ボイラーで危険物を消費する一般取扱所は区画の要求が厳しく、排気筒を外へ抜くだけでも判断に迷います。
排気筒は換気の設備なのか。
区画壁を貫通させてよいのか。
保有空地に段差があると空地として数えられないのか。
同じ階に一般取扱所を2つ隣接させたとき、共有する壁はどちらの規制範囲なのか。
平成29年と令和5年の執務資料をもとに解説します。
ボイラーの排気筒って要は換気の設備やろ。
ほんなら防火ダンパーを付けなあかんのか?排気ガスで高温になるのに。
排気筒は換気の設備には該当しないとされています。
そのためダンパーの要否という問題にもなりません。
ほんなら保有空地の中に架台の段差があるんやけど、これは空地として数えられへんのやろな。
数えられます。
架台等が延焼の媒体となるおそれがなく段差が50センチメートル以下であれば、その部分も含めて保有空地として認めて差し支えないとされました。この記事でまとめて解説します!
- ボイラー等の排気筒は、規則が定める「換気の設備」には該当しない
- 区画外の部分の周囲を金属以外の不燃材料で有効に被覆する等の措置が講じられている場合、政令第23条を適用して排気筒が区画を貫通することを認めて差し支えない
- 保有空地内に架台等による段差がある場合、延焼の媒体となるおそれがなく段差が50センチメートル以下であれば保有空地として認めて差し支えない
- 同一階に隣接して設置する2つの一般取扱所が共有する壁と出入口の戸は、いずれも双方の一般取扱所の規制範囲となる
- 共有する壁は厚さ70ミリメートル以上の鉄筋コンクリート造等とし、出入口には随時開けることができる自動閉鎖の特定防火設備を設ける必要がある
- 一方の一般取扱所がもう一方を経なければ出入りできない構造であっても差し支えない
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目次
ボイラーの排気筒は換気の設備に該当しない

危険物を消費するボイラー又はバーナー以外では危険物を取り扱わない一般取扱所に設置される、ボイラー等の危険物を消費する設備の排気筒について照会がありました。
まず、排気筒は規則第28条の57第2項第1号および第3項第3号で引用される規則第28条の55第2項第8号の規定、ならびに規則第28条の57第4項第10号の規定に係る「換気の設備」に該当するかという問いです。あわせて、換気の設備に該当する場合、排気ガスにより高温となる排気筒であっても防火上有効なダンパー等の設置が必要かという問いも立てられています。
つまり該当しないのでダンパーの要否という問題も生じないという構成です。
換気の設備は室内に滞留する可燃性蒸気を屋外へ出すためのもので、排気筒は燃焼で生じた排気ガスを排出するためのものです。目的が違うため別の設備として扱われます。
実務上の意味は大きく、排気ガスで高温になる排気筒に防火ダンパーを組み込むという無理のある設計を求められずに済みます。
排気筒が区画を貫通することは政令第23条で認められる

規則第28条の57第2項第1号で引用される規則第28条の56第2項第1号の規定により、建築物の一般取扱所の用に供する部分は、出入口以外の開口部を有しない厚さ70ミリメートル以上の鉄筋コンクリート造またはこれと同等以上の強度を有する構造の床もしくは壁で当該建築物の他の部分と区画されたものであることとされています。
そのうえで、延焼防止のため次のような措置が講じられている場合には、政令第23条を適用し、排気筒が区画を貫通することを認めて差し支えないかという問いです。
- 排気筒の区画外の部分の周囲を金属以外の不燃材料で有効に被覆すること
- 排気筒を耐火構造の煙道内に設置すること
区画は本来出入口以外の開口部を有しないものとされているため、排気筒を通せば形式的には基準を外れます。それでも認められたのは、貫通部から先の延焼経路を別の手段で断っているためです。
金属は熱を伝えるため、金属以外の不燃材料で被覆するという指定になっています。あるいは排気筒そのものを耐火構造の煙道の中に納めます。穴を空けるかどうかではなく、その穴が延焼経路になるかどうかで判断されていることがわかります。
保有空地内の50センチメートル以下の段差は空地に含められる

規則第28条の57第4項第7号の規定により、危険物を取り扱う設備および屋外にある危険物を取り扱うタンクの囲いの周囲に、幅3メートル以上の空地(保有空地)を保有することとされています。
そこで、架台等により保有空地内で段差がある場合、架台等が延焼の媒体となるおそれがないものであって、かつ当該段差が50センチメートル以下であれば、当該段差がある部分も含めて保有空地として認めて差し支えないかという問いです。
条件が2つ明示されています。架台等が延焼の媒体となるおそれがないことと段差が50センチメートル以下であることです。
保有空地は消火活動と延焼防止のための空間なので、完全に平坦である必要はありません。ただし段差が大きくなると消火活動の障害になるため、50センチメートルという数値で線が引かれています。
軌道敷を保有空地に含めてよいとされた事例と同じ考え方で、地面の仕上げや形状ではなく空間としての機能で判断されます。
隣接する2つの一般取扱所の共有壁は双方の規制範囲になる

一般取扱所の用に供する部分以外の部分を有する一の建築物の同一階において、政令第19条第2項の規定により適用される位置・構造・設備の技術上の基準に適合する2つの一般取扱所を隣接して設置する場合について、令和5年の執務資料で複数の問いが整理されました。
まず、隣接していることにより2つの一般取扱所で共有することとなる壁および当該壁に設ける出入口の戸は、どちらの一般取扱所の規制範囲に含まれるものと解すべきかという問いです。
どちらか一方に割り振るのではなく、共有壁は両方の施設の一部として扱われます。
実務上の意味は、壁の維持管理や点検の責任が両方の一般取扱所にかかるということです。片方の許可の範囲外だから関知しない、という整理はできません。
あわせて、一方または両方の一般取扱所について規則第28条の55第2項第2号または第28条の56第2項第1号の基準に適合させる必要がある場合、共有することとなる壁は出入口以外の開口部を有しない厚さ70ミリメートル以上の鉄筋コンクリート造またはこれと同等以上の強度を有する構造の壁とする必要があるか。また規則第28条の55第2項第4号の基準に適合させる必要がある場合、共有壁に設ける出入口には随時開けることができる自動閉鎖の特定防火設備を設ける必要があるか、という問いも立てられています。
共有壁が双方の規制範囲になるという前提から、どちらか一方に基準の適用が必要であれば、その壁は基準を満たす仕様にしなければなりません。出入口の戸についても同様で、随時開けることができる自動閉鎖の特定防火設備が必要になります。
一方を経なければ出入りできない構造でも差し支えない

同じ照会では、例えば建物の外に通じる出入口を設けない場合など、一方の一般取扱所がもう一方の一般取扱所を経なければ出入りできないような構造であってもよいか、という問いもあります。
危険物施設は外部への出入口の確保が重視される場面もありますが、ここでは認められています。2つの一般取扱所がどちらも基準に適合しているのであれば、通り抜けの構造であっても保安上の支障はないという判断です。
最後に、どちらの一般取扱所についても一般取扱所の用に供する部分以外の部分と開口部のない耐火構造の壁で区画されていることから、規則第33条第1項第1号括弧書きの「当該建築物の一般取扱所の用に供する部分以外の部分と開口部のない耐火構造の床又は壁で区画されているもの」に該当するものと解してよいかという問いです。
この確認は消火設備の要求に関わります。括弧書きに該当すれば、建築物その他の工作物を包含する大がかりな消火設備を求められる範囲から外れます。
ここでも判断の軸は他用途部分との間が開口部のない耐火構造で区画されているかであり、隣の一般取扱所と接していること自体は問題にされていません。
よくある質問
まとめ
- ボイラー等の排気筒は規則が定める「換気の設備」には該当しない
- 区画外の部分の周囲を金属以外の不燃材料で被覆する等の措置があれば、政令第23条により排気筒が区画を貫通することを認められる
- 保有空地内の段差は、延焼の媒体となるおそれがなく50センチメートル以下であれば空地に含められる
- 隣接する2つの一般取扱所が共有する壁と出入口の戸は、いずれも双方の規制範囲となる
- 共有壁は厚さ70ミリメートル以上の鉄筋コンクリート造等とし、出入口には随時開けることができる自動閉鎖の特定防火設備を設ける
- 一方がもう一方を経なければ出入りできない構造でも差し支えなく、他用途部分と開口部のない耐火構造で区画されていれば規則第33条第1項第1号括弧書きに該当する
穴を空けるかやなくて、その穴が延焼経路になるかで見るんやな。
そのとおりです。
保有空地も同じで、平坦かどうかではなく消火活動と延焼防止の空間として機能するかで判断されます。
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第19条第2項・第23条 e-Gov法令検索
- 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第28条の55・第28条の56・第28条の57・第33条第1項第1号 e-Gov法令検索
- 「危険物規制事務に関する執務資料の送付について」(平成29年10月30日付け消防危第216号 消防庁危険物保安室長から各都道府県消防防災主管部長・東京消防庁・各指定都市消防長あて)別紙(危険物を消費するボイラー又はバーナー以外では危険物を取り扱わない一般取扱所関係)問1・問2
- 「危険物規制事務に関する執務資料の送付について」(令和5年3月24日付け消防危第63号 消防庁危険物保安室長から各都道府県消防防災主管部長・東京消防庁・各指定都市消防長あて)別紙(一般取扱所を隣接して設置する場合における疑義について)問7
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)一般取扱所の基準に関する質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。




