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蓄電池を貯蔵する屋内貯蔵所はなぜ閉鎖型ヘッドのスプリンクラーで足りるのか|貯蔵方法で変わる2つの水源基準と標示温度の条件を解説

蓄電池を保管する屋内貯蔵所のスプリンクラー設備のイメージ

リチウムイオン蓄電池等を貯蔵する屋内貯蔵所には、消火設備として第二種のスプリンクラー設備を設けることが認められていますが、危険物の規制に関する規則はこれを開放型ヘッドを使うことを前提に定めています。
一方、閉鎖型ヘッドを使いたいという現場からの照会に対し、消防庁は令和7年12月の執務資料でこれを認める回答を示しました。
危険物の規制に関する政令第二十三条の基準の特例を適用する形で、開放型ヘッドに代えて閉鎖型ヘッドを設置する道が開かれたのです。
どんな仕様のヘッドなら認められ、貯蔵方法によって基準がどう変わるのかを解説します。

屋内貯蔵所のスプリンクラーを閉鎖型ヘッドに変えたいと相談されました。

第二種のスプリンクラー設備は原則開放型ヘッドが前提です。
まずは認められる条件を確認しましょう。

うちは蓄電池をラックに並べて貯蔵しているのですが、それでも対象になりますか。

貯蔵方法によって基準の中身が変わります。
順番に見ていきますね。

この記事の結論
  • リチウムイオン蓄電池等を貯蔵する屋内貯蔵所の消火設備は、規則第三十五条の二第三項第一号で第二種のスプリンクラー設備(開放型ヘッド限定)と定められているが、消防庁の執務資料(消防危第260号)は一定の要件を満たせば閉鎖型ヘッドへの代替を認めた
  • 閉鎖型ヘッドは標準型・感度一種・有効散水半径2.3・標示温度75度未満の4条件を満たす必要がある。
  • 蓄電池の貯蔵方法(架台・パレット2段以上か、パレット1段か)によって、水源の水量や放水圧力・放水量、または放水密度の基準が変わる
  • 起動装置は自動火災報知設備の感知器等の作動と連動して加圧送水装置を起動できるものとし、予備動力源も規則第三十二条の三第五号により必須。
  • 開放型ヘッドを前提にした従来の運用指針(平成元年消防危第24号)の該当部分もあわせて参照する必要がある。

蓄電池の屋内貯蔵所は閉鎖型ヘッドでもスプリンクラーが組める流れを示す図解

リチウムイオン蓄電池の屋内貯蔵所はなぜ開放型ヘッドが原則なのか

屋内貯蔵所の開放型ヘッドと閉鎖型ヘッドを対比するイメージ
危険物の規制に関する政令第二十条第三項第一号は、蓄電池により貯蔵される総務省令で定める危険物のみを貯蔵し、又は取り扱う屋内貯蔵所について、消火設備の基準の特例を総務省令で定めることができるとしています。
この特例を受けて、規則第三十五条の二第三項第一号は消火設備の内容を具体的に定めています。
危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第三十五条の二第三項第一号 前項の屋内貯蔵所のうち、次の各号に掲げる消火設備をそれぞれ当該各号に掲げる基準に適合するように設けたものについては、令第二十条第一項各号及び第二項の規定は適用しない。一 第二種のスプリンクラー設備(開放型スプリンクラーヘッドを用いるものに限る。)
この条文は、閉鎖型ヘッドではなく開放型ヘッドを使うことをはっきり条件にしています
開放型ヘッドは一斉開放弁の作動で放射区域全体に一度に放水する仕組みで、燃え広がり方が読みにくい蓄電池の貯蔵には向いた方式とされてきました。
一方で、開放型ヘッドは配管や一斉開放弁など設備が大がかりになりやすく、閉鎖型ヘッドを使いたいという現場の声が出ていました。
この照会に対する消防庁の回答を、次に確認します。

開放型ヘッドが条文にはっきり書いてあるとは知りませんでした。

消防庁の執務資料で、条件付きの代替が認められています。
次はヘッドの仕様を確認しましょう。

閉鎖型ヘッドで代替するにはどんな仕様が必要なのか

閉鎖型スプリンクラーヘッドの仕様を確認するイメージ
消防危第260号の問1は、規則第三十五条の二第三項に定める基準の特例を適用する屋内貯蔵所において、閉鎖型ヘッドを用いた第二種のスプリンクラー設備を認めてよいかという照会に、消防庁は「差し支えない」と回答しました。
ただし、認められるヘッドには4つの条件があります。
消防危第260号 別添 問1 1 スプリンクラーヘッドが、次に掲げる要件を満たすこと。⑴標準型ヘッドであること。⑵感度の種別が1種であること。⑶有効散水半径が2.3であること。⑷標示温度が75度未満であること。
ヘッドの型式・感度・散水半径・標示温度の4つすべてを満たす必要があります
標準型ヘッドであること、感度の種別が一種であることに加えて、有効散水半径が2.3標示温度が75度未満という数値要件も満たさなければなりません。
高感度型ヘッドや標示温度が高いヘッドは、この特例の対象になりません。
次は、蓄電池の貯蔵方法によって変わる水源と放水の基準を見ていきます。

ヘッドさえ揃えれば貯蔵方法は関係ないのですか。

いいえ、貯蔵方法によって水源の基準まで変わります。
次に確認しましょう。

蓄電池の貯蔵方法によって水源と放水の基準はどう変わるのか

蓄電池の貯蔵方法によって水源基準が変わるイメージ
蓄電池の貯蔵方法は、規則第十六条の二の八第二項第五号で架台を用いる方法(イ)とパレットを用いる方法(ロ・ハ)に分かれています。
消防危第260号の問1も、この貯蔵方法に応じて水源と放水の基準を2パターンに分けています。
消防危第260号 別添 問1 2 次の⑴又は⑵の要件を満たすこと。⑴規則第16条の2の8第2項第5号イ又はロに規定する方法により蓄電池を貯蔵する場合は、次を満たすこと。ア スプリンクラーヘッドは、防護対象物の天井又は小屋裏に、当該防護対象物の各部分から一のスプリンクラーヘッドまでの水平距離が2.1メートル以下となるように設けること。イ 水源は、その水量がスプリンクラーヘッドの設置個数(当該設置個数が12を超えるときは、12とする。)に33.6立方メートルを乗じて得た量以上の量となるように設けること。ウ 放水圧力及び放水量は(略)放水圧力が0.24メガパスカル以上で、かつ、放水量が560リットル毎分以上となるようにすること。⑵規則第16条の2の8第2項第5号ハに規定する方法により蓄電池を貯蔵する場合は、次を満たすこと。ア 水源は、その水量が防護対象物の床面積(当該床面積が150平方メートルを超えるときは、150平方メートルとする。)に1.05メートルを乗じて得た量以上の量となるように設けること。イ 放水密度は、防護対象物のいずれの部分においても、17.5ミリメートル毎分以上となるようにすること。
架台やパレットを2段以上重ねて貯蔵する場合と、パレットを1段で使う場合とで、必要な基準がまったく違います
架台・パレット2段以上の場合は、ヘッドの水平距離2.1メートル以下という配置条件に加え、水源は設置個数(上限12個)に33.6立方メートルを乗じた量以上、放水圧力0.24メガパスカル以上・放水量560リットル毎分以上という性能が求められます。
一方、パレットを1段で使う場合は水平距離の条件がなく、水源は床面積(上限150平方メートル)に1.05メートルを乗じた量以上、放水密度17.5ミリメートル毎分以上という基準に置き換わります。
どちらの基準を使うかは、貯蔵方法を確認しないと決められません。

うちは架台に並べているので、水平距離のほうの基準ですね。

そのとおりです。
次は起動装置の落とし穴を見ておきましょう。

起動装置と予備動力源で見落としやすい基準はどこか

感知器と加圧送水装置が連動するイメージ
貯蔵方法ごとの水源基準を満たしても、起動装置と予備動力源の要件を欠くと特例の対象になりません。
消防危第260号 別添 問1 エ 起動装置は、自動火災報知設備の感知器の作動又は流水検知装置若しくは起動用水圧開閉装置の作動と連動して加圧送水装置を起動することができるものとすること。3 スプリンクラー設備の予備動力源については、規則第32条の3第5号の規定によること
危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第三十二条の三第五号 スプリンクラー設備には、予備動力源を附置すること。
起動装置は、感知器等の作動と連動して自動で加圧送水装置を起動できることが条件です
自動火災報知設備の感知器の作動、または流水検知装置・起動用水圧開閉装置の作動と連動して、加圧送水装置を自動起動できる仕組みにしなければなりません。
さらに、規則第三十二条の三第五号により予備動力源の設置も義務付けられており、これは開放型・閉鎖型を問わず第二種のスプリンクラー設備に共通する基準です。
手動起動だけの設備や、予備動力源を省いた設計では、この特例の対象になりません。

手動で起動するタイプのスプリンクラーは対象外ということですか。

感知器等との自動連動が条件です。
最後に、実際の確認手順をまとめます。

実際に閉鎖型ヘッドを採用するときの確認手順

屋内貯蔵所のスプリンクラー設備を確認するイメージ
最後に、実際に閉鎖型ヘッドを採用するまでの流れを整理します。
消防危第260号 別添 答1 差し支えない。なお、問1の1から3までの要件に加え、「消火設備及び警報設備に係る危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令の運用について」(平成元年3月22日付け消防危第24号)別紙「消火設備及び警報設備に関する運用指針」第4「スプリンクラー設備の基準」(開放型スプリンクラーヘッドに係る部分を除く。)を参照すること。
採用を検討するときは、この執務資料の要件を満たすだけでなく、既存の運用指針もあわせて確認します
まず蓄電池の貯蔵方法(架台・パレット2段以上か、パレット1段か)を確認し、それに応じた水源・放水性能の基準を満たす設計にします。
次にヘッドが標準型・感度一種・有効散水半径2.3・標示温度75度未満の4条件を満たす製品かを確認し、起動装置の自動連動と予備動力源も設計に組み込みます。
そのうえで、平成元年の消防危第24号が示す運用指針(開放型ヘッドに係る部分を除く)もあわせて参照し、疑問があれば所轄消防署に事前相談することをおすすめします。

次に相談があったら、この手順で確認します。

それが一番確実です。
最後によくある質問をまとめます。

よくある質問

Q開放型ヘッドから閉鎖型ヘッドへの変更に工事の届出は必要ですか?
Aはい。消火設備の変更は設置許可に関わるため、事前に所轄消防署への相談・手続きが必要です。
Q高感度型ヘッドでもこの特例は使えますか?
Aいいえ。消防危第260号が示す条件は標準型ヘッドに限られており、高感度型ヘッドは対象外です。
Qパレットを2段で使っている場合はどちらの基準になりますか?
A規則第十六条の二の八第二項第五号イ又はロに該当するため、水平距離と水量による基準を使います。
Q予備動力源はどんな設備でもよいのですか?
A規則第三十二条の三第五号の規定によるもので、停電時にもスプリンクラー設備を作動させられる性能が必要です。

まとめ

リチウムイオン蓄電池等の屋内貯蔵所は、規則第三十五条の二第三項第一号で第二種のスプリンクラー設備(開放型ヘッド限定)が原則
消防危第260号は、一定の条件を満たせば閉鎖型ヘッドへの代替を認めた
ヘッドは標準型・感度一種・有効散水半径2.3・標示温度75度未満の4条件が必要
貯蔵方法が架台・パレット2段以上なら水平距離2.1メートル以下と水源33.6立方メートル等の基準
パレット1段なら床面積基準の水源と放水密度17.5ミリメートル毎分以上の基準に切り替わる
起動装置は感知器等との自動連動が必要で、予備動力源も規則第三十二条の三第五号で必須
採用時は平成元年消防危第24号の運用指針もあわせて確認する

閉鎖型ヘッドへの切り替えがこれでよく分かりました!

㈱防災屋でもご相談を承っております

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(令和7年12月25日 消防危第260号 消防庁危険物保安室長)別添 問1・答1
  • 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第三十五条の二第三項第一号、第十六条の二の八第二項第五号、第三十二条の三第五号
  • 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第二十条第三項第一号、第二十三条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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