BLOG

敷地が分かれても移送取扱所にならない?水素製造やナトリウム硫黄電池の扱いも解説

一般取扱所の実務は昭和の質疑だけで動いているわけではありません。
合弁会社を作って敷地が分かれたら配管は移送取扱所になるのか。
ビルの地下2階の発電設備に大がかりな消火設備は必要なのか。
ナトリウム硫黄電池や水素製造設備はどの区分になるのか。
平成10年から平成28年までの執務資料をもとに、新しい設備と事業形態の扱いを解説します。

合弁会社を作って敷地が分かれてん。
配管が100メートル以上その敷地を通るんやけど、これ移送取扱所の許可を取り直しか?

保安管理等が従前と同様に一元的に行われるのであれば、既設の一般取扱所のまま規制して差し支えないとされています。

ほんなら水素を作る設備はどうなん。
石油類を原料にしてトルエンも出るし、これは製造所やろ。

製造所にはなりません。
目的が危険物に該当しない水素の製造なので、一般取扱所に該当すると考えられるとされました。この記事でまとめて解説します!

この記事の結論
  • 地下2階に設ける自家用発電設備の一般取扱所は、全域放出方式の二酸化炭素消火設備と第五種消火設備を設ける等の条件で、政令第23条を適用して第2種または移動式以外の第3種の消火設備を設けないこととして差し支えない
  • 合弁会社等の設立により配管が他社の敷地を100メートルを超えて通過することとなっても、保安管理等が従前と同様に一元的に行われるのであれば既設の一般取扱所のまま規制して差し支えない
  • 隣接する複数の事業所間を新たに配管で連結する場合も、保安管理体制が一元的に行えるのであれば付属配管または一般取扱所として規制して差し支えない
  • 屋外に設置するナトリウム硫黄電池は、モジュール電池とパッケージが一体で要求される火災安全性能を満たすものであれば53号通知により設置を認めて差し支えない
  • メチルシクロヘキサンから水素を製造する施設は、目的が危険物に該当しない水素の製造であるため製造所に該当せず一般取扱所に該当する

地下2階の自家用発電設備は消火設備を軽減できる

一般取扱所の用に供する部分以外の部分(他用途部分)を有する建築物に設ける一般取扱所のうち、火災のとき煙が充満するおそれがある場所に設けられるものについては、他用途部分との隔壁等が耐火構造で造られ、かつ当該隔壁等に開口部を有しないものである場合を除き、建築物その他の工作物および危険物を包含するように第2種または移動式以外の第3種の消火設備を設ける必要があるとされています。

そのうえで、次の一般取扱所については政令第23条を適用し、当該消火設備を設けないこととしてよいか、という照会がありました。

  • 設置場所 地上12階地下2階の耐火構造の建築物の地下2階部分の室内
  • 取扱いの形態 自家用発電設備により危険物(軽油)を消費する一般取扱所(政令第19条第2項適用)
  • 消火設備 全域放出方式の二酸化炭素消火設備および一般取扱所の各部分から歩行距離が20メートル以下となるように第五種の消火設備(粉末消火器)を設ける
  • その他 室内の内装は不燃材料で仕上げ、設置される設備等は電気配線の被覆材等必要最小限のものを除き不燃材料で構成されている。また必要最小限のものを除き可燃物が存置等されないよう管理がなされる
回答は差し支えないです。
認められた理由は、燃えるものが危険物以外にほとんど存在しないという状態を作り込んでいる点にあります。内装を不燃材料で仕上げ、設備そのものも不燃材料で構成し、そのうえで可燃物を置かない管理を行っています。
そこに全域放出方式の二酸化炭素消火設備を設ければ、区画内の火災は確実に抑えられます。建築物や工作物を包含する大がかりな消火設備の役割を、区画の不燃化と全域放出で置き換えているという構成です。

合弁会社の敷地を100メートル超通過しても既設のまま扱える

従前、同一の事業所内にあった一般取扱所の危険物配管に関して、同一事業所内に新たな合弁会社等を設立することにより、当該合弁会社等の敷地を100メートルを超えて通過することとなる場合について照会がありました。

この場合、当該合弁会社等の保安管理等が従前と同様一元的に行われるのであれば、当該危険物配管については新たな移送取扱所として規制するのではなく、既設の一般取扱所のまま規制して差し支えないか、という内容です。

回答はお見込みのとおりです。
配管の物理的な状況は何も変わっていないのに、会社を分けた結果として他社の敷地を通ることになるという事例です。形式だけを見れば移送取扱所の要件に当てはまってしまいます。
それでも既設のままでよいとされたのは、保安管理が一元的に行われているという実態を重視しているためです。登記上の敷地の所有関係ではなく、誰が保安を見ているかで判断するという整理です。

隣接事業所間の連結配管も付属配管として扱える

隣接する複数の事業所間で、業務提携等により原料や中間体等を相互利用しており、各事業所の危険物施設間を新たに配管で連結する場合についても照会があります。保安管理体制が一元的に行えるのであれば、当該配管について移送取扱所として規制するのではなく、既設の危険物施設の付属配管または一般取扱所として規制して差し支えないか、という内容です。

回答はお見込みのとおりです。
前項が「1社が分かれた」ケースで、こちらは「別々の会社が手を組んだ」ケースです。方向は逆ですが結論は同じです。
判断の軸は一貫して保安管理体制が一元的に行えるかにあります。会社の数や敷地の区切りではなく、保安の指揮系統が1つにまとまっているかどうかで決まります。事業提携で配管をつなぐ計画があるときは、保安管理をどちらが一元的に担うのかを先に固めることが実務の順序になります。

ナトリウム硫黄電池は53号通知により設置を認められる

ナトリウム硫黄電池については、「ナトリウム・硫黄電池を設置する一般取扱所の火災対策について」(平成24年6月7日付け消防危第154号。以下「火災対策通知」といいます。)により既存のナトリウム硫黄電池に対する火災対策が示されていました。

そこへ、既存のものと異なるナトリウム硫黄電池を設置する旨の申し出がありました。この場合、火災対策通知によらず、「ナトリウム・硫黄電池を設置する危険物施設の技術上の基準等について」(平成11年6月2日付け消防危第53号。以下「53号通知」といいます。)により設置を認めても差し支えないか、という照会です。

対象となるのは、密閉構造の単電池が収納されている複数のモジュール電池をパッケージに収納する構造の屋外に設置するナトリウム硫黄電池であって、当該モジュール電池およびパッケージが一体で53号通知別添「ナトリウム・硫黄電池に要求される火災安全性能」を満たすものです。

回答はお見込みのとおりです。
ナトリウム硫黄電池は高温で作動し、内部に硫黄とナトリウムを持つため危険物施設として規制されます。火災対策通知は既存製品を前提に個別の火災対策を示したものでした。
これに対し、要求される火災安全性能を製品側で満たしていれば原則の通知に戻れるという整理です。製品の構造が変わっても、性能を満たすことを示せれば道が開けます。

水素製造設備は製造所ではなく一般取扱所に該当する

有機ハイドライドの一つであるメチルシクロヘキサン(第一石油類)から水素を製造する施設について、一般取扱所として取り扱ってよいか、という照会がありました。施設の内容は次のとおりです。

  • 原料となるメチルシクロヘキサンから脱水素して水素を取り出す工程を有する。当該工程では熱源として灯油が消費されるとともに、副産物としてトルエン(第一石油類)が生成される。1日に脱水素するメチルシクロヘキサンは指定数量以上である
  • メチルシクロヘキサン、トルエンおよび灯油を貯蔵するタンクが地下に設置される
  • トルエンを移動タンク貯蔵所で回収する
回答はお見込みのとおりです。理由も明記されています。
当該施設の目的は、消防法第2条第7項に規定する危険物には該当しない水素の製造であり、副産物としてトルエンが生じることは水素製造に係る一連の工程の一部であるため、当該施設は製造所に該当せず一般取扱所に該当すると考えられる
判断の軸はその施設が何を作ることを目的としているかです。危険物である第一石油類のトルエンが実際に生成されていても、それは副産物にすぎません。危険物を作ることが目的でなければ製造所にはならないという整理です。

印刷工場の溶剤回収装置が製造所にならないとされたのと同じ考え方です。工程の中で危険物が生じるかどうかではなく、施設の目的で区分が決まります

よくある質問

Q. 会社を分けて配管が他社の敷地を通ることになったら移送取扱所になりますか?
保安管理等が従前と同様に一元的に行われるのであれば、新たな移送取扱所として規制するのではなく既設の一般取扱所のまま規制して差し支えないとされています。100メートルを超えて通過する場合についての回答です。敷地の所有関係ではなく保安管理の実態で判断されます。
Q. 隣の事業所と配管をつなぐ場合はどう扱われますか?
保安管理体制が一元的に行えるのであれば、移送取扱所ではなく既設の危険物施設の付属配管または一般取扱所として規制して差し支えないとされています。業務提携で原料や中間体を相互利用するケースについての回答です。
Q. ビルの地下に置く非常用発電設備に大がかりな消火設備は必要ですか?
条件を満たせば軽減できます。全域放出方式の二酸化炭素消火設備と歩行距離20メートル以下となる第五種消火設備を設け、内装と設備を不燃材料で構成し、可燃物を置かない管理を行う場合について、政令第23条を適用して第2種または移動式以外の第3種の消火設備を設けないこととして差し支えないとされた事例があります。
Q. 水素を製造する設備は製造所になりますか?
なりません。メチルシクロヘキサンから水素を製造する施設について、目的が消防法第2条第7項の危険物には該当しない水素の製造であり、副産物としてトルエンが生じることは一連の工程の一部であるため、製造所に該当せず一般取扱所に該当すると考えられるとされています。

まとめ

  • 地下2階の自家用発電設備の一般取扱所は、全域放出方式の二酸化炭素消火設備と不燃化と可燃物管理を条件に、政令第23条で消火設備を軽減できる
  • 合弁会社等の設立で配管が他社の敷地を100メートル超通過しても、保安管理が一元的なら既設の一般取扱所のまま扱える
  • 隣接事業所間を新たに配管で連結する場合も、保安管理体制が一元的なら付属配管または一般取扱所として扱える
  • 屋外設置のナトリウム硫黄電池は、モジュール電池とパッケージが一体で火災安全性能を満たせば53号通知により設置を認められる
  • メチルシクロヘキサンから水素を製造する施設は、目的が危険物でない水素の製造であるため製造所ではなく一般取扱所に該当する
  • 区分は工程の中で危険物が生じるかどうかではなく、施設が何を作ることを目的としているかで決まる

敷地の線やなくて、保安を誰が見てるかで決まるんやな。

そのとおりです。
提携で配管をつなぐ計画があるときは、保安管理をどちらが一元的に担うのかを先に固めてから協議に入ってください。

参考・出典

  • 消防法(昭和23年法律第186号)第2条第7項 e-Gov法令検索
  • 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第19条・第20条第1項第1号・第23条 e-Gov法令検索
  • 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第33条第1項第1号 e-Gov法令検索
  • 「ナトリウム・硫黄電池を設置する危険物施設の技術上の基準等について」(平成11年6月2日付け消防危第53号)
  • 「危険物規制事務に関する執務資料の送付について」(平成10年10月13日付け消防危第90号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて)問10
  • 「危険物規制事務に関する執務資料(屋外タンク貯蔵所及び一般取扱所関係)の送付について」(平成11年6月15日付け消防危第58号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて)問1・問2
  • 「ナトリウム・硫黄電池を設置する一般取扱所の火災対策について」(平成24年6月7日付け消防危第154号)
  • 「危険物規制事務に関する執務資料の送付について」(平成25年8月23日付け消防危第156号 危険物保安室長から各都道府県消防防災主管部長・東京消防庁・各指定都市消防長あて)
  • 「危険物規制事務に関する執務資料の送付について」(平成28年3月1日付け消防危第37号 危険物保安室長から各都道府県消防防災主管部長・東京消防庁・各指定都市消防長あて)問2
  • 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)一般取扱所の基準に関する質疑応答を参考に、独自に解説を作成

※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
eyecatch-haikan-ichigenteki
一般取扱所の実務は昭和の質疑だけで動いているわけではありません。 合弁会社を作って敷地が分かれたら配管は移送取扱所になるのか。 ビルの地下2階の発電設備に大がかりな消火設備は必要なのか。 ナトリウム硫黄電池や水素製造設備...