放火は、なぜ殺人罪と並ぶほど重い罪になるのか、考えたことはありませんか。
刑法は放火を「公共の危険」を生む特別な犯罪として扱い、建物の状態によって刑の重さを細かく分けています。
一方で同じ火に関わる罪でも、うっかりの失火と、消火を邪魔する行為とでは、刑の重さがまったく違います。
本記事では刑法が定める放火・失火・消火妨害の罪の違いを解説します。
放火のニュースを見ると、ずいぶん重い罪だと聞きます。
実際どれくらい重いんでしょうか。
死刑や無期の拘禁刑もありうる、刑法の中でも別格の重さです。
建物の状態や過失かどうかで、刑の重さは大きく変わります。
消火を邪魔するような行為も、罪になるんですか。
はい、消火妨害罪という独立した罪があります。
順番に見ていきましょう。
- 放火(現住建造物等放火)は死刑又は無期若しくは5年以上の拘禁刑という、刑法の中でも別格に重い刑が定められています。
- 建物に人がいるか、誰の所有物かで、刑の重さは3段階に分かれます。
- うっかりの失火は、原則として50万円以下の罰金にとどまります。
- ただし業務上の不注意による失火は、拘禁刑もありうる重い罪になります。
- 消火を妨害する行為には、消火妨害罪という独立した重い罪が定められています。
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目次
放火はなぜ拘禁刑の中でも別格に重いのか

条文を見ると、その理由が浮かび上がってきます。
根拠になっているのは、建物に現に人が住んでいるか、現に人がいるかという状態です。
火は一度放たれると燃え広がる範囲も被害者の数も制御できないため、不特定多数を巻き込む犯罪として特別に重く扱われます。
放火した本人が誰もいないと思っていても、実際に人がいれば重い刑が適用される点も見落とせません。
この重さの違いを知ることが、放火対策を考える出発点になります。
死刑もありうるなんて、殺人と同じレベルなんですね。
ここまで重いとは思いませんでした。
建物に人がいる状態が特に重く見られています。
次は建物の種類でどう変わるか見てみましょう。
放火の重さはどう区分されているのか

条文を追って整理してみましょう。
人が住む建物や現に人がいる建物を燃やせば最も重い第百八条が適用され、それ以外の建物では現住性の有無で刑の重さが変わります。
さらに自分の持ち物を燃やした場合は他人の物より刑が軽くなる代わりに、建物以外の物は公共の危険を生じさせなければそもそも罪になりません。
実際に火を放っていなくても、放火に着手すれば未遂罪、火をつける準備をしただけでも予備罪に問われます。
「自分の家だから」「燃やしただけで人には被害がない」という思い込みは通用しません。
自分の持ち物を燃やしても、罪になることがあるんですね。
知りませんでした。
はい、公共の危険が生じれば罪になります。
次はうっかりの失火について見てみましょう。
失火はどう扱われるのか

条文を見ると、立場によって扱いが変わることが分かります。
放火が拘禁刑を科されるのに対し、失火は50万円以下の罰金だけで済む点が大きな違いです。
ところが業務上必要な注意を怠った場合や重大な過失があった場合は話が別で、拘禁刑もありうる重い罪に切り替わります。
防火管理者や設備の点検・工事を担う立場は、まさにこの「業務上」に当たりうる位置にいます。
「うっかりだから軽い罰金で済む」とは限らないことを、業務にあたる人ほど意識しておく必要があります。
うちは防火管理者を置いているので、他人事ではないですね。
気を引き締めます。
業務上失火は一般の失火より重く扱われます。
次は消火を妨害した場合を見てみましょう。
消火を妨害したらどう扱われるのか

見落とされがちですが、放火や失火とは別枠の重い罪です。
消火器や消火栓など消火用の物を隠したり壊したりする行為だけでなく、その他の方法で消火活動を妨げる行為も対象になります。
野次馬が消防車の進路をふさぐ、消火栓の前に物を積み上げて放置するといった行為も、状況によってはこの罪に触れかねません。
なお未遂罪や予備罪の規定は第百八条・第百九条の放火罪にしか置かれておらず、消火妨害罪には適用されません。
「火を出していないから関係ない」と考えず、消火活動を妨げないことも防火管理の一部だと意識してください。
消火栓の前に自転車を置いているのを見たことがあります。
あれも危ないんですね。
消火の妨げになる置き方は避けるべきです。
最後に、明日からの確認事項をまとめます。
明日からなにを確認すればよいのか

防火管理者として確認しておきたいことを整理します。
物置代わりに使われていたり、来場者の自転車や荷物が置かれていたりすると、意図せず消火の妨げになりかねません。
次に、火気を扱う作業や設備の管理体制を見直し、業務上失火に問われるような不注意がないか点検してください。
放火対策としては、可燃物を敷地内に放置しない、部外者が侵入しにくい動線にするといった基本的な対策が有効です。
刑の重さを知ることは怖がるためではなく、日々の管理を見直すきっかけにしてください。
消火栓の前を塞がないこと、今日から気をつけます。
火気の管理も見直してみます。
日頃の点検が一番の備えになります。
次によくある質問をまとめます。
よくある質問
まとめ
放火や失火の罪の重さがよく分かりました。
消火の妨げにならないよう、今日から気をつけます。
日頃の備えが一番の対策になります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 刑法(明治40年法律第45号)第108条・第109条・第110条・第111条・第112条・第113条・第114条・第116条・第117条の2
- 消防法第8条第1項
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の事案が罪に当たるかどうかの法的な判断は弁護士に、消防法令の適用は所轄消防署にご確認ください。





