平成21年3月、群馬県渋川市の無届施設で火災が起き、多くの生活保護受給者が犠牲になりました。
厚生労働省はこれを受け、ケースワーカーに防火安全体制の確認を求める通知を出します。
社援保発第0325001号は、入居前と入居後で確認のしかたを分け、消防との情報提供のルートも示しました。
この記事では、通知が求める確認の中身と、防火管理者が備えておくべきことを解説します。
うちの施設にも生活保護を受けている入居者がいますが、防火管理者として何か備えが必要なのでしょうか。
渋川市の火災をきっかけに、ケースワーカーが防火安全体制を確認する仕組みができました。
ケースワーカーが見に来るということですか。
はい。
そのときに何を聞かれるのか、順番に確認していきましょう。
- 平成21年3月の群馬県渋川市の無届施設火災を受け、厚生労働省は社援保発第0325001号でケースワーカーに防火安全体制の確認を求めました
- 対象は老人福祉法上の届出がなく、社会福祉各法に法的位置付けのない施設・共同住宅に入居する生活保護受給者です
- 入居前は契約前の確認、入居済みの場合は聞き取りまたは訪問調査で確認するという2段階の仕組みです
- 消防法令違反の疑いがあれば、所轄の消防署等へ情報提供することが通知で明文化されています
- 防火管理者は消防用設備等の状況をいつでも説明できる状態にしておくことが実務上の備えになります
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目次
生活保護受給者の住まいはなぜ防火安全体制を確認されることになったのか

まずは、通知が出されたきっかけを確認します。
この施設は老人福祉法上の届出をしておらず、社会福祉各法に法的位置付けのない施設だったと通知は述べています。
罹災した入居者の多くが生活保護受給者だったことから、厚生労働省は福祉事務所のケースワーカーという窓口に着目しました。
こうして平成21年3月25日の社援保発第0325001号で、ケースワーカーが防火安全体制を確認する仕組みが示されたのです。
通知は同時に、未届の有料老人ホームへの届出促進と緊急点検についても厚生労働省老健局振興課から別途発出されたことを伝えています。
届出をしていない施設だったから、見落とされていたのですね。
はい。
だからこそ福祉の窓口から確認する仕組みが必要になりました。
どんな施設のどんな受給者がこの確認の対象になるのか

対象の線引きを確認します。
老人福祉施設や届出済みの有料老人ホームであれば、既存の制度の中で防火安全体制が確認されます。
一方、老人福祉法第29条の届出をしていない施設や、法律上の位置付けが無い共同住宅は、この仕組みの外に置かれやすいという問題がありました。
通知は、そうした施設に生活保護受給者が利用している場合に限って、ケースワーカーが確認する対象になると整理しています。
防火管理者としては、自分の施設がこの届出をしているかどうかを、まず確かめる必要があります。
うちは有料老人ホームの届出を済ませていますが、それでも対象になりますか。
届出済みであれば、この通知が直接名指しする対象ではありません。
ただし確認の考え方は参考になります。
入居前と入居後で確認される内容はどう違うのか

2つの場面に分けて見ていきます。
利用する前であれば、ケースワーカーは住環境や処遇とあわせて消防用設備等の状況や避難通報体制を確認します。
すでに入居している場合は、事業者への聞き取り、または生活保護法第28条に基づく通常の訪問調査を通じて同じ内容を確認します。
この権限は生活保護の決定・実施のための調査として、もともとケースワーカーに与えられているものです。
防火管理者は、どちらの場面でも消防用設備等の状況を説明できるよう、日頃から整理しておく必要があります。
つまり訪問調査は、生活保護のための調査の一部として行われるのですね。
はい。
新しい権限を作ったのではなく、既存の調査に防火の視点を加えた形です。
不備が見つかったとき消防とどう連携するのか

福祉から消防へ、どうつながるのかを確認します。
ケースワーカーが確認の中で消防法令に違反する、またはその疑いがある状況を見つけた場合、生活保護法だけにとどまらず、所轄の消防署等へ情報提供することが求められています。
この条項は「生活保護法に限らず」と明記しており、福祉の職員が気づいた不備を自分の権限の範囲に閉じずに伝える前提になっています。
通知と同時に消防庁予防課からも各都道府県の消防防災主管部へ送付文が出され、民生部局からの情報提供を受けた際は適切に対応するよう求めています。
つまり、福祉から消防へ、消防から福祉へという両方向の連携が、この通知によって明文化されました。
ケースワーカーの訪問が、消防署への情報提供につながることもあるのですね。
そのとおりです。
だからこそ、日頃から説明できる状態が大切です。
明日からなにを確認すればよいのか

今日から始められることがあります。
まず、自分の施設が老人福祉法第29条の届出をしているか、生活保護受給者がどれだけ入居しているかを把握します。
次に、ケースワーカーの聞き取りや訪問調査にいつでも応じられるよう、消防用設備等の状況や避難通報体制を整理した資料を用意しておきます。
そして、消防用設備等の点検結果や避難訓練の実施状況に不備があれば、ケースワーカーに指摘される前に所轄消防署へ自分から相談することも検討します。
この一連の流れを、次の防火管理の点検から取り入れてみてください。
設備の工事が必要な話だと思っていました。
そうとは限りません。
まずは説明できる資料をそろえることから始められます。
よくある質問
まとめ
つまり、うちの施設も説明できる資料の整理から見直す価値がありそうですね。
はい。
通知の考え方を知れば、何から手を付けるべきかがはっきりします。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 社会福祉各法に法的位置付けのない施設・共同住宅を利用する生活保護受給者の防火安全体制の確認について(平成21年3月25日 社援保発第0325001号 厚生労働省社会・援護局保護課長)
- 「社会福祉各法に法的位置付けのない施設・共同住宅を利用する生活保護受給者の防火安全体制の確認について」(社援保発第0325001号厚生労働省社会・援護局保護課長通知)について(消防庁予防課長通知)
- 老人福祉法(昭和38年法律第133号)第29条
- 生活保護法(昭和25年法律第144号)第27条・第28条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





