BLOG

移送取扱所の配管はなぜ圧力単独と地震込みで許容基準が変わるのか|40パーセントと90パーセントの二段階基準を解説

移送取扱所の配管を守る二段階の基準を解説する記事のアイキャッチ画像

移送取扱所の配管は、危険物を長距離にわたり圧力をかけて送るための特別な設備です。
そのため配管の強度基準は、屋外タンクなどとは別に、独自の考え方で定められています。
基準の中心にあるのは、荷重の組合せによって許容される応力の範囲です。
この記事では、圧力単独の場合と地震などを含む複合荷重の場合とで、なぜ許容基準が変わるのかを条文から整理します。

うちの移送取扱所、配管の太さや厚みってどうやって決まっているんですか。

配管が受ける力に応じて、規則で応力の基準が細かく定められています。
実は基準が一つではなく、二段階になっているんです。

二段階とはどういうことでしょうか。

今日は、圧力だけの場合と地震などが重なった場合とで、なぜ許容基準が変わるのかを条文から解説します。

この記事の結論
  • 移送取扱所の配管は主荷重従荷重両方を考えて設計する必要があります
  • 内圧だけで生じる応力は、規格最小降伏点の40パーセント以下に抑えなければなりません
  • 主荷重と従荷重を組み合わせた複合応力は、規格最小降伏点の90パーセント以下まで許容されます
  • この二つの基準はどちらか一方ではなく両方を満たす必要があります
  • 配管の最小厚さは告示の基準か破損試験で確認され、移送基地内は別扱いになります

移送取扱所の配管基準は荷重の洗出しから圧力単独確認地震込み確認記録の保存までの4段階で二段階の応力基準を守ることを示す図解

移送取扱所の配管はなぜ独自の強度基準を持つのか

支柱に載った配管の全体をクリップボードを持つ技術者が確認するイメージ
移送取扱所の配管は、一般の建築物とは異なる技術基準で守られています。
その根拠は政令にさかのぼります。
危険物の規制に関する政令第18条の2第1項(移送取扱所の基準) 移送取扱所の位置、構造及び設備の技術上の基準は、石油パイプライン事業法(昭和四十七年法律第百五号)第五条第二項第二号に規定する事業用施設に係る同法第十五条第三項第二号の規定に基づく技術上の基準に準じて総務省令で定める。
移送取扱所の配管は、一般の建築物とは別の技術基準で守られています。
危険物の規制に関する政令第18条の2は、この基準を石油パイプライン事業法の技術基準に準じて定めるよう総務省令に委任しています。
長距離にわたって圧力をかけて危険物を送る配管は、破損すれば影響が周囲に大きく及ぶため、独自の強度基準が必要とされているのです。
この基準の中心にあるのが、次に見る荷重の組合せと、圧力単独時・複合時で変わる許容応力度の考え方です。
順に見ていきましょう。

移送取扱所の配管って、石油パイプライン事業法の基準を参考にしているんですね。

はい。
長距離を圧力で送る点が共通しているため、その基準に準じて定められています。

配管の設計ではどんな力を組み合わせて計算するのか

配管に内圧地震土圧車両荷重の矢印が四方から集まるイメージ
配管の設計では、常にかかる力とまれにしかかからない力を分けて計算します。
条文はこの二種類を明確に区別しています。
危険物の規制に関する規則第28条の5第1項(配管等の構造) 配管等の構造は、移送される危険物の重量、配管等の内圧、配管等及びその附属設備の自重、土圧、水圧、列車荷重、自動車荷重、浮力等の主荷重並びに風荷重、雪荷重、温度変化の影響、振動の影響、地震の影響、投錨びようによる衝撃の影響、波浪及び潮流の影響、設置時における荷重の影響、他工事による影響等の従荷重によつて生ずる応力に対して安全なものでなければならない。
配管の設計では、常時かかる力とまれにかかる力を分けて計算します。
規則第28条の5第1項は、危険物の重量や内圧、自重、土圧、水圧、列車荷重、自動車荷重、浮力などを主荷重と位置づけています。
一方で風、雪、温度変化、振動、地震、投びようによる衝撃、波浪や潮流、設置時の荷重、他工事の影響などは従荷重として区別されています。
主荷重は常時かかり続ける力、従荷重は地震や工事などの特定の状況でだけ加わる力という違いがあります。
この二種類の荷重の組合せをもとに、次の許容基準が決まります。

主荷重と従荷重って、常にかかる力とたまにかかる力の違いなんですね。

そのとおりです。
次は、この二つの荷重をもとにした実際の許容基準を見てみましょう。

圧力単独と複合荷重で許容基準はどう変わるのか

低い位置と高い位置を指す二つの計器盤を技術者が確認するイメージ
配管の強度基準には、圧力単独用と複合荷重用の二段階があります。
数値そのものを条文で確認します。
危険物の規制に関する規則第28条の5第2項(抜粋) 配管は、次の各号に定める基準に適合するものでなければならない。 二 配管の内圧によつて生ずる当該配管の円周方向応力度が当該配管の規格最小降伏点(略)の四十パーセント以下であること。 三 主荷重と従荷重の組合せによつて生ずる配管の円周方向応力度、軸方向応力度及び管軸に垂直方向のせん断応力度を合成した応力度が当該配管の規格最小降伏点の九十パーセント以下であること。
配管の強度基準には、圧力単独用と複合荷重用の二段階があります。
規則第28条の5第2項第2号は、内圧だけで生じる円周方向応力度を規格最小降伏点の40パーセント以下に抑えるよう求めています。
一方、同項第3号は、主荷重と従荷重を組み合わせたときの複合応力度を規格最小降伏点の90パーセント以下まで許容しています。
同じ配管でも、常時かかる圧力だけの基準と、地震など稀にしか起きない複合荷重の基準とで、許容の幅が大きく異なります。
数字だけを見ると90パーセントのほうが緩く感じますが、それには理由があります。

90パーセントのほうが数字が大きいので、複合荷重のほうが厳しいのかと思っていました。

感覚とは逆になりやすいところです。
次の落とし穴と合わせて確認しましょう。

二つの基準はどちらか一方で足りるのか

一方の計器だけを確認する組と両方の計器を確認する組を並べたイメージ
40パーセントと90パーセントのどちらか一方を満たすだけでは足りません。
条文には、もう一つの基準が用意されています。
危険物の規制に関する規則第28条の5第2項第1号・第4号(抜粋) 一 主荷重及び主荷重と従荷重との組合せによつて生ずる配管の円周方向応力度及び軸方向応力度が当該配管のそれぞれの許容応力度を超えるものでないこと。 四 橋に設置する配管は、橋のたわみ、伸縮、振動等に対し安全な構造であること。
40パーセントと90パーセントのどちらか一方を満たすだけでは足りません。
規則第28条の5第2項第1号は、主荷重や複合荷重で生じる応力度が、告示で定める継手効率と安全率をもとにした許容応力度を超えないことも別途求めています。
つまり配管は、①許容応力度の範囲内であること、②内圧単独で40パーセント以下であること、③複合荷重で90パーセント以下であること、という三つの基準を同時に満たす必要があります。
さらに橋に配管を設置する場合は、橋のたわみや伸縮、振動に対しても安全な構造であることが同項第4号で求められています。
基準が枝分かれしている分、どれか一つを確認して終わりにしないよう注意が必要です。

どちらか一方をクリアすれば安心、というわけではないんですね。

はい。
三つの基準をすべて満たしているかを、設計段階で確認する必要があります。

配管の厚さはどうやって確認すればよいのか

露出した配管に測定機器を当てて確認する技術者と記録用ファイルのイメージ
配管の厚さそのものにも、告示基準か試験による確認が必要です。
最後にこの点を見ておきましょう。
危険物の規制に関する規則第28条の5第2項第5号・第4項(抜粋) 五 配管の最小厚さは、告示で定める基準に適合するものであること。ただし、次のいずれかに該当する配管については、この限りでない。イ 告示で定める方法により破損試験を行つたとき破損しないもの ロ 移送基地の存する敷地と同一の敷地内の地上に設置し、又は地下に埋設するもの (第4項)前三項に規定するもののほか、配管等の構造に関し必要な事項は、告示で定める。
配管の最小厚さそのものにも、告示基準か試験による確認が必要です。
規則第28条の5第2項第5号は、配管の最小厚さが告示で定める基準に適合することを原則としています。
ただし告示で定める方法による破損試験で破損しないと確認されたものや、移送基地と同一敷地内に設置・埋設するものは、この限りでないとされています。
これら以外の詳細な事項は、規則第28条の5第4項により告示にさらに委任されています。
自社の配管がどの基準や試験の記録で確認されているか、設計計算書や試験記録を確認しておくとよいでしょう。

うちの配管がどの方法で厚さを確認しているか、記録を見てみます。

それが分かれば、今後の点検や更新の計画も立てやすくなります。

よくある質問

Q移送取扱所の配管はなぜ石油パイプライン事業法の基準を参考にしているのですか?
A危険物の規制に関する政令第18条の2が、移送取扱所の技術基準を同法の基準に準じて総務省令で定めると規定しているためです。長距離を圧力で送るという性質が共通していることによると考えられます。
Q主荷重と従荷重にはどんなものがありますか?
A主荷重には危険物の重量や内圧、自重、土圧、水圧、列車荷重、自動車荷重、浮力などが含まれます。従荷重には風、雪、温度変化、振動、地震、投びようによる衝撃、波浪や潮流、設置時の荷重、他工事の影響などが従荷重として区別されています。
Qなぜ複合荷重のほうが許容基準の数値が大きいのですか?
A内圧単独は常時かかり続ける荷重のため長期的な余裕を大きくとる一方、地震などを含む複合荷重は稀にしか生じない状態への対応と考えられます。ただし数値が大きいからといって緩いわけではなく、満たすべき基準の一つに過ぎません
Q配管の厚さはどうやって確認すればよいですか?
A規則第28条の5第2項第5号により、告示で定める基準に適合しているか、告示で定める方法による破損試験で破損しないことが確認されている必要があります。設計計算書や試験記録を保管しておくことが重要です。

まとめ

移送取扱所の配管は主荷重従荷重の両方を考えて設計しなければなりません
内圧単独で生じる応力は、規格最小降伏点の40パーセント以下に抑える必要があります
主荷重と従荷重を組み合わせた複合応力は、規格最小降伏点の90パーセント以下まで許容されます
これらは告示で定める許容応力度の基準とは別に、それぞれ独立して満たす必要があります
橋に設置する配管には、たわみや伸縮、振動に対する追加の基準もあります
配管の最小厚さは、告示の基準か破損試験による確認が必要です
まずは自社の配管がどの基準・試験の記録で確認されているかを確認してください

配管の基準がここまで細かいとは知りませんでした

まずは設計計算書の確認から始めてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第18条の2
  • 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第28条の5

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
移送取扱所の配管を守る二段階の基準を解説する記事のアイキャッチ画像
移送取扱所の配管は、危険物を長距離にわたり圧力をかけて送るための特別な設備です。 そのため配管の強度基準は、屋外タンクなどとは別に、独自の考え方で定められています。 基準の中心にあるのは、荷重の組合せによって許容される応...