スプリンクラー設備が入っている建物の廊下で、消火栓によく似たホースの箱を見かけることがあります。
ところが消火栓だと思って書類を探しても、屋内消火栓設備の点検の記録がどこにも出てきません。
その箱はスプリンクラー設備の一部として設けられた補助散水栓かもしれません。
屋内消火栓設備と補助散水栓は根拠になる条文からして別のものです
うちの建物にはスプリンクラーが入っているのに、廊下に消火栓のような箱があります。
あれは何なのでしょうか。
おそらく補助散水栓だと思います。
箱の表面に何と書いてあるかを見てみてください。
消火栓と書いていなければ違うものということですか。
そのとおりです。
補助散水栓の箱は消火用散水栓と表示することが規則で決まっています。
- スプリンクラー設備を基準どおりに設置すると、その有効範囲の部分について屋内消火栓設備を設置しないことができます(消防法施行令第11条第4項)
- 補助散水栓はスプリンクラー設備に設けることができる設備として書かれています(消防法施行令第12条第2項第8号)
- 補助散水栓箱の表面には消火用散水栓と表示します(屋内消火栓箱は「消火栓」)
- その階の各部分から一のホース接続口までの水平距離は15メートル以下とします
- 開閉弁を開けるとスプリンクラーヘッドが開いたときと同じように自動警報装置が警報を発します
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目次
スプリンクラー設備の建物にホースの箱があるのはなぜか

省いたあとに人が手で使える手段を残すための仕組みが補助散水栓です。
スプリンクラーヘッドが天井にある部分は火災を自動で感知して水をまくので、屋内消火栓設備を重ねて置く必要がありません。
ところが同じ階の中には、階段や浴室のようにヘッドを設けなくてよい場所が必ず残ります。
そこだけが手で消す手段を持たないまま取り残されるので、スプリンクラー設備の側にホースを備えた栓を足せるようにしてあります。
これが補助散水栓で、廊下の壁で見かける箱の正体はこれであることが少なくありません。
まずは自分の建物の箱がどちらなのかを、思い込みではなく表示で確かめるところから始めてください
スプリンクラーがあれば消火栓は要らないと聞いていました。
それなのに箱があるのが不思議だったのです。
省けるのはヘッドの効く範囲だけだからです。
まずは図面でヘッドのない部分がどこかを確かめてください。
補助散水栓はどこに設けられるのか

スプリンクラー設備に付け足すことができる設備として書かれています。
条文が設けることができると書いているとおり、補助散水栓そのものに設置義務はありません。
一方で設けるのであれば、その階の各部分から一のホース接続口まで15メートル以下という距離の条件が付きます。
ただし書きが働くのはスプリンクラーヘッドが設けられている部分なので、距離を測るのは主にヘッドのない部分になります。
どこにヘッドを設けなくてよいかは消防法施行規則第13条第3項に並んでおり、階段・浴室・便所・エレベーターの機械室・発電機や変圧器のある場所などが挙げられています。
その一覧を図面に重ねてみると、補助散水栓が受け持っている範囲が見えてきます
つまり箱の数は建物の広さでは決まっていないのですね。
設けるかどうかは任意ですが、設けた以上は距離の条件が付きます。
ヘッドのない部分の一覧と図面を突き合わせてみてください。
補助散水栓にはなにが求められているのか

とくに箱の表面に書く文字が屋内消火栓と違います。
屋内消火栓の箱は消防法施行規則第12条第1項第3号イで「消火栓」と表示することになっており、補助散水栓の箱は消火用散水栓と表示します。
放水圧力0.25メガパスカル以上・放水量60リットル毎分以上という性能は、消防法施行令第11条第3項第2号イの屋内消火栓(いわゆる2号消火栓)と同じ数値です。
それでも根拠になっている条文が違うので、書類のうえでは別の設備として扱われます。
赤色の灯火を上部に設ける点は屋内消火栓と共通なので、灯火だけを見ても区別はできません。
箱の前に立ったら、まず表面の文字を読むのがいちばん確実です
消火用散水栓と書いてあれば補助散水栓ということですね。
そのとおりです。
表示がかすれている箱は書き直しの対象になるので、あわせて見ておいてください。
実務で見落としやすいのはどこか

訓練のときに知らずに開けて受信機を鳴らしてしまう例があります。
補助散水栓はスプリンクラー設備の配管につながっているので、開閉弁を開くと流水検知装置が動いて自動警報装置が警報を発します。
点検や訓練で扱うときは、防災センターや管理室へ先に伝えてから開けることになります。
また補助散水栓は屋内消火栓設備ではないので、屋内消火栓設備の書類をいくら探しても出てきません。
開閉弁を天井に設けている建物では自動式でなければならないので、手で回す弁が天井にある状態は直す対象になります。
訓練の計画を作るときは、どの箱を開けると何が鳴るのかを先に書き出しておいてください
訓練で開けたら急にベルが鳴ったのは、これが理由だったのですね。
配管がスプリンクラーと同じだからです。
訓練の計画にはあらかじめ警報が鳴ることを書き込んでおいてください。
明日からなにを確認すればよいのか

どれも図面と現物を見比べれば分かります。
表示も灯火も整っていて、箱の前に荷物が積まれていれば火災のときに開けられません。
次に箱を開けてホースが接続口に付いているかを見ます。
改装で間仕切りが増えると以前は届いていた範囲に届かなくなることがあるので、間取りを変えた階はとくに確かめてください。
判断に迷う箱があれば、図面と点検結果報告書を持って所轄の消防署に確かめるのが確実です
まずは箱の前に物を置かないところからですね。
それがいちばん効きます。
次の点検のときに表示とホースの状態もあわせて記録に残してください。
よくある質問
まとめ
箱の表示を読むところから始めます。
これで正体が分かりますね。
補助散水栓はスプリンクラー設備の一部です。
見分けや点検の進め方は㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第11条・第12条
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第12条・第13条・第13条の6・第14条
- e-Gov法令検索(デジタル庁) https://laws.e-gov.go.jp/
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





