航空機や船舶に直接給油する給油タンク車には、普通のタンクローリーにはない装置が求められます。
ところが条文に書かれているのは装置の目的だけで、何を付ければよいのかは書かれていません。
火炎の噴出を防止する装置。発進できない装置。
これらが具体的に何を指すのかを、執務資料が実例で答えています。
火炎の噴出を防止する装置とは、具体的にどのようなものでしょうか。
例えばとして遠心式火花防止装置が挙げられています。
さらに18年後には、排出ガス規制への適合でも代えられるとされました。
航空機用の給油タンク車を、船舶への給油にも使えるでしょうか。
できますが、航空機用で必要とされる基準のほかに、船舶用の規定にも適合させる必要があるとされています。
- 火炎の噴出を防止する装置とは、例えば遠心力を利用して排気中の固形分を分離する遠心式火花防止装置をいいます
- 平成17年排出ガス規制に適合している場合には、これと同等以上の性能を有するものと認めて差し支えないとされました
- 給油ホース等が適正に格納されないと発進できない装置とは、例えばギヤーがニュートラル以外になればエンジンが止まる装置をいいます
- 手動開閉装置を備えた給油ノズルによるオーバーウイング給油タイプには、政令第23条を適用して当該装置を設けないこととして差し支えありません
- 航空機用給油タンク車を船舶用給油タンク車として使う場合は、航空機用で必要とされる基準のほかに船舶用の規定にも適合する必要があります
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目次
火炎の噴出を防止する装置とは何か

航空機や船舶の燃料タンクに直接給油する場面では、車の排気から出る火の粉が引火の原因になりかねないためです。
ところが条文には目的しか書かれていません。何を付ければよいのかを尋ねたのが平成元年7月4日付けの消防危第64号でした。
挙げられたのは渦を作って固形分を分ける遠心式火花防止装置という具体例です。
排気を筒の中で回転させると、重い固形分は外側へ飛ばされて壁に当たり、そこで勢いを失います。燃え残りが火の粉のまま外へ出ていくのを防ぐ仕組みです。
ここで見逃せないのが「例えば」という書き方です。この装置でなければならないという趣旨ではありません。その含みは、18年後の回答ではっきりします。
なお、当該規制に適合していることは、次の(1)又は(2)のいずれかにより確認する。
(1) 道路運送車両法第62条に基づく車検証、又は、東京国際空港制限区域安全管理規程第48条に基づく検査証に平成17年排出ガス規制の適合車である型式が示されている
(2) 平成17年排出ガス規制に適合した排出ガス浄化装置を設置している旨の表示を車両の見やすい位置に掲示している
確認の方法まで問いの側が用意している点も特徴です。車検証か検査証に型式が示されているか、あるいは適合の表示が車両の見やすい位置に掲示されているか。どちらかで確認できれば足ります。
条文が求めているのは特定の装置ではなく、火の粉が出ないという結果だという読み方になります。
例が示されているのですね。
後年には別の方法も認められました。
いまの車両の装置を、確かめておいてください。
発進できない装置とはどのようなものか

ホースをつないだまま車を動かせば、配管を引きちぎることになるためです。これも条文には目的しか書かれていません。
発進できないという言葉から、警報を鳴らす仕掛けやブレーキがかかる仕掛けを思い浮かべるかもしれません。示された例はもっと単純でした。
ホースが格納されていない状態でギヤーをニュートラル以外に入れると、エンジンそのものが止まります。運転者が気づかなくても、車は物理的に動きません。
警告して人の判断に委ねるのではなく、動作そのものを成立させないという考え方です。
動かそうとすると止まる仕組みなのですね。
警報だけでは足りません。
装置の作動を、点検で確かめてください。
オーバーウイング給油なら装置を省けるか

オーバーウイング給油タイプとは、航空機の主翼の上面にある給油口へ、作業者がノズルを持って注ぐ方式です。ノズルの先端には手動開閉装置が付いており、開放状態で固定する装置は備えていません。
つまり手を離せば流れが止まります。
政令第23条は、予想しない特殊の構造や設備を用いる場合に、基準によらないことを認める特例の規定です。
使われるのは、作業者がノズルを手で持ち続けている方式だからと読めます。手を離せば止まる以上、ホースをつないだまま発進する事態が起こりにくい構造になっています。
ただし政令第23条は特例の規定なので、当然に省けるという話ではありません。所轄の消防機関との協議が前提になります。
給油の方式によって、要否が変わることもあるのですね。
手を離せば止まる方式が前提です。
作業の方式を、書面で整理してください。
最大常用圧力はどこの圧力か

規則は最大常用圧力という言葉を使っていますが、ポンプの構成によって上限を決めるものが変わります。
リリーフ弁があれば、圧力はその弁が開く値より上には行きません。だからその吹き始め圧力が上限になります。
弁がなければ上限を決めるものがないので、ポンプが出せる圧力そのものを取ります。
どちらも、その系統で実際に到達しうる最大値を指すという点では同じです。測る場所が違うのではなく、何が上限を決めているかが違うだけだと読めます。
圧力の測り方にも決まりがあるのですね。
到達しうる最大値で見ます。
設備の構成を、仕様書で確かめてください。
航空機用を船舶用に使えるか

どちらも移動タンク貯蔵所から直接給油する点は同じですが、求められる基準は別に定められています。
問2 船舶給油取扱所において船舶用給油タンク車を給油設備として使用するためには、当該タンク車は、規則第24条の6第3項第5号本文及び同項第8号に規定する技術上の基準にのみ適合していればよいか。
問3 規則第24条の6第3項第5号に規定する給油設備と船舶の燃料タンクを結合する金具はカムロック式に限られるのか。
答2 規則第24条の6において船舶用給油タンク車が満たすべきとされている技術上の基準をすべて満たしている必要がある。
答3 船舶用給油タンク車から船舶の燃料タンクに直接給油する場合においては、波による船舶の揺動に伴う危険物の漏えいの防止を図ることができる結合金具であれば形式は問わない。
航空機用として作った車を船舶用にも使うなら、船舶用の規定が上乗せされます。
逆に、船舶用として使うのだから船舶用の一部の規定だけでよいかと問われた問2には、規則第24条の6において船舶用給油タンク車が満たすべきとされている基準をすべて満たす必要があると答えています。抜き出して足りるという読み方は退けられました。
結合金具については、カムロック式に限る趣旨ではないとされています。判断の基準は形式ではなく、波による船舶の揺動に伴う漏えいを防げるかどうかでした。最初の項目の火花防止装置と同じで、名指しされた製品ではなく果たすべき働きで見るという姿勢が通っています。
別の用途に使うには、上乗せが要るのですね。
足し算になります。
用途を広げるなら、基準を並べて確認してください。
よくある質問
まとめ
- 火炎の噴出を防止する装置とは、例えば排気中の固形分を分離する遠心式火花防止装置をいいます
- 平成17年排出ガス規制に適合している場合は、これと同等以上の性能を有するものと認めて差し支えないとされました
- その確認は、車検証または検査証への型式の記載か、適合した浄化装置を設置している旨の車両への掲示のいずれかで行います
- 給油ホース等が適正に格納されないと発進できない装置とは、例えばギヤーがニュートラル以外になればエンジンが止まる装置をいいます
- 手動開閉装置を備えた給油ノズルによるオーバーウイング給油タイプには、政令第23条を適用して当該装置を設けないこととして差し支えありません
- 最大常用圧力とは、リリーフ弁付きのものは吹き始め圧力を、リリーフ弁がないものはポンプ吐出圧力をいいます
- 航空機用給油タンク車を船舶用として使う場合は、航空機用の基準のほかに船舶用の規定にも適合する必要があります
- 船舶の燃料タンクと結合する金具は、波による揺動に伴う漏えいの防止を図ることができるものであれば形式は問われません
製品名ではなく、果たすべき働きで見ているのですね。
すっきりしました。
働きで見るということは、それを説明できる資料が要るということでもあります。
㈱防災屋でも協議用の資料づくりからご相談を承っています。
参考・出典
- 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(平成元年7月4日 消防危第64号 消防庁危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて)
- 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(平成元年12月21日 消防危第114号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて)
- 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(平成18年9月19日 消防危第191号 危険物保安室長から各都道府県消防主管部長・東京消防庁・各政令指定都市消防長あて)
- 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(平成19年3月29日 消防危第68号 消防庁危険物保安室長から各都道府県消防主管部長・東京消防庁・各政令指定都市消防長あて)
- 危険物の規制に関する政令第23条
- 危険物の規制に関する規則第24条の6第3項第1号・第2号・第3号イ・第5号・第8号
- 道路運送車両の保安基準の細目を定める告示(平成14年国土交通省告示第619号)第41条
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。個別の施設についての適用は、所轄の消防機関にご確認ください。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)




