危険物施設(製造所・貯蔵所・取扱所)は、消防本部の職員による立入検査を定期的に受けます。
検査で何を見られるかは、消防庁が定める「危険物施設立入検査標準マニュアル」の立入検査時のチェックポイントで決まります。
令和3年3月26日、腐食疲労等劣化を原因とする事故の調査分析結果などを踏まえ、このマニュアルとチェックポイントが改定されました(消防危第44号)。
どこが新しく見られるようになったのかを知らないと、当日の指摘で慌てることになります。
うちの危険物施設に立入検査が入るんですが、去年と同じ内容だと思っていて大丈夫でしょうか。
実は令和3年にチェックポイントが一部追加されているので、確認しておいたほうがいいですよ。
チェック項目が増えているなんて知りませんでした。
では何が新しく加わったのか、順番に見ていきましょう。
- 令和3年3月26日の消防危第44号により、危険物施設への立入検査及び違反是正のマニュアルとチェックポイントが改定されました。
- 対象は全国の消防本部が使う「危険物施設立入検査標準マニュアル」で、製造所・貯蔵所・取扱所の管理者が立入検査で確認される内容そのものです。
- 屋外タンク貯蔵所には「タンク本体[浮き蓋部]」、地下タンク貯蔵所には「電気防食設備」「高精度液面計」が新たに加わりました。
- 定期点検記録による代替確認には目視点検と同等以上の画像・動画による確認も含まれることが明確化されました。
- 違反処理基準には「第四次措置」が新設され、位置・構造・設備基準違反への対応段階が細分化されました。
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目次
危険物施設立入検査標準マニュアルはなぜ改定されたのか

このマニュアルは、事故の実態や関係法令の改正にあわせて随時見直されています。
マニュアルは平成14年の消防危第503号で作られて以来、各消防本部の立入検査・違反是正の実務で使われてきました。
令和3年の消防危第44号は、危険物施設の腐食疲労等劣化を原因とする事故の調査分析結果や、不活性ガス消火設備等の告示制定といった法令改正を踏まえて改定されたものです。
題名も「危険物施設立入検査標準マニュアル」「危険物施設違反処理標準マニュアル」に改められ、消防庁が作成する執務参考資料であることが明確にされました。
まずは、このマニュアルがどの施設に関係するのかを見ていきます。
うちの施設も、去年までのままだと油断してました。
令和3年以降は改定後の標準マニュアルで見られていますよ。
マニュアルの改定はどの施設に関係するのか

危険物施設を持つ事業所であれば、業種を問わず対象になります。
指定数量以上の危険物を取り扱う施設であれば、屋外タンク貯蔵所や地下タンク貯蔵所、給油取扱所など施設の種類を問わず対象になります。
マニュアルは各消防本部が使う執務の参考資料という位置付けで、本通知は消防組織法第37条にもとづく助言として発出されています。
違反処理マニュアルのほうも、同じタイミングで「危険物施設違反処理標準マニュアル」へ題名が改められました。
次は、具体的にどんな項目が新しくチェックされるようになったのかを見ていきます。
うちはタンクを何基も持っているので、対象になりそうです。
はい、屋外タンクも地下タンクも今回のチェック項目に含まれていますよ。
具体的に何がチェックされるようになったのか

腐食疲労等劣化による事故の分析結果が反映されています。
まず配管の保温材は、従来の「損傷・剥離の有無」から「損傷、脱落、剥離」という着眼項目に改められ、必要に応じて定期点検記録表での確認も認められました。
屋外タンク貯蔵所には、規則第22条の2が定める浮き蓋の構造にあわせて「タンク本体[浮き蓋部]」がチェック項目に加わりました。
地下タンク貯蔵所には、規則第23条の2・第23条の3が定める電気防食と漏れ検知の基準にあわせて「電気防食設備」「高精度液面計」が新設されました。
このほか、顧客に自ら給油等させる給油取扱所や、特例の一般取扱所(ボイラー等消費)〈屋上〉のチェックポイントも新たに作られています。
浮き蓋や電気防食なんて、今まで見られたことがなかった気がします。
令和3年の改定から新しく加わった項目なので、事前に自主点検しておくと安心です。
実務で見落としやすいのはどこか

一方で、違反が見つかったときの扱いには変化があります。
「定期点検記録表等により確認」という方法には、目視点検と同等以上の情報が得られる画像・動画による確認も含まれることが明確にされました。
ただし何でも写真を見せれば済むわけではなく、目視点検と同等以上と消防本部が判断できる記録であることが前提です。
また違反処理基準(消防法第12条第1項の位置・構造・設備基準違反)には新たに「第四次措置」が追加され、是正が進まない施設への対応段階が細かくなりました。
「点検記録さえ残しておけばよい」「指摘されても軽い措置で済む」という思い込みは禁物です。
写真を見せれば何でも代わりになると思っていました。
あくまで目視点検と同等以上の情報が条件なので、そこは注意が必要です。
明日からなにを確認すればよいのか

根拠になるのは今回の改定が示す着眼点です。
まず、屋外タンクの浮き蓋部と地下タンクの電気防食設備・液面計について、自主点検の記録を整理しておくことです。
次に、配管の保温材は損傷・脱落・剥離の3点を確認し、必要に応じて定期点検記録表や画像記録を準備します。
さらに、顧客に自ら給油等させる給油取扱所や特例の一般取扱所(ボイラー等消費)〈屋上〉を持つ場合は、新設されたチェックポイントを事前に確認しておきます。
最後に、指摘を受けたときの対応段階が「第四次措置」まで細分化されたことを踏まえ、指摘は早めに是正し、疑わしい点は所轄消防署に確認します。
今度の点検の前に、記録を整理しておきます。
浮き蓋部と電気防食設備の記録があれば、当日もスムーズに進みますよ。
よくある質問
まとめ
浮き蓋部と電気防食設備の記録、次の点検までに整理します!
改定後のチェックポイントを押さえておけば、当日も安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「危険物施設の立入検査等に関するマニュアルの改定について」(令和3年3月26日 消防危第44号 消防庁危険物保安室長)
- 「危険物施設における立入検査及び違反是正の推進について」(平成14年10月23日付け消防危第503号 消防庁危険物保安室長)
- 「「製造所等の定期点検に関する指導指針の整備について」の一部改正について」(令和3年3月26日付け消防危第43号)
- 危険物の規制に関する規則第22条の2・第23条の2・第23条の3
- 消防法第12条第1項
- 消防組織法第37条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





