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小さな店や工場に非常ベルは要らないのか|消防法施行令が定める非常警報器具の対象と置き場所を解説

小さな店や工場に非常ベルは本当に要らないのかと題したアイキャッチ画像

立入検査の前になって、うちには非常ベルが無いが大丈夫なのかと心配される方がいます。
ところが消防法施行令は、建物によっては手で鳴らす器具で足りると定めています。
それが非常警報器具で、警鐘や携帯用拡声器がこれに当たります。
この記事では器具で足りる建物の範囲と置き場所を条文から整理します。

小さな店舗を任されていますが、壁に非常ベルが見当たりません。
これは付け忘れているということでしょうか。

付け忘れとは限りません。
建物によっては非常警報器具という手で鳴らすもので足りることになっています。

そういえば事務室に古い拡声器が置いてあります。
あれがその器具ということですか。

置いてあるだけでは足りません。
条文は置く場所まで決めているので、そこから確かめましょう。

この記事の結論
  • 非常警報器具は警鐘や携帯用拡声器や手動式サイレンのように手で鳴らすものです
  • 器具の対象は物品販売店舗や工場など条文が名指しした用途に限られています。
  • あわせて収容人員が20人以上50人未満であることが条件です
  • 置き場所は多数の者の目にふれやすくすみやかに操作できる箇所とされています。
  • 収容人員が50人以上か地階と無窓階に20人以上いれば非常ベル等が必要になります

非常警報器具で足りるかを用途と収容人員と階の三点から判断する図解

非常警報器具とはどんなものを指すのか

警鐘と携帯用拡声器と手動式サイレンが並んでいるイラスト
火災を知らせるものというと、まず非常ベルや館内放送が思い浮かびます。
消防法施行令はその手前に器具という区分を置いています。
消防法施行令第7条第3項第4号 警鐘、携帯用拡声器、手動式サイレンその他の非常警報器具及び次に掲げる非常警報設備 イ 非常ベル ロ 自動式サイレン ハ 放送設備
器具と設備は別の区分です。
器具として条文に挙がっているのは警鐘携帯用拡声器と手動式サイレンで、いずれも人が手で鳴らすものです。
一方の非常警報設備は非常ベルと自動式サイレンと放送設備で、こちらは電気で鳴ります。
条文が「その他の非常警報器具」と締めているとおり、名前の挙がっている3つに限る趣旨ではありません。
自分の建物にどちらが求められているのかは、この区分を押さえたうえで次の条文を読むことになります。

器具と設備で言葉が分かれていたとは知りませんでした。
手で鳴らすものも消防用設備等の仲間なのですね。

同じ警報設備の中の区分です。
まずは自分の建物がどちらの欄に入るのかを確かめてください。

どの建物に非常警報器具を置くことになるのか

小さな物品販売店舗と工場と人の列を並べたイラスト
器具で足りるのは、条文が名指しした用途と人数に当てはまる建物だけです。
その範囲を条文で確かめます。
消防法施行令第24条第1項 非常警報器具は、別表第一(四)項、(六)項ロ、ハ及びニ、(九)項ロ並びに(十二)項に掲げる防火対象物で収容人員が二十人以上五十人未満のもの(次項に掲げるものを除く。)に設置するものとする。
まず用途で入口が絞られます。
名指しされているのは(4)項の物品販売業を営む店舗や展示場、(6)項ロ・ハ・ニの老人ホームや老人デイサービスセンターや幼稚園や特別支援学校、(9)項ロの公衆浴場、(12)項の工場や作業場や映画スタジオです。
そのうえで収容人員20人以上50人未満という幅に入っていることが条件になります。
同じ工場でも収容人員が20人に届かなければこの条文の対象から外れ、50人に達すれば次の項へ移ります。
自分の建物でやることは1つです。用途の項と収容人員を先に確かめてから、器具か設備かを考えてください。

用途と人数の両方が当てはまったときだけなのですね。
まず自分の建物が何項なのかを調べます。

その順番で結構です。
収容人員の数え方は用途ごとに決まっているので、届出の控えも一緒に見てください。

非常警報器具はどこに備えればよいのか

奥の戸棚にしまい込んだ器具と出入口の壁に掛けた器具を比べたイラスト
器具は買って置いてあればよいというものではありません。
置き場所についても条文に定めがあります。
消防法施行令第24条第4項 前三項に規定するもののほか、非常警報器具又は非常警報設備の設置及び維持に関する技術上の基準は、次のとおりとする。 一 非常警報器具又は非常警報設備は、当該防火対象物の全区域に火災の発生を有効に、かつ、すみやかに報知することができるように設けること。 二 非常警報器具又は非常警報設備の起動装置は、多数の者の目にふれやすく、かつ、火災に際しすみやかに操作することができる箇所に設けること。
条件は2つです。
1つは建物の全区域に火災の発生を有効に、かつ、すみやかに報知できるように設けることです。
もう1つは多数の者の目にふれやすく、火災に際しすみやかに操作できる箇所に設けることです。
条文は個数や高さの数値までは示していないので、建物の広さや間仕切りに合わせて数と位置を決めることになります。
自分の建物でやることは1つです。今どこに置いてあるかを見て、人のいる場所からすぐ手が届くかを確かめてください。

つまり倉庫の奥にしまい込んでいては条文の求めから離れてしまうのですね。
置き場所を見直します。

そこが立入検査でも見られる点です。
出入口や事務室のように人の目にふれる場所へ移してください。

器具では足りなくなるのはどんなときか

地階に人が集まる建物と窓のない階の壁にベルが付いた建物のイラスト
同じ建物でも、人が増えれば求められるものが変わります。
その境目が次の項に書かれています。
消防法施行令第24条第2項 非常ベル、自動式サイレン又は放送設備は、次に掲げる防火対象物(次項の適用を受けるものを除く。)に設置するものとする。(略) 一 別表第一(五)項イ、(六)項イ及び(九)項イに掲げる防火対象物で、収容人員が二十人以上のもの 二 前号に掲げる防火対象物以外の別表第一(一)項から(十七)項までに掲げる防火対象物で、収容人員が五十人以上のもの又は地階及び無窓階の収容人員が二十人以上のもの
境目は2つあります。
1つは建物全体の収容人員が50人以上になったときで、このときは器具ではなく非常ベルや自動式サイレンや放送設備が求められます。
もう1つが地階と無窓階で、この部分の収容人員が20人以上あれば、建物全体が50人に届かなくてもこちらの項に入ります。
無窓階とは、避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない地上階のことです。
自分の建物でやることは1つです。地下の売場や窓のない作業場に何人入るのかを、建物全体とは別に数えてください。

建物全体では50人に届かないのに設備が要ることがあるのですか。
地下の倉庫を作業場にしたところなので気になります。

用途を変えた部屋はとくに要注意です。
人数が動いたときは地階と無窓階だけを別に数え直してください。

明日からなにを確かめればよいのか

点検票を持つ人と壁に掛けた器具と平面図を並べたイラスト
器具が要るかどうかを考える前に、見ておくべきものがあります。
第1項のただし書がそれを示しています。
消防法施行令第24条第1項(略) ただし、これらの防火対象物に自動火災報知設備又は非常警報設備が第二十一条若しくは第四項に定める技術上の基準に従い、又は当該技術上の基準の例により設置されているときは、当該設備の有効範囲内の部分については、この限りでない。
最初に見るのは自動火災報知設備です。
ただし書は、自動火災報知設備か非常警報設備が基準どおり設けられている部分については器具を要しないとしています。
自動火災報知設備は用途と延べ面積で対象が決まり、(4)項なら300平方メートル以上、(9)項ロや(12)項なら500平方メートル以上が目安です。
(6)項ロのように延べ面積に関わらず対象になる用途では、器具の出番はほとんど残りません。
自分の建物でやることは1つです。自動火災報知設備の有無、用途の項、収容人員、地階と無窓階の人数の順に見て、迷ったら所轄消防署に相談してください。

順番が決まっていると調べやすいです。
まず受信機があるかどうかから見てみます。

その一歩で十分です。
点検結果報告書の控えにも設備の種別が書かれているので、あわせて見てください。

よくある質問

Q非常警報器具は警鐘と携帯用拡声器と手動式サイレンの3つに限られますか?
A条文はその他の非常警報器具と締めているので、この3つだけに限る趣旨ではありません。手元にある鳴り物を器具として位置づけてよいかは、実物を示して所轄消防署にご確認ください。
Q収容人員が20人に届かない小さな店にも非常警報器具は要りますか?
A消防法施行令第24条第1項が対象としているのは20人以上50人未満なので、20人に届かない建物はこの規定の対象から外れます。ほかの条文で別の設備が必要になることはあります。
Q事務所や倉庫にも非常警報器具は必要ですか?
A第1項が名指ししている用途に事務所の(15)項や倉庫の(14)項は入っていません。ただし収容人員が50人以上になれば第2項により非常ベル等の対象になります。
Q自動火災報知設備があれば非常警報器具は置かなくてよいのですか?
Aただし書により、基準どおり設けられた設備の有効範囲内の部分については置かなくてよいとされています。有効範囲の外にある部分は別に考えることになります。

まとめ

非常警報器具は手で鳴らす器具の総称です
条文が名前を挙げているのは警鐘と携帯用拡声器と手動式サイレンです。
対象の用途は(4)項と(6)項ロ・ハ・ニと(9)項ロと(12)項です
あわせて収容人員が20人以上50人未満であることが条件です
置き場所は全区域に報知でき多数の者の目にふれやすい箇所です。
収容人員が50人以上か地階と無窓階に20人以上いれば非常ベル等になります
自動火災報知設備がある部分は器具を置かなくてよいとされています。

まずは事務室の拡声器を出入口の壁に掛け直します。
あわせて地階の人数も数えてみます。

その順番で十分です。
警報設備の要否の判断でお困りでしたら㈱防災屋でもご相談を承っております。

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参考・出典

  • 消防法第17条第1項
  • 消防法施行令第7条第3項第4号
  • 消防法施行令第10条第1項第5号
  • 消防法施行令第21条第1項
  • 消防法施行令第24条
  • 消防法施行令別表第一
  • e-Gov法令検索(デジタル庁)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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