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蓄電池設備の容量点検はなぜリチウムイオン電池だけ非常電源専用で分けるのか|30分間放電と前日放電で変わる判定基準を解説

蓄電池設備の容量点検はなぜリチウムイオン電池だけ非常電源専用で分けるのか

蓄電池設備の容量点検は、蓄電池なら何でも同じやり方で済むと思われがちです。
鉛蓄電池とアルカリ蓄電池は10分間の放電で判定できますが、リチウムイオン蓄電池はそう単純ではありません。
令和7年の点検要領改正で、リチウムイオン蓄電池の中でも非常電源専用かどうかで試験方法がはっきり分かれました。
この記事では、点検要領が定める蓄電池設備の容量点検(放電試験)の方法を、電池の種類ごとに解説します。

うちの蓄電池、リチウムイオンなんですけど容量点検はどうやるんですか。

それ、非常電源専用かどうかで答えが変わりますよ。

専用か専用でないかで、点検のやり方まで違うんですか。

はい、放電時間も判定の基準もまったく別です。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 鉛蓄電池とアルカリ蓄電池は、第25-4表に示す電流値で10分間放電し端子電圧を確認します
  • リチウムイオン蓄電池は、非常電源専用として用いるものに限り1.19Cの電流で30分間放電して判定します
  • 非常電源専用でないリチウムイオン蓄電池・ナトリウム・硫黄電池・レドックスフロー電池は、点検前日に通常放電し点検まで通常充電を行いません
  • この場合は点検当日に直流電圧を測定し、点検時の直流電池電圧と非常容量設定の直流電池電圧を比較して判定します
  • 判定基準値まで電圧が低下したときは直ちに放電を停止し充電を行います

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蓄電池設備の容量点検は鉛蓄電池とアルカリ蓄電池が10分間放電でリチウムイオン蓄電池の非常電源専用が30分間放電で専用でないものとナトリウム硫黄電池とレドックスフロー電池が前日放電に分かれることを示した図解

蓄電池設備の容量点検はそもそも何を確かめているのか

蓄電池に模擬負荷をつないで放電試験を行う回路のイラスト
蓄電池設備の容量点検は、電圧を測るだけでは終わりません。
実際に放電させて、非常電源として必要な容量が残っているかを確かめます。
  • 負荷の容量に変化があった場合、蓄電池容量で全負荷に対して規定時間放電できることを点検項目「容量」で確認します
  • 入力開閉器を開放し模擬負荷を接続して放電する、という回路の基本形は電池の種類が違っても共通です
容量点検は、蓄電池が実際に電気を送り出せるかを確かめる試験です。
点検要領は、負荷容量が増加し判定できない場合は製造者又は蓄電池設備整備資格者に判定を依頼することとしています。
放電試験の回路図は入力開閉器を開放し模擬負荷を接続する形で統一されていますが、放電させる時間と判定に使う電圧の基準は、蓄電池の種類によって大きく三つに分かれます。
この先は、鉛蓄電池・アルカリ蓄電池から順に見ていきます。

容量点検って、電圧計を当てるだけじゃダメなんですか。

はい、実際に放電させて確かめますよ。
電池の種類で方法が変わります。

鉛蓄電池とアルカリ蓄電池はなぜ10分間の放電だけで判定できるのか

鉛蓄電池とアルカリ蓄電池のラックとストップウォッチで10分間を計るイラスト
鉛蓄電池とアルカリ蓄電池は、電池の形ごとに放電電流の値が決まっています。
この値を知っていれば、10分間の放電だけで判定が済みます。
  • 第25-4表の放電電流値(鉛蓄電池は0.35C〜0.63C、アルカリ蓄電池は0.38C〜1.14C)で10分間放電したときの蓄電池端子電圧値を確認します
  • この場合の電解液温度は10℃以上であることが条件です
鉛蓄電池とアルカリ蓄電池の容量点検は、短時間でも十分な判定ができる作りです。
第25-4表は、CS型・HS型・HSE型・MSE型・M型の鉛蓄電池と、AM型・AMH型・AH型・AHH型・KR型のアルカリ蓄電池について、C(蓄電池の定格容量)に対する割合で放電電流値を定めています。
判定は蓄電池端子電圧値が電圧値(鉛蓄電池は1.8V、アルカリ蓄電池は1.1V)とセル数の積以上であることです。
点検中に判定基準値まで電圧が低下したときは、直ちに放電を停止して充電を行います。

放電電流の値って、全部の鉛蓄電池で同じなんですか。

いいえ、CS型・HS型など型式ごとに違いますよ。
銘板で型式を確認してくださいね。

リチウムイオン蓄電池はなぜ非常電源専用かどうかで試験方法が分かれるのか

非常電源専用のラベルが付いたリチウムイオン電池パックとストップウォッチで30分間を計るイラスト
リチウムイオン蓄電池は、ひとまとめにして扱える電池ではありません。
非常電源専用として用いるものかどうかで、試験方法がはっきり分かれます。
  • 非常電源専用として用いるリチウムイオン蓄電池は、1.19Cの電流で30分間放電したときの蓄電池端子電圧を確認します
  • 専用でないリチウムイオン蓄電池は、ナトリウム・硫黄電池やレドックスフロー電池と同じ扱いになります
この区分は、令和7年10月3日の点検要領改正で明確になったものです。
令和7年消防庁告示第6号(令和7年7月30日公布)による蓄電池設備の基準の改正を踏まえ、消防予第410号で点検要領「第25 非常電源(蓄電池設備)」が改められ、「非常電源専用として用いるものに限る」という限定が新たに加わりました。
判定は製造者が指定する組電池あたりの最低許容電圧以上であることで、Cは蓄電池の組電池あたりの定格容量を指します。
専用かどうかの区分を見落とすと、試験方法そのものを間違えることになります。

非常電源専用かどうかって、どこで見分けるんですか。

設計図書や銘板の用途表示で確認しますよ。
常用と兼用する電池は専用ではありません。

点検前日に通常放電する電池は判定基準がどう変わったのか

前日に放電マークが付いたカレンダーと翌日に電圧計で測定している様子のイラスト
専用でないリチウムイオン蓄電池・ナトリウム・硫黄電池・レドックスフロー電池は、放電試験を点検当日には行いません。
前日からの準備と、当日の測定方法がセットになっています。
  • 点検前日に通常放電を行い、点検まで通常充電を行わないのがこのグループの準備です
  • 点検当日は直流電圧測定を行い、点検時の直流電池電圧と非常容量設定の直流電池電圧を比較して判定します
この判定方法も、令和7年の改正で測るタイミングが変わりました。
改正前は放電終了時点の直流電池電圧で判定していましたが、改正後は点検当日に測定した時点の直流電池電圧で判定する形に改められています。
非常容量設定とは、設計時に非常電源として必要な容量を計算し決定した直流電池電圧のことです。
点検時の直流電池電圧が、この非常容量設定の直流電池電圧以上であれば合格です。

前日に通常充電しちゃったら、どうなるんですか。

非常電源として必要な容量が確認できなくなります。
前日の手順を守ってくださいね。

容量点検で基準値を下回ったらどう対処するのか

電圧計の針が基準値を下回り技術者が充電装置を確認しているイラスト
容量点検は、基準値を下回ったらそこで終わりではありません。
放電を止めた後にどう動くかまで、点検要領は定めています。
  • 点検中に判定基準値まで蓄電池電圧が低下したときは、直ちに放電を停止し充電を行うこととされています
  • 容量不足と判定されるものは、原因が蓄電池にあるのか充電装置にあるのか総合的に判断する必要があります
容量不足の原因は蓄電池自身だけとは限りません。
点検要領は、容量不足と判定されるものについて製造者又は蓄電池設備整備資格者に整備を依頼する等適切な処置をとることとしています。
また、この容量の点検は切替装置の点検と同時に行うことが望ましいとされています。
常用電源を停電状態にしたときに自動的に非常電源へ切り替わるかも、容量点検とあわせて確認しておくと手戻りがありません。

容量不足だったら、その場で蓄電池を交換するんですか。

いいえ、まずは蓄電池か充電装置か原因を見極めます。
専門の資格者に整備を依頼してくださいね。

よくある質問

Q鉛蓄電池の容量点検は、どの蓄電池でも同じ放電電流で10分間放電すればよいですか?
Aいいえ。CS型・HS型など型式ごとに決まった放電電流値があり、第25-4表で確認してから放電します。
Qリチウムイオン蓄電池は、専用か専用でないかに関わらず同じ試験でよいですか?
Aいいえ。非常電源専用として用いるものに限り1.19Cで30分間放電し、専用でないものは別の方法になります。
Q点検前日に通常放電するグループは、放電が終わった時点の電圧で判定しますか?
Aいいえ。点検当日に直流電圧を測定した時点の電池電圧で、非常容量設定の電圧と比較して判定します。
Q容量不足と判定されたら、すぐに蓄電池を交換すればよいですか?
Aいいえ。原因が蓄電池にあるのか充電装置にあるのか総合的に判断したうえで、製造者又は蓄電池設備整備資格者に整備を依頼します。

まとめ

✔鉛蓄電池とアルカリ蓄電池は、第25-4表の放電電流値で10分間放電し端子電圧を確認します
✔この場合の電解液温度は10℃以上であることが条件です
✔非常電源専用のリチウムイオン蓄電池は1.19Cの電流で30分間放電して判定します
✔専用でないリチウムイオン蓄電池・ナトリウム・硫黄電池・レドックスフロー電池は点検前日に通常放電し通常充電を行いません
✔点検当日は点検時の直流電池電圧と非常容量設定の直流電池電圧を比較して判定します
✔判定基準値まで電圧が低下したときは直ちに放電を停止し充電を行います
✔容量不足と判定されたら原因を総合的に判断し、製造者又は蓄電池設備整備資格者に整備を依頼します

電池の種類でこんなに変わるとは知りませんでした!

容量点検に迷ったときは、㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行規則第31条の6(消防用設備等又は特殊消防用設備等の点検及び報告)
  • 消防用設備等の点検の基準及び消防用設備等点検結果報告書に添付する点検票の様式を定める件(昭和50年消防庁告示第14号、最終改正:令和7年消防庁告示第6号)別表第25 非常電源(蓄電池設備)
  • 消防用設備等の点検要領(消防庁通知) 第25 非常電源(蓄電池設備)(最終改正:令和7年10月3日消防予第410号)

※本記事は公表されている法令、告示および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。点検の基準や点検要領は改正されることがあります。個別の判断は、消防設備士や所轄消防署にご確認ください。

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