岸壁に船が着いている。すぐ横にタンクローリーが停まっている。
船のホースをローリーのマンホールへ入れれば、荷積みは終わります。
現場としては自然な流れですが、これは消防法違反にあたるとされました。
しかも違反者は作業した人だけではありません。
船から岸壁のタンクローリーへ直接入れるのは、認められないのでしょうか。
消防法第10条第1項違反となるとされています。
船から車へも、車から船へも、どちらの向きでも同じです。
ホースを持っていた人だけが責任を問われるのでしょうか。
回答は、荷積作業について責任を有する者が違反者となる、とだけ示しました。
手を動かしたかどうかで切っていません。
- 岸壁の船舶から停車中の移動タンク貯蔵所へ指定数量以上の危険物を荷積みする行為は、消防法第10条第1項違反となるとされています
- 移動タンク貯蔵所から船舶へ荷積みする場合も同じく違反となります
- 違反者については、荷積作業について責任を有する者が違反者となるとされました
- 移送を行う場合においても、消防法第10条第3項に規定する貯蔵取扱いの基準の適用はあります
- 技術基準に規定のない装置は、機器の安全性と他の構造・設備に悪影響を与えないことを理由に認められています
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目次
船から岸壁のタンクローリーへ直接荷積みできるか

岸壁にけい留された船舶給油船から、同じ岸壁に停車している移動タンク貯蔵所へ、船舶のホースを使用して危険物を荷積みするという場面でした。
船舶は船舶安全法の適用を受けるもので、岸壁そのものは許可施設ではありません。危険物はA重油4キロリットルです。
また、移動タンク貯蔵所から船舶へ荷積みする場合はどうか。
船から車へも、車から船へも、結論は同じでした。
消防法第10条第1項は、指定数量以上の危険物を貯蔵所以外の場所で貯蔵し、または製造所等以外の場所で取り扱ってはならないとしています。
移動タンク貯蔵所は貯蔵所ですが、それは自らのタンクに貯蔵することについての許可であって、岸壁という許可のない場所で荷積みという取扱いを行うことまで含んではいないという整理になります。
船舶の側が船舶安全法の適用を受けていることも、消防法の適用を外す理由にはなっていません。
向きが変わっても、扱いは同じなのですね。
どちらの向きでも違反になります。
荷役の場所と方法を、手順書で決めてください。
違反者になるのは誰か

登場するのは4者です。船舶給油船を所有する甲社とその船員A、同じ船の船長B、移動タンク貯蔵所を所有する乙社とその運転手C。
それぞれの動きは細かく示されています。
船長B=直接この荷積み作業をすることなく別の船室にいた
運転手C=乙種第4類の危険物取扱者の資格を有しており、船舶のホースを移動タンク貯蔵所のマンホールへ入れ荷積み作業を行つた
照会は3つの組み合わせを挙げて、どれかを選ばせようとしていました。回答はそのいずれも選んでいません。
示されたのは基準としての荷積作業について責任を有する者という一文だけです。
手を動かしたかどうか、その場にいたかどうかで機械的に線を引くのではなく、その作業について責任を負う立場にあったかどうかで判断するという考え方です。
船室にいた船長Bが当然に外れるとも、当然に含まれるとも書かれていません。実際の指揮命令の関係を見て決めることになります。
手を動かした人だけではないのですね。
責任を有する者が対象です。
作業の指示系統を、書面で明確にしてください。
移送中も貯蔵取扱いの基準はかかるか

移動タンク貯蔵所による危険物の移送には、消防法第16条の2に規定される移送の基準があります。
では、同じ法第10条第3項の貯蔵取扱いの基準も併せてかかるのか、という問いでした。
移送の基準があるから貯蔵取扱いの基準は外れる、という関係ではありませんでした。
走っている間は移送の基準だけ、という切り分けにはならず、貯蔵し取り扱っている状態が続いている以上そちらの基準も生きているという整理です。
前の2つの項目で見た岸壁での荷積みが問題になるのも、同じ第10条の適用が場所を問わず続いているからだと読めます。
移送中にも、貯蔵取扱いの基準がかかるのですね。
両方が適用されます。
運行中の遵守事項を、運転者に周知してください。
技術基準に規定のない装置は付けられるか

底弁ハンドル部に底弁開口検知器、アースプレート部に積込検知器、エンジン部に走行距離検知器を取り付け、各検知器の信号を車載コンピュータに入力する構成でした。
油槽所で積み込む際にアース処理を積込検知器で検出し、そのとき底弁が開いていれば警報を発します。荷降ろしの際は底弁を開くとその部屋の油種を音声で出力し、作業者に確認させるというものです。
2 1により承知されたい。
この回答には注記が付いており、そこで判断の考え方そのものが述べられています。
検知器はいずれも本質安全防爆構造とされていました。
これまで見てきた回答の多くが「認めてさしつかえない」「認めるべきでない」とだけ述べて理由を書かないなかで、この注記は判断の筋道を明かした数少ない例といえます。
書かれていない装置は、安全性で判断されるのですね。
構成が細かく示されていました。
装置を足すなら、資料をそろえて相談してください。
枠付タンクコンテナの底弁はどう扱われるか

昭和58年10月27日付けの消防危第101号通達により、国際輸送用のタンクコンテナと類似の形態を有する枠付タンクコンテナが国内用としても認められたことを受けたものでした。
問われたのは2点です。
2 この底弁を枠付タンクコンテナの箱状の枠の内部に納まるように設けることにより、危険物の規制に関する政令第15条第1項第11号に規定する「外部からの衝撃による底弁の損傷を防止するための措置」として認めることの適否
2 添付された資料より判断すれば、さしつかえない。
政令が求めているのは、外部からの衝撃による底弁の損傷を防止するための措置です。
専用の防護具を別に取り付けなくても、もともと備わっている箱状の枠の内側へ底弁が収まっていれば、その求めを満たすと判断されました。
条文が結果として何を守ろうとしているかを見れば、それを実現する手段は一つに限られないという読み方です。
底弁そのものについても、切り込み入りの構造で差し支えないとされています。
類似の形態のものにも、扱いが示されているのですね。
国内用として認められた経緯があります。
導入する機材の区分を、確かめてください。
よくある質問
まとめ
- 岸壁にけい留された船舶から同じ岸壁に停車している移動タンク貯蔵所へ指定数量以上の危険物を荷積みする行為は、消防法第10条第1項違反となります
- 移動タンク貯蔵所から船舶へ荷積みする場合も、同じく違反となるとされました
- 船舶が船舶安全法の適用を受けることや、運転手が危険物取扱者の資格を有することは、結論を変えていません
- 違反者については、荷積作業について責任を有する者が違反者となるとだけ示されています
- 移送を行う場合においても、消防法第10条第3項に規定する貯蔵取扱いの基準の適用はあります
- 底弁開口検知器と積込検知器と走行距離検知器を車載コンピュータにつないだ運行管理装置と混油防止装置は、認めてさしつかえないとされました
- その理由として、技術基準に規定がないので機器の安全性と他の構造・設備に悪い影響を与えないことをもって認めた旨が注記されています
- 枠付タンクコンテナに切り込み入り底弁を用いることも、底弁を箱状の枠の内部に納めて政令第15条第1項第11号の措置とすることも、さしつかえないとされました
書いてある基準は場所を問わずかかるのですね。
すっきりしました。
荷積みの場所や責任の所在は、事故が起きてから整理するには重すぎる論点です。
㈱防災屋でも作業手順の確認からご相談を承っています。
参考・出典
- 船舶から移動タンク貯蔵所への危険物の荷積み行為について(昭和59年5月25日 消防危第46号 危険物規制課長から長崎県あて回答)〔昭和59年7月23日 消防危第79号「4」〕
- 危険物の規制に関する疑義について(昭和59年3月1日 消防危第19号 危険物規制課長から長野県あて回答)〔昭和59年7月23日 消防危第79号「1」〕
- 移動タンク貯蔵所に係る疑義について(昭和59年9月4日 消防危第98号 消防庁危険物規制課長から千葉県あて回答)〔昭和60年3月5日 消防危第27号「5」〕
- 枠付タンクコンテナに設ける底弁の損傷防止措置について(昭和59年6月11日 消防危第56号 危険物規制課長から愛知県あて回答)〔昭和59年7月23日 消防危第79号「12」〕
- 消防法第10条第1項・第10条第3項・第16条の2
- 危険物の規制に関する政令第15条第1項第11号
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。個別の施設についての適用は、所轄の消防機関にご確認ください。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)




