大きな建物の新築や改修では、工事をしている間の火災への備えが欠かせません。
国の消防法では、新築工事中の建物に防火管理者が要るのは、11階以上かつ延べ1万平方メートル以上などの大規模な建築物に限られています。
東大阪市では、火災予防条例第74条で、延べ面積3,000平方メートル以上の店舗や病院などを工事するときに、工事中の防火管理計画を所轄消防署長に出すよう定めています。
期限は施行規則で工事着手の日の7日前までです。
この記事では、国の基準と東大阪市の条例を分けて読み、どの建物のどの工事が対象になるかを順にたどって、大阪市・堺市と比べます。
東大阪市で、延べ面積4,000平方メートルの物販店舗を増築します。
工事中の防火管理は大きな新築だけと聞きましたが、うちは関係ないですか?
国の基準ではそうですが、東大阪市火災予防条例第74条は、延べ3,000平方メートル以上の物販店舗などの工事に防火管理計画の提出を求めています。
増築も対象に入っています。
いつまでに、どこへ出せばよいのですか?
施行規則第14条で、工事着手の日の7日前までに様式第21で所轄消防署長へ出すと決められています。
順にたどっていきましょう。
- 国の基準で新築工事中に防火管理者が要るのは、11階以上かつ延べ1万平方メートル以上などの大規模な建築物で、収容人員50人以上のものです
- 東大阪市火災予防条例第74条は、(1)項〜(4)項・(5)項イ・(6)項・(9)項イ・(16)項イで延べ3,000平方メートル以上、(16の2)項で1,000平方メートル以上の防火対象物の工事に、防火管理計画の提出を求めています
- 対象の工事は、新築・増築・改築と、過半以上の修繕・模様替え等です
- 期限は施行規則第14条で工事着手の日の7日前までで、様式第21の届出書を所轄消防署長に出します
- 大阪市(第29条第2項)と堺市(第38条第2項)は、建物側と施工責任者が協議して計画を定める形で、面積の下限がありません。協議した内容の届出を施行規則で定めているのは堺市です
▼

目次
国の基準では工事中の防火管理はどこまで決まっているのか

防火管理者を定めなければならない防火対象物は、消防法施行令第1条の2第3項に並んでいます。工事中の建物は、第2号に入っています。
イ 地階を除く階数が十一以上で、かつ、延べ面積が一万平方メートル以上である建築物
ロ 延べ面積が五万平方メートル以上である建築物
ハ 地階の床面積の合計が五千平方メートル以上である建築物
その消防計画に定める事項は、消防法施行規則第3条第1項第2号に並んでいます。
ロ 避難経路の維持管理及びその案内に関すること。
ハ 火気の使用又は取扱いの監督に関すること。
ニ 工事中に使用する危険物等の管理に関すること。
国の基準だと、延べ数千平方メートルの店舗の増築は、工事中の防火管理者の対象にならないのですか?
新築工事中の防火管理者の選任は、大規模な建築物に限られます。
ただ東大阪市では、条例で工事中の防火管理計画の提出を上乗せしています。
東大阪市で防火管理計画の提出がいるのはどの建物の工事か

(1) 令別表第1(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項、(9)項イ及び(16)項イに掲げる防火対象物で延べ面積が3,000平方メートル以上のもの
(2) 令別表第1(16の2)項に掲げる防火対象物で延べ面積が1,000平方メートル以上のもの
- 消防法施行令別表第1の用途で、対象の防火対象物を絞る
- (1)項〜(4)項・(5)項イ・(6)項・(9)項イ・(16)項イは、延べ面積3,000平方メートル以上のものに限る(第1号)
- (16の2)項の地下街は、延べ面積1,000平方メートル以上のものに限る(第2号)
- その防火対象物で、新築・増築・改築、または過半以上の修繕・模様替え等の工事をしようとする者が、工事に係る防火管理計画を作る
- あらかじめ、所轄消防署長に計画書を出す
| 令別表第1の項 | 主な用途 | 延べ面積 |
|---|---|---|
| (1)項〜(4)項 | 劇場・集会場、キャバレー・遊技場、飲食店、百貨店・物品販売店舗など | 3,000平方メートル以上 |
| (5)項イ | 旅館・ホテル・宿泊所など | 3,000平方メートル以上 |
| (6)項 | 病院・診療所、社会福祉施設、幼稚園など | 3,000平方メートル以上 |
| (9)項イ | 蒸気浴場・熱気浴場など | 3,000平方メートル以上 |
| (16)項イ | 上の用途を含む複合用途の防火対象物 | 3,000平方メートル以上 |
| (16の2)項 | 地下街 | 1,000平方メートル以上 |
一方で、(5)項ロの共同住宅や(15)項の事務所などは、この並びに入っていません。
また条文では、修繕と模様替えは「過半以上」のものとされています。どの範囲で過半を判断するか、テナント部分だけの内装工事が「等」に入るかは条文だけでは決められないので、所轄の消防署に確かめてください。
共同住宅や事務所ビルの工事は、第74条の対象には入っていないのですね。
第74条の並びは、店舗や病院など不特定多数の人や避難に助けが要る人が使う用途が中心です。
複合用途の建物は(16)項イだけが入っています。
東大阪市の防火管理計画はいつまでにどこへ出すのか

この計画は条例第74条にもとづく工事に係る計画で、消防法第8条の防火管理者が作る消防計画とは根拠が違います。両方が要る建物で一つにまとめてよいかは条文に書かれていないので、所轄の消防署に確かめてください。
同じ雑則には、地下鉄や地下街の建設などの大規模な道路掘削工事について、防災計画を出す第73条もあります。
| 項目 | 第73条(道路掘削工事) | 第74条(工事中の防火管理計画) |
|---|---|---|
| 対象 | 地下鉄・地下街の建設工事その他の大規模な道路掘削工事 | 用途と延べ面積で決まる防火対象物の新築・増築・改築・過半以上の修繕・模様替え等 |
| 出す書類 | 防災計画書 | 防火管理計画書 |
| 提出先 | 所轄消防署長を経て消防長 | 所轄消防署長 |
| 期限 | 工事着手の7日前まで(施行規則第13条) | 工事着手の7日前まで(施行規則第14条) |
| 様式 | 様式第20 | 様式第21 |
工事の日から逆算して、7日前には計画書を仕上げておかないといけないのですね。
はい、起点は工事着手の日です。
建物側と施工会社のどちらが作るかも、早めに決めておきましょう。
大阪市と堺市では工事中の防火管理はどう決まっているのか

新築・増築などの工事のほか、溶接作業等や引火性の危険物等を使う作業も入ります。
求めているのは、建物の関係者と施工責任者が防災のための計画を協議して定め、その実施に努めることです。
大阪市の条例と施行規則には、この計画を消防へ出す定めは見当たりません。施行規則の届出の条文は、使用開始・火を使用する設備・工事設計書・道路掘削工事の防災計画などで、第29条第2項の計画の届出はありません。提出を求められるかは、所轄の消防署で確かめてください。
堺市は、火災予防条例第38条第2項と施行規則第5条です。
協議して定めたときは、速やかに様式第2号の届出書を消防長又は消防署長に出します。
堺市の【解説及び運用】は、協議して定める事項を次のように説明しています。
- ア 人的面の管理体制(工事統括責任者の指定、工区ごと・階ごとの防火責任者の指名、自衛消防組織の編成など)
- イ 物的面の管理体制(工事部分と使っている部分の区画、消防用設備等の維持管理や代替措置、避難施設と消防隊進入口の確保など)
- ウ 出火危険防止措置の管理体制(火気使用設備・器具、危険物、機械器具、電気設備、喫煙、たき火など)
- エ その他の管理体制(工事完了前の装飾物品や商品などの搬入禁止、消防機関の現場確認の要請など)
- オ スケルトン部分の管理体制(区画、防火管理、消防用設備等の設置と届出の状況)
| 項目 | 東大阪市 | 大阪市 | 堺市 |
|---|---|---|---|
| 根拠 | 条例第74条・施行規則第14条 | 条例第29条第2項 | 条例第38条第2項・施行規則第5条 |
| 対象の建物 | (1)項〜(4)項・(5)項イ・(6)項・(9)項イ・(16)項イ・(16の2)項 | 令別表第1の防火対象物((19)項・(20)項を除く) | (1)項〜(4)項・(5)項イ・(6)項・(9)項イ・(16)項イ |
| 面積の下限 | 延べ3,000平方メートル以上((16の2)項は1,000平方メートル以上) | なし | なし |
| 対象の工事・作業 | 新築・増築・改築・過半以上の修繕・模様替え等 | 新築・増築・改築・修繕・模様替えその他の工事、溶接作業等、引火性の危険物等を使う作業 | 増築・改築・修繕・模様替えその他の工事、溶接作業等、引火性危険物を使う作業 |
| 計画の決め方 | 工事をしようとする者が作成 | 関係者と施工責任者が協議して定める | 権原を有する者と施工責任者が協議して定める |
| 消防への提出 | 工事着手の7日前までに所轄消防署長へ(様式第21) | 条例・施行規則に提出の定めは見当たらない | 協議して定めたとき速やかに消防長又は消防署長へ(様式第2号) |
東大阪市は面積で対象が決まり、大阪市と堺市は面積に関係なく協議が要るのですね。
はい、仕組みが市ごとに違います。
3市に現場がある会社は、市ごとに条文を確かめましょう。
工事を頼む側は何をいつまでに準備すればよいのか

実際の書類づくりは施工会社が行うことが多いですが、建物のオーナーや管理会社も、工程に7日前の提出が入っているかを確かめておくと安心です。
東大阪市で建物の工事を頼むときは、次の順に確かめると漏れが少なくなります。
- 建物の用途が、第74条の並び((1)項〜(4)項・(5)項イ・(6)項・(9)項イ・(16)項イ・(16の2)項)に入るかを確かめる
- 延べ面積が3,000平方メートル以上((16の2)項は1,000平方メートル以上)かを確かめる
- 工事が新築・増築・改築か、過半以上の修繕・模様替え等かを確かめる(迷うときは所轄の消防署に相談する)
- 対象なら、工事に係る防火管理計画を作り、工事着手の日の7日前までに様式第21で所轄消防署長に出す
- すでに使っている建物なら、防火管理者の消防計画に工事中の立会いと火気の監督が定められているかを見直す
- 新築で国の規模(11階以上かつ延べ1万平方メートル以上など)に当たるなら、防火管理者の選任と消防計画の届出もあわせて確かめる
東大阪市の店舗は延べ面積で対象かどうかが決まるので、まず図面で延べ面積を確かめます。
それが第一歩です。
用途・延べ面積・工事の種類の3つがそろえば、提出の対象になります。
よくある質問
まとめ
増築の工程表に、工事着手の7日前の計画書の提出を書き込みます。
過半かどうか迷う工事は、先に消防署へ相談します!
東大阪市の防火管理計画は、国の基準より小さい建物の工事でも出す書類です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 東大阪市火災予防条例 第73条・第74条、東大阪市火災予防条例施行規則 第13条・第14条(東大阪市例規集)
- 東大阪市消防局 消防用設備等の運用基準(公開資料) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 大阪市火災予防条例 第29条・第62条(大阪市例規データベース)
- 大阪市消防局 消防用設備等の設置に係る運用基準 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 堺市火災予防条例 第38条、堺市火災予防条例施行規則 第5条、同条【解説及び運用】(堺市消防局「消防同意・消防用設備等審査基準」所収) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 消防法 第8条、消防法施行令 第1条の2、消防法施行規則 第1条の2・第3条
※本記事は公表されている法令および東大阪市・大阪市・堺市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々の工事の扱いは、所轄の消防署にご確認ください。





