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高層ビルの屋上ヘリポートはなぜ推奨されるのか|31mを超える建物と設置義務の有無を解説

高層ビルの屋上ヘリポート設置は義務かを示すアイキャッチ画像

高層ビルの屋上に、丸い印のようなスペースが用意されていることがあります。
これは建築基準法や消防法が個別に定めた設置義務ではなく、国と消防庁が進めてきた行政指導によるものです。
平成2年、消防庁は建設省(現・国土交通省)と足並みをそろえ、高さ31mを超える高層建築物に屋上ヘリポート等の設置を働きかける通知を発出しました。
この記事では、対象になる建物の条件と、設置が義務ではなく行政指導である理由を解説します。

うちのビルの屋上に、丸い印みたいなものがあるんですが、あれは何のためにあるんでしょうか。

それはヘリコプターの緊急離着陸場かもしれませんね。
高さ31mを超える建物への設置を、消防庁が働きかけているんですよ。

うちは点検も届出もきちんとしているので、屋上のヘリポートも法律で義務づけられているんですか。

いいえ、そこは誤解されやすい点です。
これは法律上の義務ではなく、行政指導としての「設置の推進」なんです。

この記事の結論
  • 平成2年2月6日、消防庁は消防消第20号・消防予第14号・消防救第14号でヘリコプターの屋上緊急離着陸場等の設置推進を通知しました
  • 対象は高さ31mを超え非常用エレベーターの設置を要する高層建築物と、3次救急医療機関等の高度医療施設です
  • 設置は建設省(現・国土交通省)住宅局建築指導課長の通知(建設省住指発第14号)を受けた行政指導であり、法律上の義務ではありません
  • 設置を進める際は特定行政庁との連絡調整と警防計画への反映が求められます
  • 消防審議会の答申を踏まえ、はしご自動車では対応が難しい高さの建物へのヘリコプター活用を後押しする狙いがあります

高層ビルの屋上ヘリポート設置が行政指導である仕組みを示した図解

なぜ高層ビルに屋上ヘリポートの設置が推奨されているのか

はしご車の届かない高さの高層ビルとヘリコプターを描いたイラスト
はしご自動車には、届く高さの限界があります。
その限界を補う手段として、消防庁はヘリコプターの活用を進めてきました。
高層建築物等におけるヘリコプターの屋上緊急離着陸場等の設置の推進について(通知)(平成2年2月6日 消防消第20号・消防予第14号・消防救第14号 消防庁消防課長・予防課長・救急救助課長) 消防におけるヘリコプターの活用とその整備のあり方については、平成元年3月20日に、消防審議会から消防庁長官に答申されたところであるが、同答申において、消防ヘリコプターの有効活用に必要な諸条件の一つとして、離着陸場の整備を図ることの重要性が指摘されているところである。
きっかけは、ヘリコプター活用に関する専門家の答申でした。
平成元年3月、消防審議会は消防庁長官に対し、ヘリコプターを有効に活用する条件の一つとして離着陸場の整備を挙げました。
建物火災では、はしご自動車による消防活動が期待できない高層建築物ほど、ヘリコプターの効果が高いとされています。
そこで消防庁は、答申の翌年にあたる平成2年、この考え方を具体化する通知を発出しました。
つまり今回の通知は、はしご車の限界を補う手段として行政が計画的に取り組んできた延長線上にあるものです。

ヘリコプターがあれば、はしご車の届かない階でも安心ということですか。

万能ではありませんが、有効な手段の一つです。
だからこそ答申を踏まえて整備が進められてきたんですよ。

対象になるのはどんな高層建築物か

31mを超える高層ビルと高度医療機関のイラスト
すべての高層ビルが対象というわけではありません。
通知は具体的に2つの系統の建物を挙げています。
高層建築物等におけるヘリコプターの屋上緊急離着陸場等の設置の推進について(通知) 記 1 建物火災時のヘリコプターによる消防活動は、特にはしご自動車による消防活動が期待できない高層建築物においては高い効果が期待できるものであり、各消防本部が保有するはしご自動車の性能等を勘案し、原則として高さ31mを超える非常用エレベーターの設置を要する高層建築物を対象として設置の指導を行うこと。 2 ヘリコプターによる傷病者の搬送については、(略)3次救急医療機関をはじめとする高度医療施設を対象として設置の指導を行うこと。
建築基準法施行令第129条の13の2(非常用の昇降機の設置を要しない建築物・抜粋) 法第三十四条第二項の規定により政令で定める建築物は、次の各号のいずれかに該当するものとする。(略)高さ三十一メートルを超える部分の各階の床面積の合計が五百平方メートル以下の建築物 等
対象は大きく2つの系統に分かれます。
一つは、高さ31mを超え非常用エレベーターの設置を要する高層建築物です。この高さの基準には、建築基準法施行令第129条の13の2が定める非常用エレベーターの設置義務の基準がそのまま使われています。
もう一つは、3次救急医療機関をはじめとする高度医療施設です。ヘリコプターによる傷病者の搬送は、搬送時間の短縮や効率的な収容につながるとされています。
自分のビルが31mを超えているかどうかは、建築確認の記録や竣工図で確認できます。
なお、この2つの系統以外の建物でも設置自体を妨げるものではありませんが、通知が「設置の指導」の対象として明記しているのはこの2種類です。

うちのビルは、たしか非常用エレベーターが付いていたと思います。

それなら高さ31mを超えている可能性が高いですね。
竣工図で高さを確認してみましょう。

通知は何をどう働きかけているのか

建設省から消防庁への通知の連携を示すイラスト
この通知には、もう一つの役所が関わっています。
建設省(現・国土交通省)からの通知を受けて、消防庁が動いた形です。
高層建築物等におけるヘリコプターの屋上緊急離着陸場等の設置の推進について(通知) また、今般、高層建築物等におけるヘリコプターの屋上緊急離着陸場等の設置について、建設省住宅局建築指導課長から別添のとおり、その設置の推進を図るべく各都道府県建築行政庁あて通知されたところである。ついては、下記事項に留意され、貴管下市町村に対し、高層建築物等におけるヘリコプターの屋上緊急離着陸場等の設置を推進し、これに伴い必要な警防計画の整備を図るよう指導されたい
この通知は、単独で出されたものではありません。
まず建設省(現・国土交通省)住宅局建築指導課長が、平成2年1月11日付けの建設省住指発第14号で、各都道府県の特定行政庁へ設置の推進を通知しました。
それを受けて消防庁が、同年2月6日付けで消防機関側にも足並みをそろえるよう働きかけたのが今回の通知です。
具体的な設置の技術的な内容は、消防庁・全国消防長会を含む関係機関が参加してまとめた「ヘリコプターの屋上緊急離着陸場等の設置に関する指針・同解説」((財)日本建築センター発行)に委ねられています。
消防機関側では、整備された建物の警防計画にヘリコプターの活用を反映することが求められています。

建築の役所と消防の役所が、両方から言ってくるということですか。

そのとおりです。
2つの通知が対になって、設置を後押しする仕組みなんですよ。

屋上ヘリポートの設置は法律上の義務なのか

法律の義務ではなく行政指導であることを天秤で示すイラスト
ここが一番誤解されやすいところです。
通知の言葉づかいをよく見ると、義務とは書かれていません。
高層建築物等におけるヘリコプターの屋上緊急離着陸場等の設置の推進について(通知) 記 (1・2の抜粋)…対象として設置の指導を行うこと。 4 設置の指導に当たっては、特定行政庁と十分に連絡をとられたいこと。
「設置の指導」という言葉が、この通知の性格をそのまま表しています。
通知が繰り返し使っているのは「設置の指導」「設置の推進」という表現で、「設置しなければならない」という義務の言葉ではありません。
建築基準法施行令が定めているのは非常用エレベーターの設置義務であって、屋上ヘリポート等そのものの設置義務ではない点に注意してください。
罰則を伴う規制ではなく、消防機関から自治体・建物所有者へ働きかける行政指導という位置づけです。
そのため、対象になる高さの建物であっても、屋上ヘリポート等が実際に整備されているかどうかは建物ごとに差があります。

義務じゃないなら、うちのビルに無くても違反にはならないんですね。

はい、違反にはなりません。
ただし整備されている建物は、それだけ災害対応の選択肢が増えるということです。

明日から何を確認すればよいか

電話で消防本部に確認する防火管理者のイラスト
仕組みが分かったところで、自分のビルに当てはめて考えてみます。
確認する順番を決めておくと、迷わず動けます。
高層建築物等におけるヘリコプターの屋上緊急離着陸場等の設置の推進について(通知) 3 ヘリコプターの屋上緊急離着陸場等の整備が行われた高層建築物に係る警防計画については、当該施設の活用に留意するとともに、必要に応じて(略)ヘリコプターの要請等が速やかに実施できるようその内容の充実を図ること。
まず確認したいのは、建物の高さです。
竣工図や建築確認の記録で、高さが31mを超え非常用エレベーターの設置対象になっているかを確かめてください。
対象に当てはまる場合は、屋上に離着陸場等がすでに整備されているか、整備されているなら警防計画に反映されているかを所轄の消防本部に確認しましょう。
新たに整備を検討する場合は、特定行政庁と消防本部の双方へ相談することになります。
義務ではないからこそ、確認して備えておくかどうかは建物管理者の判断に委ねられています。

まずは自分のビルの高さから確認してみます。

それが一番の近道です。
気になる点があれば、消防本部にも相談してみてくださいね。

よくある質問

Qこの通知はいつ、どんな理由で出されたのですか?
A平成2年2月6日付けの消防消第20号・消防予第14号・消防救第14号により発出されました。前年の消防審議会答申でヘリコプター活用の条件として離着陸場整備の重要性が指摘されたことと、建設省(現・国土交通省)住宅局建築指導課長からの通知(建設省住指発第14号)を受けて、消防機関側からも設置の推進を働きかけたものです。
Q対象になるのは高さ何mからの建物ですか?
A原則として高さ31mを超え、非常用エレベーターの設置を要する高層建築物が対象です。この基準は建築基準法施行令第129条の13の2が定める非常用エレベーターの設置義務の基準と同じものが使われています。
Q屋上ヘリポートを設置しないと消防法違反になりますか?
Aなりません。この通知はあくまで「設置の指導」「設置の推進」という行政指導であり、罰則を伴う法律上の義務ではありません。
Q病院ならどこでも対象になりますか?
Aいいえ。すべての病院ではなく、3次救急医療機関をはじめとする高度医療施設が、傷病者搬送の効果が高い施設として設置の指導の対象になります。

まとめ

平成2年2月6日、消防庁は消防消第20号・消防予第14号・消防救第14号でヘリコプターの屋上緊急離着陸場等の設置推進を通知しました
きっかけは平成元年3月の消防審議会答申で、ヘリコプター活用の条件として離着陸場整備の重要性が指摘されたことです
対象は高さ31mを超え非常用エレベーターの設置を要する高層建築物と、3次救急医療機関をはじめとする高度医療施設です
建設省(現・国土交通省)からの通知(建設省住指発第14号)を受け、消防機関側からも足並みをそろえた形で発出されました
通知が使うのは「設置の指導」「設置の推進」という言葉であり、罰則を伴う法律上の義務ではありません
整備が行われた高層建築物では、警防計画にその活用を反映することが求められています
自分の建物が対象に当てはまるかは、高さと非常用エレベーターの有無から確認できます

義務ではなくても、うちのビルが対象かどうかは確認しておいたほうがよさそうですね。
まずは高さと非常用エレベーターを確認してみます!

それが一番大切です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 高層建築物等におけるヘリコプターの屋上緊急離着陸場等の設置の推進について(通知)(平成2年2月6日 消防消第20号・消防予第14号・消防救第14号 消防庁消防課長・予防課長・救急救助課長)
  • 高層建築物等におけるヘリコプターの屋上緊急離着陸場等の設置の推進について(建設省住指発第14号 平成2年1月11日 建設省住宅局建築指導課長)
  • 建築基準法施行令第129条の13の2(非常用の昇降機の設置を要しない建築物)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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