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被災者台帳は誰が何のために作るのか|第90条の3が定める記載事項と情報提供の制限を解説

被災者台帳は誰が何のために作るのかを示す台帳と書類が置かれた市役所デスクのアイキャッチ画像

防火管理者のみなさんは、大規模な火災や地震で入居者が大勢被災したとき、市町村が「被災者台帳」を作っていることを知っていますか。
罹災証明書とよく似た名前ですが、実は別の制度です。
被災者一人ひとりの被害状況や支援の実施状況をまとめた名簿で、作成するかどうかは市町村長の判断に委ねられています。
平成25年の法改正で、この台帳の作成根拠と情報の使い方が、初めて法律の条文になりました。

うちの管内でも大きな災害があったら、被災者台帳は必ず作らないといけないんでしょうか。

実は「作成することができる」という市町村長の任意の判断なんです。

台帳に何を書くかや、誰に見せてよいかも気になります。

条文と通知を順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 平成25年の災害対策基本法改正で、被災者台帳の作成根拠が初めて条文になりました(第90条の3)。
  • 台帳の作成は市町村長の義務ではなく、「作成することができる」という任意規定です。
  • 台帳には氏名・生年月日・性別・住所など8項目を記載します(第90条の3第2項)。
  • 台帳の情報を外部に提供できるのは、本人同意など決められた4つの場合に限られます(第90条の4)。
  • 登録被災者援護協力団体の役職員が情報を漏らすと刑事罰の対象になります(第90条の6・第112条の2)。

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被災者台帳は誰が何のために作るのかを示す図解(市町村長が作成できる、氏名や被害状況を記載、提供できる相手は限定、漏らせば刑事罰の対象の4ステップ)

被災者台帳はなぜ法律の制度になったのか

市役所の建物と開いた台帳のイラスト

被災者台帳も、罹災証明書と同じ平成25年の法改正で条文になりました。
まずは作られた理由を確認します。

(災害対策基本法等の一部を改正する法律による改正後の災害対策基本法等の運用について 平成25年6月21日 府政防第559号・消防災第246号・社援総発0621第1号)災害応急対策期から災害復旧期にわたって行われる被災者の援護に関する業務については、大規模広域災害時には支援の対象となる被災者が多数に上ること、被災経験の少ない自治体の職員は必ずしも被災援護に関する業務に習熟していないこと等の事情により、受給資格がある被災者に対して制度の案内が適切に行われない、あるいは被災者の所在・連絡先が共有されていないなどの理由による支援漏れが発生することも少なくない。(略)個々の被災者の被害の状況や支援の実施状況、支援に当たっての配慮事項等を一元的に集約した被災者台帳を整備し、被災自治体の関係部署において共有・活用することが効果的である。

被災者台帳は、支援の「案内漏れ」や「連絡先の共有不足」を防ぐために作られた制度です。
東日本大震災のような大規模広域災害では被災者の数が多く、経験の浅い職員だけでは支援漏れが起きやすいという反省が背景にあります。
個々の被害状況・支援状況・配慮事項をひとつの台帳にまとめることで、関係部署が同じ情報を共有できるようにしました。
次は、この台帳を誰がどんな災害で作ると判断するのかを見ていきます。

支援の案内漏れを防ぐための台帳だったんですね。

情報を一元化する仕組みという位置づけです。

被災者台帳は誰がどんな災害で作ると判断するのか

身分証カードとひび割れた住宅を線でつないだイラスト

罹災証明書は市町村長の義務でしたが、台帳の作成は少し性格が違います。
条文で確認します。

(災害対策基本法第90条の3第1項)市町村長は、当該市町村の地域に係る災害が発生した場合において、当該災害の被災者の援護を総合的かつ効率的に実施するため必要があると認めるときは、被災者の援護を実施するための基礎とする台帳(以下この条及び次条第一項において「被災者台帳」という。)を作成することができる。

被災者台帳の作成は、市町村長の義務ではなく「作成することができる」という任意規定です。
罹災証明書の交付が「遅滞なく交付しなければならない」という義務規定だったのとは対照的です。
対象となる災害の範囲そのものは限定されておらず、当該市町村の地域に係る災害であれば作成の対象になり得ます。
必要があると認めるときに作るかどうかを判断するのは、あくまで市町村長です。
次は、台帳に実際どんな項目が書き込まれるのかを見ていきます。

罹災証明書と違って、義務ではなく判断なんですね。

作るかどうかは市町村長の裁量に委ねられています。

被災者台帳には何が書き込まれるのか

鍵の付いた台帳から承認フォルダへ矢印が伸び禁止マーク付きフォルダには伸びないイラスト

台帳に記載する事項は、条文で具体的に列挙されています。

(災害対策基本法第90条の3第2項)被災者台帳には、被災者に関する次に掲げる事項を記載し、又は記録するものとする。一 氏名 二 生年月日 三 性別 四 住所又は居所 五 住家の被害その他市町村長が定める種類の被害の状況 六 援護の実施の状況 七 要配慮者であるときは、その旨及び要配慮者に該当する事由 八 前各号に掲げるもののほか、内閣府令で定める事項

氏名・生年月日・性別・住所という基本情報に加え、被害状況と支援の実施状況までが1つの台帳にまとまります。
特に見落としやすいのが七号の「要配慮者」に関する記載で、高齢者や障害者など配慮が必要な事情まで台帳に残す仕組みです。
五号の住家被害の記載は、罹災証明書の交付事務で調査した情報と重なる部分でもあります。
市町村長は、台帳作成に必要な限度でこうした情報を目的外に内部利用できるとされています(同条第3項)。
次は、この台帳の情報を外部に渡してよい場合を見ていきます。

要配慮者の情報まで台帳に残るんですね。

支援の抜け漏れを防ぐためです。

被災者台帳の情報は誰に渡してよいのか

身分証カードと登録団体の建物を点線でつないだイラスト

台帳に集めた情報だからこそ、渡し方には強い制限がかかっています。

(災害対策基本法第90条の4第1項)市町村長は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、前条第一項の規定により作成した被災者台帳に記載し、又は記録された情報(以下この条から第九十条の六までにおいて「台帳情報」という。)を、その保有に当たつて特定された利用の目的以外の目的のために自ら利用し、又は提供することができる。一 本人(台帳情報によつて識別される特定の個人をいう。)の同意があるとき、又は本人に提供するとき。二 市町村が被災者に対する援護の実施に必要な限度で台帳情報を内部で利用するとき。三 他の地方公共団体に台帳情報を提供する場合において、台帳情報の提供を受ける者が、被災者に対する援護の実施に必要な限度で提供に係る台帳情報を利用するとき。四 (略)登録被災者援護協力団体の求めに応じて台帳情報を提供する場合において、当該登録被災者援護協力団体が、被災者援護協力業務に必要な限度で提供に係る台帳情報を利用するとき。
(災害対策基本法第90条の6・第112条の2)第九十条の四第一項第四号の規定により台帳情報の提供を受けた登録被災者援護協力団体の役員若しくは職員又はこれらの職にあつた者は、正当な理由がなく、同号の規定により提供を受けた台帳情報に関する秘密を漏らしてはならない。(略)第90条の6の規定に違反して秘密を漏らした者は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。

台帳の情報を目的外に使ったり外部へ渡したりできるのは、条文が定める4つの場合だけです。
本人の同意がある場合、市町村内部で援護に使う場合、他の地方公共団体に渡す場合に加え、登録被災者援護協力団体という制度に基づく提供が四号で認められています。
見落としやすいのは、この四号で情報を受け取った登録被災者援護協力団体の役職員には専用の秘密保持義務があり、違反すると1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金という刑事罰まで定められている点です。
台帳の情報を決められた4つの場合以外で共有することは想定されていません。
次は、こうした制度を踏まえて明日から何を確認すればよいのかを見ていきます。

情報を渡した相手の職員にまで、罰則があるとは知りませんでした。

それだけ重い個人情報として扱われているということです。

明日から何を確認すればよいのか

台帳と南京錠と盾のイラスト

最後に、地域の防災計画や避難所運営に関わる立場から確認しておきたいポイントを整理します。

(災害対策基本法第90条の5)市町村長は、前条第一項第四号の規定により台帳情報を提供するときは、地域防災計画の定めるところにより、台帳情報の提供を受ける者に対して台帳情報の漏えいの防止のために必要な措置を講ずるよう求めることその他の当該台帳情報に係る被災者及び第三者の権利利益を保護するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

まず、自分の市町村が被災者台帳を作成する方針を持っているか、地域防災計画で確認します。
避難所運営や防災訓練で登録被災者援護協力団体と連携する機会があれば、台帳情報の提供を受けられるのは限られた4つの場合だけという前提を関係者と共有しておきます。
情報の提供を受ける側には漏えい防止の措置を講ずるよう求める配慮義務が市町村長にあることも、協定を結ぶ際の確認事項になります。
罹災証明書の交付で調査した住家被害の情報が、台帳側にも記載され得ることをあわせて押さえておくと、被災者支援の全体像がつかみやすくなります。
制度の建てつけを知っているかどうかで、被災した入居者への案内のスピードが変わります。

まずは地域防災計画に載っているか確認してみます。

規約や計画の確認が第一歩です。
よくある質問もあわせてご確認ください。

よくある質問

Q被災者台帳は、すべての市町村が必ず作らなければならないのですか?
Aいいえ。第90条の3は「作成することができる」という市町村長の任意規定で、罹災証明書の交付のような法律上の義務ではありません。
Q被災者台帳と罹災証明書はどう違うのですか?
A罹災証明書は個々の被災者に交付する証明書、被災者台帳は市町村が支援状況を一元管理するための内部の名簿という違いがあります。住家被害の情報など、内容が重なる部分もあります。
Q台帳の情報は、家族や近隣住民に開示してもらえますか?
A台帳情報を目的外に利用・提供できるのは第90条の4が定める本人の同意がある場合など4つの場合に限られており、家族等への開示が当然に認められているわけではありません。
Q登録被災者援護協力団体に提供した情報が漏れたら、どうなりますか?
A提供を受けた団体の役職員には秘密保持義務があり、違反すると1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金という刑事罰の対象になります(第90条の6・第112条の2)。

まとめ

✔平成25年の災害対策基本法改正で、被災者台帳の作成根拠が初めて条文になりました(第90条の3関係)。
✔台帳の作成は市町村長の義務ではなく、「作成することができる」という任意規定です。
✔台帳には氏名・生年月日・性別・住所・被害状況・援護の実施状況・要配慮者該当性など8項目を記載します。
✔罹災証明書の交付で調査した住家被害の情報が、台帳側の記載事項と重なる場合もあります。
✔台帳情報を目的外に利用・提供できるのは、本人同意など第90条の4が定める4つの場合に限られます。
✔登録被災者援護協力団体に提供した情報が漏れた場合、受け取った団体の役職員は秘密保持義務違反として刑事罰の対象になります(第90条の6・第112条の2)。
✔情報提供を受ける側に漏えい防止の措置を求めるなど、市町村長には配慮義務があります(第90条の5関係)。

地域防災計画の記載、さっそく確認します!

それが被災した入居者への一番の備えになります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 災害対策基本法等の一部を改正する法律による改正後の災害対策基本法等の運用について(平成25年6月21日付け府政防第559号・消防災第246号・社援総発0621第1号)
  • 災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第90条の3・第90条の4・第90条の5・第90条の6・第112条の2

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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