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屋内消火栓は代替や特例でどこまで認められるのか|移動式粉末や乾式の質疑応答5問を解説

屋内消火栓の代替や特例をめぐる質疑応答を解説する記事のアイキャッチ画像。倉庫の壁に取り付けた赤い消火栓箱と台車付きの消火設備

屋内消火栓は、令第11条第1項が定める防火対象物に設置する設備です。
ところが建物の事情によっては、別の設備で代えたい、特例で省きたい、非常電源を分けたくない、凍結する地域なので配管を空にしたいといった相談が出ます。
消防庁は昭和の通知で、旅館やりんご選果場、低温倉庫、福祉施設、寒冷地の建物について、それぞれ答えを示しました。
認められた例と認められなかった例を並べて、分かれ目を5つの質疑で確かめます。

うちの倉庫に、屋内消火栓の代わりに持ち運べる消火設備を置けませんか。

そこは初期消火を果たせるかで分かれます。
建物ごとの答えを見ていきます。

特例で省いてもらえる建物もあるのでしょうか。

認められた例と認められなかった例があります。
5つの質疑で比べてみます。

この記事の結論
  • 旅館に置く移動式の粉末消火設備は、小さな部屋が多く煙が充満しやすいため、屋内消火栓の代替として適当でないとされました
  • りんご選果場の3階に置く移動式強化液消火設備も、屋内消火栓の代替として認めることは適当でないとされました
  • 冷凍食品を貯蔵する無窓低温倉庫は、不燃性の物件のみを収納するものに当たらず、令第32条の適用は適当でないとされました
  • 離れて建つ福祉施設の非常電源は、令第32条を適用し、容量が最大となる棟の容量で共用してさしつかえないとされました
  • 凍結のおそれがある寒冷地では、条件を満たせば乾式の屋内消火栓が認めて差し支えないとされました

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屋内消火栓の代替と特例をめぐる質疑応答5問として、旅館の粉末代替、強化液の代替、低温倉庫の免除、非常電源の共用、寒冷地の乾式を並べた図解

旅館の屋内消火栓を移動式の粉末消火設備で代えてよいか

木造の旅館の小さな客室と、赤い台車付きの粉末消火設備を並べ、旅館では代替に適さないことを示したイメージ
屋内消火栓が必要な旅館で、持ち運べる粉末消火設備を代わりに置けないかという照会がありました。
同じ照会では、ハロン1301を使う消火設備も代替にできるかが併せて問われています。
問(要旨) 消防用設備等の技術基準の遡及を受ける防火対象物で、屋内消火栓設備の設置を要する旅館((5)項イ)に、代替設備として第3種移動式粉末消火設備の設置を認めてよろしいか。またこれと同様にハロン1301を使用する消火設備(SPトマホークⅡ)を代替設備として設置することは認められるか。
答 設問の設備を消防法施行令第18条の技術上の基準に従って設置したことにより、初期消火の目的を達することができるものであれば、屋内消火栓設備の代替として設置することができるが、設問の防火対象物においては、一般的に小さな部屋に仕切られていること、火災発生時に煙が充満しやすいこと等移動式の粉末消火設備で初期消火を行うことは困難であると考えられるので、当該設備を屋内消火栓設備の代替として設置することは適当でないものと解する。
また、ハロン1301を使用するハロゲン化物消火設備については、「ハロン1301を使用するハロゲン化物消火設備の取扱いについて」(昭和51年5月22日付消防予第6号)及び「消防法令及び同施行規則に関する執務資料について」の「3 ハロン1301を使用する消火設備(SPトマホークⅡ)の取扱いについて」(昭和52年7月15日付消防予第142号)によられたい。
基準に合う設備でも、旅館では代替として適当でないという答えでした。
令第11条第4項は、粉末消火設備などを技術上の基準に従って設置したときは、その有効範囲の部分について屋内消火栓設備を設置しないことができると定めています。移動式の粉末消火設備は、令第18条が水平距離15メートル以下のホース接続口などを定めています。
回答も、令第18条の基準に従って初期消火の目的を達せられるなら代替できるという前提に立っています。そのうえで旅館は、小さな部屋に仕切られ煙が充満しやすいため、初期消火は困難だとして適当でないとしました。
ハロン1301を使う消火設備については、この回答では別の通知(消防予第6号と消防予第142号)によるよう案内されています。
代替を考えるときは、設備の基準に合うかだけでなく、部屋の仕切りと煙の広がりから初期消火ができるかを、建物ごとに消防機関へ確かめてください。

基準に合う設備でも、部屋の仕切りで判断が変わるんですね。

そうです。
初期消火ができるかで見られます。

りんご選果場の3階を移動式強化液消火設備で代えてよいか

三階建ての工場の最上階に段ボール箱が積まれ、隣に赤い強化液の消火設備の箱が立つイメージ
毎年9月から11月までしか使わない三階建ての選果場で、1階と2階には動力消防ポンプ設備を設けていました。
3階だけは、移動式の強化液消火設備を3基置いて屋内消火栓の代わりにできないかと問われました。
問(要旨) りんご選果場(令別表第1(12)項イ、作業場)で、建築面積2,856.06平方メートル、延べ面積4,524.86平方メートル、地上3階建の簡易耐火建築物がある。1階及び2階の部分については、令第11条第4項の規定により動力消防ポンプを設置しているが、3階部分については、令第32条の規定を適用し、屋内消火栓設備の代替として移動式強化液消火設備を3基設置することを認めてよろしいか。なお、この防火対象物は毎年9月から11月までの3か月間のみ利用されるもので、3階倉庫部分はダンボール箱を収納するだけで、人の出入りは限定されている。
答 認めることは適当でない。
1階と2階は動力消防ポンプ設備で足りても、3階は別の設備で代えられませんでした。
令第11条第4項が屋内消火栓設備を設置しないことができる設備として挙げているのは、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備、屋外消火栓設備、動力消防ポンプ設備です。しかも、屋外消火栓設備と動力消防ポンプ設備は、1階及び2階の部分に限ると定められています。
回答は理由まで書いていませんが、移動式の強化液消火設備はこの列挙に含まれず、動力消防ポンプ設備による代替も3階には及びません。季節利用で人の出入りが限られるという事情があっても、令第32条を適用して認める答えにはなりませんでした。
同じ建物で階ごとに別の設備を組み合わせるときは、どの階を、どの設備の有効範囲として扱えるかを、設置前に消防機関と詰めてください。

季節だけ使う建物でも、3階は代わりにできないんですね。

はい。
令第32条の特例は、認められるかを個別に判断されます。

無窓の低温倉庫は令第32条で屋内消火栓を免除できるか

窓のない断熱壁の倉庫の前に段ボール箱が積まれ、壁に赤い消火栓箱が付いたイメージ
内部の温度がマイナス10度からマイナス30度にもなる低温倉庫は、燃えにくいのではないかと考えたくなります。
特例基準の通知にある「不燃性の物件のみを収納するもの」にあたるとして、屋内消火栓を免除できるかが問われました。
問 簡易耐火無窓低温倉庫(470平方メートル)は、内部気温がマイナス10℃〜マイナス30℃で、冷凍食品類をダンボール箱に梱包した物を貯蔵するため、出火の危険及び延焼拡大のおそれが著しく少ないとして、昭和38年9月30日付自消丙予発第59号予防課長通達第1の(1)中の「不燃性の物件」に該当し、屋内(外)消火栓設備を免除することができるか。
答 設問の場合は、「消防法施行令第32条の特例基準等について」(昭和38年9月30日付自消丙予発第59号)第1、1(1)の「不燃性の物件のみを収納するもの」には該当しないものと解する。したがって、設問の場合、令第32条の適用は適当でないものと解する。
低温であることだけでは、不燃性の物件のみを収納するものとは扱われませんでした。
令第32条は、消防長または消防署長が、建物の位置、構造、設備の状況から判断して、基準によらなくても火災の発生や延焼のおそれが著しく少なく、被害を最小限度に止められると認めるときに、基準を適用しない特例です。
問は、低温であることを理由に出火や延焼のおそれが著しく少ないと主張しました。回答は理由を細かく書いていませんが、貯蔵物がダンボール箱に梱包した冷凍食品類であることが、不燃性の物件のみとは言えない点に関わると読めます。
低温倉庫で免除を考えるときは、梱包材まで含めた収納物の実態を整理し、令第32条の適用が個別の判断であることを踏まえて消防機関へ相談してください。

冷凍だから燃えにくい、とは言えないんですね。

この回答では、そう判断されました。
免除を考える前に収納物の実態を整理してください。

離れて建つ福祉施設は屋内消火栓の非常電源を共用してよいか

離れて建つ3棟の低い建物が、真ん中の非常電源の箱に細いケーブルでつながるイメージ
同じ敷地に福祉施設が3棟あり、互いに80〜100メートル離れている場合の問いです。
屋内消火栓の水源とポンプ等は棟ごとに設置し、非常電源だけを共用できるかが問われました。
問 同一敷地内に福祉施設(保育所、福祉センター等)としての防火対象物が3棟あり、相互に80〜100mの距離を有する。これらの防火対象物に屋内消火栓設備を設置する場合、水源、ポンプ等は防火対象物ごとに設置するが、非常電源は容量が最大となる棟の容量をもって共用してさしつかえないか。
答 令第32条の規定を適用し、共用を認めてさしつかえないものと解する。
令第32条を適用して、最大の容量の棟に合わせて共用してよいという答えでした。
令第11条第3項は、屋内消火栓設備に非常電源を附置することを求めています。この回答は、棟ごとに置く前提の非常電源について、令第32条を適用して共用してさしつかえないとしたものです。
条件は、共用する非常電源の容量が、容量が最大となる棟の容量ことです。
令第32条は消防長または消防署長が認めるときの規定なので、共用が当然に許されるわけではありません。共用を考えるときは、棟ごとの非常電源の必要容量を出し、最大の棟の容量で足りるかを確かめたうえで消防機関へ相談してください。

非常電源は、最大の容量の棟に合わせればよいんですね。

はい、その回答でした。
共用できるかは消防機関の判断になります。

寒冷地の屋内消火栓は乾式にしてよいか

雪の積もった屋根とつららのある壁に赤い消火栓箱が付き、配管の水抜き弁とポンプがつながるイメージ
厳寒期に配管が凍結する地域では、屋内消火栓の配管に水を入れておけないという悩みがあります。
宮城県からの照会に、消防庁は乾式にしてよい場合の条件を示しました。
問 屋内消火栓設備の乾式の取扱いについては、法令上特段の規定がないが、スプリンクラー設備のように乾式又は予作動式についての規定がないこと及び初期消火における初動体制の重要性の観点から、原則的には湿式にすべきものと思われる。しかし、厳寒期において屋内消火栓設備が凍結するおそれのある地域においては、屋内消火栓設備の有効な維持管理と有効な活用等の観点から、別添「屋内消火栓設備(乾式)の設置について」により設置した場合は、屋内消火栓設備を乾式としてよろしいか。
答 認めて差し支えない。
原則は湿式のままで、凍結のおそれがある場合に限って乾式が認められました。
別添の内容は次の5項目です。
  • 設置条件:寒冷地の防火対象物や冷凍倉庫で、十分な保温措置を講じることが困難な場合等、凍結により配管の破裂や放水障害が生ずるおそれがあると認められたとき。
  • 性能:消火栓箱の開閉弁を開け、加圧送水装置の起動スイッチを押した時から、1分以内に令第11条第3項が定める放水の性能が得られること。
  • 構造:加圧送水装置の吐出側の配管に、配管内の水を有効に排出できる措置を講じ、加圧送水装置を起動したときの水撃に耐える構造とすること。
  • 水源:令第11条第3項が定める量に、乾式配管部分の水量を加えた量となるように設けること。
  • その他:消火栓箱の表面に「消火栓(乾式)」と表示し、制御盤の付近に水抜き栓、呼気弁、排気弁等の位置を示した図と水抜きの方法を明示すること。
凍結のおそれがある建物では、乾式にする前に、保温措置が困難な理由と、1分以内に放水できる性能を整理して消防機関と相談してください。

凍る地域でも、乾式にすればいいんですね。

条件を満たせば認められました。
1分以内の性能と水抜きの表示が要ります。

よくある質問

Q移動式の粉末消火設備は、どんな建物なら屋内消火栓の代わりになりますか?
A令第11条第4項は、粉末消火設備を技術上の基準に従って設置したときは、その有効範囲の部分に屋内消火栓設備を設置しないことができると定めています。ただし旅館の質疑では、小さな部屋が多く煙が充満しやすい建物は適当でないと答えられました。
Q動力消防ポンプ設備で屋内消火栓を代えられるのは何階までですか?
A令第11条第4項は、屋外消火栓設備と動力消防ポンプ設備について、1階及び2階の部分に限ると定めています。
Q令第32条の特例は、誰が認めるのですか?
A消防長または消防署長が、建物の位置、構造、設備の状況から判断して、火災の発生や延焼のおそれが著しく少なく、被害を最小限度に止められると認めるときに適用されます。
Q乾式にした屋内消火栓の箱には、何を表示しますか?
A消火栓箱の表面に「消火栓(乾式)」と表示します。あわせて制御盤の付近に、水抜き栓、呼気弁、排気弁等の位置を示した図と水抜きの方法を明示します。

まとめ

✔旅館の移動式粉末消火設備は、小さな部屋が多く煙が充満しやすいため代替として適当でない
✔代替できる設備は令第11条第4項が挙げ、動力消防ポンプ設備と屋外消火栓設備は1階及び2階に限られます
✔りんご選果場の3階の移動式強化液消火設備は、代替として認めることは適当でない
✔無窓低温倉庫は不燃性の物件のみを収納するものに当たらず、令第32条の適用は適当でありません
✔令第32条は、消防長または消防署長が認めるときの特例
✔離れて建つ福祉施設の非常電源は、令第32条を適用し、容量が最大となる棟の容量で共用できます
✔寒冷地の屋内消火栓は、1分以内の性能と水抜きの表示などの条件を満たせば乾式にできます

代わりの設備や特例は、建物の実態で判断されると分かりました。
うちの屋内消火栓も確かめてみます!

どの回答も、初期消火ができるかを見ていました。
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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行令第11条・第18条・第32条
  • 屋内消火栓設備の代替設備について(昭和53年7月15日 消防予第134号 消防庁予防救急課長から青森県総務部長あて回答)
  • 無窓低温倉庫に対する消防法施行令第32条の適用について(昭和53年12月5日 消防予第228号 消防庁予防救急課長から栃木県総務部長あて回答)
  • 非常電源の共用について(昭和54年6月22日 消防予第118号 消防庁予防救急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
  • 屋内消火栓設備の代替設備について(昭和59年11月1日 消防予第151号 消防庁予防救急課長から岩手県総務部長あて回答)
  • 屋内消火栓設備の乾式の取扱いについて(昭和62年7月30日 消防予第132号 消防庁予防課長から宮城県総務部長あて回答)
  • 消防実務六法 質疑応答編

※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答はそれぞれの発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。

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