大きなビルの地下や屋上には、自前の変電室を持つところがあります。
そこに収まる油入りの変圧器には、指定数量を超える量の油が使われていることも珍しくありません。
危険物のはずなのに、なぜ消防署への許可や届出の話が出てこないのでしょうか。
この記事では発電所や変電所の電気機器が危険物の規制から外れる理由と、その境目がどこにあるのかを通達から解説します。
うちのビルにも自前の変電室があって、油入りの変圧器が入っています。
量でいうと指定数量を軽く超えていると思います。
その変圧器の油は、設置されて使われている間は危険物関係法令の規制対象にはなりません。
根拠になる通達を見てみましょう。
規制されないなら、危険物取扱者の資格も要らないということですか。
使われている間はそのとおりです。
ただし対象になる機器の範囲と、外れる条件は決まっています。
- 発電所・変電所・開閉所その他これらに準ずる場所に設置され、冷却または絶縁のため油を内蔵して使う変圧器等は危険物関係法令の規制対象になりません。
- 対象になるのは変圧器・リアクトル・電圧調整器・油入開閉器・しゃ断器・油入コンデンサー・油入ケーブルとその附属装置です。
- 根拠は昭和40年に消防庁が示した自消丙予発第148号という通達です。
- 免除されるのは許可・届出・危険物取扱者の資格です。
- 設置される前と取り外された後の変圧器等は危険物関係法令の規制の対象になります。
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目次
発電所や変電所の変圧器はなぜ危険物の対象から外れたのか

量が指定数量を超えれば、本来なら許可や届出の対象になるはずです。
発電所や変電所、開閉所に置かれた電気機器のうち、冷却や絶縁のために油を内蔵して使っているものは、危険物関係法令の規制対象にしないと昭和40年に消防庁が整理しました。
変圧器の油が第四類の危険物と同じ性質を持つこと自体は否定していません。
機器の内部で使われている油を危険物の貯蔵・取扱いとみなすかどうかという解釈の整理です。
自動車のガソリンタンクに入った燃料が危険物として規制されないのと同じ考え方で、消防庁は電気設備の油にも同じ線引きを示しました。
同じ油なのに規制されるかどうかが変わるのは不思議です。
使われ方が違うからです。
次の章で対象になる機器の範囲を見ていきましょう。
どの機器のどの油までがこの通達の対象になるのか

場所についても条件があります。
変圧器・リアクトル・電圧調整器・油入開閉器・しゃ断器・油入コンデンサー・油入ケーブルの七つと、油入ケーブル用のヘッドタンクや別置型の変圧器油冷却器のような附属装置が対象です。
場所の条件も決まっていて、発電所、変電所、開閉所その他これらに準ずる場所に設置されていることが前提です。
電気配線や照明器具だけの部屋、分電盤しかない小さな電気室は、この通達がもともと想定した機器類には含まれません。
自分のビルの変電室にある機器が、この七種類のどれかに当てはまるかをまず確認します。
うちの変電室にも油入りのしゃ断器があります。
これも対象になりますか。
しゃ断器は対象に入っています。
油を内蔵して冷却や絶縁に使っているかを確認してください。
対象になると危険物法令のなにが要らなくなるのか

変わるのは許可や資格そのものの要否です。
対象になれば、製造所・貯蔵所・取扱所としての許可を受ける必要も、危険物取扱者の資格を持つ人を置く必要もありません。
定期点検や予防規程の作成といった危険物施設に課される義務も、変圧器等の部分には及びません。
これは自動車のガソリンタンクに入った燃料が危険物として規制されないのと同じ考え方で、機器の中で使われている油を貯蔵や取扱いとは区別しています。
変電室そのものを危険物施設として届け出る必要がない、というのが実務上いちばん大きな違いです。
許可も資格も要らないなら、変電室は何も気にしなくてよいのですね。
機器の中の油に限った話です。
次の章で気にすべき場面を見ていきましょう。
交換や保管の場面ではなぜ扱いが変わるのか

見落としやすいのはここです。
新しい変圧器に交換する前に置いておく期間や、古い変圧器を取り外した後に処分するまでの期間は、危険物関係法令の規制が及びます。
保守用にドラム缶で保管している予備の絶縁油も、機器に内蔵されているわけではないので同じ扱いです。
これらの油の量が指定数量を超えれば、少量危険物の届出や貯蔵所としての許可が必要になる場合があります。
交換工事や在庫管理の場面では、油が機器の中にあるかどうかで扱いが切り替わることを覚えておく必要があります。
交換用の変圧器を置いておくときは注意が必要ということですね。
そのとおりです。
保管する量と期間を、工事の前に消防署へ相談してください。
明日からなにを確認すればよいのか

自分のビルの受変電設備から始めます。 確認の起点は自分のビルの受変電設備です。
まず変電室にある機器が変圧器・リアクトル・電圧調整器・油入開閉器・しゃ断器・油入コンデンサー・油入ケーブルのどれに当たるかを竣工図や設備台帳で確認します。
次に、その機器が発電所・変電所・開閉所に準ずる場所として扱われているか、単なる分電盤や配線だけの部屋と混同していないかを見直します。
交換工事や更新の予定があるなら、新しい機器を搬入してから設置するまでの期間と、古い機器を取り外してから処分するまでの期間をあらかじめ所轄の消防署に伝えておきます。
保守用に予備の絶縁油を保管しているなら、その量が指定数量を超えていないかも合わせて確認しておくと安心です。
変電室の機器を全部確認するのは大変そうです。
竣工図があればすぐ終わります。
まずは機器の種類を洗い出してみましょう。
よくある質問
まとめ
まずは竣工図で機器の種類から確認します!
機器の種類と設置場所の二つが起点です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 発電所、変電所等の取扱いについて(昭和40年9月10日 自消丙予発第148号) 消防庁予防課長
- 自動車の燃料タンクについて(昭和49年7月30日 消防予第102号) 消防庁
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





