セミトレーラーの移動タンク貯蔵所にポンプを乗せる案は、昭和57年に認められませんでした。
ところがその1年半後、同じ目的の設備が別の形で認められています。
変えたのは動力の渡し方だけでした。
断られた案でも作り直せば通ります。
以前ポンプは難しいと言われました。
もう方法はないのでしょうか。
ポンプ本体をトレーラー側に移し、トラクターからは油圧だけを送る形にした照会が、その後認められています。
では、作り直せば何でも通るということでしょうか。
そうではありません。
タンクの底弁や排出口そのものに手を入れる案は、同じ時期にいずれも退けられています。
- トラクター側に油圧ポンプ、トレーラー側にオイルモーターと吐出用ポンプを積む構造は、認めてさしつかえないとされています
- ただしその吐出用ポンプの使用は、引火点が40度以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱う場合に限られます
- 圧縮空気で配管内の残油を除去する装置は、認めるべきでないとされました
- 各室の油種を記憶して排出油種を指定する混油防止装置は、認めてさしつかえないとされています
- 自動閉鎖装置を省略できる直径40ミリメートル以下とは、底弁によつて閉そくされる部分の直径をいいます
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目次
認められなかったポンプは油圧駆動なら通るか

昭和58年11月29日付けの消防危第124号は、被けん引車式移動タンク貯蔵所にポンプを積載することについての照会です。
昭和57年の回答では、トラクター側にポンプを取り付ける案が認められませんでした。けん引自動車とセミトレーラーが交換的に結合されるため、一体的な安全管理が困難だというのが理由です。
今回の照会は、そこを避ける形になっています。
なお、設問の吐出用ポンプの使用は、危険物の規制に関する政令第27条第6項第4号ハの規定により、引火点が40度以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱う場合に限られるので念のため申し添える。
危険物に触れる吐出用ポンプはトレーラー側、つまりタンクと一緒に動く側に移されています。
トラクター側に残ったのは作動油タンクと油圧ポンプだけで、両者をつなぐのは油圧ホースです。接続部にはクイックカップリング(両路自動閉鎖弁)が使われ、切り離しても油が漏れない構造になっていました。
作動油そのものも第4類第4石油類で引火点200度と、性質の穏やかなものが選ばれています。
ただし使用できる場面には限りがあり、吐出用ポンプは引火点40度以上に限られるという付言が添えられました。引火点が40度未満の危険物を荷降ろしするときは政令の規定により原動機を停止しなければならないので、そもそもポンプが動きません。
理由を潰した形なら、認められるのですね。
付ける位置を変えた例です。
断られた理由を、記録に残しておきましょう。
配管内の残油を除去する装置は付けられるか

昭和58年4月4日付けの消防危第40号は、移動タンク貯蔵所配管内の残油等除去装置取付についての照会です。
配管が長いと、荷降ろしを終えても中に危険物が残ります。照会に添えられた図では、配管が約15メートル、径65Aで、その中の残液量は約57リットルとされていました。
これを圧縮空気で押し出そうという装置です。
(2) ローリー後部に取付けの操作ロットの作動によりミニボールバルブを開き、サービスエアータンクの圧縮空気をローリー配管内に送り、配管内の残油及び受入れタンク注入管の残油を受入れタンクに送油する
2 当該装置の取付け車両は動植物油類に限定している
照会側は、対象を動植物油類に限ること、圧力も9キログラム毎平方センチメートル以下に抑えることまで自ら制限をかけていました。
それでも認められていません。回答は理由を書いていませんが、危険物を貯蔵する配管の中へ、ブレーキ用の圧縮空気を送り込むという系統のつなぎ方そのものが問われたと読めます。
前の項目の油圧駆動が、危険物とは別系統の作動油を閉じた回路で使っていたのとは対照的です。
配管に残った分を押し出す装置もあるのですね。
量まで示されていました。
配管の長さと残量を、把握しておいてください。
混油を防ぐ装置は取り付けられるか

昭和58年11月7日付けの消防危第109号は、移動タンク貯蔵所に係る疑義についての照会です。
移動タンク貯蔵所から地下タンク等に注油する際に起きる混油を防止するために、混油防止装置を取り付けることを認めてよいかというものでした。
違う油種を同じ地下タンクに入れてしまう事故を、装置で止めようという発想です。
2 各室積載油種記憶装置
3 排出油種指定装置
4 排出油種表示装置
5 緊急弁開閉用ソレノイドバルブ
6 コントロール系統(電気式)
7 作動系統(エアー式)
2 1により承知されたい。
記憶し、指定し、表示するという3段構えで、どの室から何を出すのかを人の記憶に頼らせない構成です。
弁そのものは既にある緊急弁付底弁を使い、それをソレノイドバルブとエアーで開閉する形になっています。
底弁の構造を作り替えるのではなく、既存の底弁をどう開けるかという制御の側に手を入れた点が、次の2つの項目と分かれるところです。
事故を装置で止めるという発想もあるのですね。
混油の防止です。
受入側の設備と合わせて検討してください。
排出口の直径40ミリメートルはどこを測るか

昭和58年11月7日付けの消防危第104号は、移動貯蔵タンクの下部に設ける排出口の直径についての照会です。
危険物の規制に関する政令第15条第1項第9号のただし書は、直径が40ミリメートル以下の排出口に設ける底弁には自動閉鎖装置を設けないことができるとしています。
ところが底弁の構造図を見ると、径と呼べる箇所が複数あります。どこを測るのかという問いでした。
従つて、設問の場合、添付された資料より判断すれば、Aの部分の直径である。
測る場所は、外側の配管の太さではなく、底弁が閉じたときに実際に塞がれる部分です。
自動閉鎖装置を省いてよいかどうかは、万一のときに流れ出る量で決まります。だとすれば見るべきは弁の座の大きさであって、その先の管が太いか細いかではないという考え方が読み取れます。
この基準は次の項目でもそのまま効いてきます。
寸法をどこで測るかも、問題になるのですね。
図で径が変わる場合があります。
基準となる箇所を、図面で確かめてください。
第1槽の下部に第2槽の導油槽を通せるか

昭和58年12月20日付けの消防危第137号は、2槽混載型積荷式移動タンク貯蔵所の取扱いについての照会です。
タンク内において、間仕切された第2槽から、同じタンク内の第1槽の下部を仕切つて第2槽導油槽を設けるという構造でした。
後ろの槽の中身を、前の槽の床下を通して手前まで導くという発想です。照会側は、これを配管として扱う場合に政令第15条の基準に適合しない点を自ら3つ挙げていました。
(2) 第2槽の排出口の直近に底弁が設けられていないこと
(3) 排出口(第2槽導油槽)の断面積が16.5平方センチメートルであり、直径が40ミリメートルの配管の断面積(約12.6平方センチメートル)より大きく、かつ、引火点が70度未満の危険物を貯蔵するものであるが、底弁に自動閉鎖装置が設けられていないこと
2及び3 1により承知されたい。
挙げられていた3点のうち、回答が結論の根拠としたのは政令第15条第1項第9号です。前の項目と同じ条文でした。
断面積16.5平方センチメートルは直径40ミリメートルの円の面積を超えており、しかも引火点70度未満の危険物を貯蔵するのに自動閉鎖装置がない。ただし書の枠から外れる以上、置けないという整理です。
配管なのかタンクの一部なのかという問い2と、容量計算や水圧検査の扱いを尋ねた問い3には、いずれも1により承知されたいとだけ答えています。前提となる構造が認められない以上、区分を論じる必要がないという返し方です。
本体の構造に手を入れる案は、退けられているのですね。
同じ時期にいずれも認められませんでした。
改造は、影響の範囲から検討してください。
よくある質問
まとめ
- トラクター側に作動油タンクと油圧ポンプ、トレーラー側にオイルモーターと吐出用ポンプを積む構造は、認めてさしつかえないとされています
- その吐出用ポンプの使用は、政令第27条第6項第4号ハの規定により引火点が40度以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱う場合に限られます
- 接続部にはクイックカップリング(両路自動閉鎖弁)が用いられ、作動油は引火点200度の第4類第4石油類が選ばれていました
- 圧縮空気で配管内および受入れタンク注入管の残油を除去する装置は、認めるべきでないとされました
- 緊急弁付底弁に各室積載油種記憶装置と排出油種指定装置と排出油種表示装置を組み合わせた混油防止装置は、認めてさしつかえないとされています
- 自動閉鎖装置を設けないことができる直径40ミリメートル以下とは、底弁によつて閉そくされる部分の直径をいいます
- 第2槽から第1槽の下部を仕切つて導油槽を設ける構造は、政令第15条第1項第9号に定める基準に適合しないため認めることは適当でないとされました
- いずれの否定も、装置を足すこと自体ではなく、危険物が通る経路そのものに手を入れた点が問われています
断られた理由を正確に読むことが大事なのですね。
すっきりしました。
大事なのは、断られた理由がどこにあったかを正確に読むことです。
㈱防災屋でも過去の回答をたどって代替案を組み立てるところからご相談を承っています。
参考・出典
- 被けん引車式移動タンク貯蔵所にポンプを積載することについて(昭和58年11月29日 消防危第124号 消防庁危険物規制課長から神奈川県あて回答)〔昭和58年12月20日 消防危第138号「24」〕
- 移動タンク貯蔵所配管内の残油等除去装置取付について(昭和58年4月4日 消防危第40号 消防庁危険物規制課長から大阪府あて回答)〔昭和58年12月20日 消防危第138号「21」〕
- 移動タンク貯蔵所に係る疑義について(昭和58年11月7日 消防危第109号 消防庁危険物規制課長から栃木県あて回答)〔昭和58年12月20日 消防危第138号「23」〕
- 移動貯蔵タンクの下部に設ける排出口の直径について(昭和58年11月7日 消防危第104号 消防庁危険物規制課長から石川県あて回答)〔昭和58年12月20日 消防危第138号「22」〕
- 2槽混載型積荷式移動タンク貯蔵所の取扱いについて(昭和58年12月20日 消防危第137号 危険物規制課長から京都府あて回答)〔昭和58年12月20日 消防危第138号「25」〕
- 危険物の規制に関する政令第15条第1項第9号・第27条第6項第4号ハ
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。個別の施設についての適用は、所轄の消防機関にご確認ください。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)




