影響を及ぼします。
それでも解消が進まない事案が全国の市区町村にあることを受け、初めての全国調査が行われました。
「ごみ屋敷」対策に関する調査の結果について(通知)(令和6年8月28日、消防庁予防課長発出)によれば、総務省行政評価局による「ごみ屋敷」対策に関する行政運営改善調査の結果が公表され、各消防本部は調査結果報告書及び事例集を参考にするとともに、業務中や広聴等で「ごみ屋敷」を発見した際は環境部局等関係機関に情報提供するなど連携を図られるようお願いしますとされています。調査は人口10万人以上の30市区を対象に、比較的多くの部署で連携・対応している事例を中心に181事例を選定して行われました。
この調査は「ごみ屋敷」の解消を直接の目的とした法律や国の制度が無い中で行われた初めての全国横断調査です。
市区町村は堆積物の排出だけでなく、居住者への福祉的支援など複合的な対応を迫られる場面が多く、これまで関係省庁が連名で通知を出すこともありませんでした。
そこで総務省行政評価局は、環境省・厚生労働省・総務省(消防庁)・国土交通省に対し、活用できる支援方策や取組事例をパッケージとして示すよう要請しました。
消防庁はこの結果を消防予第416号で各消防本部へ周知し、業務中に「ごみ屋敷」を発見した際の連携を求めています。
まずは全国でどれくらいの事例が火災の心配を抱えているのか、次の項目で見ていきます。

今まで国がまとめて調べたことは無かったんですね。

はい、今回初めて全国181事例をまとめて分析した調査です。

全国のごみ屋敷でどれくらい火災の心配があるのか

ガスボンベと新聞紙の山、火災注意の三角マークを示すイラスト
「ごみ屋敷」と聞くと悪臭や害虫のイメージが先に来るかもしれません。
しかし調査結果を見ると、火災の心配を抱えている事例が半数を超えています。
同調査結果によれば、調査対象181事例のうち周辺地域に何らかの悪影響が及んでいる事例は約8割(149事例)で、そのうち「火災発生のおそれ」を懸念する事例は103事例ありました。ところが消防担当が対応に参加している事例は約1割(26事例)にとどまっています。堆積物にたばこの吸い殻が含まれていたことから消防担当が管理について助言した事例や、住宅前に放置された大量のガスボンベについて消防担当が撤去を助言し実現した事例が紹介されています。
火災の心配がある事例の多くに、消防はまだ関わっていません。
調査した181事例のうち複数の部署で対応している事例は約8割(151事例)で、5部署以上が関わる事例も39事例ありました。
それでも消防担当が加わっているのは26事例にとどまり、たばこの吸い殻やガスボンベなど分かりやすい火災リスクに絞って助言している様子がうかがえます。
悪臭や害虫の問題は環境部局が動きやすい一方、火災の心配は消防でなければ気づきにくい視点です。
なぜ消防の関与がこれほど少ないのか、次の項目で理由を確認します。

ガスボンベが放置されているのは、たしかに怖いです。

それでも消防だけで動ける場面は実はかなり限られています。

なぜ消防の権限だけでは解決に至らないのか

施錠された住宅の玄関と禁止マーク、命令書を示すイラスト
消防には屋外の危険な物件を片づけさせる権限があります。
それでも「ごみ屋敷」の多くが解消に至らないのはなぜでしょうか。
消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第3条
消防長(略)、消防署長その他の消防吏員は、屋外において火災の予防に危険であると認める行為者又は火災の予防に危険であると認める物件若しくは消火、避難その他の消防の活動に支障になると認める物件の所有者、管理者若しくは占有者で権原を有する者に対して、放置され、又はみだりに存置された物件の整理又は除去その他の必要な措置をとるべきことを命ずることができる。(略)
消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第4条
消防長又は消防署長は、火災予防のために必要があるときは、(略)当該消防職員にあらゆる仕事場、工場若しくは公衆の出入する場所その他の関係のある場所に立ち入つて、消防対象物の位置、構造、設備及び管理の状況を検査させ、(略)ただし、個人の住居は、関係者の承諾を得た場合又は火災発生のおそれが著しく大であるため、特に緊急の必要がある場合でなければ、立ち入らせてはならない。
第3条の措置命令は「屋外」の物件が対象で、個人の住居内部の堆積物には及びません。
また第4条の立入検査も、個人の住居は本人の承諾か火災発生のおそれが著しく大きい場合でなければ行えません。
さらに調査結果によれば、未解消事例の約3割は居住者が堆積物を「有価物」であると主張し、排出に応じない状況にありました。
有価物と主張されると廃棄物処理法上の「廃棄物」として扱いにくく、行政指導も難しくなります。
一方で公営住宅法や消防法に基づく指導・助言により排出された事例もあり、法令の組み合わせ方次第で結果が変わることも分かっています。

本人が「これは大事な物だ」と言い張ったら、それまでなんですか。

難しい局面ですが、他の部署との連携で解消に至った事例もあります。

解消できた事例にはどんな共通点があるのか

複数の役所の建物が1軒の家とつながっている連携のイラスト
消防だけでは解決できないなら、どうすれば「ごみ屋敷」は解消に向かうのでしょうか。
解消できた事例には、対応する部署の組み合わせに共通点がありました。
同調査結果によれば、環境・福祉の両担当で対応した89事例の解消率は約4割で、福祉担当又は環境担当のいずれかのみで対応した事例よりも解消率は高くなっています。居住者の約7割は健康面や経済面の課題(要介護、認知症、精神疾患、生活困窮等)を抱えており、介護施設入所やヘルパー導入、成年後見申立てなどの福祉的支援や、ごみ出し支援等の経済的支援により解消した事例が延べ57事例ありました。
同調査結果によれば、解消事例62事例のうち、福祉的支援を継続し再発防止に寄与していると考えられる事例は約7割(45事例)でした。一方、未解消事例のうち堆積が再発した事例や再発する可能性があると市区が判断している事例は合わせて約3割(37事例)あり、再発防止には福祉的支援の継続が有効とされています。
解消に至った事例の多くは、環境部局と福祉部局が一緒に動いています。
堆積物の排出だけを求めても、健康面・経済面の課題を抱える居住者には効果が続きにくいためです。
単身世帯は181事例のうち約6割(107事例)を占め、そのうち半数以上(58事例)が65歳以上の高齢者でした。
排出できても見守りをやめてしまえば再発してしまうため、福祉的支援の継続が再発防止の鍵になっています。
消防が動くとすれば、この連携の輪に「火災の心配」という情報を提供する役割が考えられます。

片づけるだけじゃなくて、見守りも大事なんですね。

はい、継続した支援が再発を防ぐ一番のポイントです。

明日から自分の地域でごみ屋敷を見つけたらどうすればよいのか

チェックリストと電話の受話器を示すイラスト
ここまでの内容を踏まえ、明日から自分の地域でできることを整理します。
むずかしい法律判断は、ここまでの内容で足ります。
「ごみ屋敷」対策に関する調査の結果について(通知)によれば、各消防本部は調査結果報告書及び事例集を参考にするとともに、業務中や広聴等で「ごみ屋敷」を発見した際は、環境部局等関係機関に情報提供するなど連携を図られるようお願いしますとされています。
  • 周辺で火災の心配がある堆積を見かけたら、まず所轄消防署へ情報提供する
  • 単身高齢者や生活に困っている様子がうかがえるときは、市区町村の福祉部局にも連携を依頼する
  • 自分の判断で無理に片づけを迫らず、環境部局等の関係機関につなぐ
  • 一度解消しても、再発防止のためには継続した見守りが有効だと知っておく
確認すべきことは、火災の心配の有無と、居住者の生活状況の2点に整理できます。
火災の心配があれば所轄消防署へ、健康面や経済面の課題がありそうなら福祉部局へ、それぞれ情報提供することから連携は始まります。
自分だけで解決しようとしないことが、遠回りに見えて一番の近道です。
関係機関につないだあとも、状況が気になるなら見守りを続けることが再発防止につながります。

まずは所轄の消防署に連絡してみます。

情報提供だけでも、連携の第一歩になります。

よくある質問

Q全国にごみ屋敷はどれくらいあるのですか?
A環境省の別の調査によれば、全国の「ごみ屋敷」の認知件数は平成30〜令和4年度の累計で5,224件ありました。今回の調査ではそのうち代表的な181事例を選定して詳しく分析しています。
Q消防はごみ屋敷にどこまで関与できるのですか?
A消防法第3条により火災予防上危険な放置物件の除去等を命じることができますが、個人の住居への立入りは第4条により承諾を得た場合か火災発生のおそれが著しく大きい場合に限られます。今回の調査で消防担当が関与した事例は約1割(26事例)にとどまりました。
Qなぜ堆積物を撤去できないケースがあるのですか?
A未解消事例の約3割は、居住者が堆積物を有価物であると主張しており、廃棄物処理法上の「廃棄物」として扱うことが難しく、撤去の指導が困難になっています。
Q解消のために効果的な対応は何ですか?
A環境部局と福祉部局が連携し、介護や医療、生活困窮対策などの福祉的支援を組み合わせて対応した事例で解消率が高くなっています。解消後も見守りなどの支援を継続することが再発防止にもつながります。

まとめ

✔総務省行政評価局は全国181事例の「ごみ屋敷」対策調査を実施し、消防庁が消防予第416号で各消防本部に周知した
✔周辺地域に悪影響が及ぶ事例は約8割(149事例)、火災の心配がある事例は103事例あった
✔消防担当が関わっている事例は約1割(26事例)にとどまる
✔消防法第3条の措置命令・第4条の立入検査には、個人の住居であることによる限界がある
✔未解消事例の約3割は堆積物を有価物と主張しており、撤去指導が難しい
✔環境部局と福祉部局が連携して対応した事例の解消率は約4割で、単独対応より高い
✔明日からの対応は、火災の心配があれば消防へ、健康や生活の課題があれば福祉部局へ情報提供し連携することに整理できる

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情報提供の窓口選びから、㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 「ごみ屋敷」対策に関する調査の結果について(通知)(令和6年8月28日 消防予第416号 消防庁予防課長)
  • 「ごみ屋敷」対策に関する行政運営改善調査 結果報告書(令和6年8月 総務省行政評価局)
  • 消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第3条
  • 消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第4条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。個々の事案への対応は市区町村や関係機関の判断によって異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署や市区町村の担当部局にご確認ください。

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