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危険物施設のスプリンクラー設備はなぜ消火栓との選択制になるのか|水平距離と水源水量の基準を解説

危険物施設のスプリンクラー配管を点検する作業員

危険物施設で著しく消火が困難と判定されると、消火設備の設置が義務になりますが、屋内消火栓や屋外消火栓だけが選択肢ではありません。
スプリンクラー設備も「第二種の消火設備」として同じ枠組みの中に位置づけられており、施設によっては消火栓の代わりに選ぶことになります。
ヘッドの水平距離や放射区域、水源の水量まで、危険物の規制に関する規則が専用の数値を定めています。
この記事では、危険物施設専用のスプリンクラー設備の基準を、選択制の仕組みとあわせて整理します。

うちの施設のスプリンクラー、消火栓の代わりに使えるって言われたんです。

はい。
スプリンクラー設備は消火栓と同じく、著しく消火が困難な施設向けの消火設備の一つです。

消火栓とスプリンクラー、どちらを選ぶかはどう決まるんでしょうか。

施設の区分や場所の性質によって決まります。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • スプリンクラー設備は危険物の規制に関する規則で第二種の消火設備と位置づけられ、著しく消火が困難な施設で消火栓と並ぶ選択肢になります
  • 屋内消火栓・屋外消火栓(第一種)や水噴霧・泡消火設備等(第三種)と並ぶ選択肢のひとつです
  • ヘッドの水平距離は1.7メートル以下、放射区域は150平方メートル以上という配置基準があります
  • 水源の水量は設置個数(閉鎖型は上限30個)に2.4立方メートルを掛けた量以上を確保します
  • 火災のとき煙が充満するおそれのある場所では屋内外消火栓(第一種)を選べず、スプリンクラーなど第二種以上に限定されます

危険物施設のスプリンクラー設備は水平距離一・七メートル以下放射区域百五十平方メートル以上水源は個数かける二・四立方メートル放水量は毎分八十リットル以上であることを示す図解

危険物施設のスプリンクラー設備はなぜ第二種の消火設備と呼ばれるのか

大きな貯蔵建物の天井に並ぶスプリンクラーヘッドと床に置かれた貯蔵容器のイメージ
スプリンクラー設備も、危険物施設では専用の法令で位置づけが決まっています。
まずはその位置づけから確認します。
危険物の規制に関する規則第三十三条第2項第一号(抜粋) 製造所及び一般取扱所 第一種、第二種又は第三種の消火設備(火災のとき煙が充満するおそれのある場所等に設けるものは、第二種の消火設備又は移動式以外の第三種の消火設備に限る。)第三十二条の三 第二種のスプリンクラー設備の設置の基準は、次のとおりとする。(略)
スプリンクラー設備は、危険物の規制に関する規則の中で第二種の消火設備と位置づけられています。
著しく消火が困難と判定された製造所や一般取扱所には、第一種・第二種・第三種のいずれかの消火設備を設置する義務があります。
屋内消火栓・屋外消火栓は第一種、スプリンクラー設備は第二種、水噴霧や泡消火設備などは第三種にあたります。
つまりスプリンクラー設備は、消火栓と横並びに選べる選択肢のひとつという位置づけです。
どちらを選ぶかは、施設の構造や場所の性質によって変わります。
まずはスプリンクラー設備そのものの技術基準を見ていきましょう。

消火栓とスプリンクラー、両方とも第一種だと思っていました。

いえ、スプリンクラーは第二種です。
次はヘッドの配置基準を見ていきましょう。

ヘッドの水平距離と放射区域はどんな基準で決まるのか

天井に並ぶスプリンクラーヘッドが均等な間隔で散水するイメージ
スプリンクラーヘッドの配置には、細かい数字の基準があります。
まずは水平距離と放射区域の考え方を確認します。
危険物の規制に関する規則第三十二条の三第一号・第二号 一 スプリンクラーヘッドは、防護対象物の天井又は小屋裏に、当該防護対象物の各部分から一のスプリンクラーヘッドまでの水平距離が一・七メートル以下となるように設けること。二 開放型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備の放射区域は、百五十平方メートル以上(防護対象物の床面積が百五十平方メートル未満であるときは、当該床面積)とすること。
ヘッドの水平距離は一律1.7メートル以下、放射区域は150平方メートル以上と決まっています。
スプリンクラーヘッドは、防護対象物の天井または小屋裏に、各部分からヘッドまでの水平距離が1.7メートル以下になるように設けます。
一般建築物のスプリンクラーは有効散水半径から計算式で距離を求めますが、危険物施設は1.7メートルという固定値だけで決まる点がシンプルです。
開放型ヘッドを使う設備では、一斉開放弁が同時に放射する「放射区域」を150平方メートル以上(床面積がそれ未満ならその面積)に設定します。
この距離と面積の基準を満たしたうえで、次に水源の量と放水性能を計算します。

一般の建物とは違う決め方なんですね。

はい。
危険物施設は固定の数値で決まるので、計算はシンプルです。

水源の水量と放射性能はどんな数式で決まるのか

地下の水源タンクとポンプからスプリンクラーヘッドへ配管がつながり放水するイメージ
水源の水量と放射性能は、ヘッドの設置個数から計算式で求めます。
条文の数字をそのまま当てはめれば算出できます。
危険物の規制に関する規則第三十二条の三第三号・第四号・第五号 三 水源は、その水量が閉鎖型スプリンクラーヘッドを設けるものにあつては三十(ヘッドの設置個数が三十未満である防護対象物にあつては、当該設置個数)、開放型スプリンクラーヘッドを設けるものにあつてはヘッドの設置個数が最も多い放射区域における当該設置個数に二・四立方メートルを乗じて得た量以上の量となるように設けること。四 スプリンクラー設備は、前号に定める個数のスプリンクラーヘッドを同時に使用した場合に、それぞれの先端において、放射圧力が〇・一メガパスカル以上で、かつ、放水量が八十リットル毎分以上の性能のものとすること。五 スプリンクラー設備には、予備動力源を附置すること。
水源の水量は、ヘッドの設置個数に2.4立方メートルを掛けて求めます。
閉鎖型ヘッドの場合は設置個数(上限30個)、開放型ヘッドの場合は放射区域内で設置個数が最も多い区域の個数に、それぞれ2.4立方メートルを掛けた量以上を確保します。
放射性能は、その個数のヘッドを同時に使用した状態で、先端の放射圧力が0.1メガパスカル以上、放水量が80リットル毎分以上であることが必要です。
消火栓設備と同じく、予備動力源の設置もあわせて義務付けられています。
数値そのものは大きくありませんが、放射区域や設置個数の数え方を間違えると水源が不足します。

水源の量も、個数から計算できるんですね。

はい。
放射区域ごとの個数を正しく数えることが大事です。

著しく消火困難な施設ならスプリンクラー一択なのか

禁止マーク付きの屋内消火栓箱と許可マーク付きのスプリンクラーヘッドを並べたイメージ
著しく消火が困難な施設でも、消火設備は一択ではありません。
場所の性質によって選べる範囲が変わります。
危険物の規制に関する規則第三十三条第2項第一号(抜粋) 製造所及び一般取扱所 第一種、第二種又は第三種の消火設備(火災のとき煙が充満するおそれのある場所等に設けるものは、第二種の消火設備又は移動式以外の第三種の消火設備に限る。)(略)屋外貯蔵所及び移送取扱所 第一種、第二種又は第三種の消火設備(火災のとき煙が充満するおそれのある場所等に設けるものは、第二種の消火設備又は第三種の移動式以外の消火設備に限る。)
著しく消火が困難な施設でも、消火設備は第一種・第二種・第三種の中から選ぶ仕組みです。
製造所や一般取扱所、屋外貯蔵所などでは、原則として第一種・第二種・第三種のいずれかの消火設備を設置すればよいとされています。
ただし火災のとき煙が充満するおそれのある場所では話が変わり、屋内消火栓や屋外消火栓といった第一種の消火設備を選ぶことができません。
この場合に選べるのは、第二種の消火設備(スプリンクラー)か、移動式以外の第三種の消火設備に限られます。
可燃性の蒸気がこもりやすい部屋があるかどうかで、選べる設備の幅が変わる点に注意が必要です。

うちは煙がこもりやすい部屋があるので、消火栓は選べないかもしれません。

その場合はスプリンクラーか、移動式以外の第三種の消火設備に限られます。
該当するか確認しましょう。

導入までに何を確認すればよいのか

チェックリストを持つ作業員がスプリンクラー配管を点検するイメージ
明日からは、自分の施設が第一種を選べる区分かどうかを確認しましょう。
点検の流れに沿って見ていきます。
危険物の規制に関する規則第三十二条の三第五号 スプリンクラー設備には、予備動力源を附置すること。第三十三条第2項第一号(抜粋) (略)火災のとき煙が充満するおそれのある場所等に設けるものは、第二種の消火設備又は移動式以外の第三種の消火設備に限る。
明日からは、自分の施設が第一種を選べる区分かどうかを確認しましょう。
まず火災のとき煙が充満するおそれのある場所に当たるかどうかを、設置届や図面で確認します。
スプリンクラーを選ぶ場合は、ヘッドの水平距離1.7メートル以下・放射区域150平方メートル以上の配置になっているかを点検表と照らし合わせます。
水源の水量が設置個数に応じた2.4立方メートル以上を満たしているかもあわせて確認します。
判断に迷う場合は、所轄消防署や専門業者に相談するのが確実です。

うちの施設も、一度確認してみます。

点検記録とあわせて確認しておくと安心です。

よくある質問

Qスプリンクラー設備は必ず設置しなければならないのですか?
A危険物の規制に関する規則第三十三条が定める組み合わせに従い、施設の区分や場所の性質に応じて必要な種別が決まります。スプリンクラー設備(第二種の消火設備)は、屋内消火栓・屋外消火栓(第一種)や水噴霧・泡消火設備など(第三種)と並ぶ選択肢のひとつで、必ず設置が必要というわけではありません。
Q開放型ヘッドと閉鎖型ヘッドでは水源の計算がなぜ違うのですか?
A閉鎖型は設置個数(上限30個)で数えますが、開放型は一斉開放弁が同時に放射する放射区域内の個数で数えるためです。放射区域ごとにまとめて放水する仕組みの違いが計算式に表れています。
Q放射圧力0.1メガパスカルはどうやって確認するのですか?
A基準個数のヘッドを同時に使用した状態で、それぞれの先端で放射圧力と放水量を測定して確認します。定期点検の対象にもなります。
Q一般建築物のスプリンクラー設備の基準をそのまま使ってもよいですか?
A使えません。危険物施設のスプリンクラー設備は水平距離1.7メートル以下・水源2.4立方メートルという専用の数値が定められているため、一般建築物向けの基準を流用すると配置や水量が不足するおそれがあります。

まとめ

スプリンクラー設備は危険物の規制に関する規則で第二種の消火設備と位置づけられます
屋内消火栓・屋外消火栓(第一種)や水噴霧・泡消火設備等(第三種)と並ぶ選択肢のひとつです
ヘッドは水平距離1.7メートル以下で天井または小屋裏に設けます
開放型ヘッドの放射区域は150平方メートル以上(床面積がそれ未満ならその面積)です
水源は設置個数(閉鎖型は上限30個)に2.4立方メートルを掛けた量以上です
放射性能は放射圧力0.1メガパスカル以上・放水量80リットル毎分以上です
火災のとき煙が充満するおそれのある場所では第一種(消火栓)を選べず、第二種以上に限られます

スプリンクラーの仕組み、思ったよりシンプルでした!

水平距離と放射区域の数字は、定期点検のときにもあわせて確認してください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第32条の3・第33条
  • 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第20条

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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