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自家発電設備の点検基準はなぜ見直されたのか|内部観察等への切替えとガスタービン式の扱いを解説

赤い配管が伸びる設備室に置かれた自家発電設備を背景にした点検基準見直しのアイキャッチ画像

非常電源として設置している自家発電設備は、いざ停電したときに頼れる最後の砦です。
ところが実際の点検現場では、負荷運転をそのまま行うことが難しい建物も少なくありません。
商用電源を止められない、擬似負荷装置を置く場所がない。そうした事情を踏まえて、消防庁は点検方法そのものを見直しました。
負荷運転一本槍だった点検基準は、内部観察等という選択肢を得て、現実に即した形に変わっています。

うちのビルの非常用発電機、点検のたびに業者さんが四苦八苦してるみたいなんです。

実はそれ、多くの建物で起きている悩みです。
点検の基準は平成30年消防庁告示第12号で見直されました。

告示が変わったんですね。うちの発電機にも関係ありそうです。

はい、関係します。
この記事で見直しのポイントを順番に確認していきましょう。

この記事の結論
  • 非常電源(自家発電設備)の点検基準は平成30年消防庁告示第12号によって見直されました
  • 負荷運転だけでなく内部観察等という方法でも運転性能を確認できるようになりました
  • ガスタービンを原動力とする自家発電設備は負荷運転そのものが不要になりました
  • 点検周期を6年に延ばせるのは、予防的な保全策を講じ記録が残っている場合に限られます
  • 換気性能の点検は無負荷運転時に行うよう変更されました

内部観察も選べる・周期は六年まで・ガスタービン式は対象外・換気は無負荷時にという4つの見直しポイントを示した図解

自家発電設備の点検方法はなぜ見直されたのか

屋上に設置された自家発電設備と置き場所に困る擬似負荷装置
非常電源(自家発電設備)の点検基準は、長年ほぼ同じ内容で運用されてきました。
ところが実際の点検現場では、基準どおりに負荷運転を行うこと自体が難しい場合がありました。
消防予第372号(平成30年6月1日) 今回の改正は、実機での検証や現場での実態調査に基づく検討を踏まえ、非常電源(自家発電設備)の点検方法を合理化する等の整備を行うものです。
消防法施行規則第31条の6第1項 法第17条の3の3の規定による消防用設備等の点検は、種類及び点検内容に応じて、1年以内で消防庁長官が定める期間ごとに行うものとする。
点検の期間や方法は、消防庁長官が定める告示に委ねられています。
だからこそ告示が変われば、現場で求められる点検の中身も変わります。
負荷運転を行うには商用電源を止めて実負荷をかける必要があり、停電させられない建物では点検そのものが難しくなります。
屋上や地階に設置された自家発電設備では、擬似負荷装置を運び込む場所を確保できないこともあります。
こうした現場の事情を実機での検証データとともに検討した結果、負荷運転だけに頼っていた点検方法が見直されました。

うちの発電機は屋上にあるんですが、点検のたびに業者さんが機材を運ぶのが大変そうです。

それはよくあるケースです。
だからこそ内部観察等という新しい方法が認められました。

総合点検の対象からガスタービン式はなぜ外れたのか

ディーゼル式の自家発電設備とガスタービン式の自家発電設備を並べた図
総合点検では、これまですべての非常電源(自家発電設備)に負荷運転が必要とされてきました。
ところが原動機の種類によって、機械的な負荷のかかり方には違いがあります。
消防予第372号(平成30年6月1日) 現行規定では、総合点検の際に、すべての非常電源(自家発電設備)に負荷運転を必要としているところ、ガスタービンを原動力とする自家発電設備は負荷運転を不要としたこと。
ガスタービン式だけは、負荷運転そのものが不要になりました。
理由は、原動機の構造そのものの違いにあります。
ガスタービンを原動力とする自家発電設備の無負荷運転は、ディーゼルエンジンを用いるものの負荷運転と機械的・熱的な負荷にほとんど差が見られないことが、燃料消費量のデータなどから確認されました。
排気系統に未燃燃料がたまりやすいという負荷運転本来の目的も、ガスタービン式ではほとんど発生しないことが検証で分かっています。
自分の建物の自家発電設備がどちらの方式なのか、まずは点検業者や設備図面で確認しておいてください。

うちの発電機、ガスタービン式なのかディーゼル式なのか、実は分かっていません。

設備図面や銘板に書いてあることが多いです。
ガスタービン式なら、次の点検で負荷運転を省ける可能性があります。

負荷運転に代わる内部観察等では何を確認するのか

自家発電設備の内部を観察し潤滑油を分析する様子
点検方法が増えたといっても、内部観察等の中身を知らなければ何を業者に頼めばよいか分かりません。
内部観察等は、負荷運転で確認していた不具合を別の方法で確認する点検です。
消防予第372号(平成30年6月1日) 現行規定では、運転性能に係る点検の方法は負荷運転に限られているところ、負荷運転の代替点検方法として、内部観察等を規定したこと。
内部観察等は、機器の中を直接見て確認する点検です。
過給器のコンプレッサ翼やタービン翼、排気管の内部を観察し、未燃燃料や燃焼残渣物が異常にたまっていないかを目視で確認します。
燃料噴射弁などの動作確認、シリンダ摺動面の内部観察も含まれます。
潤滑油や冷却水を抜き取り、成分を分析して内部の異常の有無を確認することも欠かせません。
換気性能の点検も、これまでの負荷運転時ではなく無負荷運転時に自然換気口や機械換気装置の状況を確認するよう変更されています。

内部観察って、結局は分解して見るってことですか。

分解して覗くだけでなく、潤滑油や冷却水の成分分析まで含めて初めて点検になります。
交換しただけでは点検したことにはなりません。

点検周期を6年に延ばすにはどんな条件が必要なのか

保全記録がそろった点検記録簿と記録が無い点検記録簿を並べた図
点検周期が6年に延びたと聞くと、すぐに誰でも適用できると思ってしまいがちです。
実際には、延長を受けるための条件が決まっています。
消防予第372号(平成30年6月1日) 現行規定では、1年に1回の総合点検において負荷運転を行う必要があるところ、潤滑油等の交換など運転性能の維持に係る予防的な保全策が講じられている場合には、点検周期を6年に延長することとしたこと。
6年への延長は、自動的に認められるわけではありません。
条件は運転性能の維持に係る予防的な保全策を講じていることです。
予熱栓や点火栓、潤滑油フィルターなど部品ごとの推奨交換年数を守って交換していることが目安になります。
平成29年6月以降に負荷運転を実施または製造された設備は、その負荷運転や製造年から6年を経過するまでの間、この扱いを受けられます。
保全策を講じていたことが過去の記録などで確認できなければ、この取扱いは使えません。

うちは古い工事記録も捨てずに残しています。
これって使えますか。

使えます。
記録が残っていれば、負荷運転や製造から6年を経過するまで新たな点検を先送りできます。

自家発電設備の点検で明日から何を確認すればよいのか

点検チェックリストと点検業者へ電話をかける様子
改正の中身が分かったところで、実際に何を確認すればよいのかを整理します。
建物の関係者としてできることは、意外とシンプルです。
消防予第372号(平成30年6月1日) 貴職におかれましては、下記事項に留意の上、その運用に十分配慮されるとともに、各都道府県知事におかれましては、貴都道府県内の市町村に対しても、この旨周知されるようお願いします。
まず確認するのは、自分の設備がどの方式で運用されているかです。
原動機がガスタービン式かディーゼル式かで、負荷運転の要否が変わります。
次に、これまでの点検で予防的な保全策を講じてきた記録が残っているかを点検業者に確認してください。
記録があれば、負荷運転または内部観察等から6年を経過するまで、新たな運転性能の点検を先送りできます。
記録が無ければ、まずは次の点検を通常どおり実施し、そこから新しい保全記録を残していくことになります。

点検業者さんに、うちはどっちの方式か聞いてみます。

それが第一歩です。
保全策の記録が残っているかも、あわせて確認してもらってください。

よくある質問

Q負荷運転から内部観察等に切り替えれば、点検の手間は減りますか?
A回答は、負荷運転に代わる方法として内部観察等を追加したものであり、どちらか一方を選べば済むという意味です。内部観察等も過給器や排気管の内部観察、潤滑油・冷却水の成分分析まで必要なので、手間そのものが軽くなるとは限りません。
Q自家発電設備ならどれでも点検周期を6年に延ばせますか?
A回答は、運転性能の維持に係る予防的な保全策を講じていることが条件で、記録が確認できない設備には適用されません。
Qガスタービンを原動力とする自家発電設備は点検そのものが不要になりますか?
A回答は、負荷運転だけが不要になったのであり、機器点検や総合点検の他の項目は従来どおり必要です。
Q換気性能の点検はいつ実施すればよいですか?
A回答は、負荷運転時ではなく無負荷運転時に自然換気口や機械換気装置の状況を確認することとされました。

まとめ

非常電源(自家発電設備)の点検基準は平成30年消防庁告示第12号で改正されました
総合点検の運転性能確認は負荷運転または内部観察等のどちらかで行えます
内部観察等では潤滑油・冷却水の成分分析や排気管内部の観察を行います
ガスタービンを原動力とする自家発電設備は負荷運転が不要です
点検周期を6年に延ばせるのは予防的な保全策を講じている場合だけです
換気性能の点検は無負荷運転時に行うよう変更されました
保全策の実施記録が無ければ、この扱いは使えません

発電機の点検のことがだいぶ分かりました!

運転方式と保全策の記録を押さえておいてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防用設備等の点検の基準及び消防用設備等点検結果報告書に添付する点検票の様式の一部を改正する件の公布について(消防予第372号・平成30年6月1日)
  • 消防用設備等の点検の基準及び消防用設備等点検結果報告書に添付する点検票の様式(昭和50年消防庁告示第14号)別表第24
  • 消防法施行規則第31条の6
  • 消防法第17条の3の3

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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