大きな災害が起きると、被災した地域には応急の仮設建築物が短い期間で建てられます。
そうした建物は、平常時の建築基準法の規定をすべて守って建てられるとは限りません。
災害の後に建てる仮設の建物は、どの規定が外れて、いつまで使い続けられるのでしょうか。
今回は建築基準法第85条が定める応急仮設建築物の特例と、使い続けられる期間の考え方を、防火管理者が押さえておきたい点とあわせて解説します。
災害の後に建つ仮設の建物は、普通の建物と同じ基準で建てているんですか。
いつまで使えるのかも気になります。
いいえ、建築基準法第85条に応急仮設建築物の特例があります。
条件を満たすと建築基準法令の規定が適用されず、使える期間にも限りがあります。
適用されないというのは、どこまでの話なんでしょうか。
条件と期限を順番に教えてください。
条文を順に見ていきましょう。
防火管理の面で気をつける点もお伝えします。
- 災害があった場合の応急仮設建築物には、建築基準法第85条が制限を緩和する特例を置いています。
- 非常災害区域等内では、国などが災害救助のために建てるものと、被災者が自ら使う30平方メートル以内のものが対象で、災害の発生から1か月以内に着工する必要があります。
- 建築工事の完了後に3か月を超えて使い続けるときは、特定行政庁の許可が必要です。
- 許可の期間は2年以内で、特別の必要があれば更に1年を超えない範囲で延長できます。
- 第1項の特例は防火地域内に建築する場合には使えず、第2項は外れる条文を列挙する別の仕組みです。
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目次
災害の後に建てる仮設の建物はなぜ建築基準法の規定が外れるのか

建築基準法第85条は、そうした場面に向けた「仮設建築物に対する制限の緩和」を定めた条文です。
非常災害区域等は、非常災害が発生した区域かそれに隣接する区域のうち、特定行政庁が指定するものとされています。
対象になる工事は、災害で破損した建築物の応急の修繕と、次の節で見る応急仮設建築物の建築です。
「建築基準法令の規定」は第6条第1項で、この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定と定義されており、消防法は含まれません。
条文は個別の条項を並べず、これらの規定は適用しないと広く書いています。
災害のときは、決まりを全部守っていられないということでしょうか。
どんな建物でも対象になるんですか。
対象は条文で限られているので、そこがポイントです。
次に対象の建物を見ていきましょう。
どんな応急仮設建築物なら第1項の特例を使えるのか

条文の各号を順に読んでいきます。
一 国、地方公共団体又は日本赤十字社が災害救助のために建築するもの
二 被災者が自ら使用するために建築するもので延べ面積が三十平方メートル以内のもの
第1号は、国、地方公共団体または日本赤十字社が災害救助のために建築するものです。
第2号は、被災者が自ら使用するために建築するもので、延べ面積が30平方メートル以内のものと書かれています。
どちらの場合も、災害が発生した日から1か月以内に工事に着手することが条件です。
この条件を満たさない工事は、第1項の特例の対象になりません。
自分で建てる小屋なら、広さが30平方メートルまでということですね。
着工の時期にも決まりがあるんですね。
はい、延べ面積と着工の時期の両方が条件になります。
どちらかを満たさないと第1項の特例は使えません。
特例で建てた仮設の建物はいつまで使い続けられるのか

存続のための許可と期間が、第3項から第5項までに書かれています。
(同条第四項 抜粋)特定行政庁は、前項の許可の申請があつた場合において、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるときは、二年以内の期間を限つて、その許可をすることができる。
(同条第五項 抜粋)特定行政庁は、被災者の需要に応ずるに足りる適当な建築物が不足することその他の理由により前項に規定する期間を超えて使用する特別の必要がある応急仮設建築物について、安全上、防火上及び衛生上支障がなく、かつ、公益上やむを得ないと認める場合においては、同項の規定にかかわらず、更に一年を超えない範囲内において同項の規定による許可の期間を延長することができる。(略)
第3項の対象は、第1項と第2項の応急仮設建築物です。
3か月を超えることとなる日の前に、特定行政庁の許可を受ける必要があります。
特定行政庁は安全上、防火上、衛生上の支障がないと認めるときに、2年以内の期間を限って許可できます。
更に特別の必要がある場合は、許可の期間を1年を超えない範囲で延長できるとされています。
つまり最初の3か月を過ぎたら、許可を取ることになるんですね。
その後は何年使えるんでしょうか。
許可の期間は2年以内で、特別の必要があれば更に1年を超えない範囲で延長できます。
延長には建築審査会の同意が要る場合もあります。
特例が使えない場所や外れない規定はどこにあるのか

また第2項は、外れる規定を条文で列挙する別の仕組みです。
(同条第二項 抜粋)災害があつた場合において建築する停車場、官公署その他これらに類する公益上必要な用途に供する応急仮設建築物又は工事を施工するために現場に設ける事務所、下小屋、材料置場その他これらに類する仮設建築物については、第六条から第七条の六まで、(略)並びに第三章の規定は、適用しない。ただし、防火地域又は準防火地域内にある延べ面積が五十平方メートルを超えるものについては、第六十二条の規定の適用があるものとする。
第1項のただし書は、防火地域内に建築する場合を特例の対象から外しています。
第2項は、公益上必要な応急仮設建築物や、工事を施工するために現場に設ける事務所、下小屋、材料置場などが対象です。
こちらは第6条から第7条の6まで、第3章など、外れる規定を条文で列挙する書き方です。
ただし防火地域または準防火地域内で延べ面積が50平方メートルを超えるものには、第62条の規定が適用されます。
仮設だからといって、どこでも自由に建てていいわけではないんですね。
工事現場の事務所も第2項の対象になりますか。
工事を施工するために現場に設ける事務所なども、第2項に書かれています。
ただし第2項は外れる条文を列挙しているので、第1項とは範囲が違います。
防火管理者は仮設の建物を使うときになにを確かめておくとよいのか

延長の同意が要る用途かどうかも、規則に書かれています。
一 官公署
二 病院又は診療所
三 学校
四 児童福祉施設等(令第十九条第一項に規定する児童福祉施設等をいう。)
五 災害救助法(昭和二十二年法律第百十八号)に基づき地方公共団体が被災者に供与する応急仮設住宅
六 前各号に掲げるもののほか、被災者の日常生活上の必要性の程度においてこれらに類する用途
第8項は、許可の期間を延長するときに建築審査会の同意を要するとしつつ、規則で定める用途は例外としています。
その用途には、官公署、病院、診療所、学校、児童福祉施設等、応急仮設住宅などが挙げられています。
条文が適用を外すと書いているのは建築基準法令の規定で、消防法令の扱いはこの条文からは分かりません。
明日から次の点を確認してください。
- 建築工事の完了から3か月を過ぎる前に、特定行政庁の許可を受けているかを確認する。
- 許可の期間の終わりの日を、防火管理の記録に残す。
- 許可の申請中でも処分がされるまでは存続できるが、結果は早めに確かめる。
- 建物の用途と広さが、第1項各号や第2項に当たるかを、設計者や特定行政庁に確認する。
- 消防用設備や消防計画は、建築基準法の特例とは別に、所轄消防署へ相談する。
建物の使い方や期限が変わったときは、両方の窓口へ同じ内容を伝えられるようにしておきましょう。
許可の期限は、誰がどこで管理すればいいでしょうか。
建物の管理者が把握しておくべきでしょうか。
許可を受けた建築主や施設の管理者から、許可の内容を共有してもらいましょう。
期限の日付を防火管理の記録にも残しておくと安心です。
よくある質問
まとめ
災害の後の応急仮設建築物は、期限の管理が大切なんですね。
この記事の内容を管理者にも共有します!
許可の期間が分かれば、防火管理の準備も立てやすくなります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第六条・第八十五条・第八十七条の三(e-Gov法令検索)
- 建築基準法施行規則第十条の十五の八(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





