消防法が義務付ける屋内消火栓設備やスプリンクラー設備、自動火災報知設備が、そもそも設置されていない建物が全国にどれくらいあるか知っていますか。
消防庁はこうした「重大な消防法令違反」を抱える建物を毎年調査し、結果を公表しています。
実は全国の件数は年々減っていますが、その裏で違反に気づかれてから10年以上放置されたままの建物も残っています。
この記事では最新の調査結果から、全国の件数の推移と、設備ごとの違反率の違い、そして長期化した違反がどうなるのかを解説します。
スプリンクラーが無い建物なんて、そんなに残っているんですか。
はい、全国でまだ1万件以上が消防庁の調査で確認されています。
件数は減っているんですか、それとも増えているんですか。
全体としては減少傾向ですが、一部は10年以上動いていません。
- 消防庁は重大な消防法令違反対象物の措置状況等を毎年調査し、結果を公表しています。
- 全国の重大違反対象物数は特定防火対象物だけで見ると直近3年で2,146件から1,734件に減少しました。
- 違反率が最も高いのは自動火災報知設備ではなく屋内消火栓設備(0.45%)です。
- 違反覚知から10年以上放置されている対象物は、特定防火対象物以外で全体の4割にのぼります。
- 改善が見られない場合は警告・命令(消防法第17条の4)を経て告発に至ることもあります。
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目次
なぜ重大な消防法令違反対象物は毎年調査されるのか

消防庁はその件数と是正の進み具合を、毎年全国の消防本部から集計しています。
学校・病院・工場・興行場・地下街など、令別表第1に掲げる用途の建物が対象になります。
消防庁は毎年3月31日を基準日として全国の件数を集計し、通知として公表しています。
令和5年10月に公表された今回の結果は、令和5年3月31日時点の調査基準日に基づくものです。
まずは全国の件数がどう推移しているのかを見ていきます。
設備が足りない建物って、そんなに珍しくないんですね。
そうなんです。
ただ全体の件数は年々減っています。
全国の重大違反対象物はどれくらいのペースで減っているのか

どちらも直近3年間で件数が減っています。
2年連続で件数が減っているということは、各消防本部の是正指導が一定の効果を上げていると見ることができます。
とはいえ、それでも今回の調査時点で13,837件が残っていることに変わりはありません。
次は、どの消防用設備の違反が多いのかを設備別に見ていきます。
減っているとはいえ、まだ万単位で残っているんですね。
はい。
設備の種類によって違反の起きやすさも違います。
どの消防用設備の違反が一番多いのか

ところが件数の多さと、違反の起きやすさ(違反率)は別物です。
自動火災報知設備は義務対象物数そのものが約69万件と桁違いに多いため、件数は大きくても率としては中位にとどまります。
逆にスプリンクラー設備は義務対象物数・違反件数とも少なく、違反率も最も低い0.09%です。
つまり「自分の建物にどの設備が義務付けられているか」によって、注意すべき違反リスクの大きさが変わってきます。
特に屋内消火栓設備がある建物は、他の設備よりも未設置・機能不良のまま見過ごされやすい傾向があると言えます。
件数が多いからといって、一番危ないとは限らないんですね。
はい。
もう一つ気になるのが違反が放置されている期間です。
違反覚知から10年以上放置されている対象物はどうなっているのか

特に「特定防火対象物以外」でその傾向が強く出ています。
「特定防火対象物以外」とは、共同住宅・事務所・工場・倉庫など、不特定多数が出入りしない用途の建物です。
不特定多数の利用者がいる特定防火対象物(学校・病院・地下街等)は10年以上の割合が9.2%にとどまるのに対し、特定防火対象物以外は40.4%と4倍以上の差があります。
利用者の出入りが少ない建物ほど、違反が発見されても後回しにされやすい実態がうかがえます。
ただし放置期間が長くても、その多くはまだ「行政指導」の段階にとどまっています。
10年も直っていないのに、まだ行政指導の段階なんですか。
はい。
ただ改善が見られなければ次の段階に進みます。
違反が続くと最終的にどうなるのか、明日から何を確認すればよいのか

その先には刑事罰につながる手続きも用意されています。
消防長又は消防署長は、第十七条第一項の防火対象物における消防用設備等が設備等技術基準に従つて設置され、又は維持されていないと認めるときは、当該防火対象物の関係者で権原を有するものに対し、当該設備等技術基準に従つてこれを設置すべきこと、又はその維持のため必要な措置をなすべきことを命ずることができる。
消防法第41条第1項第5号
第十七条の四第一項又は第二項の規定による命令に違反して消防用設備等又は特殊消防用設備等を設置しなかつた者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
命令の根拠は消防法第17条の4で、命令に違反すると第41条により1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金という刑事罰の対象になります。
命令にも応じないまま火災発生の危険が高いと判断されれば、防火対象物の使用そのものを禁止・制限する使用停止命令(消防法第5条の2)に発展することもあります。
関係者にとって最も大切なのは、この流れの入口である行政指導の段階で改修計画をきちんと提出し、期限どおりに是正することです。
- 自分の建物の屋内消火栓設備・スプリンクラー設備・自動火災報知設備が設置基準を満たしているか点検結果を確認する
- 消防用設備等点検結果報告書で指摘事項が残っていないかを確認する
- 指摘があれば、期限を明確にした改修計画報告書を所轄消防署に提出する
- 是正が長引きそうなときは、管理権原者だけで抱え込まず所轄消防署や専門業者に早めに相談する
特に「特定防火対象物以外」の建物は違反が見過ごされやすい分、自主的な点検と報告が重要になります。
点検結果報告書に指摘事項が残ったままになっていないか、この機会に確認しておきましょう。
不明な点があれば、遠慮せず所轄消防署の予防課に相談するのが確実です。
うちの点検結果報告書に指摘が残っていないか、確認してみます。
それが一番確実です。
気になる点は所轄消防署にもご相談ください。
よくある質問
まとめ
今日のうちに点検結果報告書を確認してみます!
設備の点検から改修計画の作成まで、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 重大な消防法令違反対象物の措置状況等に係る調査結果について(通知)(令和5年10月2日 消防予第543号・同年11月20日修正版 消防庁予防課長)
- 重大な消防法令違反対象物の措置状況等に係る調査について(令和5年4月20日付け消防予第253号)
- 消防法(昭和23年法律第186号)第17条・第17条の4・第41条・第5条の2
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。個別の建物の措置状況や是正計画については、所轄消防署にご確認ください。





