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はしご車が近づけない建物はなぜ生まれるのか|電線類による消防活動障害の防止対策を解説

電線が横切る中高層ビルの前で作業服の担当者が建物を見上げているアイキャッチ画像

中高層ビルの前に電線がいくつも張られていて、消防車が近づきにくいと感じたことはありませんか。
実ははしご車は、窓や屋上に梯子を掛ける動きそのものを電線に阻まれることがあります。
消防庁は電力会社や通信会社、道路管理者と共同で、この障害を解消する仕組みを通知で示しています。
電線類がある建物ほど、設計段階からの確認が欠かせません。

うちのビルの前、電線がいっぱい張ってあるんですけど。
これって消防車の邪魔になったりするんですか。

なることがあります。
はしご車が窓や屋上に梯子を掛ける動き自体を、電線が物理的に阻んでしまうんです。

はしご車が来ても、窓に届かないことがあるってことですか。

その通りです。
消防庁の通知には、どこまでが対象になるかがはっきり書かれています。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 中高層ビルの前面に電線類があると、はしご車の救助活動が妨げられることがある
  • 対象は非常用進入口だけでなく、屋上部分や進入路、アウトリガーの展開スペースにも及ぶ
  • 消防機関は電力会社や道路管理者に改善を要請し、共架や地中化などの改修を進める仕組みがある
  • 新築や増改築の計画段階で電線の位置を確認しないと、あとからの改修は難しくなる
  • 気になる箇所があれば、所轄消防署へ相談するのが第一歩になる

電線類による消防活動障害を防ぐための実態調査から新築時の事前協議までの4ステップを示す図解

なぜ電線類が消防活動の障害として問題になったのか

中高層ビルにはしご車が近づき梯子を伸ばすが電線が行く手を阻むイラスト
はしご車による救助活動は、中高層ビルの火災でとりわけ重要な役割を持ちます。
ところが建物の前に張られた電線類が、その動きを妨げることがあるのです。
電線類による消防活動障害の防止対策について(昭和62年2月26日 消防消第52号 消防庁次長) 近年、全国的に増加が著しい中高層建築物における火災に際し、はしご自動車等による消火活動及び人命救助活動は、極めて重要となつている。しかし、これらの中高層建築物の前面等に電力線、電話線及び電柱(以下「電線類」という。)が架設されていることにより、はしご自動車等による消防活動が著しく阻害される箇所があることから、(中略)今般、消防活動の障害となつている電線類の解消を更に徹底するため、消防機関が道路管理者、電力会社並びに日本電信電話株式会社へ要請を行う際の基本的な事項を別添1のとおり定めた。
電線が救助の動きそのものを止めてしまうことが、繰り返し確認されてきました。
実は昭和47年から同様の指導は行われていましたが、徹底されない箇所が残っていました。
昭和61年に総務庁が行った行政監察でも、電線類による障害の解消が不十分だと指摘されています。
これを受けて昭和62年、消防庁は電力会社や日本電信電話株式会社、道路管理者への要請の進め方を具体的に定め直しました
背景にあるのは、電線一本が救助の速度を左右するという現実です。

うちのビルも前面に電線が結構張られてるんですが、大丈夫でしょうか。

見ただけでは判断しづらいので、次で対象の範囲を確認しましょう。

はしご車のどんな動きが電線類に妨げられるのか

非常用進入口の窓と屋上部分の前を電線が横切る建物のイラスト
通知は、電線類が妨げになる場面を2つの動きに分けて示しています。
どちらも建物側の設計や周辺環境に関わる部分です。
電線類による消防活動障害の防止対策について(別添1 第2 対象) 1 はしご車が、はしごを架ていする際に電線類によつて、次に掲げる箇所に架ていできない建築物 (1) 建築基準法施行令に定める非常用進入口 (2) 非常用進入口のない建築物にあつては、消防活動上有効な窓又はその他の開口部 (3) 屋上部分(消防活動又は屋上避難が可能な場合に限る。) 2 はしご車が、架てい位置に部署する際に電線類によつて障害となる建築物 (1) 架てい面に部署するための進入路に電線類があり、はしご車が進入できない建築物 (2) 電線類により、アウトリガー張り出し可能な幅員が確保できない建築物
対象は窓だけでなく、屋上や進入路、車両の張り出しスペースにも及びます。
非常用進入口がある建物ではその窓、ない建物では消防活動上有効な窓や開口部が基準になります。
屋上部分も、消防活動や屋上避難に使える場合は対象に含まれます。
さらに、はしご車そのものが建物に近づけない進入路の障害や、脚を横に張り出すアウトリガーのスペース不足も同じ扱いです。
窓の位置だけを見て安心してしまうと、進入路側の電線を見落とします。

非常用進入口だけじゃなくて、屋上や進入路も対象になるんですね。

はい、車両の動きまで含めて考えるのがポイントです。

通知は何を関係機関に求めているのか

消防職員と電力会社の担当者が電柱のそばで調査書類を確認しているイラスト
通知は消防機関に対して、まず現状を把握し、次に関係機関へ働きかける手順を示しています。
建物側が単独で電線を動かせるわけではない点がポイントです。
電線類による消防活動障害の防止対策について(別添1 第3・第4) 電線類による消防活動障害となる建築物について、実態調査等を行い、障害の状況を把握する。(中略)電線類による消防活動障害の改善を要請する関係機関等は、次に掲げるものとする。(1) 電力会社 支店・営業所 (2) 日本電信電話株式会社 支社・支店・営業所 (3) 道路管理者 (4) その他 また、消防機関とこれら施設管理者との協議に基づき、電線類の共架、都市型装柱、地中化等地域の実態に応じた改修を行うことにより、はしご自動車等の円滑な消防活動が確保されるようにする。
電線を動かす主体は電力会社や通信会社であり、消防機関がその間を取り持ちます。
まず消防機関が実態調査を行い、障害となっている箇所を把握します。
その結果をもとに、電力会社の支店・営業所や日本電信電話株式会社、道路管理者へ改善を要請します。
改修の方法は、電線をまとめる共架や、電柱を建て替える都市型装柱、地中に埋める地中化など地域の実情に応じて選ばれます。
建物側にできるのは、障害に気づいたら消防機関へ申し出ることです。

自分たちだけでは電線を動かせないですよね。

そうなんです。
だからこそ、気づいた段階で消防機関に伝えることが大切なんです。

実務で見落としやすいのはどこか

工事中のビルの横で設計図と建築確認申請書類に電線の位置を書き込むイラスト
既存の建物だけでなく、これから建てる建物や電線にも同じ考え方が及びます。
ここを見落とすと、完成後の改修は簡単ではありません。
電線類による消防活動障害の防止対策について(別添1 第4・第5) 新設の建築物又は電線類に対しては、建築確認申請又は開発行為等の事前協議の時点で判明した架てい障害となる電線類について当該建築物の事業者及び関係機関等へ障害の状況等を提示し改善についての要請を行う。(中略)改善未実施の電線類に対しては、引き続き改善要請を行うとともに、災害発生時における対策を検討しておくものとする。
新築や増改築の計画段階で電線の位置を確認しないと、完成後の改修は難しくなります。
通知は既存の建物だけでなく、新設の建築物や電線類も対象にしています。
建築確認申請や開発行為の事前協議の時点で、電線類による架てい障害の有無を確認する運用です。
仮にすぐに改善できない電線類が残っても、そこで終わりではありません。
消防機関は改善要請を続けるとともに、実際の災害時にどう対応するかをあらかじめ検討しておくことになっています。

新築のときに気づかないと、あとで直すのは大変そうですね。

はい、設計段階での確認が一番の近道です。

明日からなにを確認すればよいのか

作業服の担当者がチェックリストを手にビルを見上げて電線の状況を確認しているイラスト
通知の内容は消防機関と関係機関の間の取り決めですが、建物側にもできることがあります。
まずは自分の建物の前面を見上げてみることから始まります。
電線類による消防活動障害の防止対策について(別添1 第4 2 要請要領(1)既設の電線類) 第3の実態調査に基づき、その結果を関係機関等に提示し、改善についての要請を行う。また、消防本部は、関係機関等と災害時におけるはしご車の消防活動を円滑にするため、協定(申合せ書、覚書等)を取り交わしておく
気になる箇所を見つけたら、まず所轄消防署へ相談することが第一歩です。
非常用進入口や屋上、進入路の前に電線が横切っていないかを、建物の前から見上げて確認します。
アウトリガーを張り出すスペースが電線でふさがれていないかも合わせて見ておきます。
新築や増改築、外構工事を計画しているときは、設計段階で電線の位置を消防機関と共有します。
建物側から声を上げることが、改善要請の出発点になります。

まずは自分の目で確認してみます。

それが一番確実な第一歩です。

よくある質問

Q電線類の移設は誰が行うのですか?
A電線を移設・改修するのは電力会社や日本電信電話株式会社などの施設管理者です。消防機関はその間に入り、実態調査の結果をもとに改善を要請します。
Q既存の建物でもこの通知の対象になりますか?
Aなります。通知は既設の電線類も対象にしており、消防機関からの申し出をきっかけに実態調査と改善要請が行われます。
Q電線がすぐに改善されない場合はどうなりますか?
A改善要請は継続されるとともに、災害発生時の対策をあらかじめ検討しておく運用になっています。
Q新築するビルにも関係がありますか?
Aあります。建築確認申請や開発行為の事前協議の段階で、電線類による障害の有無を確認する運用が定められています。

まとめ

中高層ビルの前面に電線類があると、はしご車の救助活動が妨げられることがある
対象は非常用進入口だけでなく屋上部分や進入路にも及ぶ
アウトリガーを張り出すスペースが電線でふさがれていないかも見落としやすい
消防機関は電力会社や日本電信電話株式会社、道路管理者へ改善を要請する
改修は共架・都市型装柱・地中化など地域の実態に応じて選ばれる
新築や増改築は建築確認申請の段階で電線の位置を確認する運用になっている
気になる箇所があれば所轄消防署へ相談することが第一歩になる

電線の見方が分かって、なんだかすっきりしました!

建物前面の電線の状況は、ぜひ一度確かめてみてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 「電線類による消防活動障害の防止対策について」(昭和62年2月26日 消防消第52号 消防庁次長)
  • 「はしご自動車等の円滑な消防活動の確保について」(昭和47年6月27日 消防消第108号 消防庁消防課長)
  • 建築基準法施行令第126条の6・第126条の7(非常用の進入口)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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