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高さ2メートルを超える擁壁はなぜ建物と同じ構造基準を満たさなければならないのか|建築基準法施行令第142条が定める工作物への準用を解説

擁壁にも建物と同じ構造基準がかかる|建築基準法施行令第142条の解説記事アイキャッチ

住宅地や商業施設の敷地の境目で、コンクリートや石で組まれた擁壁を見かけることがあります。
擁壁は建物ではなく「工作物」ですが、一定の高さを超えると建築基準法の対象になります。
背後の土砂を支え続ける構造物である以上、見た目以上に厳しい基準が定められています。
対象になれば、材料の選び方から建物と同じ構造強度の規定まで、幅広い基準を満たさなければなりません。

うちの敷地の境目に高さ3メートルほどの擁壁があるんですが、あれも建築基準法の対象になるんですか。

高さ2メートルを超える擁壁なら、建築基準法施行令の対象になり、材料や構造にも基準がかかりますよ。

土を支えているだけの壁なのに、そんなに細かい基準があるんですね。

崩れれば背後の土砂ごと隣地や道路に流れ出すからです。
今日はその基準を一緒に確認しましょう。

この記事の結論
  • 高さ2メートルを超える擁壁は「工作物」として建築基準法施行令の対象になります。
  • 主要な部分を鉄筋コンクリート造や石造等の腐食しない材料とし、石造では裏込めコンクリートで石を結合しなければなりません。
  • 仕様どおりの構造方法を選ぶか、国土交通大臣が定める基準の構造計算で安全性を確かめるか、いずれかのルートを満たす必要があります。
  • 対象になると、建物の基礎や鉄筋コンクリート造と同じ構造強度の規定が広く準用されます。
  • 工事現場の危害防止に関する規定(第七章の8)も準用され、施工中の安全対策も求められます。

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擁壁の高さ確認から材料選び構造強度の準用規定確認までの4つのステップの図解

なぜ高さ2メートルを超える擁壁にも建物と同じ基準がかかるのか

住宅と敷地境界の擁壁に同じ青チェックマークが付いている図
法律上「建築物」に当たらない工作物にも、建物と同じ安全基準を求める仕組みがあります。
擁壁もこの仕組みの対象で、根拠になっているのが建築基準法施行令第142条です。
(建築基準法施行令第百四十二条第一項)第百三十八条第一項に規定する工作物のうち同項第五号に掲げる擁壁(以下この条において単に「擁壁」という。)に関する法第八十八条第一項において読み替えて準用する法第二十条第一項の政令で定める技術的基準は、次に掲げる基準に適合する構造方法又はこれと同等以上に擁壁の破壊及び転倒を防止することができるものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いることとする。
擁壁も、煙突や広告塔と並んで建築基準法第88条第1項が定める準用の対象です。
政令(建築基準法施行令)が対象の種類と具体的な基準を定める仕組みは、他の工作物とまったく同じです。
条文が守ろうとしているのは擁壁の破壊及び転倒の防止で、背後の土砂を支え続けられなくなる事態を避けることが目的です。
根拠となる建築基準法第88条第1項は、擁壁を含む工作物ごとに個別の政令が対象と基準を定める仕組みそのものを支えています。
まずは自分の敷地にある擁壁がこの対象に入るかどうかを、次の章で確認しましょう。

うちの擁壁も、建築基準法が関係あるとは思ってもみませんでした。

高さの条件を満たせば対象になります。
次は具体的にどんな擁壁が対象かを見ていきましょう。

どんな擁壁が対象になるのか

低い擁壁にマーク無し高い擁壁に青チェックマークが付いている図
対象になるかどうかは、擁壁の高さだけで判断します。
他の工作物と比べても、境目になる高さはかなり低く設定されています。
(建築基準法施行令第百三十八条第一項)五 高さが二メートルを超える擁壁
対象は高さ2メートルを超える擁壁に限られます。
煙突の6メートルや広告塔の4メートルと比べても、擁壁の境目は際立って低く、住宅の敷地にある擁壁でも対象になりやすい水準です。
高さは、擁壁の下端から上端までの垂直距離で測るのが基本で、盛土や地盤の高低差を含めた実際の高さで判断します。
自分の敷地にある擁壁の高さを、まず実測することから始めましょう。

他の工作物より対象になる高さがずいぶん低いんですね。
うちの擁壁も対象になりそうです。

高さを測るところが第一歩ですね。
対象に入ると分かったら、次は何を満たすかを見ましょう。

擁壁を新しく造るときは何を満たさなければならないのか

鉄筋コンクリート造の擁壁の断面に裏込めコンクリートと水抜き穴が描かれている図
求められる中身は、材料の選び方から安全性の確かめ方まで複数あります。
土を支えるだけの壁だからといって、簡易な扱いにはなりません。
(建築基準法施行令第百四十二条第一項)一 鉄筋コンクリート造、石造その他これらに類する腐食しない材料を用いた構造とすること。 二 石造の擁壁にあつては、コンクリートを用いて裏込めし、石と石とを十分に結合すること。 三 擁壁の裏面の排水を良くするため、水抜穴を設け、かつ、擁壁の裏面の水抜穴の周辺に砂利その他これに類するものを詰めること。 五 その用いる構造方法が、国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて確かめられる安全性を有すること。
材料は鉄筋コンクリート造や石造等の腐食しない材料に限られます。
石造にする場合は、コンクリートで裏込めして石と石を十分に結合しなければならず、石を積んだだけの構造は認められません。
さらに裏面の排水を良くするため水抜穴を設け、その周辺に砂利等を詰めることも条件のひとつです。
そして最後に、選んだ構造方法が国土交通大臣の定める基準に従った構造計算によって安全性を確かめられたものであることが求められます。
つまり材料・裏込め・水抜穴という仕様を満たしたうえで、さらに構造計算による安全性の裏付けまで必要になる二段構えの規定です。

石を積んだだけの塀のような擁壁は、そのままだと基準を満たさないということですか。

その通りです。
コンクリートによる裏込めと水抜穴が無いと、この基準を満たしません。

擁壁にも建物と同じ構造強度の規定が広く準用されるとはどういうことか

擁壁の鉄筋断面と建物の柱の鉄筋断面に同じ物差しが当てられている図
満たすべき規定は、擁壁だけを対象にした条文にとどまりません。
建物の構造強度に関する規定そのものが、そのまま擁壁にも及びます。
(建築基準法施行令第百四十二条第二項)擁壁については、第三十六条の三、第三十七条、第三十八条、第三十九条第一項及び第二項、第五十一条第一項、第六十二条、第七十一条第一項、第七十二条、第七十三条第一項、第七十四条、第七十五条、第七十九条、第八十条(第五十一条第一項、第六十二条、第七十一条第一項、第七十二条、第七十四条及び第七十五条の準用に関する部分に限る。)、第八十条の二並びに第七章の八(第百三十六条の六を除く。)の規定を準用する。
この第2項で準用されるのは、建築物の構造部材や鉄筋コンクリート造そのものを対象にした一般規定です。
構造部材の耐久性(第37条)、地盤の変形に対する基礎の安全性(第38条)に加え、コンクリートの材料・鉄筋の継手及び定着・コンクリートの強度・養生・かぶり厚さ(第72条〜第75条・第79条)まで、建物の柱やはりと同じ水準の規定がそのまま準用されます。
無筋コンクリート造で造る場合には第80条が、木造など他の構造方法に関する補則として第80条の2が準用される点も見落としやすいところです。
さらに工事現場の危害の防止を定める第七章の8(第136条の6を除く)も準用されるため、施工中の擁壁にも仮囲いや落下物対策が求められます。
擁壁のコンクリートは、建物の柱やはりと同じ材料・施工基準で造らなければならないと理解しておくことが重要です。

擁壁専用の基準があるだけかと思っていましたが、建物の柱と同じ規定まで関わってくるんですね。

そうなんです。
最後に、明日からの確認手順をまとめますね。

擁壁を新設や改修するときは何を確認すればよいか

チェックリストと擁壁の模型と巻尺が置かれた机上のイラスト
条文を知っているだけでは、現場の確認は終わりません。
手元の擁壁に当てはめて、順番に確かめていきましょう。
  • 擁壁の高さが2メートルを超えるかをまず実測する。
  • 材料が鉄筋コンクリート造や石造等の腐食しない材料になっているか確認する。
  • 石造の場合は裏込めコンクリートと水抜穴の有無を確認する。
  • 確認申請書類や構造計算書に安全性を確かめた記録が残っているか確認する。
  • 改修や増し積みを検討する際は、かぶり厚さ等の構造強度の規定まで満たせるか設計段階で確認する。
迷ったときは自己判断せず専門家に確認することが一番の近道です。書類が見当たらない場合や補強・改修を検討している場合は、設計時の建築士や特定行政庁の建築担当窓口に相談しましょう。
擁壁の水抜穴は経年で詰まりやすく、日常の点検記録を防火管理者としても把握しておくと、いざというときの説明に役立ちます。

まずは擁壁の高さを測るところから、施設の担当と確認してみます。

それが一番確実な第一歩です。
最後によくある質問をまとめておきますね。

よくある質問

Q高さ2メートル以下の低い擁壁には何の基準もかかりませんか?
A建築基準法施行令第142条が定める工作物としての準用規定は高さ2メートル超が対象ですが、宅地造成及び特定盛土等規制法など別の法令の基準がかかる場合があります。低い擁壁でも所轄の窓口で確認しておくと安心です。
Qコンクリートブロック造の擁壁はこの基準の対象になりますか?
A高さ2メートルを超えれば対象になります。条文が挙げているのは鉄筋コンクリート造・石造その他これらに類する腐食しない材料で、具体的な工法がこれに当たるかどうかは特定行政庁または指定確認検査機関への確認が確実です。
Q構造計算をすれば水抜穴などの仕様は満たさなくてよいのですか?
Aいいえ。材料・裏込め・水抜穴という仕様要件と、構造計算による安全性の確認は、どちらも同じ条文(第142条第1項)の各号に並んで規定されており、原則としてあわせて満たす必要があります。
Q既存の擁壁が基準を満たしていない場合、すぐに改修が必要になりますか?
A設置時の確認申請の有無や既存不適格に当たるかどうかで状況は異なります。自己判断で改修の要否を決めず、まずは書類の有無を確認したうえで所轄の特定行政庁や建築士に相談してください。

まとめ

✔高さ2メートルを超える擁壁は「工作物」として建築基準法施行令の対象になる。
✔根拠は建築基準法第88条第1項で、政令が対象の高さと具体的な基準を定める。
✔材料は鉄筋コンクリート造・石造等の腐食しない材料に限られ、石造は裏込めコンクリートと水抜穴が必要になる。
✔仕様の充足に加え、国土交通大臣が定める基準の構造計算による安全性の確認も必要になる。
✔建物の基礎や鉄筋コンクリート造と同じ構造強度の規定(材料の耐久・かぶり厚さ・コンクリートの強度等)が広く準用される。
✔工事現場の危害防止を定める第七章の8も準用される。
✔既存の擁壁は確認申請書類や水抜穴の詰まりをまず確かめることが実務の第一歩。

擁壁も建物の柱と同じ基準がかかるなんて、今日確認できてよかったです。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第88条第1項
  • 建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第138条第1項第5号(工作物の指定)
  • 建築基準法施行令第142条(擁壁)

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の擁壁が対象に当たるかどうかや確認申請の要否は、所轄の特定行政庁または指定確認検査機関にご確認ください。条例や運用は自治体ごとに異なる場合があります。

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