ビルの外壁にある送水口から消防隊が水を送り込み、上の階の放水口で消火に使う設備が連結送水管です。この配管の中にふだんから水を満たしておく方式を湿式、空にしておく方式を乾式と呼びます。
国の規則が湿式を求めているのは高さ70mを超える建物だけですが、東大阪市消防局の運用基準は補助高架水槽で配管内を充水することを原則にし、乾式にできる条件を絞っています。あわせて、屋内消火栓設備と配管を兼用するときの条件も決めています。
この記事では、国の基準と東大阪市の運用を分けて読み、大阪市・堺市の運用基準とも比べます。
東大阪市で7階建ての事務所ビルを計画しています。
連結送水管は乾式で考えていました。
東大阪市では補助高架水槽で充水する湿式が原則です。
乾式にできる条件は2つあります。
国の規則には書いていない決まりですか?
はい、東大阪市が法令基準に指導を加えた▲の基準です。
屋内消火栓との配管の兼用もあわせて見ていきましょう。
- 国の規則第31条第6号イが連結送水管に湿式を求めているのは高さ70mを超える建築物で、それより低い建物の湿式・乾式は規則に書かれていません
- 東大阪市は補助高架水槽による充水を原則とし、乾式にできるのは地階を除く階数10以下で、かつ、配管内容積0.5立方メートル以下の場合です(▲)
- 大阪市は屋内消火栓設備の基準(第5.1)に準じて充水する形で、乾式にできる条件は東大阪市と同じです(◆)
- 堺市は乾式にできるのを条例第71条第1項第2号で設ける屋上の連結送水管のうち、配管内容積0.5立方メートル以下のものに限っています(★)
- 屋内消火栓設備と配管を兼用できるのは、3市とも連結送水管用の加圧送水装置(中継ポンプ)を使わないことなどが条件です。最新の内容は管轄の消防署で確認します
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目次
国の規則は連結送水管の配管をどう決めているのか

イ 専用とすること。ただし、連結送水管を使用する場合において、当該連結送水管の性能に支障を生じない場合においては、この限りでない。
六 地階を除く階数が十一以上の建築物に設置する連結送水管については、次のイからニまでに定めるところによること。
イ 高さ七十メートルを超える建築物にあつては、連結送水管を湿式とし、(略)
湿式については、第6号イが高さ70mを超える建築物に湿式を求めているだけです。それより低い建物の連結送水管を湿式にするか乾式にするかは、国の規則には書かれていません。高さ70mを超える建物の湿式化は連結送水管の湿式化の記事で解説しています。
この2つの空白(低い建物の充水と、兼用の条件)を埋めているのが、各市の運用基準です。
高さ70m以下のビルなら、国の規則には湿式の決まりがないのですね。
はい、規則に湿式の義務がないだけです。
東大阪市の運用基準を見てみましょう。
東大阪市では連結送水管をいつ乾式にできるのか

ア 有効水量は、0.5立方メートル以上とすること。ただし、呼び径25ミリメートル以上の配管により自動的に給水できる装置を設けた場合には、当該有効水量を0.2立方メートル以上とすることができる。
イ 補助高架水槽と接続する配管には、可とう管継手、止水弁及び逆止弁を設けること。
ウ 補助高架水槽から主管までの配管は、呼び径40ミリメートル以上とすること。
乾式にできるのは、次の2つを両方とも満たす場合です。
- 地階を除く階数が10以下の建築物に設けるもの
- 配管内容積が0.5立方メートル以下のもの
湿式にするときは、補助高架水槽の有効水量を0.5立方メートル以上(呼び径25mm以上の配管で自動的に給水する装置を付ければ0.2立方メートル以上)とし、水槽から主管までを呼び径40mm以上でつなぎます。水槽の材質も同じ(2)のエで不燃材料を原則とし、不燃専用室に置く場合などの条件付きでガラス繊維強化プラスチック製を認めています。高架水槽の材質を他の市と比べた例は鈴鹿市の高架水槽の材質の記事にあります。
7階建てでも、配管内容積が0.5立方メートルを超えたら湿式なのですね。
はい、階数と配管内容積の両方が条件です。
設計の早い段階で容積を計算しておきます。
大阪市は屋内消火栓設備の基準をどう借りているのか

6 3の充水措置として補助高架水槽に接続する配管は、管の呼びで40ミリメートル以上のものとすること◆
- 連結送水管の第3 3◆は、配管を屋内消火栓設備の基準(第5.1)に準じて充水するとし、乾式にできる条件(地階を除く階数10以下・配管内容積0.5立方メートル以下)を書いている
- 準用先の屋内消火栓設備の第5 1(1)◆は、自動給水装置を設けた、おおむね0.1から0.2立方メートル以上の補助高架水槽又は補助ポンプ等で常時充水するとしている(他の消防用設備等と兼用する場合は0.2立方メートル以上)
- 同じく第5 1(2)は、補助高架水槽の下流側直近(補助ポンプなら吐出側直近)に止水弁と逆止弁を設けるとしている
- 連結送水管の第3 6◆に戻り、補助高架水槽に接続する配管を管の呼びで40mm以上としている
東大阪市の「有効水量0.5立方メートル以上(自動給水装置付きなら0.2立方メートル以上)」と比べると、大阪市は自動給水装置を設けたうえで、おおむね0.1から0.2立方メートル以上という書き方で、補助ポンプ等による充水も認めている点が違います。
大阪市は、屋内消火栓の基準を見ないと水槽の大きさが分からないのですね。
はい、準用先の第5 1まで読む必要があります。
乾式にできる条件は東大阪市と同じです。
堺市では乾式にできる連結送水管が違うのか

(イ) 前(ア)により補助用高架水槽を設ける場合は、第2 屋内消火栓設備Ⅱ.3.(2).ア.(ア)(a及びcを除く。)を準用するほか、次によること。
a 補助高架水槽から主管までの配管は呼び径50A 以上のものとすること。
b 有効水量は0.5 ㎥以上とすること。なお、当該水槽の水位が低下した場合に呼び径25A 以上の配管により自動的に給水できる装置(以下「自動給水装置」という。)を設けた場合には、当該有効水量を0.2 ㎥以上とすることができる。
(1) 令別表第1(10)項及び(13)項に掲げる防火対象物の地階又は無窓階(1 階及び2 階を除く。)で、床面積が1,000 平方メートル以上のもの
(2) 令別表第1 に掲げる建築物の屋上で、回転翼航空機の発着場又は自動車駐車場(地階を除く階数が2 以下で、かつ、床面積が200 平方メートル未満のものは除く。)の用途に供するもの
湿式にするときの補助用高架水槽は、屋内消火栓設備の項目を借ります。たどると次のとおりです。
- 連結送水管のイ(ア)★で、補助用高架水槽による常時充水を原則とし、条例第71条第1項第2号の屋上のもので配管内容積0.5立方メートル以下のものだけを除く
- イ(イ)で、第2 屋内消火栓設備のⅡ 3 (2) ア(ア)から、aとcを除いた項目を借りる
- 借りる先のdは、他の消防用設備等と兼用するときの水槽の容量をそれぞれの設備の規定水量のうち最大以上の量とでき、eは補助用高架水槽と接続する配管に可とう管継手・止水弁・逆止弁を設けるとしている(bは機器の項目)
- 借りなかったa(水槽から主管までの配管)とc(有効水量)の代わりに、連結送水管のイ(イ)a・bで呼び径50A以上、有効水量0.5立方メートル以上(自動給水装置付きなら0.2立方メートル以上)と決め直している
- さらに配管等の機器のア(イ)cで、ただし書により充水しないものは止水弁と逆止弁を設けないことができるとしている(★)
堺市では、階数で乾式にできる書き方はないのですね。
はい、乾式のただし書は屋上の連結送水管だけです。
水槽から主管までの50A以上も違います。
屋内消火栓設備と配管を兼用するときの条件は3市でどう違うのか

ア 兼用することができる防火対象物は、次によること。
(ア) 規則第31条第6号イに規定する加圧送水装置を用いない防火対象物であること。
(イ) 棟が異なる防火対象物と屋内消火栓設備等の加圧送水装置を兼用していないこと。
イ 主管の内径は100ミリメートル以上とすること。
ウ 連結送水管の設計送水圧力が1.0メガパスカルを超えるものは、規則第31条第5号イからニまでに規定する配管等とし、屋内消火栓設備等の加圧送水装置の二次側には、呼び圧力16K以上の逆止弁を設け加圧送水装置に直接送水圧力がかからないようにすること。
エ 屋内消火栓設備等の消火栓弁には、放水圧力を超えない措置として減圧装置を設けること。
大阪市は、連結送水管の第3 1◆で、兼用できるものを屋内消火栓設備の基準(第5.7)に該当するものとしています。準用先は次のとおりです。
(1) 消火栓開閉弁は、減圧機構付のもので、かつ、最高使用圧力が1.6メガパスカル以上のものとすること
(2) 連結送水管からの送水圧力がポンプに影響を及ぼさないよう、ポンプ吐出側に連結送水管の基準(第3.8)に適合する逆止弁を設けること
堺市は、連結送水管のウ★で「第2 屋内消火栓設備Ⅱ.3.(2).イによること」とし、準用先に条件を書いています。
(ア) 次のすべてに適合する防火対象物について、配管を兼用できるものであること。
a 当該防火対象物の最上部に設置された連結送水管の放水口の高さは、地盤面から50m 以下であること。
b 棟が異なる防火対象物と屋内消火栓設備の加圧送水装置を兼用していないこと。
c 中継ポンプを用いないポンプ方式であること。
(イ) 主管は、呼び径100A 以上とすること。
なお、東大阪市は連結送水管の側の規則第31条第5号イただし書を、堺市は屋内消火栓設備の側の規則第12条第1項第6号イただし書を根拠に挙げていて、同じ兼用をどちらの設備の側から書くかも市によって違います。3市を比べると次のとおりです。
| 項目 | 東大阪市 | 大阪市 | 堺市 |
|---|---|---|---|
| 充水の原則 | 補助高架水槽で充水(▲) | 屋内消火栓設備の基準 第5 1に準じて充水(◆) | 補助用高架水槽で常時充水(★) |
| 乾式にできる場合 | 地階を除く階数10以下かつ配管内容積0.5立方メートル以下 | 東大阪市と同じ | 条例第71条第1項第2号の屋上の連結送水管で配管内容積0.5立方メートル以下 |
| 水槽の有効水量 | 0.5立方メートル以上(自動給水装置付きは0.2立方メートル以上) | 自動給水装置付きでおおむね0.1から0.2立方メートル以上(兼用は0.2立方メートル以上) | 0.5立方メートル以上(自動給水装置付きは0.2立方メートル以上) |
| 水槽から主管までの配管 | 呼び径40mm以上 | 管の呼びで40mm以上 | 呼び径50A以上 |
| 兼用できる建物 | 規則第31条第6号イの加圧送水装置を用いない・別棟と加圧送水装置を兼用しない | 加圧送水装置を用いない連結送水管 | 最上部の放水口が50m以下・別棟と加圧送水装置を兼用しない・中継ポンプを用いない |
| 兼用時の弁など | 1.0メガパスカル超は16K以上の逆止弁・消火栓弁に減圧装置 | 1メガパスカル超は第3.8の逆止弁・減圧機構付で1.6メガパスカル以上の開閉弁 | 1.0メガパスカル超は16K以上の逆止弁・屋内消火栓に16K以上の開閉弁 |
| 記号の意味 | ▲=法令基準に行政指導を加えた基準 | ◆=行政指導 | ★=堺市消防局の指導基準 |
- 地階を除く階数と高さを確かめ、令第29条で連結送水管が必要か、規則第31条第6号イの高さ70m超に当たるかを整理する
- 立管と横引き配管から配管内容積を計算し、乾式にできるかを市ごとの条件で確かめる(堺市は屋上の連結送水管だけ)
- 湿式にするなら、補助高架水槽の有効水量と、水槽から主管までの配管の太さ(40mmか50Aか)を市の基準に合わせる
- 屋内消火栓設備と兼用するなら、加圧送水装置(中継ポンプ)の有無・別棟との兼用・弁の圧力を確かめ、所轄の消防署と事前に協議する
兼用の条件も、市によって高さや弁の書き方が違うのですね。
はい、堺市は放水口が50m以下という条件もあります。
設計図がまとまる前に所轄と協議しましょう。
よくある質問
まとめ
まず配管内容積を計算して、乾式にできるか確かめます。
兼用するなら中継ポンプの有無も見ます!
▲や★の指導基準なので所轄の消防署との事前協議が要点です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 東大阪市消防局「連結送水管の設置に係る運用基準」凡例、Ⅱ 細目 4 配管等 (1) 配管の兼用・(2) 配管内の充水 https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」凡例、第1章 第2節 屋内消火栓設備 第5 配管 1・7、第5章 第3節 連結送水管 第3 配管等 1・3・6 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」凡例、第2 屋内消火栓設備 Ⅱ 細目 3 配管等 (2) 設置方法等 ア・イ、第22 連結送水管 Ⅱ 細目 1 高層階等以外に設ける連結送水管 (2) 配管等 ア・イ・ウ、第5章 消防用設備等の技術上の基準の付加基準(堺市火災予防条例 第71条) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 消防法施行令 第29条/消防法施行規則 第12条・第31条(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および東大阪市・大阪市・堺市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。各資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。配管内容積の計算方法や、高層階等に設ける連結送水管の扱いは本記事では扱っていないので、設計時に所轄の消防署とあわせてご確認ください。





