海外から船で運ばれてきたタンクコンテナ。
中身を降ろしたあと、その容器を国内の輸送にそのまま使えないか。
こうした相談は、昭和のころの回答では退けられることが多くありました。
ところがこの記事で取り上げる平成の5件は、いずれも差し支えないという結論です。
海外から来たタンクコンテナを、荷を降ろしたあと国内で使ってもよいのでしょうか。
移動タンク貯蔵所として国内で使用してさしつかえないとされています。
表示の方法についても幅を持たせた回答が出ています。
構造のほうも、同じように柔らかいのでしょうか。
底弁を空気圧で開閉する構造も、胴板を前方へ延長する構造も通っています。
ただしどちらも中身のある条件が付いています。
- 国際輸送用タンクコンテナは、海外から運んできた積み荷を下ろした後、移動タンク貯蔵所として国内で使用してさしつかえないとされています
- 表示は塗料でもシールでもよく、タンク本体の外面でも箱枠に取り付けられた表示板でもさしつかえありません
- 船舶の入出港の遅れ等による繰り返しの仮貯蔵も、承認できる場合に含まれるとされました
- 移動タンク貯蔵所の底弁を空気圧で作動する機器により開閉する構造は、差し支えないとされています
- 胴板を前方に延長した部分を保護措置として取り扱うことも、4つの設備を設ければ差し支えないとされました
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目次
海外から来たタンクコンテナを国内で使えるか

平成6年7月29日付けの消防危第66号は、危険物規制事務に関する執務資料です。
移動タンク貯蔵所関係として2つの問いが並んでいます。そのうちの1つが、国際輸送用タンクコンテナの使い回しについてでした。
回答は一言でした。理由も条件も付いていません。
国際輸送用のタンクコンテナは、そもそも船と陸を跨いで運ぶことを前提に作られています。荷を降ろした容器を国内輸送に回すのは自然な使い方であり、それを妨げる理由がないという判断と読めます。
ただし国内で移動タンク貯蔵所として使う以上、日本の技術基準と許可の手続きには従うことになります。次の項目で見る表示は、その一例です。
国内でそのまま使えるのですね。
短い回答でした。
使用する前に、許可の区分を確かめてください。
表示はどこにどうやって行えばよいか

平成7年3月10日付けの消防危第22号は、国際輸送用積載式移動タンク貯蔵所の表示についての回答です。
危険物の規制に関する規則第24条の5第4項第4号は、移動貯蔵タンクに表示を求めています。文字、許可行政庁、許可番号です。
問われたのは、その表示をどうやって、どこに行うかでした。
ア 塗料(ペイント)で表示する方法
イ シールを貼付する方法
(2) 表示は、次に掲げる部分に行うこととしてよいか。
ア タンク本体の外面
イ タンクを収納する箱枠に取り付けられた表示板
4通りの組み合わせがそのまま認められました。
国際輸送用のタンクコンテナは、海外で使われている間は別の表示が付いています。塗料で直接書き込むことを必須にすると、行き来のたびに塗り替えることになりかねません。
シールでもよく、箱枠の表示板でもよいとしたことで、容器そのものを傷めずに国内の要求を満たせる形になっています。
規則が求めているのは表示が読めることであって、その付け方まで縛るものではないという読み方です。
表示の方法にも幅があるのですね。
場所も選べます。
実際の表示を、現物で確認しておきましょう。
同じ場所での仮貯蔵はどこまで繰り返せるか

同じ平成6年7月29日付けの消防危第66号の、もう1つの問いです。
タンクコンテナによる仮貯蔵については、平成4年6月18日付けの消防危第52号「タンクコンテナによる危険物の仮貯蔵について」の記4において、繰り返して同一場所での仮貯蔵を承認できる場合が示されていました。
その範囲に何が含まれるのかが問われています。
仮貯蔵の承認は本来、一時的な事情に対して与えられるものです。同じ場所で何度も繰り返せば、実質は貯蔵所ではないかという疑いが立ちます。
それでも、予定どおりに船を動かせなくなった船舶の入出港の遅れなら含めてよいとされました。
挙げられているのは、寄港予定の船舶の変更と、品質不良等による製品の納入不能です。どちらも荷を積む船の予定が狂ったために、置いたままにせざるを得なくなった場合です。
繰り返しそのものを禁じるのではなく、なぜ繰り返すことになったのかを見るという整理です。
同じ場所での仮貯蔵にも、範囲が示されているのですね。
繰り返せる場合が限られます。
承認の条件を、事前に確かめてください。
底弁を空気圧で開閉する構造にできるか

平成4年2月6日付けの消防危第13号は、危険物の規制に関する政令第15条第1項第9号に関する回答です。
底弁の開閉を人の手ではなく空気圧で行いたいという相談でした。
添えられていた配管系統図には、シャシエアータンクから締切りバルブとプロテクションバルブを経て空気が供給され、コントロールボックスの切換弁を通ってエアー式底弁を動かす流れが描かれていました。
注目すべきは、その系統のなかに緊急閉鎖バルブと自動閉鎖装置、そして緊急レバーが組み込まれている点です。
自動で開くようにしたぶん、止める側の仕掛けが独立して用意されています。動かす仕組みを変えても、閉じられなくなる事態は作らないという設計です。
空気圧で開閉する構造も、通っているのですね。
系統図が添えられていました。
操作の失敗を防ぐ手当ても考えてください。
胴板を前方に延長して保護措置にできるか

平成7年1月12日付けの消防危第3号は、胴板を延長した被けん引式の移動タンク貯蔵所の構造についての回答です。
けん引自動車に固定された移動貯蔵タンクの胴板を前方に延長し、その延長部分を移動貯蔵タンクの保護措置として取り扱ってよいかという照会でした。
延長部分には4つの設備が設けられています。
2 タンク前部鏡板部分から危険物が漏えいした場合、延長部分内での可燃性蒸気の滞留防止に有効な延長部分の上下各1ケ所以上に設けられた通気口
3 タンク前部鏡板を外部から目視点検できる点検口
4 延長部分に雨水の侵入等によって、水が滞留することを防止するための水抜口
タンクの前に中空の部分を作れば、前方からの衝撃はそこで受け止められます。ただし中空にした以上、その内部が新しい問題を生みます。
危険物が漏れれば蒸気がたまり、雨が入れば水がたまり、外から見えなくなれば点検ができません。
挙げられた4つは、その一つひとつに対応しています。1は水圧試験のときに人が中に入って前部鏡板を確かめるための出入口、2はたまった蒸気を抜くための通気口、3は外から前部鏡板を見るための点検口、4はたまった雨水を落とすための水抜口です。
通気口を上下各1箇所以上としているのは、蒸気が上にたまっても下にたまっても抜けるようにするためと読めます。
保護措置として認められるかどうかは、守る力があるかだけでなく、それによって生じる不具合まで潰してあるかで決まっています。
差し支えないの一言でも、前提があるのですね。
添付の図が条件になります。
照会の資料は、そのまま保管しておきましょう。
よくある質問
まとめ
- 国際輸送用タンクコンテナは、海外から運んできた積み荷を下ろした後、移動タンク貯蔵所として国内で使用してさしつかえないとされています
- 規則第24条の5第4項第4号の表示は、塗料で表示する方法でもシールを貼付する方法でもさしつかえありません
- 表示を行う場所も、タンク本体の外面でも、タンクを収納する箱枠に取り付けられた表示板でもさしつかえないとされました
- 繰り返して同一場所での仮貯蔵を承認できる場合には、寄港予定の船舶の変更や品質不良等による製品の納入不能等による船舶の入出港の遅れ等も含まれます
- 移動タンク貯蔵所の底弁を空気圧で作動する機器により開閉する構造は、差し支えないとされています
- その配管系統図には、緊急閉鎖バルブと自動閉鎖装置と緊急レバーが組み込まれていました
- けん引自動車に固定された移動貯蔵タンクの胴板を前方に延長した部分を保護措置として取り扱うことも、差し支えないとされました
- 延長部分には、点検用出入口、上下各1箇所以上の通気口、前部鏡板を外部から目視点検できる点検口、水抜口の4つが設けられています
通るときも、条件のほうをよく読む必要があるのですね。
すっきりしました。
差し支えないの一言でも、添付された図が前提になっていることは多いです。
㈱防災屋でも図面の作り込みからご相談を承っています。
参考・出典
- 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(平成6年7月29日 消防危第66号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて)
- 国際輸送用積載式移動タンク貯蔵所における規則第24条の5第4項第4号に定める表示(平成7年3月10日 消防危第22号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて)
- 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(平成4年2月6日 消防危第13号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて)
- 胴板を延長した被けん引式の移動タンク貯蔵所の構造について(平成7年1月12日 消防危第3号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて)
- タンクコンテナによる危険物の仮貯蔵について(平成4年6月18日 消防危第52号)
- 危険物の規制に関する政令第15条第1項第9号
- 危険物の規制に関する規則第24条の5第4項第4号
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。個別の施設についての適用は、所轄の消防機関にご確認ください。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)




