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自動火災報知設備の発信機はなぜ昔は設置義務がなかったのか|受信機の回線や配管の埋め戻しまで五つの質疑応答を現行の条文と照らして解説

受信機や発信機はどこまで細かいのか

延べ面積が350平方メートルを下回るだけで、受信機や感知器の回線の組み方が変わることをご存じでしょうか。
消防実務六法には、自動火災報知設備の受信機や発信機をめぐって当時の消防庁が答えた質疑応答が数多く収録されています。
この記事では、そのなかから五つを選び、現行の消防法施行規則と照らし合わせて読み直します。
回線の共用から配管の埋め戻しまで、見落としやすい基準を順に確かめていきましょう。

うちの建物、受信機って延べ面積で種類が決まるって聞いたんですが本当ですか。

はい。
実は昭和44年の質疑応答で、回線の組み方まで細かく示されているんですよ。

発信機の設置基準とか配管の埋め戻しとか、他にも気になる点があるんです。

では。
今日は五つの質疑応答を、現行の条文に当てはめて順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 延べ面積が350平方メートル以下の防火対象物では、煙感知器と熱感知器を同一の回線に接続してよいとされました
  • 共同住宅で警戒区域が500平方メートルになると、P型2級1回線用受信機は設置できないとされました
  • 発信機の設置は、当時は法令上の規定が無く設置しなくてもよいとされていました
  • P型受信機の回路抵抗50オーム以下は、回路末端を閉路の状態にして電路ごとに測定するとされました
  • 配線が共同住宅等の界壁を貫通する部分は、給水管等に準じて埋めもどす施工でよいとされました

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自動火災報知設備の回線共用や受信機の選定や発信機の設置や回路抵抗測定や配管の埋め戻しを示す図解

延べ面積350平方メートル以下の建物で煙感知器と熱感知器の回線は一緒にしてよいのか

自動火災報知設備の受信機に煙感知器と熱感知器が同じ回線でつながる様子
小さな建物では、受信機そのものの回線数が少なく、設計に工夫が要ります。
煙感知器と熱感知器を同じ回線にまとめてよいのかが問われました。
問 延面積350平方メートル以下の防火対象物に煙感知器を設置する場合、熱感知器の回線と同一の回線に接続してよいか。
答 お見込みのとおり。
(昭和44年11月20日 消防予第265号 消防庁予防課長から都道府県消防主管部長あて回答)
小規模な建物では感知器の種類を問わず同じ回線にまとめられます。
現行の規則第24条第2号チは、回線数が一のP型2級受信機やGP型2級受信機を、延べ面積が350平方メートルを超える防火対象物には設けないと定めています。
回線が一つしかない受信機を使う以上、その建物に設ける煙感知器と熱感知器は物理的に同じ回線へつながることになり、この質疑の答えは現在も変わりません。
延べ面積がこの基準に近い建物を設計するときは、受信機の回線数を先に決めてから感知器の種類ごとの配線計画を組む必要があります。

うちのテナント、延べ面積がちょうど350平方メートル前後なんですが、回線はどう考えればいいんでしょうか。

回線が一つの受信機なら、煙感知器も熱感知器も同じ回線でまとめて大丈夫です。

共同住宅で警戒区域が500平方メートルならどの受信機を選べばよいのか

共同住宅の警戒区域に合わせて選ばれる複数回線の受信機
共同住宅は住戸が集まるぶん、警戒区域の面積も大きくなりがちです。
小さな受信機では足りない場合に、どこで線引きされるのかが問われました。
問 共同住宅で警戒区域の面積が500平方メートルのものに、P型2級1回線用受信機を設置してよいか。
答 延べ面積が350平方メートルをこえるときは設けることができない(規則24ニホ)。
(昭和44年11月20日 消防予第265号 消防庁予防課長から都道府県消防主管部長あて回答)
500平方メートルの警戒区域には1回線用の受信機は使えません。
当時の回答にある規則第24条第2号ホは条文の構成が変わり、同じ基準は現在規則第24条第2号チに置かれています。
延べ面積が350平方メートルを超える防火対象物にはP型2級及びGP型2級の1回線用受信機を設けられないため、500平方メートルの警戒区域を持つ共同住宅では複数回線に対応した受信機を選ぶ必要があります。
図面上の警戒区域の面積を先に確認し、350平方メートルの基準に照らして受信機の型式を選定する手順が欠かせません。

うちのマンション、警戒区域が広めなんですが、小さい受信機でも大丈夫でしょうか。

350平方メートルを超えるなら1回線用は使えません。
複数回線対応の受信機を選びましょう。

発信機の設置になぜ当時は規定が無く今は歩行距離50メートルと決まっているのか

廊下の壁に設置された自動火災報知設備の発信機と表示灯
発信機は火災を見つけた人が押して知らせる重要な機器です。
ところが当時は、その設置そのものを義務づける条文が見当たりませんでした。
問 自動火災報知設備の発信機は、法令上設置について規定条文がないので、設置しなくてもよいと解してよいか。
答 お見込みのとおり。
(昭和44年11月20日 消防予第265号 消防庁予防課長から都道府県消防主管部長あて回答)
当時は設置義務の条文が無いというのが正しい答えでした。
しかしその後の改正で規則第24条第8号の2が新設され、現在は発信機の設置そのものが明文で定められています。
各階ごとにその階の各部分から発信機までの歩行距離50メートル以下、床面からの高さ0.8メートル以上1.5メートル以下、直近に表示灯を設けることなどが具体的に示されました。
昭和44年当時の「規定が無い」という答えをそのまま現在の設計にあてはめると誤りになるため、発信機を配置するときは必ず現行の規則第24条第8号の2を確認する必要があります。

発信機の設置って、法律には何も書かれていないって聞いたことがあるんですが。

それは昔の話です。
今は歩行距離50メートルごとに設ける基準が条文に明記されています。

発信機の回路抵抗50オーム以下はどうやって測定するのか

発信機の回路末端で電路の抵抗を測定する様子
受信機から発信機までの回路には、抵抗の上限が決められています。
数字の基準はあっても、どうやって測るのかが問われました。
問 P型受信機の回路抵抗は50オーム以下と規定されたが、その測定方法を示されたい。
答 回路末端の発信機、押ボタンスイッチ、終端抵抗等を操作し、当該回路を閉路の状態として、それぞれの電路について測定する。
(昭和44年11月20日 消防予第265号 消防庁予防課長から都道府県消防主管部長あて回答)
回路の末端を閉じてから電路ごとに測るのが基本の手順です。
現行の規則第24条第1号トは、P型受信機及びGP型受信機の感知器回路の電路の抵抗を50オーム以下となるように設けることを定めていて、この基準は昭和44年当時から変わっていません。
測定の際は発信機の押ボタンや終端抵抗を操作して回路をつなげた状態にし、受信機側から電路ごとに抵抗を計測します。
点検のたびにこの手順で数値を確認しておけば、配線の劣化や接触不良を早期に見つける手がかりになります。

回路抵抗50オーム以下って数字は知ってるんですが、どう測るのか分からなくて。

回路の末端を閉じた状態にしてから、電路ごとに測定機で計測します。

自動火災報知設備の配線が共同住宅の界壁を貫通する部分はどう埋め戻せばよいのか

共同住宅の界壁を貫通する配線の隙間をモルタルで埋め戻す様子
共同住宅の各戸を区切る界壁は、延焼を防ぐための大切な区画です。
そこを配線が貫通するとき、施工方法が問われました。
問 規則第24条について、自動火災報知設備の配線が建築基準法施行令第114条第5項に該当する部分を貫通する場合の施工方法は、いかにするか。
答 給水管等に準じ施工できる範囲で埋めもどすものである。
(昭和44年11月20日 消防予第265号 消防庁予防課長から都道府県消防主管部長あて回答)
配線の隙間は給水管と同じようにモルタル等で埋め戻します。
現行の建築基準法施行令第114条第5項は、共同住宅の各戸を区切る界壁等を給水管や配電管が貫通する場合に、同令第112条第20項の規定を準用すると定めています。
その第112条第20項は、管と防火区画との隙間をモルタルその他の不燃材料で埋めることを求めており、この枠組みは昭和44年当時から変わっていません。
自動火災報知設備の配線が共同住宅の界壁を貫通する工事では、給水管の貫通処理と同じ考え方で、隙間を不燃材料で確実に埋め戻す必要があります。

共同住宅の配線工事で、壁に開けた穴ってそのままでいいんでしょうか。

いいえ。
給水管と同じように、モルタルなどの不燃材料で隙間を埋め戻してください。

よくある質問

Q延べ面積350平方メートル以下なら、煙感知器と熱感知器を同じ回線にしてもよいですか?
Aはい。1回線用の受信機を使う前提であれば、同じ回線にまとめて差し支えありません。
Q共同住宅の警戒区域が500平方メートルある場合、P型2級1回線用受信機は使えますか?
A使えません。延べ面積が350平方メートルを超える防火対象物には設置できません。
Q発信機の設置には、今も法令上の規定が無いのですか?
Aいいえ。現在は規則第24条第8号の2で、歩行距離50メートルごとの設置が明記されています。
Q配線が共同住宅の界壁を貫通する部分は、どう処理すればよいですか?
A給水管と同様に、モルタルその他の不燃材料で隙間を埋め戻します。

まとめ

✔延べ面積350平方メートル以下の防火対象物では、煙感知器と熱感知器を同一の回線に接続してよいとされました
✔共同住宅で警戒区域が500平方メートルになると、P型2級1回線用受信機は設置できません
✔発信機の設置は当時規定が無かったものの、現在は規則第24条第8号の2で明記されています
✔発信機までの歩行距離は50メートル以下、高さは0.8メートルから1.5メートルの間と定められています
✔P型受信機の回路抵抗50オーム以下は、回路末端を閉路にして電路ごとに測定します
✔配線が共同住宅の界壁を貫通する部分は、モルタル等の不燃材料で埋め戻します
✔昭和44年当時の回答を読むときは、号番号が現在と変わっていないか必ず確認する必要があります

受信機や発信機の細かい基準も、条文の変遷まで確かめれば迷わず判断できそうです。

古い通達を読むときは、現行の条文との対応を必ず確認するのが前提です。
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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第21条
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第24条
  • 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第112条・第114条
  • 煙感知器回線と熱感知器回線の共用に関する質疑(昭和44年11月20日 消防予第265号 消防庁予防課長から都道府県消防主管部長あて回答)
  • 共同住宅の受信機の選定に関する質疑(同上)
  • 発信機の設置義務に関する質疑(同上)
  • 発信機の回路抵抗の測定方法に関する質疑(同上)
  • 配線が界壁等を貫通する場合の施工方法に関する質疑(同上)
  • 消防実務六法 質疑応答編

※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。

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