セミトレーラーの移動タンク貯蔵所にポンプを乗せる案は、昭和57年に認められませんでした。
ところがその1年半後、同じ目的の設備が別の形で認められています。
変えたのは動力の渡し方だけでした。
断られた案でも作り直せば通ります。
前にポンプは駄目だと言われました。もう諦めるしかないのでしょうか。
ポンプ本体をトレーラー側に移し、トラクターからは油圧だけを送る形にした照会が、その後認められています。
では何を足しても作り直せば通るということですか。
そうではありません。タンクの底弁や排出口そのものに手を入れる案は、同じ時期にいずれも退けられています。
この記事の結論
- トラクター側に油圧ポンプ、トレーラー側にオイルモーターと吐出用ポンプを積む構造は、認めてさしつかえないとされています
- ただしその吐出用ポンプの使用は、引火点が40度以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱う場合に限られます
- 圧縮空気で配管内の残油を除去する装置は、認めるべきでないとされました
- 各室の油種を記憶して排出油種を指定する混油防止装置は、認めてさしつかえないとされています
- 自動閉鎖装置を省略できる直径40ミリメートル以下とは、底弁によつて閉そくされる部分の直径をいいます
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目次
認められなかったポンプは油圧駆動なら通るか

昭和57年の回答では、トラクター側にポンプを取り付ける案が認められませんでした。けん引自動車とセミトレーラーが交換的に結合されるため、一体的な安全管理が困難だというのが理由です。
今回の照会は、そこを避ける形になっています。
被けん引車式移動タンク貯蔵所のトラクター側に、作動油タンク及び油圧ポンプを、トレーラー側にオイルモーター及び吐出用ポンプを積載し、エンジンミッションから動力伝動軸を介してトラクター側の油圧ポンプを作動させ、この油圧によりトレーラー側のオイルモーターを介して吐出用ポンプを作動させる構造のものの設置を認めてよろしいか。
答 設問については、認めてさしつかえない。
なお、設問の吐出用ポンプの使用は、危険物の規制に関する政令第27条第6項第4号ハの規定により、引火点が40度以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱う場合に限られるので念のため申し添える。
なお、設問の吐出用ポンプの使用は、危険物の規制に関する政令第27条第6項第4号ハの規定により、引火点が40度以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱う場合に限られるので念のため申し添える。
危険物に触れる吐出用ポンプはトレーラー側、つまりタンクと一緒に動く側に移されています。
トラクター側に残ったのは作動油タンクと油圧ポンプだけで、両者をつなぐのは油圧ホースです。接続部にはクイックカップリング(両路自動閉鎖弁)が使われ、切り離しても油が漏れない構造になっていました。
作動油そのものも第4類第4石油類で引火点200度と、性質の穏やかなものが選ばれています。
ただし使用できる場面には限りがあり、吐出用ポンプは引火点40度以上に限られるという付言が添えられました。引火点が40度未満の危険物を荷降ろしするときは政令の規定により原動機を停止しなければならないので、そもそもポンプが動きません。
配管内の残油を除去する装置は付けられるか

配管が長いと、荷降ろしを終えても中に危険物が残ります。照会に添えられた図では、配管が約15メートル、径65Aで、その中の残液量は約57リットルとされていました。
これを圧縮空気で押し出そうという装置です。
(1) ローリー取付けのコンプレッサーによりブレーキ用メインエアータンクに溜められた圧縮空気(安全装置により9キログラム毎平方センチメートル以下)をミニチュアバルブの開放によつて、直径10ミリメートルの銅管でサービスエアータンクに充てんする
(2) ローリー後部に取付けの操作ロットの作動によりミニボールバルブを開き、サービスエアータンクの圧縮空気をローリー配管内に送り、配管内の残油及び受入れタンク注入管の残油を受入れタンクに送油する
2 当該装置の取付け車両は動植物油類に限定している
(2) ローリー後部に取付けの操作ロットの作動によりミニボールバルブを開き、サービスエアータンクの圧縮空気をローリー配管内に送り、配管内の残油及び受入れタンク注入管の残油を受入れタンクに送油する
2 当該装置の取付け車両は動植物油類に限定している
答 添付された資料から判断すれば設問の場合認めるべきでない。
照会側は、対象を動植物油類に限ること、圧力も9キログラム毎平方センチメートル以下に抑えることまで自ら制限をかけていました。
それでも認められていません。回答は理由を書いていませんが、危険物を貯蔵する配管の中へ、ブレーキ用の圧縮空気を送り込むという系統のつなぎ方そのものが問われたと読めます。
前の項目の油圧駆動が、危険物とは別系統の作動油を閉じた回路で使っていたのとは対照的です。
混油を防ぐ装置は取り付けられるか

移動タンク貯蔵所から地下タンク等に注油する際に起きる混油を防止するために、混油防止装置を取り付けることを認めてよいかというものでした。
違う油種を同じ地下タンクに入れてしまう事故を、装置で止めようという発想です。
1 緊急弁付底弁(エアシリンダ付)
2 各室積載油種記憶装置
3 排出油種指定装置
4 排出油種表示装置
5 緊急弁開閉用ソレノイドバルブ
6 コントロール系統(電気式)
7 作動系統(エアー式)
2 各室積載油種記憶装置
3 排出油種指定装置
4 排出油種表示装置
5 緊急弁開閉用ソレノイドバルブ
6 コントロール系統(電気式)
7 作動系統(エアー式)
答 1 添付された資料から判断すれば、認めてさしつかえない。
2 1により承知されたい。
2 1により承知されたい。
記憶し、指定し、表示するという3段構えで、どの室から何を出すのかを人の記憶に頼らせない構成です。
弁そのものは既にある緊急弁付底弁を使い、それをソレノイドバルブとエアーで開閉する形になっています。
底弁の構造を作り替えるのではなく、既存の底弁をどう開けるかという制御の側に手を入れた点が、次の2つの項目と分かれるところです。
排出口の直径40ミリメートルはどこを測るか

危険物の規制に関する政令第15条第1項第9号のただし書は、直径が40ミリメートル以下の排出口に設ける底弁には自動閉鎖装置を設けないことができるとしています。
ところが底弁の構造図を見ると、径と呼べる箇所が複数あります。どこを測るのかという問いでした。
答 危険物の規制に関する政令第15条第1項第9号の規定により自動閉鎖装置を設けないことができる移動貯蔵タンクは、底弁によつて閉そくされる部分の直径が40ミリメートル以下のものをいうものである。
従つて、設問の場合、添付された資料より判断すれば、Aの部分の直径である。
従つて、設問の場合、添付された資料より判断すれば、Aの部分の直径である。
測る場所は、外側の配管の太さではなく、底弁が閉じたときに実際に塞がれる部分です。
自動閉鎖装置を省いてよいかどうかは、万一のときに流れ出る量で決まります。だとすれば見るべきは弁の座の大きさであって、その先の管が太いか細いかではないという考え方が読み取れます。
この基準は次の項目でもそのまま効いてきます。
第1槽の下部に第2槽の導油槽を通せるか

タンク内において、間仕切された第2槽から、同じタンク内の第1槽の下部を仕切つて第2槽導油槽を設けるという構造でした。
後ろの槽の中身を、前の槽の床下を通して手前まで導くという発想です。照会側は、これを配管として扱う場合に政令第15条の基準に適合しない点を自ら3つ挙げていました。
(1) 配管とタンクの一部が、1枚の鋼板で兼用されること
(2) 第2槽の排出口の直近に底弁が設けられていないこと
(3) 排出口(第2槽導油槽)の断面積が16.5平方センチメートルであり、直径が40ミリメートルの配管の断面積(約12.6平方センチメートル)より大きく、かつ、引火点が70度未満の危険物を貯蔵するものであるが、底弁に自動閉鎖装置が設けられていないこと
(2) 第2槽の排出口の直近に底弁が設けられていないこと
(3) 排出口(第2槽導油槽)の断面積が16.5平方センチメートルであり、直径が40ミリメートルの配管の断面積(約12.6平方センチメートル)より大きく、かつ、引火点が70度未満の危険物を貯蔵するものであるが、底弁に自動閉鎖装置が設けられていないこと
答 1 添付された資料から判断すれば第2槽を設置することは、危険物の規制に関する政令第15条第1項第9号に定める基準に適合しないこととなるので認めることは、適当でない。
2及び3 1により承知されたい。
2及び3 1により承知されたい。
挙げられていた3点のうち、回答が結論の根拠としたのは政令第15条第1項第9号です。前の項目と同じ条文でした。
断面積16.5平方センチメートルは直径40ミリメートルの円の面積を超えており、しかも引火点70度未満の危険物を貯蔵するのに自動閉鎖装置がない。ただし書の枠から外れる以上、置けないという整理です。
配管なのかタンクの一部なのかという問い2と、容量計算や水圧検査の扱いを尋ねた問い3には、いずれも1により承知されたいとだけ答えています。前提となる構造が認められない以上、区分を論じる必要がないという返し方です。
よくある質問
Q. 昭和57年に認められなかったのに、なぜ今回は認められたのですか?
昭和57年の照会は、ポンプ本体をトラクター側に取り付けるものでした。回答は、けん引自動車とセミトレーラーが交換的に結合されて使用されるため一体的な安全管理を行うことが困難であるとしています。昭和58年の照会では危険物に触れる吐出用ポンプがトレーラー側に移され、トラクター側には作動油の回路だけが残りました。回答が問題にした点が解消された形です。
Q. 吐出用ポンプが引火点40度以上に限られるのはなぜですか?
回答は、危険物の規制に関する政令第27条第6項第4号ハの規定によるとしています。引火点が40度未満の危険物を荷降ろしする際は移動タンク貯蔵所の原動機を停止しなければならないため、原動機から動力を取るポンプは動かせないという関係です。
Q. 残油除去装置はなぜ認められなかったのですか?
回答は、添付された資料から判断すれば設問の場合認めるべきでないとしており、理由は示されていません。照会側は対象を動植物油類に限り、圧力も9キログラム毎平方センチメートル以下としていましたが、結論は変わりませんでした。危険物を通す配管へブレーキ用の圧縮空気を送り込むという系統のつなぎ方が問われたと読めます。
Q. 排出口の直径はどこを測ればよいのですか?
回答は、底弁によつて閉そくされる部分の直径が40ミリメートル以下のものをいうとしています。外側の配管の太さではなく、底弁が閉じたときに実際に塞がれる部分の径です。この基準は2槽混載型の照会でも用いられ、断面積が直径40ミリメートルの円を超えることが結論の根拠のひとつになっています。
まとめ
- トラクター側に作動油タンクと油圧ポンプ、トレーラー側にオイルモーターと吐出用ポンプを積む構造は、認めてさしつかえないとされています
- その吐出用ポンプの使用は、政令第27条第6項第4号ハの規定により引火点が40度以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱う場合に限られます
- 接続部にはクイックカップリング(両路自動閉鎖弁)が用いられ、作動油は引火点200度の第4類第4石油類が選ばれていました
- 圧縮空気で配管内および受入れタンク注入管の残油を除去する装置は、認めるべきでないとされました
- 緊急弁付底弁に各室積載油種記憶装置と排出油種指定装置と排出油種表示装置を組み合わせた混油防止装置は、認めてさしつかえないとされています
- 自動閉鎖装置を設けないことができる直径40ミリメートル以下とは、底弁によつて閉そくされる部分の直径をいいます
- 第2槽から第1槽の下部を仕切つて導油槽を設ける構造は、政令第15条第1項第9号に定める基準に適合しないため認めることは適当でないとされました
- いずれの否定も、装置を足すこと自体ではなく、危険物が通る経路そのものに手を入れた点が問われています
一度断られても、退けられた理由さえ潰せば別の形で通るんですね。
大事なのは、断られた理由がどこにあったかを正確に読むことです。㈱防災屋でも過去の回答をたどって代替案を組み立てるところからご相談を承っています。
参考・出典
- 被けん引車式移動タンク貯蔵所にポンプを積載することについて(昭和58年11月29日 消防危第124号 消防庁危険物規制課長から神奈川県あて回答)〔昭和58年12月20日 消防危第138号「24」〕
- 移動タンク貯蔵所配管内の残油等除去装置取付について(昭和58年4月4日 消防危第40号 消防庁危険物規制課長から大阪府あて回答)〔昭和58年12月20日 消防危第138号「21」〕
- 移動タンク貯蔵所に係る疑義について(昭和58年11月7日 消防危第109号 消防庁危険物規制課長から栃木県あて回答)〔昭和58年12月20日 消防危第138号「23」〕
- 移動貯蔵タンクの下部に設ける排出口の直径について(昭和58年11月7日 消防危第104号 消防庁危険物規制課長から石川県あて回答)〔昭和58年12月20日 消防危第138号「22」〕
- 2槽混載型積荷式移動タンク貯蔵所の取扱いについて(昭和58年12月20日 消防危第137号 危険物規制課長から京都府あて回答)〔昭和58年12月20日 消防危第138号「25」〕
- 危険物の規制に関する政令第15条第1項第9号・第27条第6項第4号ハ
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。個別の施設についての適用は、所轄の消防機関にご確認ください。




