工事中のビルの入口に、まだ入らないでくださいという表示が出ていることがある。
検査済証が交付されるまでは、勝手に使い始めてはいけない建物があるからだ。
どこまでの工事が対象になるのかは、建築基準法施行令第13条が具体的に定めている。
この記事では条文にそって、使用制限の対象になる「避難施設等」の範囲を順番に確認する。
増改築で避難階段の工事をしているんですが、工事中も建物を使ってはいけないのでしょうか。
避難施設等に関する工事を含む場合、原則として検査済証の交付を受けるまで使用できません。
まずは対象になる工事の範囲を確認しましょう。
避難施設等というのは、具体的にどんな設備を指すのでしょうか。
建築基準法施行令第13条が8つの区分で定めています。
今日はその中身を順番に見ていきましょう。
- 建築基準法第7条の6第1項により、廊下・階段等の避難施設等に関する工事を含む建物は原則として検査済証の交付を受けるまで使用できません
- 施行令第13条は対象になる避難施設等を、直通階段・客席の出口・地下街の地下道・自動式の消火設備・排煙設備・非常用の照明装置・非常用の昇降機・防火区画の8区分で定めています
- その工事が無いものとしても既に技術基準に適合している部分は対象から除かれます
- 除外の判定には消防法施行令第12条から第15条までのスプリンクラー設備等の基準への適合状況も関わります
- 施行令第13条の2が定める軽易な工事に当たれば対象から外れます
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目次
避難施設等に関する工事を含む建物はなぜ検査済証が出るまで使えないのか

その根拠となる条文を確認する。
建築基準法第7条の6第1項は、廊下・階段・消火設備・排煙設備・非常用の照明装置・非常用の昇降機・防火区画のうち施行令で定めるものに関する工事を「避難施設等に関する工事」と呼び、これを含む建物の建築主に使用制限を課している。
対象になるのは新築だけでなく、既存の建物の増築・改築・移転・大規模の修繕又は大規模の模様替えの工事も含まれる。
ただし「政令で定める軽易な工事」はあらかじめ対象から除かれており、その範囲は施行令第13条の2が定めている。
具体的にどの設備が「避難施設等」に当たるのかは、次の項目で施行令第13条を確認する。
新築だけでなく、増築や改修の工事も対象になるのですね。
はい大規模な修繕や模様替えの工事も対象に含まれます。
次は避難施設等の具体的な範囲を確認しましょう。
施行令第13条が定める避難施設等にはどんなものが含まれるのか

条文の柱書と区分を確認する。
一 (略)居室から第120条又は第121条の直通階段に通ずる出入口及び廊下その他の通路
二 第118条の客席からの出口の戸、直通階段、避難上有効なバルコニー、屋外通路その他これらに類するもの並びに屋外への出口及び屋上広場
三 地下街の各構えが接する地下道及び地下道への出入口
四 スプリンクラー設備、水噴霧消火設備又は泡消火設備で自動式のもの
五 排煙設備
六 非常用の照明装置
七 非常用の昇降機
八 防火区画
直通階段とその出入口・廊下(一号)、客席の出口や屋外への出口・屋上広場(二号)、地下街の地下道(三号)、自動式のスプリンクラー設備等(四号)、排煙設備(五号)、非常用の照明装置(六号)、非常用の昇降機(七号)、防火区画(八号)である。
消火設備は自動式のものに限られ、手動で操作する屋内消火栓設備はこの列挙に含まれていない。
増改築や大規模の修繕又は模様替えでこれらの工事を計画するときは、着工前にどの区分に当たるかを確認しておく。
次はすでに基準に適合している部分がなぜ対象から除かれるのかを確認する。
対象がこんなに広いとは知りませんでした。
範囲は広いですが除外規定もあります。
次はその除外の仕組みを見ていきましょう。
すでに基準に適合している部分はなぜ対象から除かれるのか

その読み方を確認する。
かっこ書きは、今回の工事に係る避難施設等が無いものと仮定しても、建物が防火区画や避難施設に関する技術基準にすでに適合しているなら、その部分は「避難施設等」の定義から除くと定めている。
除外の判定に使う技術基準は建築基準法施行令だけでなく、消防法施行令第12条から第15条までのスプリンクラー設備等の基準も含まれる。
つまり増改築で一部の階段や設備だけを工事する場合、工事の対象外になっている既存の避難施設等まで使用制限が及ぶわけではない。
次はこの範囲を実務でどう見落としやすいかを確認する。
今回工事しない部分まで止まってしまうわけではないのですね。
既に基準に適合している部分は対象から除かれます。
ただし判定には注意点があるので次に見ていきましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

見落としやすい点を整理する。
施行令第13条の2は、バルコニーの手すりの塗装・出入口のガラスの取替え・非常用の照明装置のカバー交換の3つを名指しで軽易な工事に挙げており、これらは対象から除かれる。
名指しの3つに当てはまらない工事でも、機能の確保に支障を及ぼさないことが明らかなら軽易な工事に含まれるが、判断に迷う工事はこの例外に含めない。
もう1つの見落としは、除外判定が消防法施行令第12条から第15条までにもまたがっている点で、建築側の基準だけを見て自動式の消火設備の適合を判断してはいけない。
最後に実務で確認すべき手順を整理する。
手すりの塗り替えぐらいなら大丈夫だと自己判断していました。
名指しの3つ以外は特定行政庁への確認が安全です。
最後に実務の手順を確認しましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

チェックすべき項目を整理する。
- 計画している工事が施行令第13条の8区分のどれかに当たるかを確認する
- すでに技術基準に適合している部分まで対象になっていないかをかっこ書きで確認する
- 施行令第13条の2の軽易な工事に当たらないかを確認する
- 消防法施行令第12条から第15条までの消火設備の基準との関係も確認する
当たる場合は、既存部分が技術基準に適合しているかどうかで対象範囲が変わるため、設計図書や確認済証で確認する。
軽易な工事に当たるかどうかは自己判断せず、迷う場合は特定行政庁に相談する。
検査済証が交付される前でも建物を使いたい場合は、仮使用の認定という別の手続きがあるので、必要に応じて特定行政庁や指定確認検査機関に確認する。
うちの工事がどの区分に当たるか、まず確認してみます。
迷ったときは特定行政庁への相談が確実です。
次はよくある質問でおさらいしましょう。
よくある質問
まとめ
避難施設等の範囲がはっきり分かって安心しました。
工事の計画段階で対象区分を確認しておくと安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第7条の6(検査済証の交付を受けるまでの建築物の使用制限)
- 建築基準法施行令第13条(避難施設等の範囲)
- 建築基準法施行令第13条の2(避難施設等に関する工事に含まれない軽易な工事)
- 消防法施行令第12条から第15条まで(スプリンクラー設備・水噴霧消火設備・泡消火設備の基準)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





