感染症の患者さんを診る病室を、病院やビルの中に急いで設けなければならない場面がありました。
消防庁は令和2年12月、そうした臨時の室に使う医療用仮設ユニットの消防用設備等の扱いを、質疑応答で示しました。
通知には、スプリンクラー設備、自動火災報知設備、放送設備、誘導灯など、9問の答えが並んでいます。
この記事では、通知が何を認め、どんな条件をつけたのかを解説します。
臨時の病室でも、消防設備は全部そのまま付けるのが原則ですよね。
緊急のときは違うのでしょうか。
消防庁は、緊急の状況を考慮して令第32条を適用する考え方を示しています。
ただし、設備ごとに条件があります。
条件を満たせば、付けなくてよい設備もあるのですね。
どの設備が対象でしょうか。
感知器、スピーカー、散水ヘッド、屋外消火栓、誘導灯などです。
代わりに消火器や誘導標識などで補います。
- 令和2年12月28日の消防予第422号は、新型コロナウイルス感染症対策のために臨時に設けられた医療用仮設ユニットの消防用設備等の扱いを、9問の質疑応答で示した通知です。
- ユニットは、規則第13条第3項第7号の「その他これらに類する室」として取り扱ってよいとされ、スプリンクラー設備の扱いが整理されました。
- 天井や壁にダンボールやアクリル板を使っていても、防炎性能又は難燃性能を有するものなら同じ扱いになります。
- 感知器の免除には、電源の遮断、駆け付けやすさ、常時モニタリング、連動型住宅用防災警報器、消火器の付加設置の5つの要件があります。
- 通知は、消防組織法第37条に基づく助言として発出されたもので、実際に令第32条を適用するかどうかは、消防長又は消防署長が認めるかどうかで決まります。
▼
目次
新型コロナ対策の医療用仮設ユニットはなぜ消防用設備の扱いが通知で示されたのか

通知の本文は、きっかけになった事故や火災には触れていません。
宛先は、各都道府県の消防防災主管部長と、東京消防庁・各指定都市の消防長です。
発出者は消防庁予防課長で、事業者や病院に直接向けた文書ではありません。
質疑の多くが「緊急の状況であることを考慮して」と書いており、急いで病室を設ける事情が前提にあると読めます。
理由の詳しい説明までは書かれていませんので、背景を推測して書くことはしません。
通知は、病院に直接の義務を課すものではないのですね。
はい。
消防本部が執務の参考にする助言です。
医療用仮設ユニットとはどんな室で消防法令上どう扱われるのか

天井と壁で囲われた仮設の室で、感染症患者の診察や集中的な治療・看護に使うものです。
七 手術室、分娩室、内視鏡検査室、人工血液透析室、麻酔室、重症患者集中治療看護室その他これらに類する室
規則第13条第3項は、令第12条第2項第1号の総務省令で定める部分を、各号に掲げる部分以外の部分と定めています。
第7号に挙がる手術室や重症患者集中治療看護室は、その各号の一つです。
問2は、天井や壁にダンボールやアクリル板が使われていても、防炎性能又は難燃性能を有するものであれば、問1と同様に取り扱ってよいかを問い、答えは「差し支えない」です。
材料の性能が条件になっているので、仮設の壁だからといって何でもよいわけではありません。
ユニットが「類する室」になると、スプリンクラーの扱いが決まるのですね。
はい。
ただし、壁や天井の材料は防炎又は難燃が条件です。
通知は設備ごとにどう扱うと示したのか

設備の種類が多いので、下の表で整理して読みます。
| 設備 | 通知が示した扱い | 条件 |
|---|---|---|
| スプリンクラー設備(問1・問2) | 規則第13条第3項第7号の「その他これらに類する室」として取り扱ってよい | 壁・天井のダンボールやアクリル板は防炎性能又は難燃性能があること |
| 屋内消火栓設備(問3) | 令第32条を適用し、引き続き設置しないこととしてよい | 緊急の状況を考慮する(問2のユニットを設ける場合) |
| 自動火災報知設備の感知器(問4) | 令第32条を適用し、感知器の設置を免除してもよい | 5つの要件(電源遮断・駆け付け・常時モニタリング・連動型警報器・消火器) |
| 放送設備のスピーカー(問6) | 令第32条を適用し、増設を要しないこととしてよい | カメラと通話装置の設置、又は音圧65デシベル以上の確認 |
| 連結散水設備の散水ヘッド(問7) | 令第32条を適用し、設置を免除してもよい(地階のユニット) | 問4の要件(1)から(5)まで |
| 屋外消火栓設備(問8) | 令第32条を適用し、設置を免除してもよい(屋外のユニット) | 問4の要件(1)及び(5) |
| 誘導灯(問9) | 令第32条を適用し、設置を免除してもよい | 避難口の上部又は直近に誘導標識を設置すること |
この節の規定は、消防用設備等について、消防長又は消防署長が、防火対象物の位置、構造又は設備の状況から判断して、この節の規定による消防用設備等の基準によらなくとも、火災の発生又は延焼のおそれが著しく少なく、かつ、火災等の災害による被害を最少限度に止めることができると認めるときにおいては、適用しない。
令第32条は、消防長又は消防署長が、火災の発生や延焼のおそれが著しく少ないと認めるときに、基準を適用しないとする規定です。
通知は、その運用を、緊急の状況を考慮して質疑の形で示したものです。
問9の誘導灯は、防火対象物内なら規則第28条の3第3項第1号ハの出入口、屋外なら直接屋外へ通ずる出入口の上部又は直近に、誘導標識を置く形です。
設備ごとに、免除される代わりに何で補うかが決まっている点が読みどころです。
つまり、免除する代わりに、別の手段で補う形なのですね。
はい。
消火器や誘導標識などが、その代わりの手段です。
免除の条件で見落としやすいのはどこか

通知は、要件を「次に掲げる要件を満たすもの」と書いており、一つでも欠けると使えません。
(2)と(3)は、使用時にユニット内に医療関係者が常駐する場合は、要件から除かれています。
(4)の連動型住宅用防災警報器は、ユニットの内部と外部直近の両方に置くと書かれています。
問5は、複数のユニットを設けるとき、各ユニットの出入口から歩行距離10メートル以内の消火器なら、複数で兼用して付加設置してよいとしています。
また、通知が対象にしているのは、感染症対策のために臨時に設けられたユニットです。
要件が一つでも欠けたら、免除は使えないのですね。
はい。
実際に認めるかどうかは、消防長又は消防署長が判断します。
明日からなにを確認すればよいのか

まず、次の点を整理してみてください。
- ユニットの壁と天井に使う材料が、防炎性能又は難燃性能を有することを、確認できる書類を用意する
- 使用時以外に医療機器その他の電源を遮断できるかを確認する
- ナースステーションなどの常駐場所から、直ちに駆け付けられる位置にあるかを確認する
- ユニット内の状況を24時間常時モニタリングできる機器があるかを確認する
- 内部と外部直近の連動型住宅用防災警報器と、直近の消火器の付加設置を準備する
通知は、消防組織法第37条に基づく助言であり、実際に令第32条を適用するかどうかは消防長又は消防署長が決めます。
設備ごとに条件が違うので、どの設備を免除したいのかを、先に一覧にして相談すると話が早く進みます。
通知は、この内容を市町村にも周知するよう、都道府県の消防防災主管部長に求めています。
運用は消防本部ごとに異なる場合があるため、通知の写しを持参して確認してください。
ユニットを設ける前に、要件の一覧を作って消防署へ持っていけばよいですね。
はい。
まずは設備ごとの要件の一覧を作りましょう。
よくある質問
まとめ
ユニットの要件の一覧を作って、消防署に相談します!
臨時の室の消防設備の確認も、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「新型コロナウイルス感染症対策のため臨時に設けられた医療用仮設ユニットにおける消防用設備等の取扱いに係る執務資料の送付について(通知)」(令和2年12月28日 消防予第422号 消防庁予防課長)
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第11条第2項・第19条第2項・第32条
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第13条第3項第7号・第28条の3第3項第1号ハ
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





